二日目からいきなり休んでましたが(^^;、今日は先日ヴァーリィの時に話題に出した短編『きょうもまた満ち足りた日を』(ジョン・ヴァーリィ)。
初出は89年。私が読んだのは、98年のSFマガジン500号記念特大号に掲載されたもの。
主人公は、1989年にある事故にあった男。脳に傷を負った彼は奇跡的に意識を取り戻すも、“86年の夏以後の事を全て覚えていない”状態だった。医師達による説明がなされ、再び眠り、そして目覚めた彼は、またも“86年の夏以後の事を全て覚えていない”。その翌日も、また翌日も――彼の知識と記憶は眠り目覚める度に、1986年、25歳の夏に戻ってしまう。そしてまた朝、目覚めた彼を迎えるのは一通の手紙だった――。
同じ一日を繰り返す男、が主題なのですが、この作品の魅力はとにかくその語り口の巧さ。これを説明してしまうと魅力激減なので説明できないのですが、とにかく、話運びと読後感が素晴らしいです。ストーリーテラーとしてのヴァーリィの技量を感じさせてくれる一作。惜しむらくは、現在おそらく、このSFマガジンでしか読めない、という事でありますが。…………まあ、そういう隠れた名短編、この業界には非常に多いですが(^^; ヴァーリィはどうなのかなぁ、短編集、出して勝負になるほどは今、人気無いんだろうなぁ……。
70〜80年代に活躍したSF作家の中で、話運びの巧さは屈指だと思います。日本での紹介もまあ、私の知る限りで長編が3本に短編集が3冊も訳されているので、恵まれた方ではあるでしょう……ただ、やや敷居(難易度)が高いのと、同時代の作家としては日本での紹介や知名度に関してはラリィ・ニーヴン辺りに食われてしまった感はあるのかも。ニーヴンの方が読みやすいですし。