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唐突にSF月間5:Coventry

過ぐる10月13日、作家・翻訳家の、矢野徹氏が、お亡くなりになられたとの事です。謹んで、ご冥福をお祈り致します。
……矢野氏といえば、ロバート・A・ハインライン
そんなわけで今回は、ハインラインの短編をチョイスしてみました。
「疎外地」ロバート・A・ハインライン) *ハヤカワSF『動乱2100』所収
精神医学が発達し、性格矯正の為の心理学的更正が可能になっている未来、犯罪者となった者には、矯正処置を受けるか、それとも“疎外地”と呼ばれる、管理された安全な区域の外へ送られるかを選ぶ権利があった。固定した社会を嫌い、自由を求めた個人主義者達が暮らすとされる、疎外地。半ば自ら望んで、その疎外地に送られたマッキノンは、そこで思っても見なかった現実に直面する。疎外地での“法律”に触れ刑務所送りにされた彼は、そこである男と出会うのだが……。
ハインラインの長大な<未来史>シリーズの一編。
基本的には、“離れてわかる家の中”というか。現代の冒険家を気取り、誰にも邪魔をされない自由を求める青年が、塀の外で出会った現実と、それによって見えてくる彼の属していた社会の姿、という話。この辺りに、ある社会が形成されるに至る理屈や観念を混ぜてくるのが、ハインライン的なところ。また、そういう社会システムの話を書きながら、基軸はしっかりと主人公の青年の成長話になっているのは流石。
特にガツンと来る話ではなかったのですが、及第点、といった所。基本的な物語の構成力が高いので、すうっと読める(入りやすい)のは、ハインラインの良い所。小説家としての能力的にはやはり、初心者にお薦めしやすいSF作家の一人だなぁ……と改めて思うのですが、いざでは作品をどれか、というと個人的には微妙に悩むのですがね(^^; 長めの短編が多いので、バリエーション豊富な短編集、というのが意外に少なかったりするので。消去法で妥当な所と行くと、やはり短編集『地球の緑の丘』か。
ちなみに、私にとってのハインラインは、“正座して読みたくなる作家”だったりします。……いや、実際に正座しながらは読みませんが(^^; ……何となくこう、しっかりと姿勢を正して向かい合わないといけない気がするというか。勿論、ハインラインにも軽いユーモア物や気楽な冒険物の作品はあるのですが、芯の所に凄い真面目さを感じる作家だったりします。
一番好きなのは、『月は無慈悲な夜の女王』。
……まあ実は、未読の長編をかなり溜め込んでいるのですが(^^;