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折角なので『三匹が斬る!』について長々と語ってみる

この作品の一番特徴的な所は、正統派に作った筈が出来上がってみたらどこか変だった(例:『斬り捨て御免!』とか)のではなく、最初から異色作を狙って作ったら思いの他受けてしまって並の正統派作品より続いてしまった、という所にあるのだと思うわけで。
時代劇というジャンルに限った話でなく、“スタンダード崩し”という意味では、非常に優れた成功例なのだと思っております。
基本の所では真面目に時代劇として作ってあるのだけれども、そこに絶妙にスタンダード破りが絡めてある。そのバランス感覚。ネタとしてやっているわけでなく、ちゃんと時代劇をわかっている人達が『時代劇』をきちっと作った上でその庭の中での横紙破りをやっている、だから面白い。
スタンダード破りを面白くやろうと思ったら、スタンダードを理解していないと駄目なんだ、という好例とでもいえましょうか。*1
『三匹』初期メンバー三人のキャスティングが優れているのは、真芯に高橋英樹という王道(スタンダード)を据え、演技力はあるけど畑違いの役所広司と全く畑違いの春風亭小朝を配するという、バランス感覚なのだと思います。
なにより、作品のコンセプトと、キャスティングのコンセプトが一致している。
しかもそれは話運び――殿様はあくまでも正統派に善人側についたり女人を助けたり、千石は場合によっては金と飯次第でそれと気付かず悪人側に居たり、タコはいい加減かつ好き放題に何でもあり――に繋がり、おまけに殺陣にまで徹底されている。高橋英樹の美しい殺陣・役所広司の乱暴な殺陣(蹴り技込み)・春風亭小朝の変則的な殺陣。
殺陣としてはタコの変則ぶりが目立つのですが、実はポイント高いのは千石なわけで。殿様の“舞い”的な殺陣の横で、刀を思いっきり振り回し、時に相手を蹴り飛ばす、取っ組み合い的な殺陣が展開する。この同居こそが、作品の肝なのであります。
故に、役所広司近藤真彦となってしまって以降は、この雑味が薄れてしまう。まあもっとも、この辺りになるとシリーズそのものが“型”になってしまっていて、『三匹』そのものが既存のノーマルな時代劇化してしまっているというのもあるのですが。極言すれば、コンセプト的にはもはや『三匹が斬る!』で無くても良い状態。
これは後に、完全新シリーズのキャスティングによって、裏打ちされる事になりますが。
初期メンバーのシリーズ中でも『続続』『また又』を押すのは、長山洋子可愛い(笑)、というのもあるんですが、キャラ立ちもしてシナリオ展開も落ち着き、撮ってる方も演じている方も一番楽しそうな時期だから、というのが一番あります。
特に一番には、小朝師匠の慣れ。あんまり最初の方は、師匠の殺陣があまりに危なっかしくて、見ている方がドキドキ(^^; 後になると、下に近藤真彦が出来てしまった事で、変にこなれた感じになってしまい、それはそれで個人的にはマイナスだったり。
まあ、最初期は、今やすっかり汚れ女優となってしまった杉田かおるが、“花”としてレギュラーだったりで、面白いといえば面白いのですが(笑)
ああ後、個人的にこのシリーズで好きなのが、殿様達が、物凄い容赦なく悪を斬殺する事。だいたい1話に2,3回は殺陣がありますし、クライマックスの人数多いですし、近年の時代劇ではトップクラスの斬殺数だと認識しております。しかもまた、3人ともが、気持ちよさそうに斬るし。

*1:話逸れますが、特撮で言うならばこれを上手くやっていたのが『超光戦士シャンゼリオン』なわけで。要するに、ジャンルへの愛が無いと結局駄目なのだと。