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突然、シミュレーションRPGの話を始める・4

第3章:竜と王子とお姫様
さて話は本筋に戻りますが、前々項、シミュレーション的な面から見たユニットの話ばかりに偏って、もう一つ、肝心な要素を忘れていました。

  • ベクトルを持った物語性が存在する

これもシミュレーションRPGにおける、要点といっていいかと思います。
“キャラクターが物語を織りなす”要素をシミュレーションに取り込みたいと発想した所にFEがあった以上、重要な点なわけですが、時代背景を考えるともしかして“成長要素のあるシミュレーション”よりも“明確な物語性のあるシミュレーション”の方が、珍しかったのかもしれない、という気はしないでもなく。
コンシュマーゲーム史においては、『ドラクエ』以降のRPGの台頭と浸透により、ゲームに物語性を賦与する事のウェイトが増していくわけですが、アクションゲームにおいてそれのはしりと言えるのが、1988年の忍者龍剣伝テクモ)。
このゲームに関しては本家サイトで詳しく書いてますので割愛しますが、端的にいえば、
〔障害を突破する = 物語が進む〕
という困難と報酬の構図をアクションゲームの構造の中に具体的に取り入れたという点で、画期的といえました。
ゲームの構造的な面だけでいえば、FEもこれに類する構造を取り入れているといって良いのかもしれません。
勿論、物語性を取り込めばそれすなわち「RPG」かというと、話はまた違ってくるわけですが(事ここに至って本来なら「RPG」の定義付けさえしなくてはいけないのかもしれないですが、要するにジャンルというのはある種の思い込みと口にするかしないか、という点が大きいのだよね、とも思ってみる。後は、商業的な利便性ですが)。
で、ここが一つ肝要な所なのですが、では結局『ファイアーエムブレム』におけるRPG的な部分はどこなのか?という問題が出てきます。
一つは前項で述べた経験値による成長要素とキャラクター性であり、一つは今回述べた物語性であり、しかしそもそもRPGというのが複合的な要素のゲームである以上、実はそれらはRPGの本質というよりシステムの欠片に過ぎなかったりします。集めればRPGにはなるけれど、一つ一つではRPGにはならない。まあ、それ故にFEの足場はシミュレーションにある、とは言えるのですけど。
ここで一つ大きなポイント。
FEにはそれらの欠片を、“ユーザーにRPG(的)だと認識させる要素”が仕掛けられています。
ちょうどid:toroneiさんがコメント欄で述べて下さった事がここに重なるのですが、
コンシューマーゲーム機にとってRPGとはファンタジー世界(剣と魔法の)」
というのは決して事実とは言い切れませんが、一つのパブリックイメージであります。
すなわち、中世的な文明レベルで、悪に支配されつつある世界があり、勇者(FEの場合は「英雄」の方が適切でしょうがマルス様専用武器があるという時点で勇者的要素は持っているといって良い)がいて、お姫様がいて(たくさん出てくる上に囚われているのは姉さんですが(笑))、邪悪な敵がいて、剣と魔法がある。
この、(当時における)コンシュマーRPGのフォーマットを取り入れた事こそが、実は何よりもFEにRPG性を付け加えている(感じさせている)点なわけです。
特に、サブタイトルにまで書かれており、悪の大ボスであるメディウスが黒竜であるのは、非常に示唆的。
ちゃんと、集めた欠片を複合させているのですね。
さてこうして、シミュレーションRPGの幕が開きました。
次回、多分もうちょっと『暗黒竜と光の剣』(結局この決して巧いとは思えない説明的なサブタイトルも、RPGぽさをイメージさせる仕掛けの一部なわけです)の話を続けます。というか今回もシステム概論だけになってしまったので、ゲームそのものについて触れたい。