横山秀夫が面白い。
新しい警察ミステリの書き手とも評される現代警察小説の旗手で、代表作は、映画化もされた『半落ち』『出口のない海』、『クライマーズ・ハイ』や短編集『動機』など。
もともと近年のベストセラー作家の一人として、常時平積み展開しているという形で見知ってはいたのですが、最近になって手を出してみたら、いや実に面白い。これは評価高いのも頷けるし、なんというか、売れて嬉しい作家です。
今の所読んだのは『影踏み』『陰の季節』『臨場』『動機』（途中まで）と、（連作）短編集のみなのですが、特に気に入ったのが『影踏み』。出所したばかりの前科持ちの泥棒である主人公が、自分が逮捕されるきっかけとなった事件を探っていくうちに――という連作短編集で、安易にピカレスクロマンとなる事なく、あくまで人生の泥沼の中をもがきながら、それでも少しずつ変化していく主人公と、やがて解きほぐされる物語の核となる一つの事件の真相との繋がり方など、実にお見事。
全体的に渋いトーンで、各短編の主人公達も、脛に傷持つ身だったり組織の中で鬱々としていたり出世に汲々としていたりと決してヒーローというわけでなく、時にリアルで重い残酷さが描かれる事も多いのですが、その一方で確かに存在する「情」の部分の描き方が非常に巧み。
時間あれば、各作品、もう少し詳しく紹介したい所なのですが、久々に、好き嫌い抜きでの、お勧め作家。
