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『図書館戦争』(有川浩)読了

図書館戦争

図書館戦争


公序良俗を乱し、人権を侵害する表現を取り締まる「メディア良化法」が、昭和最終年度に成立した世界。
極めて広汎かつ自由な裁量権のもとに検閲を可能とした同法のもと、法務省にその本拠を持つメディア良化委員会は書籍・映像作品・音楽作品などを任意に取り締まり、流通の差し止めなどを命令するなど大きな権限を持つに至った。一方で、メディア良化法反対派によって、無制限な検閲への部分的な対抗策として同時期に成立したのが、通称「図書館の自由法」である。いわく、
 一、図書館は資料収集の自由を有する。
 二、図書館は資料提供の自由を有する。
 三、図書館は、利用者の秘密を守る。
 四、図書館は全ての不当な検閲に反対する。
 図書館の自由が侵される時、我々は団結して、あくまで自由を守る。

それから30年後の正化三十一年、メディア良化委員会の強力な検閲権が一種の言論統制に近づく一方、その検閲を退けてあらゆるメディア作品を自由に収集し、また市民に供する権利を持つ公共図書館は、委員会にとって唯一の警戒すべき「敵」となった。そして、エスカレートしていく委員会の検閲における示威行動に対抗する形で図書館も防衛力を追求、全国の主要な公共図書館は警備隊を持つ事となる。あくまで専守防衛を旨とする図書館側であったが、武装化した両陣営の対立はもはや「抗争」と呼んで差し支えないものなり、また同時に超法規的な性質を持つに至るのだった――。
学生の頃、良化特務機関の検閲から、居合わせた図書隊員に大好きな本を守ってもらった事により図書隊員に憧れを抱いた笠原郁は、図書防衛員を志望。見事に採用された彼女は、全国でも珍しい女性の防衛員として、一歩を踏み出す――。
身も蓋もなくわかりやすく喩えてしまうと、図書隊=「図書館+自衛隊」、みたいな感じで概ね間違っていないと思われます。無軌道な検閲に対抗するべく図書館を守る自衛組織と、そこに配属された一直線娘が主人公。
作者あとがきによると「月9連ドラ風」が企画原案だったらしいのですが、どちらかというと「70〜80年代青春ドラマ風」だと思われます(笑) 憧れの人を追いかけて夢の職業についた熱血で単純で一本気な主人公が先走ったりシビアな現実に直面したり少し甘酸っぱい思いをしてみたりと、アレンジを工夫しつつも青春物の基本を抑えてあるので、そういうのに耐性無い方は、若干の注意が必要です。
ええ私、途中で一回、恥ずかしくなってページを閉じてしまいましたよ(笑)
好みでいえばもう少しSF的指向性(「メディア良化法」が存在する社会的背景とその時代に生まれた人々の描写がもう一段階ぐらい濃くなるとSFとして成立すると思う)が強い方が好きなんですが、それをやると濃くなるしえげつなくなる可能性が高まるので、読みやすさなど考えたら良いバランスにはまとまっていると思います。綺麗なブレンドというか、なかなか楽しめました。
2本のコミック化に続き、来年にはアニメ化も決定との事ですが、個人的希望としては、アニメ化を機にシリーズを文庫化して欲しい作品。ライトノベル云々という話は抜きにして、有る程度、若者向けの話だと思うので、ハードカバーで出す意義、というのが出版者側にあったらしい事をふまえた上で、次の段階として広く読まれやすい環境を提供するのも一つの責務でないかと考える次第であります。
ハードカバー(単行本)で全4巻って、中高生は勿論として、社会人にも薦めにくいですよ。