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佐々木譲を2冊

  • 『制服捜査』

制服捜査 (新潮文庫)

制服捜査 (新潮文庫)

道警の不祥事に絡んだ人事異動により、十勝地方の地方都市、志茂別町に駐在警官として赴任する事になった、川久保巡査。慣れぬ業務に戸惑いながらも、誠実に駐在として働く日々の中、川久保はいっけん平穏な人口6000人あまりの町に潜む、荒廃へと徐々に触れていく事になる――。
実際に北海道警察で起きた不祥事(「稲葉事件」)を背景に、一つの任地に長く携わる事を良しとしない道警の新たな方針の為、刑事畑から一転、田舎町に駐在として赴任する事になった川久保巡査の活躍を描く短編集。文庫のあらすじの所には「連作短編」と銘打ってありますが、主人公と舞台が同一とはいえ、個々の話に連続性は無いので、「短編集」とするべきでしょう。裏だけ読むと、ある一つの事件が全ての短編に繋がった筋になっているように思えるのですが、そういうわけでもないですし。……とまあ、新潮社への駄目だしは余談。
去年あたりから、書店業界では明確に「警察小説ブーム」というものが来てまして、現在、今野敏と並んで注目作家となっているのが、この佐々木譲今野敏の方はちょっとピンとこなかったのですが、こちらはなかなか楽しめました。
内容としては、少々、重たいものが多く、好みでいえば、もう少しすっきりする話の方が、好きですが。それでも充分に読めるのは、作者の力量なのでありましょう。
で、同じく志茂別町を舞台に、川久保巡査が主人公をつとめる新作、

  • 『暴雪圏』

暴雪圏

暴雪圏

これが面白かった!
数十年に一度と思われる規模の爆弾低気圧の発生により、猛吹雪に閉ざされた志茂別町。各地の道路が雪で封鎖されて人々が身動きできなくなる中、ある一つのペンションに、様々な問題を抱えた10人の男女が居合わせる。強盗殺人犯、不倫の精算に悩む人妻、会社の金を横領した男、帯広へ向かう少女……、彼等の行き着く先はどこなのか――。
主人公、とは書いてみたものの、川久保巡査は多くの視点の一つに過ぎず、複数の主な登場人物達の視点から、入れ替わり立ち替わり、ある猛吹雪の一日の出来事が語られる群像劇。
初めはほぼ接点の無かった個々の登場人物達とその抱える問題が、時に絡み合い、時に影響し合い、やがて一つのペンションに集約され、爆発する、その展開は圧巻。人間と人間の絡みのみならず、ある種の無常感さえ漂わせる、圧倒的な自然の猛威とそれに対する人間の無力さが加えられる事で、物語の凄みが増すと同時に、単純なサスペンス構造に陥っていない事も秀逸。
若干、足りないな、と思う部分もありましたが、満足度の高い、読みごたえのある作品でした。