- 作者: 井上理
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2009/05/12
- メディア: 単行本
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DS、Wiiの大成功から話が始まり、岩田体制をフィーチャーした話が前半続くので、ミーハー的な岩田・宮本よいしょ本かと危惧したのですが、横井軍平の章あり、山内前社長へのインタビューを元にした記事あり、最終的にはカルタの歴史まで任天堂の成り立ちを遡り、最後にiPhone/iPodTouchの台頭に触れるという、いいとこ取りだけでない部分も含め、なかなかの読みででありました。
詳しい人には既知の話も多いかもしれませんが、ビジネス書として“任天堂史”とその思想を概括する本、としては良い出来かと思います。
岩田社長は、こういう発言が格好いいと思う。
紹介されていたエピソードで一番驚いたのは、ファミマガに広告まで出していた『ティンクルポポ』(何故か妙に印象に残っている)がお蔵入りになってのちに『星のカービィ』として任天堂から発売される事になった件で、私は、ハル研究所がソフトの発売が出来ないぐらい経営が悪化した為、だとずっと思っていたのですが、実は
「我々は、同じことは目指していないですけど、お店に行けば、世界一お金持ちの会社が作っている商品と、世界一の家電メーカーが作っている商品と競争していることになっている。私は正直言うと、今でさえ、(貯蓄が)十分だとはとても思えない」
宮本茂がダメ出ししたから
だったという事。
もっとも、この作り直した『星のカービィ』のヒットがハル研の経営再建に大きく寄与する事になったわけですが、この辺りの一連の流れ
〔1991年〜:ハル研究所、経営悪化→(1991年1月:『ティンクルポポ』発売……する筈だった)→1992年:ハル研、和議申請(事実上の倒産)→任天堂、ハル研の支援を表明→(1992年4月:『星のカービィ』発売)→1993年:岩田聡、ハル研社長就任→1999年:ハル研、負債完済→2000年:岩田、任天堂入社〕
を考えると、凄いパラダイムですねこれ。
下手をすると、ゲームの歴史が変わっていたかもしれない。
それにしても、ミーハー的でない割には贔屓というかそこかしこに愛情のようなものを感じるなぁと読みながら思っていたのですが、著者が1974年生まれという事で、全てに納得(笑) ああ、要するに、“好き”なのだな、と。これは多分、現在、30前後〜半ばの“ファミっ子”の持つシンパシーなのではないかな、と思う。
というわけで世代によって多少感想が変わるかもしれませんが、なかなか面白く読めた本でした。