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ようやく、『WBCに愛があった。』(高代延博)を読んだ

なかなか入荷が無かったのですが、多分元々そんなに刷ってはいなかっただろうとはいえ、入ってきたのが3刷になっていたので、それなりに売れているっぽい。

WBCに愛があった。三塁コーチが見た侍JAPANの知られざる感動秘話

WBCに愛があった。三塁コーチが見た侍JAPANの知られざる感動秘話

現役引退後、広島→中日→日ハム→ロッテ→中日でコーチを務め、先のWBCで内野守備走塁コーチとして三塁コーチボックスに立った高代氏による、WBC回顧録
なかなか面白かったです。
まず何より、ビジネス書のまがいもので思い出したように時折マネジメントを語ってみたりなどという事なく、純然たる回顧録であるというのが良い。加えて、守備コーチの視点というのが、新鮮でした。そして全編を貫く、“野球って楽しい”という視点。
ネガティブな見方は放っておいても周囲から出る中、“確かに色々あるかもしれないけど、でも少なくとも私は素晴らしい体験だった”という事を、現場に居た立場から真っ直ぐに書いてくれた高代氏に、感謝。
――で、また電話からです。
中日を退団する事になり、ナゴヤドームのコーチ室を片付けている最中に、見知らぬ番号から電話がありました。

読売巨人軍監督の原でございます!」
やっぱり怖いよ、原(笑)
他にも原怖いエピソードとして、WBCコーチに選ばれて以来、優勝への願掛けとして酒断ちをしていたという高代氏。宮崎合宿の2日目でスタッフの食事会があり、王さんにお酒を勧められてちょっと困っていた所、

「高代さん! 禁酒しているらしいですね」
「監督? なんで知っているんですか」
「私は、そういう情報網は凄いんですよ。まあまあ、今日は堅いことを言わず、さあ」
なんなんだ、そういう情報網、ってなんなんだ。
で、結局飲まされた高代さんは、その後この回想記中で、明らかに一人で飲んでいるシーンが何度か出てきます(笑) 一度飲んでしまったからもうダメだと諦めたのでしょーか?(笑)
メンバー選出について、亀井を推薦したのは自分である、という嬉しい話が出てきますが、それ以上に、松中について

WBCの先発メンバーに松中が入るならば外野はありえない。DHもしくは一塁である。
と書いている所は実に興味深い。
この辺り、スポーツマスコミ含めWBCの選手選出に関して亀井についてネガティブに語る人が、本当にわかってないのか、わかっていてわざと書いていないのかわかりませんが、そもそも「なぜ松中でなく亀井なのか」というのは誤誘導であって、松中と天秤に乗っていたのは、村田だったり小笠原だったり稲葉なのですよね実は。
その辺、
オールスターを集めただけのチーム
ではなく、
スターを集めた機能的なチーム
の姿が見えているというのが、例えば川崎や片岡の選出にも繋がる、先のWBCチームの編成の優れた所であったと思われます。
まあホント、色々あったとはいえ、外野・三塁・一塁守れて一発も期待できる好打者、という痒い所に全て手が届く存在であった森野はつくづく勿体なかった。
合宿中の守備がらみのエピソードでは、原と二人で村田(横浜)に「もっと真面目に守備やろうぜ」と言いにいったという話が出色。WBC中、みんなビックリしたぐらい明らかに村田の守備は良かったわけですが、横浜のコーチはホント、何をやっていたのかと。
他に印象深かった話としては、ノックに定評のある高代さん、現地で日本のノッカーは優秀だ、という記事が載った事もあって注目され、ドジャースタジアムでの練習後、
「YOU ARE REAL MAJOR LEAGUER」
と言われて握手を求められたりしたとの事。
ちなみに高代さん、

今では、ドロー、フェイド、スピン、逆スピン、どんな種類のボールを、どこにでも打てる
そうです。単純に凄い。
それから、誰の話でも「いいやつ」と言われるマー君楽天)の魔性属性は恐ろしい。
ちなみに、ダルビッシュ一家のパシリとしてよく買い物に付き合わされていたらしいです(笑)
まあ亀井の話も含め、原(巨人?)寄り、といえば原寄りの内容なので、その辺りが穿った見方で気に入らない方もいるかもしれませんが、落合監督への感情的なしこりがある事を冒頭で隠さない点も含め、そういう立ち位置ではあるのだろうし、それはそれで有りではないかと思います。そこを含めても差し引いても、マスコミ物含め、WBS関連書では、白眉。
本文全体通して、野球への愛もさる事ながら、選手達に対して、プライドもあれば実績もあるがそれ以上に野球に対して真摯である、という視点と姿勢が嬉しいし素晴らしい。

神を引っ張り降ろしてきた男の両手には、マメの跡が残り、ゴツゴツとしていた。