個人的な印象ですが、安彦さんって多分、“絵で描けるものは描かないと気が済まない”のだと思うのです。既に指摘されているように、描ける能力があるから描いてしまう、という面もあるとは思うのですが、とにかく、絵で全てを表現してしまう。
『ORIGIN』読んでいたら、ミハルのエピソードに代表されるような、安彦さんの身も蓋もない描写が多くて、どれだけ絵が巧くても、やっぱり演出家・富野由悠季の見せ方の方が、ドラマティックだし、ロマンティックだなあと思います。安彦さんの方が多分正しいんだけどね(笑)。
富野由悠季と安彦良和のリアル/『昨日の風はどんなのだっけ?』
私は氏のマンガはあまり得意でなくて、その理由の一つが、絵の情報量が多すぎる、という事なのですが、とにかく一つ一つのコマに、絵で込められるありったけの情報量を入れてしまう。感情も性格も時に腹芸さえも、全て、絵の中にある。それで読んでいて疲れてしまう。
逆に、私が苦手というだけで、熱心なファンが居る、というのもまた凄いわかるのですが。
この辺りは、自分の表現したいだけ絵に込められる安彦、と、自分の思った通りのカットがあがってこないのを承知で演出を組み立てる富野、の技術的な方法論の違い、というのもあるのでしょうが。
方法論も10年20年やっていると、ある種の主義、になるというのはちょっと興味深い。
あと、富野はやっぱり、根がロマンティックなのだと思います(笑)