今年を振り返ってまとめる前に、読んだけどタイミングを逸したとか途中で面倒になったとか色々な事情で詳しく感想を書かなかった中から、記憶にあるものを簡単に列挙。あらすじは無し。
4月には映画も公開された、著者デビュー作。
たまたまコミック版を読んだら、主人公が酔いに任せてヒロインに延々と「さだまさしの素晴らしさについて語る」というシーンがあり、原作を読んでみた次第。
作者自身がさだまさしファンなのか、それともネタに過ぎないのかはちょっと判然としませんが、作中で主人公が友人に語る台詞、
は、物凄くまさしファンの深い所をついていて、見事という他ありません。
「その代わり、まさしの事は誰にも言うな。俺の大事な心の師なんだ」
あと他のまさしアピールとしては、帰国子女の親友に向けて、
とか秀逸。
「お、おい、何を涙ぐんでる? お前は日本人だ。今だって“親父の一番長い日”を聴いて、二人して洟をすすったじゃないか。まさしの心がわかるお前は、そこらへんの誰よりも、立派な日本人だ。俺が保証する。もっと自分に自信を持て」
しかし何故、まさし。
感想としては、あえて誤解を承知の表現を用いると
森見登美彦を思いっきりライトノベルに寄せたような感じ
というもので、そこから話が転がって、
ライトノベル的構造の物語をそのまま誉められない文芸の人達が「青春小説」という言葉を用いるのはいかがなものか、とかいう話からライトノベルとブンガクにおける互いの陥穽とかいう方向に話が進んでとりとめもまとまりもなくなってしまった辺りで、感想そのものがお蔵入りになっていました(笑)
ちなみに、作者の名前の読みは「まきめ」。当然のように、普通に「まんじょうめ」と読んでいました。『ウルトラQ』世代としてはね。
- 『ホルモー六景』(万城目学)
上記作品の続編、というよりは上記作品を背景にした連作短編。上記作品と比べて、ライトノベル構造から離れている辺りが、面白い。
- 『まほろ駅前多田便利軒』(三浦しおん)
文庫化後、やたらに店で売れるので読んでみました。
まあ、面白くないわけでもないけれど、特別に面白いとも思わず。とりあえず、ますます「直木賞」がよくわからなくなった(笑)
あと個人的に「格好いい」のピントが合うかどうか、というのが私の読書においてウェイトの大きい所なのだなぁという事に気付いた。
- 『陽気なギャングの日常と襲撃』(伊坂幸太郎)
初伊坂。なぜか続編から。これもまあ、ほどほどに面白かったのですが、それ以上のものにはならず。どうもこの作者とも、「格好いい」感がちょっと合っていない、というのはわかる。
西尾維新、再挑戦。
これはなかなか面白かったです。
二段組の本で延々10ページ近く、主人公と女の子のどうしようもない掛け合いが続いたりするのですが、作者自身が「そういう事をしたかった」と書いていて、その掛け合いが面白いので、なんか負け。
上が面白かった勢いで読んでみたのですが、こちらはいまいち。途中は面白かったのですけど、クライマックスの方でつまづいた印象。これは企画(12ヶ月連続刊行大河ノベル)が悪いのか、作者が悪いのか(笑)
アニメになるみたいですが、アレンジ、した方が面白いとは思うのですが、どうするのやら。
- 『ダブル・ジョーカー』『トーキョー・プリズン』(柳広司)
『ジョーカー・ゲーム』の続編と、初期の長編。
両作とも、『ジョーカー・ゲーム』の時に感じた、面白い事は面白いけど今一歩食い足りない、という感想まま。
だいたい、「全国の書店員お薦め!」とかいう帯で
「○○○○のキャラクターが凄い! インパクト大」 △△書店 ××さんとか書いてあって、そんなに凄いキャラクターだった事はない。
余談になりますがこの「書店員お薦め」に関しては、その書店員の立場から一度書きたい事があったりはするのですが、優先順位が高くないので、いつかその内。
初・山本一力。山本一力が面白かったら、しばらく読む本に困らないなぁ、という不純な動機で手にとってみる。
それなりに面白かったですが、それなり止まり。
下に詳しく書きますが、「格好いい」感が、期待したほどは合わず。作者にはその内、またチャレンジしたいつもり。
隆慶は鉄板ですよ! それでも初期のチャンバラ風味が強い頃はそんなに合わないつもりだったのですが、これは面白かった。男も女も、格好良すぎる。特にこの作品に関しては連作短編という事もあってか、比較的わかりやすく、ゲストの善玉悪玉をすっきり書いている為に格好良さが映える、というのはあり。
ところで、「この小説が『刀語』の元ネタなんだ!」とネット上でデマをばらまいたら、『刀語』アニメ化の頃に売れないかなぁ(笑)
向こうは集めて、こちらは折る、のですが。
隆慶を売る為なら、微妙に手段は選びませんよ?
『刀語』の横に平で積んでおこうかなぁ(おぃ)