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どのジャンルでも起こりがちな錯覚

新潮社に『波』という文芸系のミニ雑誌(自社新刊書評+コラム+連載小説といった内容)がありまして、一応月刊誌扱いでバーコードもついているので書店によっては店頭販売もしているのかもしれませんが、広報を兼ねている関係で、毎月、書店用に拡材と一緒に送られてきます(まあ厳密には、報奨金を充てているのでしょうが)。仕事の資料として目を通すのですが、これの1月号に載っていた、春風亭小朝師匠と、吉川潮氏(作家、立川流顧問)の対談記事になかなか興味深い事が書いてあったので、抜粋。


吉川 この数年、巷では<落語ブーム>と言われてきました。小朝さんはむろんキー・パーソンの一人でしたが、これをどう捉えていました?
小朝 落語ブームなんかじゃないです。
吉川 うん。
小朝 今起こっているのは<落語家ブーム>ですから。だって、テレビにも何にも出ていない、昔の尺度では一般的に知名度が高いとはいえない落語家が、300から500のキャパの小屋をきちんと埋められる。そんな落語家が十人はいるなんて事態は、長い落語の歴史の中でもなかったことでしょう。売れている人は別ですよ。町を歩いても誰も知らない人なのに、その人が500の小屋を埋められちゃう。その人に追っかけがいるわけでしょう。これはもう落語家ブームですよ、明らかに。 寄席にはお客さんが入っていないのですから、落語ブームとは呼べない。
まあ私は落語の世界の現状とか、とんと知りませんし(それこそ『三匹が斬る!』見ていたから小朝師匠もわかる程度)、これは渦中に居る人間としての自戒も込められた話かとは思うのですが、<落語>・<落語家>の所を別の言葉に替えると、色々なジャンルに置き換えられそうな話のような気がする。
そこを間違えると、丸ごと足をすくわれるというか。
あともう一つ面白いなーと思ったのが、

小朝 僕は寄席に来た方に<お土産を持って帰ってもらおう>という考え方が基本的にあります。落語をよく知らない方たち、おじいちゃんおばあちゃんとか、初めて寄席に来た家族連れの方とかが、本日の出演者の顔ぶれをばーっと見たとき、だれも知らないっていうのは、これはやっぱり寂しいんですよ。
(中略)
例えば今の木久蔵君、一応いろんなレギュラー持ってやっていますけれども、まだ「おお!」と言われるような人じゃないですよ。だけど、もう木久蔵といえば誰だってことはわかるわけですね。あの人の息子だとわかる。そうすると、おじいちゃんおばあちゃんたちが、きょう鈴本へ行ってきたよと言うときに、「前の木久蔵(木久扇)の息子見たよ」と言える。「面白かったよ」と言うか「下手だった」と言うかは知りませんけれども、とりあえずはそういうお土産をつくっていかなきゃしようがない。また、お土産の彼らがどこでどう化けるかもわからない。
毀誉褒貶、いろいろ出そうなやり方ではありますが、一つの信念としては面白い。エンターテイメント論として。
自分の経験になぞらえるなら、「今日マリスタ行って来たよ、初芝見たよ」みたいな感じか(おぃ) いやあの時代、初芝の存在はまさに“お土産”であったと思う。
どんなジャンルにしろ、ライブに行った時に、そういう“お得感”が欲しい、あると嬉しい、というのは凄くよくわかる。そこへ視線を向けているのはさすがというか。
2月号に対談の後編が掲載されるという事なので、ちょっと楽しみ。