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『ダンボール戦機』に見るシナリオ論ちょっと

基本、リアリティというのは“上手なはったり”という事。
ここしばらく、キ○ガイアニメとして堪能している『ダンボール戦機』ですが、実のところ、子供向け販促アニメの世界というのは定期的にぶっ飛んだ作品が出てくる事を考えれば、飛び抜けて頭がおかしい、というわけでもありません。
では何が『ダンボール戦機』を特徴づけているかといえば、リアリティ訴求に応える為の背景設定がある事でかえって頭がおかしく見える、という点にあります。
まず基本的に、LBX、という手の平ロボット玩具ありき、です。
大ヒットしたものの、付属武器の威力が強すぎて全国各地で事故が多発。
そこに現れた夢の素材、強化ダンボール。
2045年、“あらゆる衝撃を吸収して無にしてしまう”このダンボールの登場により、流通に大きな革命が。
そして5年後の2050年、その特性を活かし、強化ダンボールはLBXの強力な付属武器の衝撃をものもしないスタジアムとして大活躍。
…………基本設定には突っ込まないのがお約束として、卵が先が鶏が先か、そもそも『ダンボール戦機』というタイトル聞くと、「ああ、あのロボットはよくわからないけどダンボール製なんだ」と考えるかと思うわけなのですが、ロボットはあくまでプラモデル?、ダンボールはそのロボットを力一杯闘わせるための外壁です。
このタイトルに関しては、壮大な仕掛けでもあるのではないかと疑っていますが。
で、この強化ダンボールの設定聞くと「軍事転用……」しか思いつかないわけなのですが、そこでむしろLBXの方が軍事転用気味されているのは多分、確信犯。
そしてこの強化ダンボールを背景に、LBXの武装が多少物騒でもOK、という言い訳にはなっているのですが……それにしても、ちょっと改造するとリアル暗殺に使えるスナイパーライフルとか工業用コンテナが跡形残らず消し飛ぶ威力のミサイルとか、明らかに、頭おかしい。
エクスキューズが存在する事で、かえって、造った人間の頭のおかしさが際だつという世界観。
これが『ダンボール戦機』の特質であります。
リアリティ、というのは、作品固有の世界観に沿うものであります。
故に、普通にぶっ飛んだ世界観の作品にドリル付き戦闘用ブルドーザー出てきても「阿呆だなぁ」で済みますが、一応のエクスキューズを用意した上で悪玉が首相暗殺の為に狙撃作戦を計画する政治家だったりする世界観で、ドリル付き戦闘用ブルドーザーとか出てくると、頭おかしいぞ……となります。
おまけに、そのブルドーザーに乗って「この企業スパイめ!」とか言いながら中学生の少年達に殺る気満々で襲いかかっているのが、タイニーオービット社(問題のLBX開発元)に強化ダンボールの権利を奪われた事で潰れて(?)しまった自分の会社を取り戻そうと思っている元経営者の50がらみのうらぶれたおじさん(明らかに悪い人ではない)だったりする日には、何をどうしたらいいのか!
そのおじさんが、ブルドーザーのカメラアイを破壊されて、「カメラなどなくとも、この目がある!!」」といってコックピットハッチを開いて、目視攻撃に切り替えてきたりする、そんなアニメ。
ブルドーザーから(工業用?)レーザーが発振されて、子供達の乗っていた台がまっ二つ、というか、ちょっとズレていたら、子供達即死な、そんなアニメ。
謎のLBXから送られてきたサーモグラフィのデータを元に「この熱量の高い所がきっとエンジンだから、ここにコンテナを落とせばいいんだ」って、待て、その熱量は、人間の体温の可能性はないのか?? というそんなアニメ。
正直このアニメなら、そんなダーク展開も有り得るかと思いました。
結果おじさんはコンテナの下敷きにはなりませんが、運転席で窓ガラスに思い切り後頭部を打ち付けて昏倒しました。
安否が非常に心配です。
これはもう、娘が出てきて、「その白いLBXは、父さんの仇!」と言いながら新型LBXで襲いかかってくる展開しか。
タイニーオービット社の社長がOP映像に居たりするので、オトナ社会の黒い話は今後も物語に絡んできそうですが、絡めば絡むほどその他の頭のおかしい部分が際だつという構造なので、頑張っていただきたい。
これは本来なら、リアリティの振幅が設定した範囲に収まっていない作品、と見る方がふさわしい評価なのかなという気もするのですが、今の所、飛び出した部分のマッドぶりが自分の中で面白い方向に転化できているので楽しんで見ています。
あとはもう少しシナリオが丁寧なら、言う事ないのですが。
例えば、首相暗殺のエピソードで、狙撃犯が、首相の心臓を狙って照準合わせていたのですが、強化ダンボールの存在を考えると、防弾チョッキ代わりに着込むと良いのではなかろうか、とは思いつくわけで、そう考えるこの世界での暗殺は、ヘッドショットであるべき。
この首相暗殺のエピソードは、狙撃ポイントに警備がとか、射程がどうとかいう要素は一応取り込んで話を作っていたので、そこが惜しまれました。
作品内に根幹的な影響を与える架空物質を持ち込んだ場合は、全ての事象の前提に“それがある”とする事で作品内のリアリティが保たれまた醸成されるわけで、この辺りの詰めの甘さはちょっと勿体ない。
強化ダンボールの権利持っているタイニーオービット社が、LBXスタジアム以外の使用を認めていない、とかそういう設定の可能性もありますし、SF的なパラダイムシフトの考察が面倒くさいのでそういう設定にした、という手段も有りなんですけど。
出来ればそこに色々な部分で少しずつこだわってくれると、もう一歩、面白くなるのですが。
後は、LBXを遠隔操作する事で、顔が割れないままヒーロー的非合法活動が出来るのかそれはいい設定だ、と思ったら、そんな事もなく、主人公達の素性が悪玉側にばれまくり、とか。
一応、主役メカに隠された秘密は、LBXバトル中でないと取り出せない、というエクスキューズは用意されてはいるのですが、悪の組織が非常に世俗の権力と繋がっているので、人質でも取ってわざと負けさせればいいよね、というのはちょっと根本的な問題点。この部分に関しては、もう一つぐらい、言い訳作ってほしいとは思います。悪の組織側が主人公父(なんだか凄い科学者らしい)の頭脳を必要としている、というのはありますが、少々弱い。
00年代的な社会性をともなったリアリティを出そうと思うと世俗権力との問題が出てきて、世俗権力が登場するとリアリティの設定範囲が難しくなる、というのは常につきまとう問題でありますが、今こういう作品をそういうスタンスでやるからには、もう一ひねりしてくれると、マッドな部分以外も楽しめるのですが、まあそこまでは、ねだりすぎか。
そんなわけで正直、全体的なシナリオとしてはあまり誉めた出来ではないのですが、実はこのアニメそのもにも、大きなエクスキューズが仕掛けられております。
それは、“基本的にゲームのシナリオをなぞっています”というもの。
これは明確に、次回予告で主張されています。
良い悪いで言えば、良いのか悩む所でありますが、ゲーム画面とアニメ画面を連動させた次回予告の出来が結構良かったりするので、これはもう、そういう連動メディアミックス企画なのである、と見るからには受け入れるべきであろうな、と。
その上で考えると、ゲームのシナリオとしては有りなのかもなぁ……という展開が多い。
勿論、実際にゲームをやってみないと最終的な判断を下せない部分はあって、実際プレイしたら「おいおい」と思うのかもしれませんが、ゲームだと思ってなぞらえてみると、ありそうな気はしてくる部分はあります。
これは恐らく、ゲームにおける“ミッション”という構造の魔力で、「アニメの1エピソード」としては微妙に破綻気味でも、「ゲームの1ミッション」だと思うと、許容できそうな気がする、という事。
ゲームの方がアニメよりシナリオが雑でも良い、という事ではなく、ジャンルの持つ特質の違いによります。
ゲームというのはある程度まで、“プレイヤーの勝利によって快感を得る事”が優先されるので、物語をミッションで区切る事により、〔ミッションコンプリート〕という快感によって許容される範囲が少し広い。
あと人によるとは思いますが、同じキャラクターならば、“アニメの主人公”より“ゲームの主人公”の方が、万能感が強いという要素もあるかとは思います(アニメ先の万能キャラ、というなら話は別ですが)。万能感、というと言い過ぎかもしれませんが、実はゲームというのは、アニメよりもマンガよりも遙かに、主人公の敗北の許されないジャンルではないかと。敗北による引きが大きい、と言い換えても良いですが。
この辺りも突っ込んで考えると面白そうですが、とりあえず今日の所は省略。
もう一つ加えると、ゲームをやる時に、PC/NPC、というのを、思った以上に脳内で区分しているのかもしれません。PCなら納得いかないけど、NPCなら許される行動、というのはゲームの文法には存在していて、それをそのままアニメに持ち込むと、それはおかしい、という部分がある気はします。……本来ならだから、アニメの文法で行動を修正しないといけないわけですが。
そんなこんなで、00年代的リアリティ志向×80年代的熱量×ゲーム的ギミック、のクロスする果てに、『ダンボール戦機』がどこまで飛んでいけるか、というのは、少しばかり興味深い所であります。
7割ぐらい、単純に破綻するかな、と思っていますが(笑)
ゲーム本編の方も含めて、うまく飛んでくれると、面白そうではあります。
作中で凄いパラダイムシフトが起きて、衝撃の第2部! とかいうのも全く有り得ない事もないだろう程度には、期待しています(笑)