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『アフター0』(岡崎二郎)、再読中

アフター0 1 文庫版特別編集 (小学館文庫)

アフター0 1 文庫版特別編集 (小学館文庫)

アフター0』は、1988年〜96年にかけて、「ビッグコミックオリジナル」「同増刊」に掲載された短編オムニバス形式の作品で、作者の代表作。主にSF要素の強い物語が多いが、純然たるファンタジーやミステリ色の濃いものも含み、寓意的な物語性など、それらひっくるめて40〜50年代の英米SF短編の香りを色濃く感じるシリーズ作品。また、ちょっとしたラブロマンスが劇中に加えられる事も多いのも一つの特徴。
基本、1話完結の独立したエピソードで構成され、統一した語り手なども存在しないが、作者のお遊び的に、あるエピソードの主要キャラが別エピソードの背景に居たり、シリーズ中に何度か登場する会社がある他、例外的に共通のキャラクターがメインを務める<大いなる眠り子>というシリーズエピソードも存在する。
当初は20〜30ページのエピソードが主だったが、途中から8ページ程度のショートショート形式のエピソードが増え、その事とシリーズの雰囲気から、マンガ版星新一、と例えられる事もある。
オムニバス短編という形式上、作品の出来には上下があるが、平均して質の高いSF短篇集と言って良く、特に上述したような、いわゆる黄金期の英米SF短編好き(アシモフ、クラーク、ハインライン、ブラウン、シェクリイなど)にはお薦めのシリーズ。また、8ページ〜30ページ程度で1話を構成する、技巧的な部分も優れている。
以下、旧版3巻までの厳選お気に入りエピソード紹介。タイトル後の()内は、旧版の収録巻数。
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◆「ほうき星翔ける街角」(1)
7千年の公転周期を持つ彗星“ヴァルナ”が太陽系に近づき、地球から肉眼でも確認できるようになった頃、世界各地で姿を見せ始めた宙を飛ぶクラゲのような発光体、ゲルフラウ。どこにでも入り込んでくる空気のように希薄な生物は彗星の太陽への接近にともない狂ったように増殖し、空中に漂い続ける大量のゲルフラウの発生は交通機関に影響を及ぼしやがて流通をマヒさせ、世界経済を破壊していく。ゲルフラウは彗星から来た宇宙生物なのか? 各国の研究機関は国際会議で対策を練るのだが……。
作中でのゲルフラウ対策(と人間心理)の面白さ、そしてラストでのパラダイムシフト、いかにもSF的なスケールの大きさ、と噛み合った名作。ジャンル問わず、国産SF短編の傑作だと思います。
◆「三月(やよい)の殺人」(2)
さる旧家の屋敷の一室で、屋敷に仕える楽士の一人が、矢で撃ち殺された姿で発見される。現場に残されたのは、殺された楽士のノートから切り裂かれた1ページ。屋敷の主人夫妻、3人の秘書、5人の楽士、2人の警備担当者、3人のハウスキーパー。果たして犯人は、残された14人の内の誰なのか……?
シリーズで一番好きなエピソード。大傑作。
オチで驚愕し、最初から読んで丁寧な伏線にまた驚く、良質のミステリの見本のような逸品。
◆「悪魔の種子」(3)
20年前、古代王国の遺跡から発見された種子。その種子の収められていた土器には、「何人もこの種を国外に出してはならぬ……」という碑文が刻まれていた。時は流れ……その種子の遺伝子を元に再現された画期的な小麦の種子、MR−99。どんな土壌でも肥料なしで成育するこの種子は、世界中に爆発的に広まっていくのだが……。
遺伝子工学を物語のベースに置き、種子ビジネスを絡めた、農業SF。視点の置き所が面白い。あと、オチが好き。
◆「OH!!ラッキーマン!!」(3)
週刊誌の記者、坂上は、競馬場で見かけたとんでもない強運の男に取材を申し込む。馬券を買えば大穴が的中し、宝くじを買えば1等が当たる、ラッキーマン。彼はかつて、神様にお願いをした結果、この強運を手に入れたというのだが……。
寓話的なショートショート。掌編の味わい、が非常に良く出た一作。
◆「あの世の方程式」(3)
国立大の理学部を首席で卒業したものの、実家を継いで坊主になった栄西は、宗教が人を救う事に疑問を抱き、宗教を無くす方法として“あの世が存在しない事”を証明しようと考える。日々、根本物理大系の計算に勤しむ栄西の元に、ある日不思議な雰囲気の男が現れ、理論の完成の為にと、まだ発見されていない数式の収められたフロッピーを彼へと手渡す……。
生とは何か? 死とは何か? 人間とは何か? 宇宙とは何か? 神とは何か? とはSFの行き着く先のテーマの一つですが、そのテーマに、物理の分野から“あの世”の存在を問う、という形でアプローチしたエピソード。シリーズの中では寓意的要素が強く、また色々なねじれを含んだラストが印象深い。
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