以下枠内、最初から最後までネタバレありの感想です。
既に見た、或いは、ネタバレ上等、という方以外は、閲覧にご注意下さい。
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以下、ネタバレ。
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冒頭、ゴーカイガレオンを撃墜するドル(ギラン)の宇宙怪獣ぶりにまずは興奮。
そして地上に降りたゴーカイジャー達の前に姿を現す「宇宙刑事・ギャバン!」。
子供達がショックを受けるのではないか、という勢いで、変身した5人を次々としばき倒す謎の銀ピカ。
「スパイラル・キック!」(かなり意識的に、こう聞こえる)、「レーザー・Z・ビーム!!」と、マニア大喜びの必殺技をしっかりと放ち、挙げ句の果てに、ゴーカイジャーのファイナル・ウェーブを、「バリアー!」で完全防御。目が点。
まさかの、宇宙刑事無双・完全再現
いやー、今回、あくまで主役はゴーカイジャーですし、烈も年食っているという設定ですし、話の都合で弱体化はしているのだろうなぁ……と思って見に行ったのですが、全くそんな事はありませんでした。
30年前と変わらない、傍若無人の虐殺ぶり、対する悪にトラウマを刻み込む圧倒的な戦闘力で、ゴーカイジャー5人の身柄を確保。
なお、この後も含め、ギャバンの活躍シーンでは、定番挿入歌(『チェイス・ギャバン』『蒸着せよ!ギャバン』)がインストで流れるなど、実にツボをついた演出。
個人的には、ボーカル入りでも何の問題もありませんでしたが!
ダイダガ ダイダガ ダイダガ ダイダガ ギャバン!
……本気で、子供が引きそうですが。
ギャバンに逮捕された5人は宇宙警察総裁ウィーバルの元へ連れて行かれるが、これは総裁にすりかわり宇宙警察を乗っ取ったザンギャックの一員アシュラーダを引っかける為の、ギャバンの罠だった。銃殺刑の寸前にギャバンの仕掛けで5人の手錠は外れ、処刑を免れる。
この辺り、ゴーカイジャーの無理筋の逮捕命令を出したというウィーバル(佐野史郎)が悪役なのは見え見えとしてどういう展開にするのかなーと思っていたのですが、ギャバンが騙されていたのではなく、むしろ罠を張っていた、という展開は良かったです。30年分の成長が見られた、という点においても(笑)
ちなみにパンフレットのインタビューによると、脚本(荒川稔久)のプロット段階では、アシュラーダはオリジナルキャラではなくコム長官に化けている、という案もあったそうです(笑) 子供にわからないネタが増えすぎる……という事でボツにしたそうですが、ボツにして正解だったとは思うものの、コム長官灰色説を唱える私としては、出てきたら盛り上がったな……(笑)
正体を現したアシュラーダは、ギャバンの戦闘データを元に宇宙警察とザンギャックの技術を結集して造られた戦闘用サイボーグ・ギャバン・ブートレグを呼び出す! 宇宙警察の部隊に変装していたザンギャック一般兵も正体を現し、戦闘開始。ここで一条寺烈の生身アクションも炸裂。
御年57歳にして、トランポリンも跳んだという大葉健二が超格好いい。
ゴーカイジャーは何故か見ているだけだなぁ……と思ったら、ゴーカイセルラーをギャバンに回収されたままでした。
あくまでこれは宇宙警察の戦い、と、ゴーカイセルラーを彼等に返却し、救出に来たゴーカイシルバーと共に5人に脱出を薦める烈。
多数の敵に立ち向かっていくその後ろ姿と、「よろしく勇気」という言葉に、マーヴェラスは幼き日の記憶を刺激されるも、一旦脱出する。ゴーカイジャーをとり逃したアシュラーダだったが、ギャバンブートレグとの連動により、なんと《魔空空間》を発生させると、ギャバンをその中に取り込んで姿を消す……。
かつてギャバンによって壊滅した宇宙的犯罪結社マクー……アシュラーダはなんとその首領ドン・ホラーの血を引いており、魔空空間を発生させる事が出来るのだった!
さすがにこれは衝撃の展開(笑) 出来れば、サン・ドルバ(駄目息子)みたいに名前で匂わせてくれると嬉しかったですが、やり過ぎと判断したか。
ザンギャック上層部に、ゴーカイジャー抹殺と宇宙警察乗っ取りの失敗を叱責されたアシュラーダだが、捕らえたギャバンを拷問していたぶり、ドン・ホラーの血をたぎらせる事で、魔空空間を拡大・活性化してみせましょうと作戦の腹案を進言。
…………あー……間違いなく、ドン・ホラーの血です。
ホント駄目だ、この血統。
本人は割と大物の風格があったのに、なぜ子々孫々はこんな駄目人間ばかりに育つのか。
一方ガレオンに帰還後、なんだか思い悩んでいるマーヴェラスは、もしかしたらギャバンが自分の幼い頃の命の恩人かもしれないと語る。そこへかかってくる非通知の着信(相手の声を聞いてから驚いているから、多分、そう)。
電話の相手であったバスコの呼び出しに応えた6人は、そこでバスコから、ギャバンが、魔空空間に存在する宇宙最悪の刑務所、数万年の間、誰も脱獄した事が無いという魔空監獄に捕らえられたという情報を得る。
バスコはこの後、ゴーカイジャーの面々が魔空監獄へ突入している隙にゴーカイガレオンに火事場泥棒に入ろうとする、と情報を流した理由もしっかりと描かれます。
しかしその前に姿を現すのが、新戦隊・ゴーバスターズ!
と顔見せサービスも鮮やかに消化。
劇中最強クラスのキャラであるバスコと戦わせる事で、新戦隊が映える、という構成もお見事。
ゴーバスターズは特殊部隊的な設定という事を踏まえてか、レッドバスターはやや短めの剣をナイフっぽく構えて体重を少し前にかけた姿勢、という軍の特殊部隊的なイメージと思われるアクションが、なかなか新鮮で格好良かったです。
本編ではお亡くなりになったバスコ&サリーですが、トリックスターの魅力を充分に発揮してくれました。割とバスコ好きだったので、最後に劇場で、やりたい放題な所を見られて良かった。
バスコが立ち去った後、そこへ通りすがる、曙四郎/バトルケニアと、青梅大五郎/デンジブルー。
大葉健二キャラ揃い踏み、という完全にサービスお遊びなのですが、一応、「バトルケニアとデンジブルーのレンジャーキーを使えば魔空空間への扉を開けるかもしれない」と、物語にも絡めます。意味はわかりませんが(笑) でも、そういう風に絡める、というのは大事。
行ったら二度と戻ってこられないかもしれない魔空空間……命の恩人かもしれない男を救う為、そこへ赴く事を決意するマーヴェラス。「俺のこだわり」と一人で向かおうとするが、5人の仲間がその元へ集う。
ジョーとハカセがマーヴェラスの握る二つのレンジャーキーを手に取って魔空空間への扉を開く所は、いいシーン。
(ここでそれぞれキー担当者が青と緑というのは配役の偶然なのですが、それを演出に取り込んでいるのがいい)
今回、全体的にみな、いい芝居しているし、いい芝居させてます。あとハカセが随所に凄い細かい芝居を入れている(スーツアクターさんの影響か?)のが印象深い。
魔空空間、そして魔空監獄への侵入に成功したゴーカイジャーは、牢屋に捕まっていた、過去シリーズの悪役達と遭遇。
ここは完全にサービスお遊びシーンですが、うるさすぎない程度に巧くまとまりました。
アフレコほとんど声優さん任せのアドリブ前提で撮ったらしいですが、銀河万丈・真殿光昭・梁田清之・津久井教生・石田彰・渡辺美佐・櫻井孝宏が同じ画面で喋るという、異常な豪華さ(笑) 本編他にも、小川真司・江原正士・井上喜久子・千葉繁・加藤英美里・平田広明・沢木郁也・田村ゆかり・関智一と、なんのアニメだみたいになっていますが。
まあ、東映特撮は蓄積あったとはいえある時期から、JACの技術と声優の技術、合わせて着ぐるみ芸に関して、むしろどうだ凄いだろう、と開き直る傾向になったのは、個人的には良い方向だと思っております。
牢屋前での騒動で敵に見つかったりしつつ、ギャバンの囚われた最上階へ向けて強行突破を図るゴーカイジャー。対するアシュラーダは監獄内に<魔空都市>を発生させて、これを迎え撃つ! 「監獄の扉を開けると、そこはオープンカフェのある街でした」などというネタをやりつつ、ゴーカイチェンジしながら駆け抜けるゴーカイジャーという展開で、次々と襲い来る敵に、青×銀、緑×黄、赤×桃、がそれぞれ立ち向かって最上階を目指す。
ところで脚本の指定なのか演出の指定なのか、台詞とか立つ時の位置とか全体的に、今回の劇場版では、マヴェちゃんとアイムの絡みが多いのですが、中澤祥次郎監督の趣味なのか、荒川稔久の趣味なのか、二人の共通の願望なのか(笑) まあ、荒川さんは微妙にアイムをヒロイン立ち位置気味に脚本書いている節はありますが。
辿り着いた最上階、囚われの烈を前にしての、ゴーカイレッドvsギャバンブートレグの戦いは、中盤の見せ場。狭い空間と鉄骨を利用してのバトルはかなり熱いです。マヴェちゃん、《一騎打ち:○》持っているので、ブートレグ相手に善戦。最終的には変身が解けるぐらいのダメージを受けるものの、跳弾を利用して烈を助ける事には成功、と巧い戦闘のバランスの取り方。
解放された烈は飛び降り、それを抱きとめるマヴェ。
その瞬間、10年前、潜り込んだ貨物船がザンギャックの襲撃に巻き込まれた時、自分の命を救って抱きとめてくれたのは烈であったと、確信するマーヴェラス。そして烈も、どこか懐かしい思いを感じていた。
まあ、マヴェちゃんが烈を抱きとめるという絵面は変なのですけど(笑)、こういうドラマ部分をきちっと随所で仕込んでいるのは、今作の良いところ。
全編通してしっかりと、キャプテン・マーヴェラスの物語、になっています。
烈の救出に成功し、魔空監獄の突破に成功した海賊戦隊。元の空間へ帰還した7人だったが、ゆっくりと話す間もなく、アシュラーダとギャバンブートレグ、ザンギャックの兵士達がその前に姿を現す!
お約束の「蒸着プロセスをもう一度見てみよう」はさておき(去年散々見たので(笑))、ここで、ギャバンとゴーカイジャーが揃い踏みして名乗りを挙げるシーンは、痺れました。
その前に、10年前の邂逅を思い出したマーヴェラスと烈が拳を合わせる、というちょっといい感じのシーンがあるのですが、それよりも、揃い踏みの方がぐっと来た。
30年と35年分の愛。
ここまで来たんだなぁ……という感慨というか、多分、ちょっと古めのファンほど、ぐっと来る。
ヒーローへの愛を持っている子供達と、ヒーローへの愛を捨てられないままの大人達への、「ヒーロー、捨てたもんじゃないだろ?」というメッセージが聞こえた気がします。勝手に聞いてしまいました(笑)
そしてクライマックスバトルでは、真打ち登場、BGMは「宇宙刑事ギャバン」(串田アキラ)、もちろんボーカル付き!
ギャバンvsギャバンブートレグ! ゴーカイジャーvsアシュラーダ&ザンギャック兵!
vsブートレグ戦は、ぶつかり合うレーザーブレードが最大の売りなのでしょうが、実はレーザーブレードは好きではあるものの思い入れは無いので、むしろディメンション・ボンバーが使われた事に満足(笑) これでギャバンアクション、やる事はやり尽くしました。
ブートレグは、対ギャバンの可能性も想定していたなら、楯を持たせるべきでした。それが、敗因。
ゴーカイジャーサイドは、劇場版スペシャルという事で、それぞれが「派手に○○!」しつつ、「ドン・ホラー? 誰それ?」で落ち込んだアシュラーダ&ザンギャック兵を撃破。
そういえば、スーパー戦隊マニアの鎧は、メタルヒーローはスルーなのですね……いや、知っていたら知っていたでパラレル具合が意味不明になるので知らなくていいんですが(笑)
ゴーカイジャーに撃破されたアシュラーダは、憎しみのオーラ力で巨大化。同時に、激しく活性化したドン・ホラーの血により、《魔空空間》が単独で発動。地軸が逆回転する絵も入ってサービスたっぷり。
巨大戦の画面自体は迫力たっぷりに造られていたものの、ロボ戦そのものはざっくり目。
まあ、皆見たいの別にロボ戦じゃないよね? というスタッフのナイス判断。
マッハルコンは呼んでもいないのにやってきて、風雷丸は出損ね。カンゼンドルギランゴーカイオーは格好良かったですが。ギャバンが勿論、ドルの頭の上に仁王立ちですし。
そしてやっぱり、宇宙刑事無双
ドルも大活躍で、とどめはギャバンとゴーカイレッドのダブル斬撃。
この映画で一番凄かったのは、とにかく宇宙刑事無双・完全再現という、これに尽きます。
30年前も、ヤツはこうだった。
アシュラーダを完全に撃破し、魔空空間も崩壊(この映画の設定だと、別次元として存在自体はしているけど、接続を断たれた状態というべきか)。戦いが終わり、命の恩人と向き合うマーヴェラス、成長したその姿に目を細める烈。
「海賊だぜ?」
「見た目じゃないさ」
ここは完全に、父(ギャバン)と子(マヴェ)のシーン。
そしてそんな二人を、少し離れた位置から生暖かく見守る5人。
漂う、うちのキャプテンはしょうがねーなー感。
『ギャバン』43話「再会」(烈がマクーに囚われていた父ボイサーと再会するエピソード)の引き写しというイメージだったのかもしれませんが、マーヴェラスとギャバンを、擬似的な父子、と置く事で、ドラマもしっかりと締まりました。
TV本編では、演技パターンの少なさが気になるマヴェちゃんですが、今作ではいい芝居しています。監督が、させているというか。マヴェちゃんは使い方次第だなぁ。
それにしても、「ギャバンが原点」なのに、マヴェちゃんはなぜツンデレの海賊になってしまったのか。
最後に、本編最大の謎が生まれました(笑)
ラストシーンでは、曙四郎と青梅大五郎が顔を見せ、一条寺烈と合わせて、3人変身揃い踏み、というおまけのサービス。このシーンと一緒に、エンディングテーマとスタッフロールが流れるのですが、お陰で、ED曲が全く記憶に残りません(笑) パンフレットによると、劇場版用の、松原剛志(ゴーカイジャー主題歌)&串田アキラ(ギャバン主題歌)のコラボ新曲なのに。
そして最後は、地球を去っていくドルギランをゴーカイガレオンからそれぞれ見送る海賊戦隊。
ひとりマストの見張り台から、劇中のキーワードとなった「よろしく勇気」の指のポーズと共にギャバンを見送るマヴェちゃんで、幕。
お祭りサービスでそのままオチをつけずに、ラストのラストシーンも描いたのも、良かった。
大満足でした。
…………あえて、あえて瑕疵を言うならば、赤いジープが出なかった事ぐらいかなー(笑)
烈に上から運転席に乗って欲しかったです。
まあ、烈が地上を車で移動しているシーンなど入れてプロットがややこしくなって作品全体のバランス崩れても困るので、こればっかりは仕方ないですが。車探すだけでも大変そうですし。
まあ私は年寄りなので年寄り目線で見てしまいますが、見事に年寄りホイホイの逸品。
休日に子供と一緒に見たお父さんが、こっそり会社帰りに一人でまた見に来そうな映画。
実際ほんと、そういう時間に劇場かけたら、意外と客が入るような。
一方でゴーカイジャーの活躍も申し分なく、見終わった時に子供の胸に、ゴーカイジャーともども銀ぴかのおじさんの姿も格好良く焼き付いていればいいなぁ、というそんな映画。そしてそれが、テーマにもなっている。
“ヒーローのその後”を描かざるを得なくなった時、人はつい“ヒーローでなくなったヒーロー”を描いてしまいがちになるものですが、『ゴーカイジャー』という作品は“ヒーローはエターナルにヒーロー”というのを貫いていて、それは一種の夢想であり重荷であるのですが、一つのテーマとして昇華したのは、素晴らしい。
その集大成といってもいい、劇場版となりました。
TVシリーズクライマックスも、恐らくそれを踏まえた上での展開かと思うのですが、決着が楽しみです。
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以上、ネタバレ終了。
簡易感想でも書きましたが、一言に集約すれば、いい映画。
作り手の愛と魂の伝わる、見終わって、気持ちのいい映画。
映画一本見て、ここまで「いいもの見た。満足だった」となる映画も、そうそう在りません。
その上で、お祭り映画としてのサービス要素を一通り押さえつつ、キャプテン・マーヴェラスの物語として成立している、というのが素晴らしい。この辺り、しっかりとお祭りの中にドラマを盛り込んでみせたのがさすが荒川稔久、といったところか。
しかしここまでやってしまうと、来季のお祭り映画はもう、
『特命戦隊ゴーバスターズvs宮内洋 THE MOVIE』
しかないか(おぃ)
多元世界から召喚された8人の宮内洋(風見志郎、新命明、早川健、番場壮吉、島帰りの龍、宇宙刑事アラン、正木本部長、三浦参謀長)! 他の全ての宮内洋を倒したものが全能の宮内洋(ザ・ワン)となるのを阻止するべくゴーバスターズが立ち向かう!!
乞うご期待(嘘予告)
追記:最強最悪の宇宙刑事の30年前の無双ぶりについて→〔『宇宙刑事ギャバン』感想まとめ1〕