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大トミノ祭:『オーバーマン・キングゲイナー』感想6

◆第15話「ダイヤとマグマの間」
オーバーマンバトルの対戦相手として仲が良いシンシアとオフ会(どう考えても適切な表現はオフ会)をする事になったゲイナー。デート気分で張り切って、ゲインに背広を借り、整髪料で髪を固めて挑む事に。更にゲインから餞別に金貨を貰い、お薦めで花束を抱えていく。そんなゲイナーのデートの予定を耳にしたアデットは面白がってついていき、それにサラも同行する事に。
一方、セント・レーガンの部隊を壊滅させたシベリア鉄道では“ヤーパンの天井”のエクソダスを阻止するべく、氷の運行部長カシマル(おかま)が前線に姿を見せる。
これまで力押しの多かった敵指揮官に比べ、おかまは穴掘りオーバーマンを使って都市ユニットを落とし穴にはめたり、更にそれを利用して付近のドームポリスに難民を発生させてヤーパンの天井に流入させるなど、策士ぶりを発揮。キャパシティ以上の住人を新たに抱える事になったヤーパンの天井は、エクソダスの先行きに暗雲が立ちこめる……。
14話に続いて、好みのテンポで面白かったです。
後半に入って、このぐらいの物語のテンポで進んでくれると嬉しいのですが、次の話はどうなるか。
ところでゲイナーは、簡単なキャラ紹介だと「ゲーマーの引きこもり」で済まされがちですが、引きこもりの割には通りすがりの他人に対してしっかり謝ったりお礼を言う事が出来、コミュニケーション能力はそれほど、低くない。
途中で、クラスメイトとのコミュニケーションに問題あり、という事をサラに指摘されているエピソードがあったので、もしかしたら、旅を通して変化していっている、という演出意図なのかもしれませんが、序盤にそれほどコミュニケーション能力の欠如が描かれているわけでもないので、あまりそうは見えないのが残念。そもそもクラスメイトとの接触シーンがほとんど無かったので、流れの中の意図だとしたら、あまり、効果的にはなってない。
ストーリー上、両親が殺された時に27日引きこもって、「犯人を捜しもしなかった!」事がトラウマとしてあるという事になっており、エクソダスに巻き込まれた時も、同様に27日引きこもっていてしばらく登校拒否していたので、イメージと紹介文は、そこから来ているのでしょうけど。その後は普通に登校していたりするし。
後おそらく(引きこもりはさておき)富野監督が本気でコミニュケーション不全の人間を書くと、病人になってしまうんだろうなぁ。そこが富野監督のいい所であり、同時に限界とも言えるのかもしれません。
病気でもなければ、人は最低限のコミュニケーションの入り口に立つ能力は誰でも持っている、というのが根っこにあって、それなのに誤解やすれ違いが発生する事こそ人間性の悲劇である、けれどそれを含めて人間なんだ、というのが恐らく監督の世界観。
いっそゲイナーは、今時の演出家に序盤でコミュニケーション不全というか何というかのキャラを造形させて、それを演出と作劇で富野が矯正していく構造にしたら、凄くわかりやすかったかもしれない。見ていてイライラするだろうけど(笑) そのイライラを、監督と一緒に打破しようという、変則的でメタなカタルシスが発生したかも(笑)
ゲイナーは、親の躾が良い家だったのかもしれない。
なんて事は、物語開始時点で両親が既に死んでおり出てこない事もあって、想像させなくもない。
◆第16話「奮戦、アデット隊」
流入した難民の男達を叩きのめして意気投合したしたアデット先生は、自警団としてアデット隊を結成。武器を手に入れる為に、シベリア鉄道の地下秘密基地を襲撃する。

「足らないものは、他人から取っちゃう、って発想、何とかならないんですか」
「ふん、退職金を貰って、何が悪いのさ」

その頃、シンシアに囚われてキッズ・ムントの元に護送されていたアスハムは、ジャポリをナンパして逃亡の手引きを図ってもらうが(後で、これではゲインと同じだ、と反省)、追跡してきたシンシアのゴレームに敗れて、再び囚われの身に。
今回はドミネーター整備中という設定で、ゴレーム同士の対決も、アスハム瞬殺。オーバーマン乗りとしてはそれなりの筈のアスハムが同型マシンでも完膚無きまでに負ける事で、シンシアの圧倒的なパイロット技術とオーバーセンスが強調される形になりました。
一方、幻覚を操るオーバーマン・メックスブルートにより、“崖の上に普通の道がある幻覚”を見せられたヤーパンの天井一行はあわや谷底に落下しそうになるが、アデット隊の基地襲撃によりメックスブルートに帰還命令が出た事により寸前で幻覚が解除され、ぎりぎりでブレーキが間に合う。
まあ、いつでも止められると思っているエクソダスより、基地の防衛優先という事で、いいのか……? 事の天秤としてはシベリア鉄道側(カシマル運行部長)が計り間違えた感がありますが、結果的にはアデット先生の無理・無茶・無謀がヤーパンの天井を救った事に。
という因果関係を成立させる為に、このシーンは強調されたのでしょう。
今回は、ケジナン大活躍。
メックスブルートで基地の防衛に戻ると、自分用のオーバーマンを手に入れようとをドーベックを奪って戦うアデットを、幻覚攻撃(つまるところ多重分身)で翻弄し、追い詰める。勢い余って、金髪王子様ルックの幻覚で登場し、アデットに求婚
このシーンは演出も作画もノリノリで楽しい。
が、
「あたしは、ヒキガエルは、趣味じゃないんだよ!」
け、結局顔なんですかっ!?
ただアデット先生の前の男はヤッサバ(バーバリアン系)なので、顔というか、性格まで含めた評価なのでしょうが。
アデット隊の警護の為に外で待機を命じられていたゲイナーは、なかなか戻ってこないアデットの救援へと戻る。
「僕が! 隊長や先生だからって理由で、戻ってきたと思ってるんですか? 貴女は、ぶきっちょで、がさつで、我が儘で、本当にどうしようもない人だけど、でも、僕の家族なんでしょ?! そう思ってくれるなら、僕にとっても貴女は、家族なんです。……で……しょ?」
格好いい台詞なんだけど、ゲイナーだけに、最後ちょっと弱気。
押し掛け居候のアデットをなんだかんだで受け入れているゲイナーのスタンスはそういう事だったのね、と納得させる共に、家族の喪失を経験しているという設定と絡んで、思わぬいい話になりました。
脚本の大河内一楼は『∀ガンダム』の時は下手のイメージしか無かったけど、今作では頑張っている。
アデットを救出したキングゲイナーに猛攻をかけるメックスブルート。
「よせよせぇ。幻はいくらでも造れるるぅ。卑怯だろうとハッタリだろうと中身がなかろうとなぁ、勝ちゃあいいのよ、世の中はなぁ!」
……シベリア鉄道も、こんなケジナンが延々と最前線に出張ってくるぐらいで、人材不足は甚だしい感じ。
実際問題としては、2クール作品で、お約束の敵役がころころ代わりすぎると作劇がしにくい(新キャラを出すとどうしても視聴者の目を引くものだしそういう演出をする必要が出る)という事情はあるのでしょうが。で、有能でも困るから、基本コメディ要員。……まあ、なんだかんだで新しいオーバーマンを次々と操っているので、意外と有能なのかもしれませんが(笑)
表面的には、失敗続きなのに何故か新オーバーマンを与えられて前線で戦い続けているように見えるので、もう少しその理由付けになる物語的な補完は欲しかったかなぁ。
最後は、幻を造るスピードより速く攻撃して幻を次々と消し去る、という滅茶苦茶な、そしてキングゲイナーらしい作戦で、メックスブルートの幻覚作成スピードを上回り、撃破。
幻覚がなくなるとメックスブルート、部屋の片隅で体育座りしていたり。
アデット隊も外で待機中に体育座りしていましたが……寒いから?
今回はゲイン、出番ほとんど無し。
ポイントで二言ぐらい。
◆第17話「ウソのない世界」
人が心の中に秘めている本心を、他人の心の中に拡散してしまう、プラネッタのオーバースキルにより、ヤーパンの天井は大混乱。
ウルグスクからのピープルと、難民組の間に激しい対立が発生し、始まる石合戦
うむ、正しい喧嘩。
混乱の中で、目がハートになったり、盛り上がるママドゥ先生とリュポフ。……まあこれは、どうでもいい。
プラネッタを倒す為にゲインとゲイナーが出撃するが、心を読むオーバースキルの前に大苦戦。オーバースキルを打ち破る為、ゲイナーは懐からサラの写真(チアガール姿)を取り出し、サラへの熱い想いをぶちまける!
敵が心を読むのを嫌がってオーバースキルを停止したところで……という作戦で、心を読む系への対処としては珍しくはありませんが、それが告白、しかもオーバースキルの影響で、ヤーパンの天井中に中継されて喧嘩も止まる、という突き抜けた展開。
たぶん劇中一番有名なエピソードで、ゲームなどでも知っていましたが、馬鹿馬鹿しくて素晴らしい(笑)
◆第18話「刃の脆さ」
人の心の中の不安を増大させるオーバースキルを持ったオーバーマン・デスネッタが登場。
前回と今回は、特殊なオーバースキルを前面に立てた、特撮的一発ネタという感じ。
ここまでのキャラクターの蓄積を受けて、人格変換ネタの亜流という感じで、弱気なゲイン、などは素直に面白い。
前回、心を読むオーバースキルの影響で、エクソダス推進の為にゲイナーの両親を殺害した過去をサラに知られたガウリは、そこに更に不安ウェイブの影響を受け、敵オーバーマンに操られてしまう。
一連の戦いで、ガチコが大破。
あとアデット先生が突如、ガウリ隊長の生き方に惚れる。
やられ役→ニンポー→シビアなエクソダス主義者、と来ていたガウリ隊長の過去が補完され、終盤に向けてキャラクターが固まりました。彼女も出来ました。
ゲイナーが両親の死の真実を知り、その復讐に囚われない道を選ぼうとしようとする割と重要なエピソードな筈なのですが、幾ら何でも作画が酷すぎて、台無し。キャラの顔からおかしい(^^; 脚本とか演出とかで誤魔化しきれないレベル。脚本も良かったとは言い難かったですが。