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『機動戦士ガンダム』、ブライトはなぜアムロにガンダムを任せたのか?

イデオン』との比較の為に『ガンダム』1話も見ようかなぁと考えていた所に、たまたまTwitterで「物語序盤で、どうしてリュウではなくアムロガンダムに乗ったのか?」というやり取りを見て触発されて、つい勢いで3話まで見てしまいました。
リュウガンダムに乗り込む可能性」などチラリとも思ってみたことが無かったので、なかなか楽しい。
1話は改めて見ても、物凄く丁寧。
ファーストカットは、物語の背景を説明するナレーションに被せる形で、円筒の内側の世界
細かい事はわからなくても、少なくとも地球や、感覚的に当然だと思っている“平らな大地”の上の世界ではない事を、映像的に見せていき、その補完として、外側――“大地の下”からビームが突き刺さるカット。またこれが、人々の生活圏を脅かす状況が発生しているという説明にもなりつつ、映像は宇宙空間へ。
ナレーションと映像で最低限、戦争が起きて、何だか大変な事(コロニー落とし)になっている、という事まではわかるような工夫。この時点ではコロニー落としに対する言及は無いのですが(ナレーション背後のカットのみ)、この時点では映像効果優先の仕掛けとなっているのかと思います。
ナレーションの永井一郎さんが確か、『ガンダム』のナレーションをやるにあたって、考えた末に神様の視点を意識した、というような話があったかと思うのですが、このオープニングは基本ロングのカットで展開。
戦争状況をわかりやすく刺激的に描くなら、もう少しカメラを近づけて市井の人々が吹き飛んでいるカットなどを描くという手段もあったかと思うのですが、視聴者とキャラクターを追い込む為にそれは本編に取っておく、という所までは恐らく計算されています。同時に、ここまではいわば、“歴史”の視点。ロングのカットで語られる、年表上の1行1行。
サブタイトル提示後、ファーストカットはMS・ザクのアップ。
ここから物語は年表の中の“人間”の視点に代わります。
スペースコロニーへと向かっていく3機のザク。
スペースコロニーの遠景カットを1回入れた後、そこへザク――“視聴者にロボットだろうと思わせるもの”を近づけ、巨大な構造物と対比させ、スケール感の違いを提示。ザクがコロニーに最接近すると、もはやただの壁があるだけで、全体像は掴みようもない。
侵入シーンでは、ハッチの中に引っかかっていた工具のようなものがザクにぶつかった後、奥に飛んではね返って外に出ていく事で、無重力空間の慣性の描写がさりげなく入ります。
コロニー内部に入ったザクと木の対比、そのザクの手の上に姿を見せるパイロット(人間)。
ここまでがスケール感の演出。
パイロットがコロニー内部の様子を双眼鏡で確認する中で、人影(フラウ)を発見。そこから視点をフラウがアムロの家を訪れるシーンへ繋げる事で、カットがぶつ切りにならずに鮮やかに場面転換されます。
パンツ一丁のアムロの部屋で棚をひっくり返すフラウとの距離感が描かれ、アムロが避難警報に気付かずサイレンも無視してコンピューター作りに没頭しているのは、後のシーンへの伏線。ここで向かいの家のハヤトも顔出しし、後の登場に関するワンクッションを置きつつアムロの父親についても軽く触れます。
富野監督が抜群に上手いのは、こういった物語の背景を補強する為のさりげないシーンの入れ方。入れてもいいし入れなくてもいいし読めてもいいし読めなくてもいいシーンを適宜挿入する事で、物語世界の奥行きを増していく。
まだホワイトベース内部でのテム・レイとブライトの会話が挿入され、ブライトが軍属6ヶ月の19歳、息子(アムロ)の写真を見ながら、「同じぐらいの年齢の子供が少年兵に」と戦争の末期的状況の示唆と連邦軍の現状についても触れています。
避難エリアで息を潜める人々。
ジオンの偵察部隊の抜け駆け暴走で、開かれる戦端。
爆撃の震動を感じたアムロは、コロニーの退避エリア程度では持たないと判断し、父のコネを使ってでも人々を入港した軍艦に避難させてもらえるよう交渉しようと、外へ飛び出す。
根暗イメージの先行しがちなアムロですが、主人公だからといえばそれまでなものの、けっこうアクティブ。
そのアムロの前で、移動中だった連邦士官のジープが被弾して爆発。吹き飛んだ積み荷が目の前に散らばり、その中にアムロは秘密計画の分厚いマニュアルを見つける。ここは偶然は偶然なのですが、“人々を助けようと能動的に行動している途中”に手に入れる、という事で物語性を成立させています。普遍的な作劇技法ではあるのですが、割と手抜きされがちな部分も、しっかり丁寧。
そして、父と交渉に行く筈だったのに、その場でマニュアルをめくり出すアムロ(笑)
ここは、おいおいという所なのですけど、CM明けても、まだ読んでいた(笑) むしろ、その場に座り込んで読みふけっていた。
事前のアムロが避難警報にすら気付かない男、というのは、さすがに少々厳しい気はしますが、このシーンの為の伏線として機能。
そうこうしている内に、自発的なのか、連邦軍に有る程度、判断力のある人が居たのか(艦長?)、軍艦に向けて避難し始める住民達(ここで、アムロが有る程度マニュアルを読み耽っていたという時間経過も演出されている)。避難移動中のフラウに声をかけられて我に返ったアムロは、父親が人間よりもMS・ガンダムを優先して退避させようとしている光景を目撃してくってかかるが、あしらわれる。輸送車の具合が悪く、牽引車を探す為にその場を一度離れる父。そんなアムロを避難させようと集団を離れたフラウの背後で、人々に直撃する流れ弾。
視聴者にストレートに悲惨さを伝える演出として、キャラクターの直接の肉親を失うシーンを入れたいが、後の事を考えると、アムロの肉親は使えない。そこでフラウの肉親に犠牲になってもらっているのですが、アムロを一人で迎えに来ていたフラウがここでいきなり「お母さん!」「おじいちゃん!」と叫んだだけでは、少々唐突になります。そこで、事前に退避エリア内部で、フラウの隣りに座っていた年嵩の男性に「アムロくん」と呼ばせる事でフラウの肉親かな、と視聴者に思わせておく、という実に丁寧な仕事。
この後の、泣き崩れるフラウにアムロが「走れ、走るんだ」というシーンは凄く好き。
ガンダム』第1話が集約されていると思っています。
ここで非常に面白いのは、アムロが足取りのおぼつかないフラウを守りながら一緒に逃げるのではなく、動かせるかどうかもわからないMSに乗り込むという判断をした事。
MSを動かせる自信があったわけでも、ガンダムの性能を知っていたわけでも、本当にそれしかなかったわけでもないのに、アムロガンダムに向かっている。
色々あってアドレナリンが出まくっていたというのもあるでしょうが、このシーンのアムロはどうも、最悪死んでもいいや、とりあえず何でもいいからフラウが逃げ切る時間が少しでも稼げればいい、という節が見て取れます。
ことアムロに関して言えば、この時点でなんらかのスイッチが入っていて、本質的に“抗う”事を選んでいる。
素人がナイフを持ち出して殺るしかないという状態にある、という要素も含んでいるでしょうが、ザクの撃破シーンはかなり象徴的で、人殺しのリアリティがどこまであったかはともかく、1機は逃げる所を後ろから撃破、もう1機は(コロニーを破壊できないという事情があったとはいえ)コックピットを直接攻撃している。
この時点で、綺麗事を吹き飛ばしてしまっている。
言ってしまえば演出で追い詰めているのですが、丁寧に段取りを踏んだ上でのこの追い詰め方が実に鮮やか。
イデオン』第1話は、物凄く濃かったけど、対して『ガンダム』第1話は、非常に丁寧。意欲的に新しい事をやろうとした時に、非常に段取りをよく踏んだ丁寧な作品になっています。だから物語の流れに乗りやすい。
あくまでこれは、改めて見るとそういう構造だと解釈できる、という話であって、ぱっと一回見た時についていけるか、というのはまた別の話となりますが、それでもそこに視聴者を引きずり込む力が働いているのは、ベースが凄く丁寧だから。相互に影響しあっているので後先は場所によりけりですが、丁寧な基本構造の上に巧くインパクトが肉付けされている。
ちなみに初めて『ガンダム』見た時に一番記憶に残っているのは、ザクが爆発してコロニーに穴が開いて、人間が宇宙へ吸い込まれていくシーン。あれが一番怖かった。お陰で未だに、ホワイトベースに穴が開いた時に赤い風船でそれを塞ぐシーンが怖いです。あの赤い風船はトラウマの象徴。
さて、長い前振りでしたが、ここから標題に入ります(^^;
以下もあくまで、改めて構造を解体してみようとした上での解釈である事は、ご了承下さい。
第1話では成り行きでガンダムに乗り込んだ素人のアムロですが、第2話ではホワイトベースの乗員として軍属であるパイロット候補生リュウ・ホセイが登場します。果たして彼はどうしてガンダムに乗れなかったのか?
第2話スタート時点では、アムロは第1話での戦闘を終えたまま、ガンダムに乗り込みっぱなし。どたばたの中でブライトから通信で指示を受け(台詞説明のみ。シーンとしては描かれない)、ガンダムの部品をホワイトベースに積み込んでいる。この時点では正規パイロットではない少年がガンダムを操っているのは誰も知らない。以下、2話成り行き。
−−−
サイド7へのムサイのミサイル攻撃。応戦する軍人達。艦長自ら機銃についている所にリュウがやってくる。
パイロット候補生の君に、撃てるのか?」
「はい、やってみます」
付近に被弾し、瓦礫を浴びた艦長は重傷を負う。

ムサイの攻撃に紛れ、サイド7を脱出して艦に帰還するザク。

艦内の避難民のシーン。セイラ、上から登場。艦長の負傷治療。やりとりの中で、ジオンの船が攻撃を停止した事が語られる。ブライト登場。
「ジオンの船の防戦に回った連中はほとんど壊滅だ」
「サイド7に入ったものは技師・軍人ともに、全滅です」
「負傷兵の中で戦闘に耐えられるものは10名とおりません」
正規の軍属は壊滅状態、ガンダムが動いているが、パイロットはまだ確認していない。
ホワイトベース出航の為に人員が必要という事で、クルーザーの免許を持つミライが名乗りをあげる。

ムサイのシャア、通信でドズルに補給を要請。
上官の登場による軍隊的バックボーンとともに、シャア側の事情(ミサイルなどが心ともない)。
「さすが赤い彗星のシャアだな」
連邦のV作戦へのジオンの意識。
シャア、コロニーへの突撃偵察を立案。

ブライト、艦長らとブリッジへ。ガンダムパイロットが少年(アムロ)である事が確認される。
「降ろさせます」
パイロットが、生き残っていたらな……」

ムサイの陽動攻撃。シャア以下、コロニー内部に侵入。

艦長、サイド7に残された部品――ガンダム関係の機密の破壊を命じる。
「古来、15で初陣の例がないわけではない」

ムサイ、下がる。

セイラ、フラウ、生き残りの住民を捜す為にコロニー内部へ。リュウ、負傷した軍曹を助けている。逃げてきたカイ、セイラに平手打ちをくらう。セイラ、シャアに出会う。ガンダム、ナパームでMSの残った部品を破壊。

シャア、隙をついてホワイトベースの停泊している港へ。
「誰でもかまわん、狙撃しろ」
民間人その他(リュウ、ハヤト、カイなど)からの銃撃をかわし、シャア、コロニー脱出

アムロガンダム、脱出していく偵察部隊を狙撃しようとするが失敗。

シャア、ザクの射出を要請。

ホワイトベース出航。負傷した士官の指示をうけるセイラ、ハヤトなど。しれっとブリッジに居るカイ(仕事はしていない)。ホワイトベースの直衛につくガンダム
ここでリュウコアファイターに登場して発進準備が整う。
ブライト「リュウ、大丈夫なのか?」
リュウ「俺はパイロット候補生だぜ」
ブライト「素人よりは確実だが……経験は?」
リュウ「シミュレーションを2度やった」
ブライト「アムロと同じというわけか」
ブライトが悩んでいる内に、ミサイル接近。アムロ、迎撃する。続いてMS接近。
「一機のザクは通常の3倍のスピードで接近します!」
「シャアだ……赤い彗星だ……」

以下、戦闘
−−−−−
さて、ポイントは幾つかありますが、まずは時間的な問題、リュウガンダムに乗り込めるタイミングがあったのか? について検討してみます。
第2話でリュウが登場するシーンは、以下の6つ。

  1. 艦長と機銃座を代わろうとする
  2. 負傷した艦長を手当
  3. 外で負傷していた曹長ホワイトベースに運び込む
  4. 宇宙港に入ってきたシャアを銃撃
  5. ホワイトベース出航を前にコアファイターに乗り込む→攻撃してきたザクとの宇宙戦
  6. 戦闘終了後のブリッジ

次いで、ガンダムパイロットが素人の子供だと判明した後にパイロットを乗せ替えるタイミングがあったのか? 考えられるタイミングは、以下の3つぐらい。

  1. 資材運搬を一通り終えたガンダムホワイトベースが通信、パイロットがアムロだと判明した時
  2. 残存のMSの部品を破壊し終えた後、ホワイトベース出航までの間
  3. 出航したホワイトベースがシャアのムサイと戦端を開く寸前

基本的に延々と混乱状況にあるのですが、その中ではもっとも時間的余裕があったと考えられるのは、1番。ホワイトベース出航の準備を整える為に、負傷した艦長とともにブライトらがブリッジに上がり、改めてガンダムと連絡を取った時。なおブライトはこの時点では、ガンダムとのモニタ通信のやり方さえ知りません。
ここで即座にパイロットを乗せ替えるというのが最も常識的な判断だったとは思われるのですが、悪い事に正規のパイロットはいない。代案となりうるパイロット候補生のリュウは、おそらく数少ない軍属の生き残りとして、軍属6ヶ月のブライトがブリッジを取り仕切る羽目になっているのと同様に、細かく動き回っている事が推測されます(リュウの行動3の辺り)。
負傷した兵員の捜索・収容の他、行動4に繋がる、手の空いている民間人への武器の配備、など、細々とした雑用をしていたとおぼしい。しかもこれから出航するとなれば、相当に忙しかった筈。
これらはあくまで後付けの推測にすぎませんが、ホワイトベースにシャアが近づいた際に、ブライトの「誰でもかまわん、狙撃しろ」という指示があったとはいえ、即座に結構な数の銃撃がシャアを狙っている(リュウ、ハヤト、カイなどの姿あり)のは、事前に自衛用の武器を配っていた、と考えるのは大きく間違ってもいない筈。
ちなみにここは、数時間前までただの民間人だった筈のハヤトもけっこう本気でシャアを狙っていて、第1話のアムロ同様に、昂揚状態などはあっただろうものの、戦時下の少年達の心性がするっと入っていて割と重要なシーン。
勿論すべからくリュウがやっていたわけでも、リュウでなくてはいけない必然性があるわけでもないので、パイロットの乗り換えを優先するという選択肢は存在したと思いますが、艦長は「古来、15で初陣の例がないわけではない」と自分に言い訳しながら、アムロをそのまま乗せておく事を選択。
一つには人員の絶望的不足、一つにはまがりなりにもザクを撃破した実績、そして最も大きいと思われるのは、次に出す指示が残されたガンダム関係の部品の破壊であった事。つまり、戦闘をともなわない。
それなら色々と仕事任せられるリュウパイロットに回すよりも、まがりなりにも動かせた少年に任せても大丈夫であろう。この判断が合理的か否かはともかく、艦長はそういう判断を下したのではないか、と推測されます。またこの時の艦長は喋るのも苦しいぐらいの重傷を負っており、「負傷で少し朦朧としていた」という逃げ道も言い訳としては打てるような構成にはなっています。
ここが物語のターニングポイント。
故に、サブタイトルがガンダム破壊命令」
とまですると穿ち過ぎかもしれませんが。
で、思うに艦長は、乗せ替えタイミング2(部品破壊〜ホワイトベース出航の間)に、パイロットを替えようとしていたのではないか、と推測されます。
敵艦の攻撃が休止した事もあり、部品の破壊命令と同時に、コロニー内部の生き残りの捜索を行わせているので、ここである程度の時間的余裕を見越していた筈。部品を破壊してガンダムが戻ってきた時点で、パイロットを交代、ガンダムに直衛させつつホワイトベースを出航させるというのが理想の段取り。
ところがシャアが闖入し、ホワイトベースを撮影(このカメラはブライトの銃撃で破壊される)。退避する偵察部隊のガンダムによる狙撃を優先した事でガンダムホワイトベースに着艦する時間がなくなり、そのままホワイトベースは出航。
ここでリュウコアファイターに乗り込み、最後の交代タイミングが訪れますが、リュウも実戦経験はなく、間近に敵が迫っている状況で換装するリスクはかなり大きい。そこへミサイル接近。迎撃に成功するも、更に3倍のスピードでザクが接近。
という流れで乗り換えタイミングを互いに失ったまま、アムロは何とかシャアを退け、3機目のザクを撃破。
ここでアムロに関しては“箔が付いた”と言ってしまっていいでしょう。
では、リュウパイロット候補生としての能力について検討してみましょう。
経験・技量についてハッキリしているのは「シミュレーションを2度やった」というだけ。
そこからの逆説的推測になりますが、迷わず乗せたくなるような評判のパイロット候補生、というわけでは恐らくない。また機銃周りでの艦長との会話から、実戦経験は無いに等しい、という事が推測されます。
この時点でアムロに対して、そういった部分でのアドバンテージは無い、と考えても良いかと思われます。
明確な違いとなると、軍属か、民間人か、という事だけ。
戦闘から戻ったアムロリュウを、ブリッジにあげるブライト。
アムロの前に立ったブライトは、彼を見て少し間を置いた後に、告げる。

ガンダムの性能をあてにしすぎる。戦いはもっと有効に行うべきだ」
「な、なに……!?」
「甘ったれるな! ガンダムを任されたからには、貴様はパイロットなのだ。この船を守る義務がある」
「い、言ったな……!」

凄くいきなりなブライト。
ここは“ブライトがどこまで考えていたか”というのをどう取るかでだいぶ変わるのですが、少なくともブライトが最優先事項として頭にあったのは、ホワイトベースを味方の基地(ルナツー)まで持っていく事。
その為には、現状、ガンダムパイロット問題に限らず、軍属だの民間人だの言っていられない
ブライトがどこまで割り切っていたかは何とも言えませんが、ブライトなりの覚悟と基本軸はそこにあったかと思われます。
その上でこの判断は、単純にアムロの実績を優先した、のか、ある種の直感に基づいた賭けか、艦長の判断を優先したのか……ブライト超策士説を採るなら、実績をあげた民間人をパイロットに置く事で艦全体に「生き残る為にはこうするしかないんだ」と覚悟を促す生け贄に祭り上げて意思統一を図った、とまで考えられますが、多分、その全ての混ざった真ん中ぐらい。
ただ少なくとも、アムロの前に立ったブライトがアムロを上から下まで見て口を開くまでに、わずかに間を置くというシーンは意図的に入れられていて、(どうやってこいつを操縦するか)ぐらいの事は考えていたと思われます。
どこまで成功したかはさておき、少なくともその場で断られなかった時点で、賭には勝った。
逆らったら逆らったでひっぱたいて、全体の綱紀粛正を図りに走った可能性も考えられますが、そこまでやるのはリスキーか。ただブライトには、士官としてそういう教育を受けたからかもしれませんが、少し芝居がかって人をマネジメントしようとする癖、みたいなものは見て取れます。
ところで色々書いてきましたが第2話で一番凄いのは、いつの間にかしれっとブリッジにいるカイ。シャアの銃撃には参加していたのでそのままブリッジについてきていたのでしょうが、他の面々は仕事しているのに、何もしていない。
さて、ここで一応の判断を下したブライトですが、この話はもう少し続きます。
第3話、物語のスイッチが大きく切り替わります。
メインクルーが、軍服を身に纏う。 (※なぜかハヤト除く……サイズの合う軍服が無かった?)
2−3話の服装の変化は非常に大きな意味を持っていて、軍人と民間人の壁が一度払われた後で、もう一度、再構成されている。
そしてアムロは、ガンダムのコックピット整備中。
フラウとのやり取りで、2食抜いている、という話がさりげなく挿入。
ルナツーを目指すホワイトベースだが、背後にはシャアのムサイ。更にそのムサイに、補給艦とおぼしき船が近づいているのが確認される。このままルナツーを目指すか、それとも、補給中と想定されるムサイを叩きに出るか。みすみす補給を許せばルナツーに着く前にシャアの本格的な攻撃を受ける可能性がある、かといって敵の増援だった場合、こちらが壊滅する可能性もある。
判断に迷ったブライトは、ブリッジに戦闘可能要員を集め、どちらも成功の可能性は五分五分、と前置きした上で、多数決を取る。
この、多数決のシーンが、凄く良くできています。
まずは「真っ直ぐルナツーを目指す」のが、5票(台詞で明示)。
ついで「反転攻勢をかける」に、画面に明示される範囲で、リュウ、ハヤト、名も無きクルーで3票。ブライトが視線を移して、オスカー、マーカー、で5票。この間、軍服に着替えたアムロは、ずっとカーラーをいじっていて、どっちつかず。子供達……はスルーして、ミライ、セイラで7票、更に、周囲を見回してそろそろと手を挙げるカイ、で8票。
ブライトが手を挙げ、アムロを見る(正面からブライトが手を挙げたカットの後、後方からのカットに切り替わって、左端にブライトの後頭部を置く形で右斜め前方のアムロに向けてズームアップしていくので、明らかにブライトの視線)。
それを見返して、アムロが手を挙げる。
「よし決まった、出撃する。アムロガンダムリュウコアファイター
ここが恐らく、ブライトがアムロガンダムパイロットとして正式決定したシーン。
そもそも作戦の判断に悩んで多数決を選んだブライト(直前のシーンでは明らかに慎重策)が、票決の大勢が決まった後にわざわざ手を挙げるのは立場上も不自然で、明らかに、自分が手を挙げたらこいつはどうするか、というのを見ています。
おそらく、アムロの態度如何(結局手を挙げなかったり、何か引きずられる感じだったり)では、ガンダムにはリュウを乗せる事を考えていた。
ブライトの内心の理由や根拠を聞かれると困りますが、この瞬間、ブライトは、アムロに張った。
どちらに出ても博打の中で、更にアムロに賭けた。
だからわざわざ、「アムロガンダムリュウコアファイター」と台詞で言わせている。
この後、アムロが太陽を背に攻撃を仕掛けるよう言うまでそれを思いつかなかったり、戦闘中に無線を切っていたり、パイロットとしての技量はともかく、リュウの戦術的なセンスへの問題がそれとなく描かれますが、この辺りは後出しじゃんけんのようなもので、アムロパイロットセンスを物語的に裏付ける為の念押しといっていいでしょう。
戦闘後のシーンはちょっと面白くて、ブライトは先に帰還していたハヤトとカイの前ではアムロがよくシャアを引きつけてくれたと言うも、当人の前では決して誉めない。で、これはある程度、最悪リュウがフォローしてくれるだろうという信頼感がある。この辺りの細かい人間関係の描き方の積み重ねは、本当に見事。
長々書いてきましたが、表題の「ブライトはなぜアムロガンダムを任せたのか?」をまとめると、

  • サイド7出航まで、ガンダムパイロットを乗せ替えるタイミングが無かった
  • その間に、素人パイロットがパイロット候補生以上の実績をあげた
  • 軍人と民間人を区別している余裕がなかった
  • むしろ艦の運用のために、積極的にその垣根を取り払う必要性があった
  • 人員の再構成をした段階で、改めてアムロの覚悟が確認された

という感じでしょうか。
一つポイントは、リュウが、パイロット候補生としては非常に微妙な存在、である事かなぁとも。
なお、上記全て、本編3話までで理解可能な情報のみで解釈しています。4話以降に矛盾する表現が出てくるかもしれませんが、それはそれで。
……さてここまで色々と「ブライトがリュウではなくアムロガンダムを任せた理由」を、物語の流れを追いつつ私なりに解読してみましたが、ここで一つの疑問が発生します。
むしろリュウはなぜ、パイロット候補生でなくてはならなかったのか?
パイロットもパイロット候補生も誰も居ない状況なら、成り行きでガンダムを操ったアムロがそのまま乗り続ける事への疑問は確実に低減されますし、話もスムーズになります。
第3話でカイとハヤトがガンタンクで出撃するように、物語の都合上、MS(に準ずるもの)を操るのに「パイロット候補生」という肩書きがどうしても必要なわけではありません。
リアリティなどの側面からも素人兵達を取りまとめる先任軍曹的存在が必要だったとしても、他の肩書きでも物語は成立した筈なのです。
にも関わらず、リュウが「パイロット候補生」である事は、なぜ物語の中で2回も強調されるのか。
一つには、候補生と比較する事でアムロパイロットセンスを強く印象づける役割。ただしこれは、リュウが同じ機体に乗らないとそもそも比較が出来ない為、効果的には成立しません。
で、あれば最大の効果は何かといえば、演出として職業軍人と民間人をフラットにする事にあるのでしょう。
軍人だの民間人だの言っている場合ではない切羽詰まった状況、という事を視聴者にストーリーとして伝える為には、その象徴として、パイロット候補生であるリュウではなくアムロパイロットとして選択される必要があった。
第2話に関しては、そこにどうしても生まれる無理さを、出来る限り和らげる為に物語を積み上げていったという感があります。
そしてそれを踏まえて、スイッチの切り替わった第3話に繋がる。
勿論、単純に主人公のヒーロー性を出す、という要素もあるかとは思いますが。
リュウが「シミュレーション2回やった」だけのパイロット候補生、といういくぶん微妙な立ち位置なのは、その当たりの作劇とリアリティの調整の結果なのかな、と推察される次第です。
−−−−−
余談1:何度見てもシャアはおかしい。富野曰く「安彦さんが勝手に描いた」そうですが、シャアが出てきた瞬間に世界観が壊れずに、そのまま話を進めたのは本当に凄いと思う(笑)
余談2:第3話、艦長を見舞った後、ブリッジへ向かうエレベーターでセイラと二人きりになり、出身を聞いて嫌な顔をされた後、「弱気になるな」と言われるブライト。こーいうタイプが急にプライベートな話題を振ってくる時は目の前の現実から目を逸らしたがっている時だと即座に看破するセイラさん怖い。