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大トミノ祭:『ダイターン3』落ち穂拾い1

2があるかはわかりませんが、後からふと思った事などあれば、適当に書き足す感じで。
全編終了してみると、17話「レイカ、その愛」(脚本:松崎健一はやはりなかなか異質にして、意義深いエピソード。
このエピソードでは、劇中でこれまで描かれてきた善悪の構図=万丈サイド(善玉)vsメガノイド(悪玉)を“超越する存在”=ルーミス帝国が登場して、物語上の善悪構造とは一切関係なく、“うちの国に戦いを持ち込んだものは赦さない”と、メガノイドも万丈も、もろともに抹殺しようとする。
そしてこの時、万丈(ヒーロー)の正義の論理が帝国皇帝を説得するのではなく、レイカの感情が皇帝を翻意させる。しかも、「愛」というマジックワードの万能感を嫌ってか、あくまでも最終的には、レイカから放出された謎エネルギーに脅えた皇帝が、万丈の処刑を断念する。
ここでは、万丈の正義もメガノイドの正義も、全てまとめて相対化されてしまう。
それをする皇帝も皇帝で、争い止めてないなら大陸ごと沈めて人類滅ぼしてしまえ、というかなり困った人ですし。
それぞれテーマは少し違いますが、この17話と似た構造と言えるのが、
25話「提督の生と死」(脚本:松崎健一)、33話「秘境世界の万丈」(脚本:松崎健一)、38話「幸福を呼ぶ青い鳥」(脚本:桜井正明)
25話では、「人間の英雄」が「戦艦に脳を移植される」事で「人間ではない存在」となり自らは「メガノイドがスーパー人間なら、私は神」を名乗る。コロスはそれを「メガノイドの理想」とし、コマンダーは「あれがメガノイドの神など認められない」とし、最終的に万丈はその「傲慢」を討つ。
このエピソードは劇中の色々なテーゼと要素がひねり返されていて単品でも非常に見応えがあるのですが、やはり基本的な物語構造とは別の、超越存在(ここで言う“超越”とは、必ずしも“優れている”という事ではなく、物語構造の枠を越えている、という事)が現れる。で、それが「人間が作り出したもの」であり「メガノイドの指導者から見れば理想的な存在」であり、「そもそもメガノイドも人間が作った元人間」という複雑な事になっていて、単なる三局構造というわけでもなく、一筋縄ではいかない。
33話は、古代帝国の秘宝の力を手に入れようとしたコマンダーが、その秘宝に逆に操られた事で「人間にもメガノイドにも手を触れる事のかなわぬ異質の文明」の存在を悟る、という話。
もともと17話はコマンダーが皇帝の力をメガノイドの為に利用しようとする、という話だった事を考えると、物語の構造は17話とほぼ一緒。話の焦点がコマンダーによっているので、裏のテーマ性に関してはよりストレートにわかりやすく台詞にされています。この辺りは、17話ぐらい遠回しの方が好きですが。
38話は、大宇宙の神秘の前には、人類もメガノイドもその争いもちっぽけ、というスケール感の話。これはテーマ的には上記で挙げてきたエピソード群とは向いている方向は違うのですが、超越存在くくり。また、人質を取られての策略という面はあるとはいえ、一時的に万丈とメガノイドが共闘を見せる点では、25話に近い構図も有しています。ストーリー的にはどちらかといえば最終的に、コロスの万丈観(仇敵というよりはメガノイドに引き入れたい男)の補完として繋がっている。
物語は最後「ダイターン3を奪われた事と万丈の捕獲にこだわった事」がメガノイド帝国の崩壊の大きな要因となるのですが、コロスの万丈観にはどうも、“子供のわがまま”と“よくも成長して”みたいなものが、混じり合っていて、視線が乳母っぽい。母親というより、乳母。
で、調べるまで気付いていませんでしたが、テーマ的にも近い17−25−33話が全て松崎さんでした。という事は、そうとう意図して構造を組み込んだっぽい……17話は、松崎さんのシリーズ初参加回ですし。
この辺は『トリトン』『ザンボット』も踏まえているけど、翌年の『ガンダム』へも通じていく所かと思われます。