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『ダイターン3』落ち穂拾い2:ギャリソン時田という男

ギャリソン時田。職業:執事。
『無敵鋼人ダイターン3』第2話「コマンダー・ネロスの挑戦」において、一切の説明のないまま空気のように画面内に登場し、ごく自然に破嵐万丈を後方からサポート。
その職務は、通信、索敵、ダイターン3他のメカの修理・整備、新兵器の開発、ギャリソンミサイルの発射、アシスタント達のフォロー、主人(万丈)の世話、調理、給仕、屋敷の手入れ全般、狙撃、トッポの教育(訓練)と多岐に渡り、パイロットとしての腕も超一流、寄る年波からぎっくり腰の不安などはあるものの体術にも優れている描写が垣間見え、主人である万丈からも全幅の信頼を得る、まさしく、パーフェクトな執事である。
しかし、彼と破嵐万丈の馴れ初めについて、劇中では一切語られてはいない。
恐らくあの破嵐万丈が、自分自身以外で唯一信頼する男。好々爺然とした初老の紳士でありながらも、何食わぬ顔でレイカやビューティ、時には主の万丈さえもメガノイド相手の囮に使う男。車のワックスがけが完璧でなければ、緊急通信の無視も辞さない男。
怪人・ギャリソン時田とは何者なのか?
劇中の描写からはっきりしている事は、上記のような様々な技能を持っている事と、その名前だけである。

ギャリソン時田
偽名であろう。
断言はまずいかもしれないが、ギャリソン時田である。どちらがファーストネームなのか、という話である。「ギャリソン」というファミリーネームはそれほど珍しくないようだが、「時田」が姓名の名とは考えにくい。また逆に、時田が姓だとしても、ギャリソンが名、とは考えにくい(この辺りは、軽く調べた限りなのでそうでもなかったらすみません)。
「ギャルソン」なら「給仕」などの意味だが、「ギャリソン」といえば、「駐屯地」などの意味であり、ギャリソン・ベルトやギャリソン・キャップなど、軍服やそこから派生したファッションに名を残す。
ここに、彼の正体の一端が垣間見える、と考えるのもあながち間違ってはいないかもしれない。
さて、様々な技能を持つギャリソン時田であるが、こと破嵐万丈とメガノイドとの戦いにおいて際立つのは、その兵器開発および整備技術である。
劇中「メカマル」と称されるサポートメカに指示を出しながらではあるが、万丈側のメカの整備及び開発は、完全にギャリソン時田が主導して行われている。主人である万丈からの大まかな方向性の指示やマザーコンピューターのサポートもあると考えられるが、大気圏内用の機体であるアシスタント向けのメカなどはギャリソンの手によるものであろう。
ギャリソンミサイルなる、自分の名前をつけたミサイルも開発している。
劇中、万丈はマッハパトロールを修理しようとしたり、レイカにマニュアルを読んでもらいながら変形機構の故障したダイターンを修理するなどのシーンはあるが、機械工学に特別強いような描写は見受けられない。
それでも最低限の事は自力で行えるようであるから、これは万丈の能力の問題ではなく、どういった技術を伸ばしてきたか、という事であろうが、万丈サイドの基本形は、前線の万丈、後方のギャリソンであり、破嵐万丈にとってのギャリソン時田は、参謀兼博士兼メカニックといっていい。
また、通信士として戦いの全貌を俯瞰しながら、時に腹黒い囮作戦を展開する点も見逃せない。
更に自らパイロットとしても、宇宙空間での戦闘において一流の技術の持ち主であり、ダイターン3を操ってすら、万丈を凌駕するのではないか、という操縦技術を見せる。
そして、戦場を離れた彼の姿は、極めて優秀なバトラーである。
もしかしたら通いの庭師ぐらいは居るかもしれないが、対メガノイドの索敵をこなす合間に巨大な屋敷の手入れを怠らず、また、自ら厨房に立ち、給仕を行う。劇中の描写を鑑みるに、トッポに戦闘技術などを学ばせているのも彼の指導によるものと推測される。
まさに破嵐万丈にとって欠かせぬ存在といっていい。
しかし、彼の忠誠心には謎が多い。
主人である万丈に忠節を誓っているようでありながら、時に車のワックスがけを優先したり、愛好するメロドラマの視聴を優先して救援を遅らせるなど、自己の都合を優先する様子も見受けられる。その背景には主人の能力に対する信頼が見えるものの、万丈個人に対するアナクロな忠義というよりも、自分の仕事へのプライドこそ最優先、という空気が漂う。
ギャリソン時田にとっては、執事である自分、を全うする事こそが最も重要なのではないか。
一方で、対メガノイドにおいて、レイカとビューティに関しては時に捨て駒にする事も辞さないような素振りすら見せるギャリソンだが、トッポに関しては出撃を諫めたり、最後発で出撃させたり、など様々な手を講じている。
これはトッポが年少という事もあるだろうが、結局は戦場に送り出している事を考えると、その姿には、この類い希なる操縦センスと胆力を持ち合わせた少年を、優れた戦士として育成しようとしているように、見えない事はない。
果たしてそれは何の為なのか?
万丈が倒れた時の事を考えている――としか思えない。
恐らくギャリソンは、万が一の後事を万丈に託されているのだ。
そもそも万丈は、メガノイドとの戦いの長期化を視野に入れていた節がある。
少なくとも、これほど短期間にメガノイドとの決着がついたのは、彼にとっても予想外ではなかったのか。
一つには、万丈サイドはメガノイドに対してカウンターで戦うしか無いという事情があり(故に万丈は半ば罠だと予想されても敢えて飛び込む)、また第5話「赤ちゃん危機一髪」には万丈のこのような台詞がある。
「だが人間の赤ん坊は違う。あの子も今はおまえ達にとって役には立たんだろうが、成長して、人を愛し、また子供を産む事ができる。そしてお前達を!」
万丈は人類とメガノイドとの闘争が世代をまたぐ可能性を視野に入れていたかもしれない。
無論、出来る限り自分の手で決着をつける意志は強かっただろうが、その為にはどうしても火星まで侵攻する必要がある。カウンター的にメガノイドを叩くのと並行して万丈が進めていたのが、メカニックの開発と、それを操る人材の確保である。劇中の陣容はそれなりに恵まれてはいたがしかし、万丈に火星侵攻を決断させるレベルでは無かったのであろう(但し、13話や34話でアシスタント達の訓練は行っている)。一方で、メガノイドの潜伏可能性という事情を含めても、それを世界レベルに呼びかけて図れないのは、万丈という男の持つ弱さと哀しさと言えるかもしれない。
メガノイドに対する激情の反面で長期的な視野も持ち合わせていた万丈は、概ね自信過剰な男である。だが、自分が志半ばで倒れる可能性を全く想定していなかったとも思えない。また、自分が死んだら後はどうなっても構わない、というほど薄情で捨て鉢な男でもない。
仮に自分が戦いの途中で倒れた時にも、人類がメガノイドに抗する為の手を準備していたと考えるのは不自然ではない。
そう、あれだけの能力を持ちながらギャリソンが滅多に前線に出る事がないのは、この万が一の為の、温存なのではないか。
ギャリソン時田こそが、万丈の本当の切り札なのだ。
そしてギャリソンの年齢を考えた時、劇中には登場しなかったが、ギャリソンが密かに育てるギャリソンの後継者、という存在も居たのかもしれない。万丈の後継者と合わせて、戦いを継ぐべき者が。
ではそんな、破嵐万丈とギャリソン時田、この二人はいったいいつ出会ったのか?
この点に関しては、劇中にそれを匂わせる要素が一切ないので、何を書いても推測か妄想の域を出ない。
考えられる大まかな区分は、以下の3種だろうか。

  1. 万丈の幼年(少年)期からの知己。
  2. 火星で出会った、開拓メンバーの一人。
  3. 万丈の火星脱出後に地球で初対面。

1の場合、極端に言えば“爺”のような関係性であった事も考えられる。
2の場合、何らかの事情でメガノイドによる火星支配の前に地球に帰還し、難を逃れた技術者、といったところか。
3の場合、出会いそのものは偶然であろうか。
後はもう、個々人の趣味というか、どのシチュエーションが一番物語として燃えるか、であろう。
対人関係に壁のある万丈が他と一線を画す信頼を見せる事を考えれば、幼少からの知己であったと考えるのが一番自然かもしれないが、しかし私はむしろ、2番か3番を取りたい。
2番であれば技術者としてギャリソンがハイレベルな事に説明がつくし、火星でその人となりを知っていた万丈が地球でギャリソンの元を訪れるというのも割と自然。ギャリソンも万丈の事情を納得しやすい。
3番の場合、地球へ逃げてきた万丈がたまたま入ったレストランで出会った初老の給仕。そこへ襲撃してきたメガノイドソルジャー。襲撃者に対峙する万丈は、華麗にソルジャーを撃退する給仕に目を見張る。ドタバタの末、共に逃亡する事になる中で、二人の間に芽生えるそれぞれの能力に対する敬意と戦友の絆。男は、元軍属の技術者であった事を明かす……とか、割と燃える。
どちらにせよ、個人的なギャリソン像としては、情を持って万丈に仕えているといよりも、自分の能力をフルに発揮できる上司として尊重している、という気がしてならない(情が全く無いわけではない)。
故にギャリソン時田は、屋敷で万丈を待つのではなく、自分の働く新たな場を求めて、屋敷を去っていく。
上に書いた「万丈に後事を託されている」説も、万丈の遺志を継ぐというより、後継者を育ててメガノイドを倒す事に熱中しそうなわけである、ギャリソン。
そしてそんなギャリソンだからこそ、万丈は他と一線を画す信頼を置いていたのではないか。
メガノイドの中に他者を思いやる心を見た時、それを赦す事を選ぶ万丈、しかし、人は時に家族の情を裏切る、踏みにじる、破壊する、それこそが彼の最大のトラウマであると考えた時、その想いは極めて皮肉で捻れている。
そういった一切合切を抜きにしたところでその有能さを信頼できる男。
そしてそれだけの強さを持つがゆえに決してメガノイドには与さない男。
それこそが、破嵐万丈にとってのギャリソン時田であったのではないだろうか。
二人の関係には、家族的なウェットさよりも、目的を共有する者の持つ強い意志、それこそが似合うように思うのである。