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『ジーザス〜砂塵航路〜』最終巻、感想

JESUS砂塵航路 14 (14) (ビッグコミックス)

JESUS砂塵航路 14 (14) (ビッグコミックス)

「お前のおかげでいい経験をした。学校という場所、意外と面白い」
「お前もなかなかの教師ぶりだったぜ」
色々と、激しくネタバレあり。
んーーー、残り1冊でどうまとめるかと思われた物語も一応まとまり、多数のキャラクター達もそれぞれ過不足なく登場。シザースのサイコっぷりはクライマックスを飾るにふさわしかったし、タリクと綾木の絡ませ方も良かった。イージスやブレードの増援を「うるさい父兄が出しゃばってきた」と学校ネタに繋げたのは非常に良かったし、カイザ先生も萌えキャラ路線を貫き通して、最高に格好良かった。難を言うならもう一方の萌えキャラである藤崎に見せ場がなかったのは残念でしたが、心配していたアッシュも見せ場を貰い、尻切れトンボに終わらずに着地。
基本的には熱い展開で、面白かった。
……のですが、一つ、大きな不満があります。
イメージカット的なもの以外で、小百合先生が出てこなかった。
小百合先生派としては、これに尽きます。
ジーザスの戦いは続く――というラストで構わないから、一回は小百合先生の所に戻る形で締めて欲しかったと思うし、それは、ヒーローとして、そうあるべき着地だったのではないか、と思うのです。
その点において、作者とズレてしまったなぁ、と。
無論、ラストの
「俺の手には、常にもう一人の手が重ねられている。彼女が俺に言っているのさ。ターゲットはそっちだと」
は凄く良かったのですが、その後の9ページで、カダスへの帰還よりも書かなければならない重要なシーンが果たしてあっただろうか、と? そういう意味では、三崎妹が邪魔だった、という結論になるのか。
少なくもラストページをああ落とすなら、三崎妹に撃たれてジーザスの生死や如何に?! みたいなシーン展開は正直丸々いらなかったとは思います。あそこでページ使ってしまったので、ラスト2ページも物凄いぎゅうぎゅう詰めになってしまいましたし。結果的にラストカットが今ひとつ格好良くなかった、というのも不満の一つ。
私の中ではどうしても、『ジーザス』というのは“少年マンガのヒーロー”なのです。
既に『闇のイージス』での登場により青年誌デビューを果たしており、また原作者が『ジーザス』読者の加齢に合わせて意図的に“青年誌の主役”にシフトさせているかもしれませんが、それでもやはり、ジーザス=藤沢真吾は、“少年マンガのヒーロー”であってほしかった、物語としてそういうヒーロー性を担保してほしかった。
最終的に、ダンテ313の話が残った、というのは良いのです。
ジーザスはこれからも“殺し屋”というスキルを持って巨悪と戦い続ける……という物語も構わない。
ただそれでも、ヒーローとして、一つの戦いの終わりには、一つの帰還が欲しかった。
それが、原作者の意図とはむしろ裏腹に、『ジーザス』を愛してきたファンに見せるべき、航路の一つではなかったのか、とそんな事を思うわけです。
カウンターテロの物語へと変質していった『闇のイージス』中盤以後、原作者が作品世界に導入していったリアリズム(最初の『ジーザス』の時にも全く無かった、というわけでない)が、この『砂塵航路』において少年マンガとしてのヒーロー性より優先されてしまったというのは、個人的には少々残念。
もっとも今作はもはや少年マンガではないし、一つの物語の“変質”としては、それを評価する向きもあるでしょうが。
あとは、最後まで読んだ後に表紙に戻って脳内補完するしかないのか……!
というかむしろ、それでああいう表紙なのか……?!
藤原先生の心遣いなのか?!
表紙は抜群にいい。
総合的な話。
クロースオーバーはもう、商業的に効果が出ていたなら有りだったかもしれないが物語としては要らなかった、という事で。ただ、連載媒体(携帯コミックサイト)の都合もあり、ある程度の話題性を提供する必要もあったのかもしれず、そうだとしたら、お疲れさまでした、と。
話の中で大きかったのは、『闇のイージス』〜『暁のイージス』で拾えなかった劉伊健を拾えた事。彼は拾えて良かった。あと、初代で最終的に有耶無耶になっていた火野とナイトを拾ってくれたのも、個人的に嬉しかった所。もう一人の“行方不明者”水谷弟が出てこなかったのは残念でした。
逆に、戸川誠司と野川幸子を出さなかったのは凄く良かった。もしかしたら構想はあったけど出す前に終わってしまったのかもしれませんが、この二人は“『ジーザス』という物語のキャラクター”なので、徒にその後の作品に出してほしくなかったので、出てこなかった事に、感謝。
新キャラの中では“ドクター”に関しては、上述した、原作者が作品世界に導入したリアリズムによるわけですが、“蝶”を倒して全てが丸く収まるというわけでなく、悪意の種子は連綿と続くのだ、という世界観をどうしても描きたかったのでしょうが、『砂塵航路』というマンガの中では、必要だったかについては疑問。
そこまで重ねて描かなくても、良かったのではないかなぁと。
クライマックスを飾ったタリクとシザースは非常に良いデザインでした。
上記の捕捉めいた事で、初代『ジーザス』も、“24”は倒れ、カダスは民主革命によって共和国化した、しかし政府軍残党による子供の襲撃などは、まだまだ頻繁に発生している。そして……というラストだったのですが、マンガのバランスとしては、これでぐらいの現実回帰で良かったのではないかな、と。
その上でもう一回ひっくり返して作品にヒーロー性を付与するバランスが、『ジーザス』最終回の素晴らしい所なのですが。
とまあ、そんなこんなでちょっとしたもやもやはあるものの、総合的には面白い作品でした。携帯コミックサイトという不安定な媒体で、ここまで辿り着いてくれた事も、嬉しい限り。原作者がもう、“畳めない風呂敷もあるものさ!”と開き直っているのは若干気になりますが、ある程度までまとめてきたのは、手腕でありましょう。
で、なんかコミックスの帯に、
新連載特報!! 七月鏡一×藤原芳秀 モバMANにして2012年秋始動!!
とあるのですが、次はいったい、何がくるのやら。
原作者はかつて、『BUGS』の第2段やりたいとか書いていた事がありましたが、それになるのか。こちらの世界なら、来島ちひろ主役の『イージス』スピンオフとかありそうですけど。
しかし藤原さんに、普通の雑誌形態で描かせてくれるところはないのですか。
まあ何が来るのか、楽しみに待ちたいとは思います。
それまでに、〔『闇のイージス』部屋〕も、もう少し更新と調整を行いたい。