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『太陽の黄金の林檎』(レイ・ブラッドベリ)、読了

ブラッドベリはけっこう持っているのですが、どうも幻想小説よりのものがピンと来ない(ブラッドベリがどうこうというより、幻想小説というジャンルがどうもピンと来ない)為に、短篇集の途中で放置する、というのを割とやらかしていて、読み切ったのは久々な気がする(^^;
とはいえ、収録22作品の内、SFと言えるのは、3分の1ぐらいかなぁ……この辺りは個々人のSF観にもよりますが。
解説の伊藤典夫によると、ブラッドベリ4冊目の単行本にして、ブラッドベリが「SF作家」の枠組みの中の一人に収まるか、そこから外に抜け出すか、の端境期の作品が多く収録されているとの事。その為、パルプ雑誌ではなく、高級誌に掲載された普通小説といっていい短編も収録されています。
向こうの普通小説は、世相以上に人種問題とか宗教問題とかがわからないと、ピンと来なかったりするので、ある点では、幻想小説よりも難しかったりしますが。
お気に入りは、「人殺し」「発電所」「歓迎と別離」といったところ。あと有名作品なので大まかに筋を知っていましたが、「霧笛」「雷のような音」も面白かった。
荒野の街に暮らす老境の夫婦が、妻の母の危篤の報せを受け取り、遠く離れた町に向かう途中に発電所で一晩雨宿りをし……という「発電所」は個人的にはSFだと思ったのですけど、全然解釈違っているかもしれない(^^;
「人殺し」は、「電話を殺した」という男と精神科医のやり取りからなる物語で、おそらくテクノロジー諷刺とか世相を描いた作品なのですが、とっかかりが面白かった。
「歓迎と別離」は、12歳の状態から外見的に歳を取らなくなってしまった男の物語。テーマとしては神代の昔からあると思われますが、主人公の心情が、実にいい。
ブラッドベリは、個人的な相性としてはあまり良くない作家なのですが、時々物凄い大当たりがあるので、手放せない。
一番好きなのは、「万華鏡」(『刺青の男』所収)。