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『特救指令ソルブレイン』感想6

先週分。
◆第10話「わしら純情放火団」◆ (監督:小西通雄 脚本:扇澤延男)
20年分の世相の違いがあるので、当時と今とで捉え方の違ってくる部分もあるかとは思いますが、予告より更に、斜め上で酷かったなぁ……。
深夜、火付けの練習をしている、黒服の若い男1+老人3。
「明日、四人目のお仲間が面接にいらっしゃる予定です」
「決まれば」
「「いよいよ」」
「われら老人放火団の誕生です」
ある日、暴走族に囲まれていたぶられている老人・岡田を助けた増田。再就職の為に面接に行く途中だったという岡田と喫茶店で一息つきながら、さきごろ40年勤めた会社を辞めたが送別会も無かった、という話を聞いて、「社会があんまりお年寄りに冷たくしてると、今に反乱が起きますよ。老人達の大反乱が」とやたらに憤る。
…………うーん、自慢できる事が「40年間、無遅刻・無欠勤」で、退社時に「ご苦労様、の一言も無かった」というのはつまり、岡田さんは単なる駄目社員だったのではなかろうかとか思ったら駄目ですか、そうですか。駄目社員だからどんな扱いを受けてもいいという訳では勿論ないのですが、後半の行動も合わせて考えると、岡田さんは単なるダメな人だったという気はしないでもない。
増田と別れた岡田が面接に向かった、あけぼの社で彼を待っていたのは、老人達と火付けの練習を行っていた、顔に傷のある男・須藤。
「我が社の仕事は放火です。日本中を焼け野原にするのが仕事です」
いきなりの爆弾発言。
戸惑う岡田を、若い連中に蔑ろにされた経験は無いか? そんな事でいいのか? 終戦の時に中学生だった貴方のこれまでの奮闘は報われたのか? と言葉巧みに誘導する須藤。

「だからこの国をもう一度焼け野原にしてやるんですよ!」
「豊かさに腐りきった若い奴らに、かつて貴方が味わったと同じ、何もないところから国をつくりあげる試練を与えてやるんです!」

その気になってしまった岡田、放火団に加わる事を決意(この時点で駄目すぎる)。
ここで老人放火団のテーマ。

「「「わ、わ、わしらは老人放火団
マッチ一本愛の鞭
恨みに燃える真っ赤な炎
腐った日本を焼き尽くせ おー!」」」

なんかこう、色々、最低です(^^;
そして発生する3日で7件の連続放火。事件の調査に向かったソルブレインは、放火現場のどこでも、火事を見ながらはしゃぐ老人達の姿があった、という証言を得る。たまたま現場近くの中学生が撮影していた火事の写真に、岡田が写っているのを見つけた増田は、増田が面接試験に向かう筈だったあけぼの社を訪れるが、既にもぬけの空。大屋から、社長は須藤という男だったと情報を得る。
一方、あけぼの社を引き払ってアジトに隠れていた須藤&放火団の面々だったが、老人達に放火対象の選択に疑問を挟まれ、須藤は真の目的を割と素直に白状。
彼の目的は、自分の信じる社会正義の為などではなく、家族を破滅に追い込んだ不動産王・桜木への個人的復讐であり、これまで放火の目標にしたのは全てその桜木の持ちビルであった!
20年前、桜木の為に一家は家に火を放って心中、ひとり生き残ってしまった須藤は左足と顔の一部に大火傷を負い、義足で不自由しながら、社会の片隅で生きてきた……そんな須藤の事情を聞いた老人達は、「あんたの為にやるんじゃない。自分たちの為だ」と、須藤への協力を約束。
その頃、ソルブレインもこれまでの7件の放火が全て、桜木の持ちビルを対象にしていた事に気付き、桜木と接触。また須藤の足取りを探った増田は、彼が心臓の病で余命いくばくもないという事を知る。
桜木をマーク中の玲子の前に、白昼堂々、歌いながら現れてビルに火を付ける老人達
玲子とドーザーが慌てて消火するが、老人達の二人、岡田と飯島が桜木を拉致し、須藤の待つアジトへと連れて行く。後を追ったソルブレインの前に立ちはだかったのは、日の丸の鉢巻きを締めた老人二人火炎瓶攻撃
ひゃっはーーー 腐った日本を消毒だぁぁぁぁぁぁ!!
その背後のアジトの中は、今、炎に包まれていた。己の余命を悟る須藤が、桜木とチェーンデスマッチ状態で、一緒に焼け死のうとしていたのだ!

「真面目なだけが取り柄だった親父も、
優しかったお袋も、
素直で可愛かった妹も、
みんな炎の中に消えたんですよ。
これでやっと、20年遅れでみんなの所に行ける。あなたを連れてね!」

「死にたくない!」と必死に叫ぶも、鎖にからめとられる桜木。
外では、ブラスアップした大樹と玲子が、結局、老人達に実力行使。火炎瓶を打ち砕き、竹槍突撃をいなし、二人を無力化するとアジトの中に駆けつけるが、既に火勢の収まったアジトの中では、床に倒れて須藤が息絶えていた
息も絶え絶えながらも何とか生きていた桜木を運ぶジャンヌと、力尽きた須藤を背負って外に出てくるブレイバー。
その姿に、岡田は呟く。
「桜木だけが生き残った……腐りきった日本だけが」
途中からは岡田に同情して協力していたとはいえ、そもそもは、腐った日本=若いやつら、だった筈なのに、ここで、腐った日本の象徴が、老人らと同世代(ちょっと上ぐらい?)の桜木にすり替わる、という、恐ろしくアクロバットな脚本
結局老人達も、必要なのはお題目であって、自分たちの私怨をぶつけて憤懣を晴らしたかっただけなのだ、という構図が明確に浮き彫りにされます。
熟年以上に優しいレスキューシリーズなので何か救済があるのかと思いきや、卓袱台を投げっぱなしジャーマンでひっくり返しながら猛スピードで崖下へ転がり落ちたまま誰も帰ってこない、という狂気のエピソード
もちろん、前半部分で充分に取り返しのつかない事をしているのですが、そこから更に、加速して背中に蹴りを入れてきました。
いいか悪いかでいえば、見ている途中で、だいぶ引いた。
岡田「この、何もかも焼き払われた所から、私はこの国を造った。道路を造り、橋を造り、この国全てを造り上げた。凄いだろ? 全部、私たちが造ったんだよ。汗と涙で。それなのに……誰も、それを認めてくれん」
増田「俺は認めますよ」
岡田「良かった……良かったなぁ飯島さん。わたしらを認めてくれる、若いやつらが居たよ」
増田「でも、気持ちはわかるけど、でも、あなたたちがやった事は、やっぱり間違ってるんですよ。……連続放火、ならび拉致誘拐で、逮捕します!」
岡田らに手錠をかける増田。
増田は叫ぶ。

「本部長、真っ当に生きてきたこの人達が、なぜ俺に手錠をうたれなけりゃいけなくなっちまったんスか! 誰が、何がこの人達を追い詰めちまったんスか!」

……えーとそれは、自分たちが満足できない事を、他人に憤懣としてぶつけられる心性だからだと思うなぁ。
増田の個人的同情は自由ですが、社会に責任を転化するまでもなく、明らかにこの人達が悪い。
この、増田が妙に肩入れする事で誤魔化しつつバランスを取ってはいるけれど、どう見ても老人達に一切同情の余地がない、というのが今回の凄くて酷いところ。
敢えて言うなら復讐者の須藤には同情の余地はありますが、桜木が死ぬ事で誰かが満足してはいけない、という所を踏み越えなかったのは評価。
それをやってしまうと、前回に引き続いてテロリズムの許容になってしまうので。
ラストはナレーションで締め。

――手錠をうった純の心に、やりきれぬ、苦い思いが残った。
その苦さが、どこから来るものなのか、増田純、22歳の春の、辛い犯人逮捕だった。

色々と、問題のあるエピソード。
何がまずいかというと、人の善性が一切描かれない話、というのはよろしくないなぁ、と。
敢えていうなら増田が人が好いのですが、あくまであれは正義の味方ポジションからの態度と発言なので、ゲスト全員が全て大義を建前にした歪んだ私怨で行動していて(建前を立てているからなお悪い)、その結果、誰も救われないというのは、いかがしたものか、と。
ラストの増田の言葉で勝手に老人達が赦されているのですが、むしろ、あの老人達が赦されてはいけないポジションなので、もう一つおかしい。まあ、更に全編悪意まみれだと解釈すれば、増田のその場の勢いの「俺は認めますよ」発言に対する岡田の返答は、(簡単にわかってたまるか)的な嫌味だとも受け止められますが。
今回、この辺りは混線していて、そもそも
「桜木だけが生き残った……腐りきった日本だけが」
という台詞が無ければ、最初は若い世代への憎しみで放火していた老人達が後半は須藤の境遇に同情して……という形で、同じ逮捕まで描くにしても、もう少し人情話よりに収められたかと思うのですが(それで良いかはさておき)、それを是としなかったし、この台詞で救いようがなくなっている。
ではどうしてこうなったかというと、ややメタな話になりますが、このエピソードには、戦後約45年が経ち、終戦時に中学生ぐらいだった岡田の世代(1930年代前半生まれ)が退職を迎える、という社会背景があります。
で、その世代が憎しみを向けるのは経済的繁栄を当然のものと享受し自分たちを敬わない若い世代なのか?
……いや本当に憎いのは、彼等より少し上の世代で、戦後の混乱期に時流に乗って勝ち抜けた一部の成り上がりではないのか。
どうもこのシンボルとして、桜木が置かれている。
スタッフ会議でどういうメンバーが話し合うのかはわかりませんが、東映プロデューサーの堀長文が1936年生まれ、今回監督の小西通雄が1930年でどんぴしゃ、脚本の扇澤延男が1956年、と存外この台詞は、小西監督の実感辺りから出てきたのでは、なんて事も想像します。
その上で老人達にまた若いやつらに向けて文句言わせたり増田がフォローしたりで、物語としてはますます混線してしまうのですが(^^;
“正解がない”というリアリズムといえば聞こえがいいですが、物語としては一本、芯を通すべきではなかったのかな、と。せめて増田の話になっていれば良かったのですが、そういう構造でもないですし。
あとこれは『ソルブレイン』全体の問題になりますが、“若き刑事の悩み”という部分で増田にスポットを当てたのは失敗だったと思います。竜馬さんとの差別化をはかるという意味でも、大樹で良かったような。とすると、そもそもの増田の存在意義が無くなってしまう(^^;のですが、大樹をヒーロー化する為に、成長要素のドラマ部分を増田に割り振ってしまうと、ますます大樹の個性が薄れてしまうので、大樹は思い切って“悩めるヒーロー”で良かったのではないかなぁ。
逆説的に、そういうヒーロー像のOKが出なかったので、ソルブレインに増田が誕生した、という感じですが。
8話でようやく独り立ちを始めた大樹ですが、やっぱりキャラが薄い(服装は濃い)ので、もう少し意識的にキャラ造りしてほしいところ。積極的に日常パートを描いてみる、とか、主に竜馬さんとの差別化という点でも、やりようは色々あると思うのですが。