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『特救指令ソルブレイン』感想19

先週分。
◆第31話「彼女は夢の未来車」◆ (監督:小西通雄 脚本:扇澤延男)
プロット元は「サリーはわが恋人」(アイザック・アシモフ)かなー。90年代ともなれば“意思を持つ自動車”というアイデアは珍しくも何ともないと思いますが、ゆえにこそ展開のそこかしこに影響を感じる。
大樹の大学自体の先輩・南部光利が、長年の研究の成果を稔らせ、夢の未来カーを完成させた。光利の妻・典子(てんこ)が玲子の高校時代の親友という縁もあり、そろって未来カーのお披露目を見に行くソルブレイン一同(除く、正木と亀。可哀想な亀)。
二人テープカットに二人くす玉とか、南部夫婦はかなりハイテンション。
そして披露された未来カーの名は、「T−01」。ソーラーバッテリーを搭載してガソリン要らず、高度な安全センサーを搭載し、完全制御の自動運転によりたとえドライバーが寝ていても安全に目的地に辿り着ける、というまさしく夢の車である。そんなT−01の“声”(妙齢の女声)を聞くドーザー。どうやら、ドーザーとT−01のコンピューター波長が同調しており(同じ通信帯を使用している、ようなものか?)、お互い同士でだけ会話が可能らしい。
しかし幸せな状況は一変、忘れ物を取りに戻った増田がガレージで見たのは、床に倒れる二人だった。典子は怪我を負い、光利は死亡。ソルブレインが辞した後にストッキングを被った強盗が侵入し、二人を拳銃で撃つとT−01を奪って逃走したのだ。だが続けて、廃工場で強盗達の変死体が発見される。現場に残された痕跡からT−01によって轢き殺されたと見られ、大樹は強盗グループの仲間割れを推測。
――だがT−01は、安全センサーの働きで人を轢けない筈では?
更にそこへ入る、T−01がガレージに戻っている、という報せ。いったい何が起こっているのか……南部自動車開発研究所に向かったソルブレインは、ドーザーにT−01から話を聞き出させる。

「誰も安全センサーを切ったりしてないわ」
「あたしが、あたしの意思であの二人を殺したの」

T−01は、南部夫妻の復讐の為に、自らの意志で強盗達を轢き殺したのだ!
忘れずに組み込もう、ロボット工学の三原則!

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

思いもかけぬ真実に、一旦T−01の動力回路を切断した大樹達は、本部に戻って善後策を競技する。
万が一を考えてドーザーを残して。
ど うし て
案の定、動力回路の配線を接続してしまうドーザー。
T−01「ドーザー、こんな事して、叱られるよ」
「一度ぐらいは、命令に背いてもいいさ。でも、T−01。どんな理由があっても、どんな犯罪者でも、けっして人を殺したりしちゃあいけないんだ」
自由意思のそれほど発達していないドーザーが命令無視を犯し、それでもなお、犯罪者だから殺していいわけではない、と説くというのはなかなかいいシーン。
正直、大樹の麗しきド正論よりも、胸に迫ります。
それもどうかとは思うけど。
T−01がスイッチを入れたカーラジオから流れる童謡に耳を澄ませる2台……だがそこへ、再び賊が乗り込んでくると、榴弾を投擲。T−01は奪われてしまうが……いざとなれば自力でエンジンを止める事も可能な彼女が賊の運転のなすがままになっていたのは、復讐を完遂するべく彼等の黒幕の元へ辿り着く為だった!
T−01が強盗の黒幕の存在を認識しているというのは少し無理がある筋で、勿体なかったところ。最初の強盗達の会話から知ったというならそのままアジトまでは黙っている筈ですし、ガレージに戻った後のソルブレインの会話にそれを示唆するような内容は無かったですし。後者の展開が筋としては自然なので、脚本上はあったものの、カットされた、という可能性はありそうですが。
(やや強引に理屈をつけるなら……T−01、強盗達の会話から黒幕の存在を知る→しかしアジトまで我慢しきれずに殺害→殺人行為に一種の恐慌状態となり我が家へと帰還→黒幕の元へ行くチャンスを窺っていた……と収まらなくもないですが)
これ以上、T−01に殺人を犯させるわけにはいかない。死亡した強盗二人の前科から、関係者を締め上げて黒幕・椎名の居場所を聞き出したソルブレインは、そのアジトへと急行する。道中、T−01のTは典子のTであり、「T−01は2年遅れの結婚指輪なんだ」と玲子にもらす典子。そしてソルブレインが目にしたのは、燃え上がる工場の中でT−01に追い立てられて逃げまどう犯人グループであった(※火が付いたのは犯人グループの責任です)。
増田、初?の格闘戦で活躍。
犯人グループを取り押さえる。
来週死なないように気を付けろ!(おぃ)
鉄骨の下敷きとなった椎名に迫るT−01を必死に抑え込み、思いとどまらせようとするドーザー。だが……
「人間なんか皆殺しにしてやる!」
椎名達による高電圧実験の影響か、回路に変調を来したT−01は、もはや南部夫妻の為の復讐を通り越して暴走を開始していた。自分の説得にも耳を貸さないその姿に、典子は断腸の思いでその破壊をブレイバーに望む。
ここに至るまでの車内の会話で、「T−01が夫の忘れ形見であり結婚指輪と同じ存在」とする事で典子の中で非常に重い存在である事を強調し、ただの暴走ハイテクカー、というだけでなく、それを破壊する事に大きな意味を持たせたのはお見事。導入のご都合の為かと思われた、大樹の先輩と玲子の親友の夫婦、という設定も、そういう話が出来る関係、として玲子と典子を設定する必然性が生じ、うまくまとまりました。
90年代始めにこのぐらいテクニカルな脚本を放り込んでくる扇澤さんはやはり達者。
欲を言えば「暴走」でお茶を濁さずに、正常なままあくまで復讐心を捨てないT−01にソルブレインがどう立ち向かうか、とまで重い展開にしても良かった気もします。……まあ、それをやると“ロボットの人権問題”というシリーズとして避けている部分が浮上してロジックがややこしくなりすぎるので、ここまでが無難ではありましょうが。
典子の決断を受け、ギガストリーマーを構えるブレイバー。
だがそれを、ドーザーが押しとどめる。
「ドーザー!」
「隊長、私がやります!」
……ところで、貴方達が盛り上がっている間に、ジャンヌさんの背後で絶賛鉄骨の下敷き中の椎名さんが死にそうになっているんですが、レスキューしなくて大丈夫? あの位置関係だと、たぶん炎で熱くなっているゾ、鉄骨。
ドーザーの振り下ろした拳がT−01を砕き、大爆発。後に残ったのは、スクラップと化した部品と、エンブレムだけ……。典子はエンブレムと夫の遺骨を手に一度故郷へと戻り、夢の車作りの為の再起を誓って去っていく。そして誰も居ない工場のガレージで、T−01に花を捧げるドーザーは、あの日カーラジオで彼女と聞いた童謡を口ずさむ。



シャボン玉消えた 飛ばずに消えた
産まれてすぐに こわれて消えた
風、風、吹くな シャボン玉飛ばそ


夭折した子供への鎮魂の思いを込めた歌詞、という説があるそうなので、そこへ掛けたのだと思われますが、いいラストになりました。
もう少しロボット(刑事)のアイデンテティの部分に突っ込んでくれれば言うこと無かったのですが、様々な要素をうまく埋め込んだ好篇。
もちろん当たり外れはありますし、今シリーズでは一本明らかにやりすぎたりもしていますが、やはり扇澤脚本は面白い。話の出来が悪い時でも盛り込まれている諸々が面白いし、一つか二つは印象的な台詞が入っている。この後メタルヒーローシリーズの中核を担っていく事になるようですが、この当時に1シリーズ、メインで戦隊やってみてほしかったなぁ。


◆第32話「警官殺人を追え!」◆ (監督:小笠原猛 脚本:高久進
とうとう、ミニスカ+花柄ノースリーブの玲子さんは、どこへ行くのか。
まあ初期の、全員黒革よりはマシといえばマシな気はしますが、どこからどう見ても刑事に見えなすぎる。……まあ誰が刑事に見えたかといえば、竜馬さんからして刑事には見えませんでしたが!
大樹と警察学校の同期で親友だった警官・田中隼人が何者かに刺殺された。平沼時夫という男が逮捕されて犯行を自供するが、その子供達の話を聞いた玲子は、どこかそれを鵜呑みにできないものを感じる。正木の指示で独自調査を始めた大樹だが……
という、全編に定番的な捜査シーンや尋問シーンが散りばめられた、割り切った刑事ドラマ展開
予告その他のせいで、犯人は一発でまるわかりですが(^^;
高久脚本という事で不安だった致命的な時制の崩壊などもなく、オーソドックスな展開なので物語も破綻しませんでしたが、内容の方は本当にベタで良くある展開と伏線のてんこ盛りで、悪くもないけど面白くもなく。
特撮に刑事ドラマ要素を盛り込んだレスキューシリーズでシンプルに刑事ドラマをやるという一種のメタ構造は、本編のアベレージが高ければネタ回として評価できない事もないですが、『ソルブレイン』のアベレージが低いのでどうしても、「気持ちはわかるけどその前にしっかりとヒーロー物として組み立ててほしいなぁ」と思ってしまいます(^^;
真犯人に向けた大樹の、
「おまえを死なせはしない! 俺が法で裁いてやる!」
は格好良かったですが。
話の展開があまりに地味だと思ったのか、クライマックスは思わぬ激しい大爆発で、ドーザーも変形して活躍。
誤認逮捕により冤罪寸前だった平沼時夫は酒に溺れて心の弱い自分を反省し、子供達とやりなおす決意を固めて一応、大団円。
それにしても高久先生もまさか、警察官が身内に甘いのも、身内の敵に超厳しいのも、20年後にそのまま通用して、2012年の今日この時にまさしくタイムリーな社会諷刺になろうとは、さすがに思わなかったに違いない。
大樹も感情的になって「平沼時夫が犯人なのは間違いないんだ!」と決めてかかって玲子に論破されそうになるシーンなどは、ここまでのシリーズでの大樹の描かれ方とは少々齟齬がありますが、面白い。以前にも書きましたがむしろ大樹は最初からこうやって時々判断を間違える、成長途上のヒーロー像として描いていけば良かったと思います(それを増田に担当させようとして失敗したわけですが)。
……そういえば。

もしかして:増田が出てこなかった

次回、
きゃーーー、広瀬さぁぁぁぁぁん!
時期的にはちょうど、トランザになる少し前か。