◆第39話「夢を届けた宇宙人」◆ (監督:小笠原猛 脚本:鷺山京子)
「金持ちの男がやってきて宝石を大量に買っていったと思ったら、しばらく後に受け取ったはずの現金が煙にようにかき消えた」という謎の事件が続発……それは、集団幻覚を発生させる装置・サターンヘッドの悪用による窃盗事件であった。三流マジシャン・水野良平は、窃盗グループから逃亡中に交通事故を起こした男からサターンヘッドを受け取ってしまい、グループに追われる事になる。何の気なしに装置をかぶってみた良平は、通りすがった子供に気軽に言った言葉から幻覚の作用によって宇宙人と思われてしまうのだが、サターンヘッドにはある恐るべき秘密があった……。
集団幻覚発生装置サターンヘッドは、精神病の治療用に作られたが、使いすぎると脳細胞が破壊されしまう危険性の為に、設計図ごと破棄された……という事なのですが(悪用されているのは盗まれた試作品)、
〔精神病の治療器具・危険性が高い・開発中止〕
……て、前作最終回に全く同じ3拍子揃った装置(本能覚醒マシン)が登場しましたが、もしかしなくても開発者は黒田鬼吉先生でしょうか。……まあ、あの人なら、設計図燃やしたりはしなさそうですが。
宇宙人だと思われてUFO好きの少年サトシに匿われた水野は、激しい頭痛を覚えながらも、彼の友達らの前でも幻覚を見せて喜ばれる。子供達を喜ばせたくてマジシャンの道に進んだ水野は、サトシ少年に宇宙通信機だと言って腕時計を渡した後、外で装置をどうしようかと思っている所を、装置を追う大樹と接触、サターンヘッドに隠された副作用を知る。
水野が大樹に「サーカスにいた」という事を凄く重大な告白のように言う(大樹のリアクションも妙に深刻そう)のですが、えー……もしかしてこの時代はまだ、サーカスというと親に売られた子供達が見世物の訓練に励む場所だったのでしょうか(^^; まあ、世紀末TOKYOなら、有り得なくもない。
一方、サターンヘッドを追っていた窃盗グループは水野がかぶっていた帽子を見つけ、サトシ少年を締め上げるが、銃声を聞いて捜査中の玲子と純が駆け付ける。大樹と共に遅れてやってきた水野は、人質にされた少年を救うべく、頭痛をおしてサターンヘッドを被ると、犯人グループ達に宇宙人による攻撃の幻覚を見せる。
人間達が幻覚を見る中、作用しないドーザーが首をひねる、というのは小技の効いた演出。
そして宇宙人を見て一旦は逃げ出すものの、兄貴を守る為にやっぱり戻ってくるチンピラ達が意外に熱い(笑)
幻覚により窃盗グループが混乱している内に大樹達はブラスアップし、無事に少年を救出。悪役のボス・谷村役が岡本美登さん(戦隊シリーズなど多数出演のアクション俳優。『超新星フラッシュマン』ボー・ガルダンなど)だったので、背広のまま大樹と格闘戦してくれるかと思ったのですが、拳銃振り回していただけで、ちょっと残念。
犯人グループは逮捕され、水野はサトシ少年に、「UFOで去っていく宇宙人」という最後の幻覚を見せ、少年の夢を守る。水野に最後のサターンヘッド使用を許したり、水野が身を隠している間に自然な流れで少年をパトカーに乗せて家まで送っていくなど、大樹が珍しく気が利いて格好いい(笑) ……いや大樹、野暮な事を言いがちなので!
そして水野は、自分の力で少年達の目を輝かせたいと、マジシャンとして一から腕を磨き直すべく、練習の日々を送るのだった。
少年の夢を守るべく、夢破れかけた男が奮闘する、という、柔らかいタッチの1本。……脳細胞が破壊されたり、手榴弾が飛び交ったりしますが!
もちろん当たり外れはありますが、前作今作と、シリーズを一本調子にしない、という意味において、鷺山・扇澤、両脚本の存在意義は大きい、と改めて。
筋としては、ちょっと偶然が多すぎたのは難。水野が逃走中のチンピラと出会ったのも偶然、サターンヘッドを被ったのもほぼ偶然、サトシと出会ったのも偶然(ここまでは、許容範囲)、大樹が水野を見つけたのも偶然、玲子と純が工場の近くで銃声を聞きつけたのも偶然……と後半の二つはさすがに強引にすぎました。理屈をつければ、交通事故の現場近くを捜索していた、という事なのでしょうが、こういう時こそ、水野らしき男を見かけたという情報を得る、など聞き込みシーンの1カットでも欲しかった所。一つ入れるか入れないかでだいぶ説得力が違うので、勿体なかった。
次回、
ナレーション「その背後には、復讐の貴公子・高岡隆一が居た」
き、キコウシ?!
◆第40話「英雄(ヒーロー))に罠をかけろ」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:杉村升)
OPにパイルトルネードとナイトファイヤーが追加。
やっぱり強調されるのは、同じ武器を持った事で分かり合う二人なのですね(笑)
通勤中、白バイに止められる増田。
「やだなぁ、俺、違反なんかしてないよ。だいたい、おたくと同業ですよ」
……あー、これはやってるなー。
過去に違反揉み消ししてもらってるなー(笑)
ところが、白バイ警官は違反切符の揉み消しどころか、謎のスプレーで増田の意識を消し去り、そのまま連れ去っていく。
一方、ソルブレイン本部では……
正木「あれ、純は?」
玲子「遅刻みたいです」
亀吉「どうせまた、寝坊ですよ」
……それでいいのか、ソルブレイン。
そんな和やかな朝の一時にかかってくる、「純を誘拐した」という犯人からの脅迫電話。犯人は、プロテクターを身につけずに生身で来るようにという条件付きで、大樹と竜馬を名指しで呼びつける。
ここに来て、まさか、まさかの、増田、ヒロイン狙い。
そう来たか、増田(おぃ)
ところで今回から、竜馬さんが似合わないカーキ色のジャケットをやめて、黒ジャンパーに戻りました。あのジャケット姿は変すぎたので良かった。良かったのですが……前々回ぐらいから、大樹が秋冬使用で、黒ジャンパーに戻りました。
…………おや?
なお二人とも、中のシャツは白でお揃いです。
……ヒーロー二人、私服だだかぶり。
ズボンの色しか変わりませんよ……(大樹:白、竜馬:黒)。
どうしてこうなった……。
明らかに、今作スタート時に、大樹の基本パーソナルカラーを竜馬さんとかぶらせた制作側のミスだと思うのですが(^^;
もういっそ、竜馬さんは黒ジャンパー+赤シャツ+赤ズボン、大樹は黒ジャンパー+青シャツ+青ズボン、でいいのではないでしょうか。二人揃って、チンピラ度が加速度的に上がりそうですが。
まあ、露骨に服の色を付けると戦隊物の匂いが濃くなってしまうので、それを避けた上で多少なりとも警察っぽい配色という事で無彩色(黒・白基本……画面が暗くなるので女刑事はどんどん派手に)になったのでしょうが、まだむしろ、カーキ色のジャケットは大樹の方が似合った気はする。
そんなこんなで、どちらがどちらかステルス気味の二人を指定された廃工場で待ち受けていたのは、変なバックパックを背負った男だった。
男は掲げたその両手から、電光を放つ!
思わぬ超科学な攻撃に苦戦する二人だが、ここでドーザーとジャンヌが背後の壁をぶちやぶって奇襲。しかし電撃を受けてジャンヌが倒れ、男には逃げられてしまう。全身打撲で絶対安静の身となる玲子……病院で憤る亀さんの台詞に、
「犯人のやつ、純ちゃんを誘拐して……」
というのがあるのですが、いつの間に、そんな関係に。
……や、変な意味ではなく、そんな呼びかけしたの、番組内で初だと思うのですが。二人称でアクセント付けるなら、もっと早い内からやってください、と(笑)
戦線離脱したソルジャンヌだが、格闘戦で覆面を剥ぎ取った際の映像から、強盗傷害で前科3犯の今井という男が犯人の正体だと判明する。今井は服役中だったが少し前に看守曰く「空を飛んで」脱獄、行方をくらませていた。そして今井の背負っていったバックパックは、空気中の静電気を吸収して人体を帯電させる静電気吸収装置である事が判明する。
大樹も竜馬も今井とは面識がなく、個人的に恨まれる覚えはない。また、国内の研究機関で開発事例の無い静電気吸収装置を作ったのは、いったい何者なのか。今井の背後に居る何者かの影を感じながら刑務所へ向かった二人は、今井が模範囚であった事を知る。入所後に産まれた子供のために早く出所したいと真面目に刑期をつとめていた今井は刑期満了まであとたった3ヶ月だった。はたして、そんな今井がどうして脱獄したのか……。
今井の子供の「ぼくのおとうさん、どこにいるの?」という所では、看守さん、迫真の演技。
今井の妻子の家を訪れた竜馬と大樹は、そこで更なる衝撃の事実を知る。今井の息子・悟は交通事故で死亡していた……しかも加害者は、居眠り運転の覆面パトカー。
今井の警察への復讐心の根源はそこにあった。だが、それだけではない。今井を脱獄させ、静電気吸収装置を与え、復讐をそそのかした何者かが居る……竜馬の脳裏にはその全てを実行可能な一人の男の名が浮かんでいた。天才的な頭脳と技術を持ちながら、憎悪に狂いソルブレインに復讐を誓う男――その名は、高岡隆一!
シーン変わって、オルゴール付きのロケットを開きながら、今日も白詰め襟の貴公子・高岡。
「見てろソルブレイン、私の狙いがどこにあるか、最後の最後になって気が付くんだ!」
竜馬は事故を起こして懲戒免職になった刑事の元へ向かい、一度本部へ戻ろうとした大樹に入る、正木からの通信。再び今井から電話があり、大樹一人だけを呼びだしてきたと言う。
正木「今度は、ブラスアップしていくんだ!」
本部長、鬼畜
まあ確かに、今回は、「プロテクターつけてくるな」、て言われなかったんですが(笑)
とはいえ前回も、しっかりジャンヌとドーザー潜ませていたし、正直、既に増田が殺されていても文句は言えないと思うのですが、増田の存在理由はデミタスレベルだから仕方ない。
死んだら、不名誉な誘拐の事実は揉み消して、二階級特進だ増田!
そんな増田は、時限爆弾付きで天井から吊されていた。姿を見せた今井の放電攻撃に膝をつくブレイバー。必殺の電光がその体を灼き尽くそうとしたその時――間一髪に駆け付けるナイトファイヤー!!
……えーとあれですね、今回増田が空席のヒロインの座を狙うという思わぬ奇策に出ましたが、結論として、竜馬さん登場時の大樹の方が圧倒的にヒロイン度が高い(笑)
ブレイバーを救ったナイトファイヤーは、今井に息子を失った交通事故の真実を語る。悟を轢いた警察官はなんと、事前に催眠術をかけられていた。全ては今井が警察への復讐に狂うよう仕組まれた、高岡の周到な計画だったのだ。
ネタとしては読めていただけに、催眠術、というのは如何にも強引で勿体なかったところ。話を詰める都合でここまで凝れなかったのでしょうが、もう少し、説得力のある理由が欲しかった(ただし今回、間延びしてしまった九州編の前後編のようにしないで、1話に凝縮した事自体は良かったと思います)。
もちろん信じない今井に、今井の妻から預かった、刑務所の今井に届く筈だった悟の声を吹き込んだテープを聞かせるブレイバー。「これ以上、悪い事をしないで早く家に帰ってきてね」という悟の言葉……どんな理由があろうと、今井がしている事は犯罪だ。亡き子供の想いに応える為にも、もう一度刑務所でやり直すんだという大樹の言葉、竜馬の突きつける高岡の写真と警察官の証言。高岡を信じる事が出来なくなった今井は、増田に取り付けていた時限爆弾を手に自殺を図り逃走。爆発の直前、ブレイバーがなんとか静電気吸収装置を破壊、ナイトファイヤーが爆弾を外へ投げ捨てる、というチームワークにより、自殺を回避させる。
お約束の、爆煙の中から無事だったナイトファイヤーが姿を見せる、というシーンはつまらないのですが(ブレイバー含めて使いすぎ)、九州編のvsボンバーでは割とやられっぱなし、ヒットマン編ではそれぞれがパイルトルネードを撃っただけなので、実は劇中初のヒーローコンビネーションアクション、という扱い、か? 後まあ、ナイトファイヤーをブレイバーになぞらえて、改めてヒーローとして劇中の立ち位置を確立させる、という意味はあったのかと思います。
一瞬、「スパーク!」するかと思ってドキドキしたのですが、どうやらナイトファイヤーには、《高速移動》機能、ついてない模様。出鱈目すぎるので止めたのか(笑) 両スーツに差を付けるという意味では、いっそあっても良かったかとは思いますが。
「今井、刑務所に帰ろう」。大樹の言葉に頷いて歩き出す今井……だが、突然の後方からの狙撃により、崩れ落ちる。
振り向いた二人の前に、高岡現る。
鉄骨にぶら下がって。
無駄にいい高笑いとともに、竜馬達の推論が正しい事を認める高岡。
「罪を憎んで人を憎まず、それがおまえたちのモットーだったな!」
……どこで仕入れた情報か知らないけど、高岡、それ、ちょっと違う。
わかりやすくまとめるとそういう事かもしれないけど、違う(笑)
「だが今は、この私を憎んでいる! 偉そうな事を言っても、所詮おまえ達もただの人間なんだ!」
今井を抱き込む為に悟を殺し、今またその今井をあっさりと切り捨てる高岡、その真の目的とは――
「憎しみを持てば、冷静さを欠き、捜査は混乱し、ソルブレインは内部から崩壊する! その為なら、虫けらの命の一つや二つ」
「貴様ぁ!」
「憎め! もっと私を憎め! はははははっ、あはははははは!」
高岡は最初から、今井がソルブレインを倒せるとは思っていなかった。彼の真の目的は、ソルブレインに自らの非道さを見せつける事。全ては、彼自身による復讐の為の前奏曲に過ぎなかったのだ! 大樹の心に憎しみの種子を蒔き、高笑いとともに高岡は去っていく。……相変わらず、あのケーブルはよくわかりませんが。
いやまさか、ここに来て、ここまで徹底的な外道が登場するとは。
ここまでやるなら、前回登場時にもっと非道でも良かった気もしますが、ここは意欲的な展開を買いたい。
本部の屋上?で物思いにふける大樹に、近づく正木達(屋上で佇むのは刑事ドラマのある種、お約束)。
「大樹、そんなに苦しいか」
「僕は高岡が憎いんです。なんの罪もない命を奪い……
本部長、本当に警察官は、人を憎んではいけないんでしょうか?」
「その通りだ。罪を憎んで人を憎まずを厳守するのが警察官だ。冷静に、罪だけを考えるんだ」
「本部長……」
また適当に正木がまとめてしまうのかとガッカリしかけたのですが……
「大樹は悩んでいた。
卑劣な高岡を憎んではいけないのか。
警察の仕事とは、人間の憎しみとは。
高岡の突きつけた挑戦状は
大樹の心に、重くのしかかっていた」
おおおおお、引きました!
いやこれは。
ラスト1クール、この路線を背骨にして展開するなら、ようやく色々なものが効いてきます。
ここまでの『ソルブレイン』に多々あったもやもやが、果たして物語の大きなテーマとして描かれ集約される事はあるのか。
これは期待。
前作『ウインスペクター』はラスト1クールで息切れしまたが、『ソルブレイン』は、ラスト1クールで“化ける”かもしれない。
また、前作ラストに駆け足で済ませてしまったテーマの再利用という側面もありますし、前作・今作とメインライターを務める杉村升がここに来て踏み込んできたこのテーマ、どこまでやってくれるか、楽しみにしたいです。
……あの時は、本部長は殺意に屈したし(笑)