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『特捜エクシードラフト』感想9

◆第17話「シンデレラを救え」◆ (監督:小西通雄 脚本:鷺山京子)
交通事故にいきあって救助に協力した拳は、入院した少女・ミカに『シンデレラ』の絵本をプレゼント。その頃エクシードラフトは、慈善事業などに熱心を装うがその裏で細菌兵器P−6を諸外国に売りさばいている大鳥コンツェルン総帥・大鳥タヘイの尻尾を掴むべく、国内にあるというその製造工場の場所を探っていた。
ある夜の事、深夜に目を覚ましたミカは医者達の密談を立ち聞きしてしまう。それは、大鳥タヘイに深い恨みを持つ杉原という医師が、病院の培養施設を借りてP−6を製造、それによって大鳥に復讐しようとしているというものであった。話の内容こそ理解できなかったものの、「12時の鐘が鳴る時、階段の上でガラスが割れて死に神が……」という杉原の無駄に詩的な表現が大好きな『シンデレラ』の物語とミカの脳内でシンクロしてしまう。熱を出して再び倒れたミカは、シンデレラが死神に追いかけられて殺される悪夢を繰り返し見るのだった……。
ミカを見舞いに行き、シンデレラの悪夢について聞く拳。一方、大鳥コンツェルンに潜入捜査をしていた耕作が面倒くさくなって地下へ突入すると、そこには推測通りにP−6の製造施設があった。警備に捕まってしまう耕作だったが、耕作からの連絡が途絶えた事で、隊長達も突貫。
敵も味方も、細菌兵器の培養施設で気軽に銃をぶっ放さないでください(笑)
一方、杉原の後輩で、それと知らずに杉原にP−6の培養設備を貸してしまっていた石塚医師が、密談の内容を聞いていたかもしれないミカの身柄を、思いあまって拘束。ミカを救出した拳は、彼女の夢や様々な情報から、消えた杉原医師が、P−6によって家族の仇を討とうとしている、という結論に辿り着く。その決行時間は12時――場所は、「平和の像」の除幕式会場!
「ミカちゃんが言っていたシンデレラは大鳥なんだ!」
嫌な、シンデレラです。
内戦の地で医療に従事していた杉原は、そこで多くの人々を、そして彼の妻子を細菌兵器P−6によって奪われた……それをばらまいた元凶である大鳥に向けて、自ら製造したP−6を投げつけるが、寸前で飛び込んだ拳がキャッチ。レッダーとブルースも駆けつけて杉原と拳に拳銃を向けた取り巻き達を逮捕するが、杉原は転がった小瓶を手に逃げた大鳥を追いかけ、追い詰める。
しかしそこに現れ、「シンデレラは殺しちゃいけないの」と、大鳥をかばうミカ。
本当に、嫌な、シンデレラです。
だが大鳥は、そんなミカを人質に取る。ためらう杉原を背後から護衛が銃撃し、こぼれ落ちるP−6の瓶。あわや拡散……という寸前、キースが二人を助け、P−6もレッダーの射撃で燃やされて消滅。杉原の復讐は寸前で食い止められる。
「死神になっちゃいけないんだ、絶対に」
事件に巻き込んだ石塚医師、そして拳の説得を受け、うなだれる杉原……変わらず傲岸な大鳥だったが細菌兵器の製造容疑でエクシードラフトによって逮捕され、杉原は、それで良かったのだ、と自分を納得させるのだった……。
きちっとテロの連鎖を断ち切るのを描くのは今作らしい所。
これが前作だと、大樹が上からいきなり綺麗事で説教して(しかも真の悪は逮捕されなかったりして)、うーん……という感じになりがちでしたが、少女の純粋な思いでワンクッション置き、医師としての心に訴えかけ、きちっと悪人(大鳥)の逮捕まで描くという事で、綺麗事の厭らしさを減じました。
どうあがいても20分強の中で生じる“綺麗事の厭らしさ”に対しては、その綺麗事を作品として貫き通すか、色々なクッションを置いていくか、としなければいけないわけですが、そのクッションをしっかり置いていったエピソード。
少女の使い方も面白く、潜入捜査パートが杜撰すぎたのが残念(^^;


◆第18話「パパは嘘つき警官」◆ (監督:小西通雄 脚本:中野睦)
新宿でビル火災が発生。消火に向かったエクシードラフトの前で現場から逃亡した男が、現場に倒れていた人物を暴行し、火をつけた犯人だと思われ、非常線が張られる。耕作の友人である警官、加藤の息子コウイチは、亡き祖父の作った人の本心を読み取るマシン・心理透視機を使って、他人の本音を読む事で、家庭での寂しさを紛らわせていた。そんなコウイチは逃亡中の犯人に行き会い、
「俺は犯人じゃない。よく見てくれ。俺が悪い事をするように見えるか」
と無実を主張する犯人を透視機で覗いた結果、彼の口にしている事は真実だと(心に思っている事と同じだと)信じ、傷の手当てなどに協力。逆に、「本当は犯人じゃないから逮捕しないなら連れて行く」と言ったことに対し、父が口では「逮捕しない」と言いながら本心では(逮捕しなくては……)と考えている事を知り、父に裏切られたと思い込んでしまう。
コウイチが心理透視機を持ち出している事に気付く父、しかしそれなら、容疑者として追っている男は無実なのか? 困惑する所に、容疑者の情報が送られてくる。男は、サワダエイジ、詐欺と傷害で前科4犯。そう、彼は「自分で作った嘘を思い込めるほどの天才詐欺師」だったのである。
隊長がわざわざ「天才」と付けるのですが、詐欺がばれそうになると相手を暴力で黙らせようとするとか、前科4犯とか、天才かどうかは……凄く、微妙。
コウイチを上手く騙して逃亡に協力させたサワダは、アパートの一室に押し入った所で本性を現し、住人を拘束するとエクシードラフト本部に電話をかけ、コウイチを人質に非常線の解除とセスナの用意を要求。その上でコウイチから奪った心理透視機を利用して住人から現金と車を奪い、警察の目を空港に向けさせた所で車で逃走をはかろうとする。
「こんな機械を信じたおまえが馬鹿なのさ」
ところが、何故か住人をそのまま放置していった為、住人から警察への連絡で、逃走車のナンバーなどが露見。隊長はセスナの要求はサワダによる陽動だと見抜き、シムを使って逃走車を追う。一緒についてきた父が犯人に突撃してナイフを奪い、ビル炎上などあったものの、レスキューでコウイチは無事に救出、サワダは逮捕。
「科学がいくら進歩しても、人間の心理はそれで割り切れないんだ」
「装置なんかなくても信じ合う事が大切なんだよ」
と隊長がコウイチを諭し、命がけで自分を助けてくれた父の姿に、親子は和解するのであった。
ところで心理透視機の開発者が「おじいちゃん」というのが、このラストシーン以外では全て「おにいちゃん」に聞こえて、このラストまで、いったい何がどういう関係なんだろう……コウイチの兄は天才少年だったの?! とだいぶ困惑してしまいました。父には「祖父」と言わせるとか、誤解を招かないようにする手の入れ方はあったかと思います。
そして犯人が道ばたに放り捨てた装置は、いずれ別の事件を招く気がして仕方が無い。
とにかく犯人の造形と行動が支離滅裂。冒頭で、“意識不明になるぐらいに後頭部を強く殴った上で証拠隠滅のために放火”までしているのに、押し入った部屋の住人をそのまま放置していくとか、杜撰にも程がありすぎます。まあそもそも、自分で火をつけといて爆発に巻き込まれて一緒に気絶するレベルの馬鹿、っぽい所はあるのですが、それなら劇中でもっと杜撰な所を表現しないと、筋が通りません。
要するに、詐欺師としても粗暴犯としても、造形が中途半端。
現実の人間はそうかもしれませんが、それはフィクションにおいてはリアルではなく、単に物語が収まっていないだけなのです。
“ある時は頭脳派の詐欺師”“ある時は粗暴犯”“ある時は三流詐欺師のチンピラ”という造形は単にシナリオの都合で人物造形が歪められているだけであって、物語と登場人物が噛み合っていないから、筋が通らない。
そしてフィクションであるからこそ、そのフィクション世界なりの筋を通さなくてはならないのです。
まー、隊長が勢いで「天才詐欺師」とか言わなければ、もう少しマシだったのですけど(^^;
事件と犯人像と物語のテーマが、全部しっちゃかめっちゃかで、反省シナリオ。