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追悼・長石多可男、『超光戦士シャンゼリオン』1話を見る

とにかくなんか長石演出を見ようと思って、『シャンゼリオン』のDVDを取り出して参りました。
超光戦士シャンゼリオン』は、1996年放映のTVシリーズ。本放送見ていたのに、DVDを揃えてしまったぐらい、大好きな作品です。大雑把に言うと、C調ヒーローもの。またスポンサーにセガ、という点で少々異色の作品でありました。特にセガならでは、というような玩具展開はなかったのですが。
ちなみにこの年は、戦隊以外ほぼ死んでいて氷河期真っ最中だったTV特撮界に、『ウルトラマンティガ』『七星闘神ガイファード』そしてこの『シャンゼリオン』と、新番組が立て続けに誕生し、瞬間的な春がやってきた謎の年でした。この後また、『ウルトラマン』以外はブリザードに襲われるんですけど(笑)
本作の面白さを語るとなると、演出よりもまず井上敏樹の脚本の面白さを語る事が中心になるのですが、やはり改めて、全盛期の井上脚本は実に面白くてテクニカル。
子供の行方不明事件を探る為、小学校に教師として潜入する事になった主人公の貧乏探偵・涼村暁。
最初に6年生の授業を受け持つが間違いだらけで教えられない

3年生に担当が変わるが、やはり教えられない(笑)

結局、1年生の授業を受け持つ事に
国語の授業で教科書を読み上げ、
暁「さいた、さいた、さくらがさいた!」
生徒達「「「さいた、さいた、さくらがさいた」」」
暁「いいねぇ、その調子!」
生徒達「「「いいねぇ、そのちょうし!」」」
短時間での、主人公の性格の見せ方が実に鮮やか。
そしてこの前後に、
顔を洗っている所に教頭先生にハンカチを差し出されるが拒否→昼休みに水に濡れた際に女性教師にはやにさがってハンカチを借りる
冒頭の事務所のシーンで粉をかけてきた秘書の実家は岩手の民宿→暁が粉をかけた女性教師の実家は栃木の民宿
という、ネタの仕掛けのうまさ。
そしてこの1話でまた凄いのは、露骨に怪しい感じだった教頭先生が、敵怪人ではなくただの変態だった事(笑)
「変質者かもしれないが、ダークザイドではない」
よくあるミスディレクションではあるのですが、ごく純粋に変態、というのが実に凄い。
そしてこれが、狙ったのでは無いのでしょうが、実に後のシリーズ全体に効いてくる事となります。
偶然からクリスタルパワーを浴びてしまった暁は行方不明事件の陰に居るのが人類の天敵・ダークザイドである事を知り、ダークザイド対抗組織の博士からシャンゼリオンへの変身を要求されるが、怪人相手に逃げ惑うばかり。しかしその時、犬探しの依頼の常連である迷い犬が戦闘現場の森に迷い込み、怪人に蹴り飛ばされる。それを見て、咄嗟に犬を助けあげる暁。
それが、
純粋な正義感なのか
貴重な収入源を守る為なのか
どちらでもありどちらでもなく、どちらとも取れるという、この1シーンにおける人間の本音と建て前の凝縮は、実にお見事。
この犬は番組冒頭、シリアスな探偵ものと見せかけて実は迷子の犬探しのお笑いものでした、というシーンで使われ、それ自体はそれほど面白いシーンではないのですが、それがここに繋がって拾われるというのがまた秀逸。
そして犬を助けた事で博士に近づく事になった暁は、変身アイテムを装着させられ、博士の手によって強制的に変身させられる(笑)
犬が蹴られて怒りに燃えて変身してしまうのでは旧来のヒーロー物となんら変わりが無い、かといって犬が蹴られて怒らない男もヒーローにふさわしくはない、しかし純粋に犬の為だけに怒っているという訳でもないかもしれない。
この変身シーンの一歩手前に、これだけ盛り込んでいる脚本も、それを表現している演出も、双方凄い。
ちなみに、東映公式サイト内の『シャンゼリオンメモリアル』(プロデューサー:白倉伸一郎と、プロデューサー補:武部直美による、回顧対談)によると、


武部: 市山さん(市山 登=宗方 猛役)が恍惚として、「シャンゼリオン…」(笑)
白倉: あのカットを撮ってるあいだ、長石監督がずっと…。
武部 あ、後ろで。
白倉: 「どうだ、俺がつくったシャンゼリオンだ! 見たか、ざまあみろ! よしオッケー」とかって大騒ぎ(笑)。
だったそうです(笑)
(サントラCDのライナーノートだったかと思うのですが(手元に無いのでうろ覚え)、作品的なものではなく、主役ヒーローのデザイン的に、こういうヒーローをやりたいという企画を昔あげて没にされたという話があったとか無かったとか)
というか数年ぶりに検索かけたら『シャンゼリオンメモリアル』(http://tvarc.toei.co.jp/tv/changerion/)、まだネット上に存在していました(微妙にリンク切れあり)。結局、エピソード回顧は最後までやらずじまいに終わったようですが(^^;
シャンゼリオンに変身した暁は、圧倒的なパワーでダークザイドを撃破。
ここに、人類の天敵に対抗する正義のヒーローが誕生……

「信じられねえぜ……おーれがこんなに強くなるなんてよ。
 これって……これって……ひょっとして、超・らっきー?!
 こんな力があれば天下無敵。退屈な人生ともおさらばでい、いえぃっ!
 たーっ、たまらんなぁ。はっぴー! 薔薇色の人生、まっしぐらぁ!」

…………した?
そして次回予告、
「ダークザイド? 地球の平和? 全然興味ないね。人生やっぱ、楽しまなきゃさ」
この駄目さ加減。
しかしてこれを、ただのおふざけにせず、あくまでヒーロー物として成立させているバランス感覚が、長石多可男の腕でありましょう。
改めて見ても、安い感じのCG映像が海から飛び出してきたと思ったら、海岸線を歩く男女に繋がる「カラオケ……?」というOP映像の、大丈夫なんだろーか感とか物凄いのですが、いやー、面白いなぁ『シャンゼリオン』。
第2話のサブタイトルが「ノーテンキラキラ」だけど。
DVD揃えた後に全話見直したりはしていないので、改めて全部見ようかなぁ。