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『翠星のガルガンティア』3話感想(ちょっと辛口)

前回で物凄くハードルが上がったというのもありますが、ちょっと残念な出来。
まずAパートがあまりに冗長。
主人公が海賊を殲滅して帰還し、エイミーが自分のもたらした言葉の重大さ、お互いの「戦い」という言葉の持つ意味の違いを認識する、そして色々と手段に問題はあったり後に尾を引きそうではあるものの、それはそれとしてベローズが「お礼」に現れる。
……という流れは良いのですが、あまりに会話が長すぎました。特にレドとベローズのやり取りは、もっとシンプルにしてしまった方が良かったよーな。
“この世界でのやりかたを知る”という点で重要な部分だというのはわかるのですが、それならばもっと、劇的な要素の中に組み込むべきであったと思います。
2話はここを劇の実質的クライマックスとして焦点を合わせたのが良かったのですが(勿論、3話でまた同じ事をされても評価はできない)。
そして実につまらない、船団上層部の会議シーン。
2話の時点では顔見せ要素もあるのでOKとして、3話で続けて同じ事をされては困ります(^^;
関係者それぞれの思惑を描いているつもりなのかもしれませんが、頭数が多いだけで、群像劇としては機能せず。
またここで、年嵩のおじさん二人が会議に加わっているのは、作り手側のリアリティ補強の意図だと思われるのですが、だとすると今度は、ピニオン(修理屋)とベローズが加わっている理由が薄い。
つまり、若年のピニオンとベローズが、船団上層部の会議に加わるほど重要性の高い人物である事が、ここまでで描かれていない。
最低限、2話では描かなかったその部分を、3話で肉付けしなければなりません。
それが出来ないならば、おじさん二人を削って、(なんらかの事情で)船団長以外は若いメンバーで運営している、と含ませた方が良かった。
この、使いこなせるつもりで頭数を出しているのかと思ったら全く使いこなせていない、というのは今後の非常に不安材料。結果的に、個々のキャラクターの内面の動きがさっぱりわからないまま展開してしまいました(特にリジット)。
ピニオンとベローズについては裏を返せば、
〔若年ながら上層部会議に出席している→船団の重要人物である→修理屋とサルベージ屋は重要な仕事〕
(※それぞれ重要な仕事であると2話で示唆はされているが、それが船団において“どのぐらい”重要かは、表現されていない)
という所まで読み込んでほしいのかもしれませんが、そこまで汲んであげるのは、親切にすぎると思います。
仮に百歩譲ってそこを汲み取るとしても、であるならば、それほどの重要人物であるベローズがレドと直接話し合った事に関して、周囲がそれに見合ったリアクションをしなければなりません。
そこが今回、決定的に欠けている。
演出というのはアクションを描けばそれでいいという訳ではなく、リアクションも重要です。
人物Aと人物Bが話せばそれで終わりではなく、それに関わる人物C、D、E……がどんな反応をするのか、それにより、物語は立体的に積み上げられていく。
そしてそういった積み重ねの連鎖こそが、“説得力”の土台となる。
この構造的な連動が意識されていない為に、上層部の会議シーンが非常につまらないし、広がりがない。
そこから派生したやり取りが面白くならない。
また付け加えると、モブが全然生きていない。
せっかく第2話で舞台袖を描いたのに、幾らでも使い手のあるモブが全く活用されていないのは、非常に残念。視聴者へ世界観を伝えるシステムとして、モブというのは凄く有用なリアクションを提供できるのですが。
(だから2話でレドを取り囲むモブの皆さんが食事しているカットを入れたのは非常に良かった)
この辺りは今後、修正に期待したい所です。
後半、潜水部隊が出てきた辺りで、ようやく面白くなってきました。
あの出鱈目な勢いは好み。
ただ、そこまでの戦闘は、非常に面白くなかったですが。
問題は、“主人公機が(現状)圧倒的なオーバーテクノロジーである”というのが、作品設定上の大前提であり、“正面から戦ったら戦闘は当然つまらない”のがわかっているのに、面白くない所。
面白くないのがわかっているからこそ、面白くしなくてはなりません。
1話2話のユーモア感覚が好みだったので、3話の戦闘シーンにもそういった要素を期待したのですが、そこは空振り。
もう一つ大きな問題は、戦闘始まった途端に、修理屋も、サルベージ屋も、ヒロインさえも、影も形も居なくなってしまった事。群像劇を志向しているのか、少なくとも彼等が重要人物であるならば、“戦闘中に彼等が何をしているのか”は存在感と厚みを出す上で非常に重要な所だったので、そこがぽっかり抜け落ちてしまったのはかなり残念。
これもまた、今作の組み立てが立体的な視点を欠いていると思われる部分。
最低限、ヒロインに関しては、例えば補給を手伝っているとか、例えば部屋で弟と一緒に居るとか、弟と一緒に居るなら、戦闘に怯えているのか、それとも何らかの強い意志を感じさせる表情なのか、とか、1カット挟むだけで全然違ったと思います。それでいて、戦闘終わったら魚抱えて主人公の前に飛び出してきてしまうのでは、描き方が雑にすぎます。
ここと上のベローズに対する船団のリアクションの部分は、正直かなり大穴。
ラスト、主人公が慣れない発音でつっかえつっかえ「ありがとう」と口にするシーンは良かったのですけど。
“兵士として純粋培養されていた主人公が人間性を得ていく”、という程度の所で物語をまとめるとも思えないので、その先をどうするか、の見せ方には期待。
いわば“プロメテウスの火”を手に入れる事となったガルガンティア(どうも船団長だけがそれに自覚的っぽい描写はある)がどうなっていくのか、色々と想像できる中で、話をどう転がしていくのかは純粋に楽しみです。
とりあえず、『明日に向かって撃て!』エンドでないといいなぁ。