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『こちら異星人対策局』(ゴードン・R・ディクスン)、感想


遙かに発達した文明を持つ異星人と接触し、その後援を受ける事になったものの、未だ銀河評議会には加盟できない、いわば“見習い”身分の地球。まだまだ銀河の多様な知的種族との接触に慣れていないそんな地球の、異星人対策局に務める三等事務官補トム・ペアレントは、ある成り行きから、地球に友好的かつ評議会で高い発言力を持つオプリンキア人の接待役を務める事になる。降って湧いたこの重責、しかもその接待いかんでは後進惑星である地球にも、銀河評議会に加盟する道が開けるかもしれない。トムと妻のルーシー、そして飼い犬のレックスは、この出来事をきっかけに、様々な異星人と出会う事になる……。
銀河の後進惑星である地球人の夫婦が、知恵と度胸で様々な難題を解決していくユーモアSF。
風刺とウィットをうまくとりまぜ、強力なヒーローでない主人公夫婦が軽妙なタッチで地球人類が巻き込まれる、異星人間のトラブルを解決していく……と出だし非常に好みだったのですが、主人公達が地球を飛び出してから、凄くつまらなくなってしまって残念。
基本的に、巻き込まれたトラブルを、主人公が知恵と度胸で解決していく形式なのですが、この“知恵”の部分を主人公は、ある速習装置によって得ています。その“知恵”の部分……読者に対するネタばらしが常に一番最後で、「この情報を使ってどうやってこのピンチを切り抜けるのだろう」というワクワク感がほとんど無い。“知恵”の部分がある程度、小出しに事前に明らかにされた上で、それらを繋ぎ合わせて鮮やかに解決する、というような展開を期待していたので(この手の話で面白い場合は基本そういう形式)、かなり肩すかし。
また、主人公のパートナーとして常に行動を共にする妻のルーシーが、当初は、上司にやっかまれるほどの出世スピードで知性と行動力を併せ持ったキャリアウーマンとして登場したのに、中盤以降はすっかり、主人公の種明かしに驚く係、になってしまって非常に残念。
思わせぶりなキーポイントぽく描かれた犬のレックスも最初と最後以外には存在意味がなく、ルーシーともども、最後だけ活躍すればいいというものではない、と言わざるを得ません。
序盤に登場した主人公の二人の上司や、今作で最も魅力的なキャラクターと思える机型自動事務処理機のドーリーも全く活かされず、非常に残念。
出だしが好みだっただけに、惜しさの募る作品。