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『翠星のガルガンティア』4話感想

話の流れとして、緩急の“緩”だろうとは思っていたので、概ね予想通りではある回。
予想の範疇で収まってしまった、といえば、収まってしまったという言い方も出来るかもしれません。
欲を言えば、なんらかの驚きが欲しかったところ。
ただ、一旦流れを緩める回としては悪くない出来で、見せ方としても、画面の奥で演技させたりとか、船団内部の高低差を意識的に見せたりとか、努力と志は買いたい。
もっとも、実際にこれが緩める回だったのか、次回以降もこういった雰囲気で行くのかわからない所はあり、仮にこの雰囲気を続けるならば、もう一工夫二工夫は欲しい所です。
特に折角のチェインバーが生かし切れていないのは勿体ない。
重力制御システム?がかえって資材運搬の障害になるなど、アクションで面白く見せようとはしていたのですが、サポート用人工知能とはいえ、事態に対して積極的な打開策の提案もしてくるチェインバーが、戦闘任務を外れて資材を運搬する事をどう考えているのか、とか、そういった部分での面白みも見たかったところ。特に1話Aパートで執拗に戦闘シーンを描いた事とのギャップは、ここでのチェインバーの反応にも使えたと思います(その辺りにこだわりがないならそれはそれで、レドとの反応差なども面白く描こうと思えば描ける筈)。
ラストの雨水を集めるシーンも、もっと大胆に、チェインバーならでは!という形で見せて欲しかった所。住人達がちまちま集めている中、チェインバーがど派手に集めてこそ、見せ場になるのです。戦闘抜きでもロボットに見せ場をという意欲は評価したいのですが、それに見せ方がついていっていません(空飛んで帆布を広げて他より大がかりに集めているのかもしれないが、映像として今ひとつ差がわからない)。
ここで、「そう来るか!」と思わせてこそ、全体の流れが活きるわけで、そこに到達しないと単なる小ネタになってしまいます。
要するに仮想敵は「洗濯出動です!」なわけで、あれを倒すには、もっと馬鹿な事を期待したい。
(作り手がどこまで意識しているのかはわかりませんが、『∀ガンダム』を見ている人間ならば、『ガルガンティア』を見ていると、どうしても『∀』を想起するとは思うわけで)
その点、良くも悪くも作り手は真面目なのかなぁ、とは思いますが。
悪い意味で気になった点は、レドが一気に警戒レベルを緩めすぎな所。チェインバーの命令権を一時的とはいえ貸し出したり、ゆるゆるです。まあ、常在戦場のキャラクターと一般社会のギャップを描く(時に笑いを取る)作品というのは目立つ前例があるので、そちらメインに舵を切りたくなかった、というのはわかりますが、そこでレドの態度の変化を裏付けする要素が、もう一つ弱い。
例えばこれが富野だったら、「え? もう馴染んでるの?」「馴染んでるんだよ!」とリアクションを重ねて表現した上で、どんどん物語を転がしていく事により、劇のスピードで視聴者を納得させてしまう、という力業を放つのですが(笑) 
……まあ、そんな力業を使う人があちこちにいても困るといえば困ります。
で、折角2話3話で「食事」をキーに使ったのだから、レドの食事シーンを盛り込んで欲しかったところ。
船団で暮らす事になったレドが、何を食べているのか? どこで食べているのか? 誰と食べているのか? 船団の人々とレドの距離感など、色々な事が1シーンで表現できたと思うし、物語の要素も有機的に連動するので、そういう要素が無かったのは残念。最後にエイミーが弟とレドに紅茶を出す場面がありましたが、せめてこれを前倒しして、会話中にお茶菓子をかじってみるとか、しても良かったと思います。
また、出来れば船団の人々からレドへの温度差、みたいなものも欲しかった所。これも例えば、食堂での食事シーンなど挟めば上述の要素とまとめて消化できたと思うのですが、そのぐらいは詰め込んでも良かったのではないかな、と。
私の詰め込みの基準は富野アニメなので、一般的な感覚かはわかりませんが(^^; ……一応、この感想では、詰め込みの要求基準はかなり下げて書いています。というかこの作品、視聴者を振り落とさない事にかなり気を遣っている感じが見受けられるので。その上で、私の感覚でもイライラしない程度のテンポでは展開していますし。
しかしそれでも“温度差”の表現がなぜ重要かといえば、社会が大きくなれば人々の温度差が存在するのが当然になるからです。ガルガンティアの人々が全体的に(レドから見れば)暢気な未開人気質、というならば、それはそれで構いません。しかしレドとチェインバーという巨大な波に対するリアクションがあまりに一定の範囲内に収まっているとすると、ガルガンティアは小規模な組織集団であるという捉え方になってしまいます。
ここで重要なのは、温度差を描く=社会組織の大きさを表現する、という事です。
むしろ温度差は副次的要素であり、それによって社会全体のアウトラインを視聴者に意識させる事こそが重要なのです。
どうもこれを、冒頭の連結してきた人の台詞+全体通しての作画表現だけで伝えられていると思っている節があるのですが、詰めが足りない。
ピニオンが居るじゃないか、という話が出るかもしれませんが、あれは高度なテクノロジーを操るよそから来た繊細な美少年が気に入らない、という極めて個人的な感想のレベルで、広がりがありません。例えばそれでも、食堂で似たような感想を持っている連中と愚痴っているシーンでもあれば、話はまた変わってはきますが。
逆に言うと、ベローズ→レドも、個人的な好意(ライク)に留まっていて、広がりが無いのですが(例えばここも、冒頭でベローズがジョーに一声かけるとかあれば広がるので、登場人物の使い方が勿体ない。本編がちがちに詰め込んでいて尺がない、というわけでは全くないですし)。
リジットは今回、レドに対して請求書を突きつける事により、
〔船団の中での居場所を与える・船団の面々に周知できるわかりやすい役割(働く理由)を与える・負い目を与える〕
と策士である所を見せましたが、ここまでの描写が薄いので唐突な感じは否めず、勿体なかったところ。切れ者なら切れ者なりに3話辺りでそういう部分を見せていれば、スムーズに繋がったのですが。
この請求書が優れているのは、これによりレドの立場が外部へ対してオープンになり、親方達に受け入れられる構図がシンプルかつ納得できるものになっている事。
こういった形でうまく流れを組めている部分はあるので、もう少し全体の連続性(キャラクターの繋がり、物語の転がし方、の両面で)を意識して作って欲しい。
……色々書いていますが、基本的には面白く見ています。
長くなりがちな会話シーンも、これ以上画面を止めたら駄目だぞ、というギリギリの所で、動きをつけたりカット変えたりを出来ていますし。
及第点すれすれな部分もありますが、面白みはあるし、作劇に垣間見える志向を買っているからこそ、細かく気になる、というものだと思っていただければ幸い。次回…………海パン?