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『特捜エクシードラフト』感想16

先週分。
◆第31話「過去への特救便」◆ (監督:三ツ村鐵治 脚本:酒井直行)
エクシードラフトにかかってきた一本の電話、それはタイムマシンによって5年前に戻った夫を止めてほしい、という驚くべき内容であった!
電話の主は、超時空に関する研究の第一人者である夏目博士の妻、裕子。博士は完成させたタイムマシンを用いて、5年前のある事件の直前の時間へと向かっていた。5年前……研究所に入った強盗が、開発中だったタイムマシンレーザーの設計図を奪い、更に博士の息子であるタツヤを拉致。現場には血痕とナイフが残り、それから5年……タツヤの行方は今も不明のままだった。設計図を失いながらも、記憶を頼りにタイムマシンを完成まで導いた博士は、5年前の事件の直前に戻り、強盗犯人を殺害しようとしていた。
盗んだ設計図から装置を完成させる為に息子も誘拐したのでは……という事なのですが、回想シーン見る限り、息子と強盗が凄く共犯っぽい(^^;
タイムマシンレーザーによる時間移動に耐えるには特殊なスーツが必要。博士のオリジナルスーツ以外にそれに耐えられるのは、トライジャケットしかない。裕子夫人の懇願を受けたエクシードラフトは、博士が歴史を変えてしまう前に、5年前の過去へと飛ぶ!
過去から現代へ戻るには、一定時間後に現代からまたレーザーを照射してもらわないといけないそうなのですが、これ、奥さんが悪い人だったらエクシードラフトを過去に葬り去れるよーな(笑)
いつの間にやらブルースとキースも車の中で実装できる仕様になり、スクラムヘッドとバリアス7に乗り込み、過去へと向かうエクシードラフト。本当に5年前に戻ったのか、と通りすがった女子高生に話を聞こうとしたところ……なんとそれは、セーラー服姿の日向愛!
トライジャケットで顔出し(ヘルメットだけ外した状態)だと、どうあがいても間抜けな絵にしかならないので割り切ったのか、このシーンはストレートにコメディ。
真面目にやると、明らかに通報事案ですが。
屋敷の周囲を警戒する3人は、あっさりと博士と接触
レトロな銀色の宇宙服っぽいものを来た禿げ頭の博士が、これもレトロな光線銃を握りしめている絵は、もはやギャグとして見ればいいのか(^^; 息子と接触する前に強盗犯人を殺してやる、という博士を、過去の現場で手がかりを見つけて元の時代で必ず救出する、と説得する隊長。
「わかった、君たちを信じよう」とあっさり説得に応じる博士。
……ここはどうにも、5年の歳月に対して軽い。
そもそも、5年も行方不明なら、殺されていると考えるのが普通でありますし、そこを一縷の希望を信じつつ、しかし歴史を変えてしまおうと強い決意を持って過去へ戻ってきた男の翻意としては、あまりに簡単に過ぎます。
そして、窓の外から事件現場となった研究室を覗く4人。そこで見たのは、部屋を荒らしたフリをする強盗、強盗と合流して設計図を手にする息子タツヤ、偽装で撒かれる血液……そう、強盗誘拐は、全て狂言だったのだ!
「こいつがあれば、この世は全て、俺のものだ」
タイムマシンを自分の好きなように使う為に、父を裏切り、強盗に襲われた振りをして、一緒に逃亡するタツヤ。
「私と妻の5年間はなんだったのか……」
打ちひしがれる博士を連れ、4人は帰還。タイムマシンの研究が、息子、そして自分達の人生を狂わせた事を知った博士は、帰還するなり光線銃でタイムマシンレーザーの発生装置を破壊。エクシードラフトに、タツヤがどこかで作っているであろう、もう一つのタイムマシンの破壊を依頼する。
…………隊長、光線銃について、博士から詳しい事情を聞いた方が良いのではないでしょうか。
本部へ戻った隊長は、タツヤが現場からどこかへ電話をかけていた事を思い出し、トライジャケットの音声記録からプッシュホンの番号を割り出すと、判明したアジトへ急行。
現場から電話をかけるタツヤもタツヤですが、当時の警察は、通話記録とか調べなかったのか……?
他作品ならともかく、刑事ドラマ路線として作っているシリーズだけに、ここは大穴と言わざるを得ません。
アジトでは、設計図ありでも5年かけて完成していなかったタイムマシンが、ようやく完成間近。これは、博士と息子の能力の差か。寸前までタイムマシンを作っていた筈なのに、エクシードラフトが突撃してきた途端に、銃器を構える研究員達(笑) どうして足元に常備しているのか。というか、そんな人達ばかり集めているから、5年かけても完成しないのでは。
しかし所詮は一般人に毛が生えた程度が多少の武装をしているぐらいでエクシードラフトの圧倒的暴力にかなうべくもなく、次々と逮捕。息子は博士の平手打ちをくらい、完成間近だったタイムマシンは、久々登場の日曜工具で破壊されるのであった。
博士夫婦の5年間の執念、という肝心なところが軽くなってしまい、物語としては盛り上がらず。
あと、愛が高校生の時に剣道でインターハイ優勝という話を知る→竹刀と胴着を持った愛と過去で遭遇、とやったのだから、オチにも何か使ってほしかったところ。


◆第32話「耕作のガンコ親父」◆ (監督:簑輪雅夫 脚本:扇澤延男)
ビル街を、大砲で破壊して回る謎の装甲車が出現。出撃するエクシードラフトだが、なんと装甲車は原子力タービンを動力としており、下手に破壊すると周囲に放射能汚染を撒き散らす事が判明。更に全体を電磁バリアで防御しており、冷凍弾も通用しない。この破壊不能原子力装甲車を操る組織は、日本政府に一千億円を要求。
なんとまさかの、(実質的)原発テロ。
対策を練るエクシードラフトの調査により、この装甲車がもともとは、掘削マシンであった事が判明する。10年前、地下都市を建造したいという南米のダグラ共和国の依頼で開発が進められた掘削マシンだが、ダグラ共和国の目的は、それを軍事兵器として転用する事であった。この陰謀は事前に露見し、開発プロジェクトは解散。しかし、未完成のまま保管されていた掘削マシンが武装マフィアに強奪され、10年ぶりに完成してしまったのだ。開発者の一人は組織の手によって殺害されたと思われ、エクシードラフトはもう一人の開発者、森崎博士の元を訪れる。
「残念だが、君らには協力できん」
しかし、老博士・森崎東一郎は、エクシードラフトへの協力を拒む。10年前、プロジェクトに関わった事で心ならずも軍事兵器の開発を行ってしまった事を汚点と感じた博士は、研究者としての過去を全て捨てていた。
「あのマシンの構造は、今、何一つ記憶に無い」
「記憶に無いって……たった10年前の事じゃないですか」
「たった10年?! たったじゃない。科学者として一筋に道を生きてきた者が、そこを退いてからの、10年。……今の私は、ただの年寄りにしか、過ぎないんだ。思い出せんものは、思い出せんのだ」
ちょうど前回との対比になりますが、この辺りの、年月に対する情念というのものは、きちっと踏まえて表現しないといけないんだ、というのを押さえているのはやはり秀逸。
設計図も開発資料も焼き捨てたという博士の言葉に家を辞し、善後策を練るエクシードラフト。「全て焼き捨てたとも思えない……」と博士の言葉を疑う耕作は、博士の妻が最初に勘違いした、森崎家を訪ねるヘルパー(介護などではなく、老人福祉サービスの一環による、話し相手、などという事の模様)に変装して、博士宅へと潜入をはかる。
愛と勝を連れ、役所のヘルパーと称して、森崎家を訪れる耕作。老夫婦を「オヤジ」「お母様」などと呼び、ドリーム子供設定で懐に入ろうとするのですが……まるっきり詐欺師(^^;
「俺たちの子供は、ユウタロウだけだ」
20年前に死んだ息子を思い、すげない態度を取る博士。一方、そもそも博士に黙ってヘルパーを頼んだ妻は明るい。
「約束。今日一日、我が家は5人家族。いいですね、耕作さん」
今回は通して、この森崎夫人・彦乃さんの演技が非常に秀逸。エピソード全体の雰囲気を、巧く作りました。
「あいつが暴れ出すまで、あと3時間……急げ、耕作!」
スーパー掘削マシンを監視する、レッダーとキース。一方、森崎家を見張る不審な男の影。
はしゃぐ妻とは対照的に、つまらなそうにしている博士だったが、勝の孫パワーにほだされ、キャッチボールをする事に。愛が夫人を引きつけている間に、家捜しをする耕作。
コメディ調の音楽で誤魔化していますが、酷すぎる(^^;
「なんの真似だ!」
博士に詰問され、正体を明かす耕作。
「女や子供を使って人のうちに潜り込む、甘い言葉で年寄りを騙す。恥ずかしいとおもわんのか!」
返す言葉もございません。
「それは謝ります。でも、あなただって悪いんだ」
しかし、逆ギレする耕作。
「マシンの構造を忘れたなんて、親として無責任だね」
「思い出せんものは思い出せんのだ」
「違う! 思い出そうという、努力をしないからだ。この、ガンコ親父!」
「ガンコ親父だと?!」
「そうだ。今日一日、あなたは、オレの、親父なんだ!」
ここでキーワードをアクロバティックに繋げる辺りは、如何にもな扇澤脚本。
今回、話のプロットは本当に酷いのですが、台詞回しの妙味と会話のテンポの良さだけで強引に持って行く力業。
また、耕作達を好意的に受け止め続ける夫人が、ここでも耕作と博士の口論を、“息子も研究の道も失い、孤独な夫が久々に本音をぶつけた親子喧嘩”として、微笑ましく見るという構図を取っており、エピソード全体に救いをもたらしています。
夫人、本当の詐欺師に騙されそうで心配になりますが(^^;
とうとう博士にはたかれた耕作は、愛と勝を連れて森崎家を出て行くが、途中で愛達に「謝りに戻りましょう」と諭され、引き返す。しかし森崎家は荒らされて無人で、博士達はマフィアによって拉致されていた……!
耕作「俺があの家に潜りこんだりしなきゃ。設計図を焼き捨てた、その言葉を疑わなきゃ!」
本部長「おまえは可能性に賭けたんだ。そのおまえに、我々全員が賭けたんだ」
本部長が、組織としての決断を強調するのは、格好良かった所。
武装マフィアに捕まった森崎夫妻はスーパー掘削マシンに関する情報は知らないと判断され、軟禁状態に。

「きっと、すぐに助けにきてくれますよ、あの子が」
「あの子?」
「今日だけの私たちの息子、耕作が」

妻から、早くに両親を亡くしたという耕作の事情を聞き、あの口論を思い返す博士。
「耕作には、生まれて初めての、親子喧嘩だったかもしれませんね」
耕作が自分と同じ、家族を失った孤独を抱えている事を知った博士は、“親父として”力を振るう事を決意。武装マフィアの脅迫電話を逆探知成功し、アジトに突貫してきたエクシードラフトに、必死に記憶を絞り出して思い出したスーパー掘削マシンの設計を伝える。スーパー掘削マシンの弱点……それはエネルギー砲を放った瞬間、電磁バリアが消滅する事。その一瞬に制御装置を破壊する事で、バリアを使用不能にする事が出来るのだ。
博士に教えられた設計図を元に、一瞬のチャンスを付き、ドリルを炸裂させるブルース。スーパー掘削マシンは機能を停止。国際兵器マフィア達は逮捕され、愛と勝をともなった耕作は博士の家へ。
「博士のお陰で食い止める事が出来ました。ありがとうございます!」
「どうして頭など下げる。父親が息子に対して力を貸すのは当たり前だ」
いい感じに終わるのかと思いきや、博士の態度の変化についていけない耕作、そんな耕作に毒づいてしまう博士……で、また始まる面倒くさい親子喧嘩。じゃれあいの相撲で、終わり。
扇澤脚本らしい巧さと面白さはあるものの、プロットがあまりに酷い、そんなエピソード(^^;
あと、ラストのスーパー掘削マシンの撃破シーンが盛り上がらなかったのは残念。話としてそこがメインで無く、尺をオチに使いたかったのはわかりますが、もう少し格好良く演出してほしかった。
ベースはおそらく、前作第44話「コソ泥と老博士」(扇澤脚本)。あちらは孤独な老博士と孤独な泥棒がそれぞれの孤独さから心を通わせる、というエピソードでしたが、今回はそれをキャラクターの背景と絡めて耕作へと持っていきました。前作は主役メンバーとゲストが最後まで噛み合わない事が結構あったのですが、今作では意識的にレギュラーメンバーとゲストとの心の繋がりを描いている様子が窺えるのは、面白い。