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『百万年の船』(ポール・アンダースン)、読了


ギリシャ人ピシアスによる北方への航海に加わった、謎めいた航海士ハンノ。教養と博学を併せ持つ彼の正体は、紀元前のフェニキアで生まれた、不老不死の男であった。一定の年齢に達すると老化が止まって若々しい外見を保ち、多少の傷には人間離れした回復力を見せる、不死の肉体……しかしそれ故にハンノは、普通人に疑われ、忌み嫌われるのを避ける為に、素性を隠しながら世界各地を転々とするしかなかった。いつか自分と同じ不老不死の同類と出会える日を信じながら……。
全3巻からなる、不老不死の人々の物語。
長編ですが、序盤は様々な時代、様々な場所の不死人達の人生を断片的に描いていく、連作短編のような形式で進みます。物語は紀元前310年に始まり、年代を数十年、数百年単位でジャンプしながら展開。歴史や神話に造詣の深いアンダースンらしく、様々な歴史と風土がディテール細かく描かれていきます。
特徴的なのは、不老不死の人々が物語の主人公として飛び抜けてヒロイックというわけではなく、実社会の中で不老不死に生まれてしまったらこうなるのではないか、という一種のシミュレート的な描かれ方をする事。迷信の古代においてはそれは、時に悪魔との取引と疑われ、孤独にならざるを得ない不死人は、隠棲や擬装を覚えながら、時代の狭間を生きていく。
断片的に描かれていた物語が、繋がりだし、集約されていく物語の半分ぐらいから面白くなるのですが、最終章はもっとざくざく進んでもよかったかな……という印象。ざくざくはざくざくなのですが、少々盛り上がりに欠けた気がします。
総合的には、ちょっと期待をすかされて、いまいち。