◆第31話「愛・ニード・侑」◆ (監督:金田治 脚本:小林靖子)
「望み通り、空も、飛べーる!」
イマジンによって高い所に宙づりにされ、落とされそうになっている男。対峙デネブと侑斗だが、残り1枚のカードを使用する事を躊躇している内に契約完了、イマジンに過去へ跳ばれてしまう。後から駆けつけた良太郎がキンタロスを憑依させ、落下寸前に男を助け上げると、アックスフォームに変身して過去――2004年7月26日へ。
冒頭から迸る気の抜けた歌声をバックに、オレの強さにおまえが泣いた。
今回、アバンタイトルの前座要員という事でイマジン(ラビットイマジン)は、以前の着ぐるみの再利用なのですが、ハルパーっぽい武器を用いての戦闘はなかなか面白くなりました。
ダイナミックチョップでラビットイマジンを撃破した良太郎は現在に戻り、侑斗にカードについて問うが、侑斗は無言で去って行く。ミルクディッパーに帰った良太郎を待ち受けていたのは……
「忘れるなんてひどいなぁ。君の婚約者になる男なのに」
借金をかたに愛理に婚約を要求する、新たなる駄目人間、登場。
その男、藤代ファイナンス社長・藤代裕也。
なんというか、発想が江戸なのですが、300年ぐらい前から来た時の旅人なのでしょうか。
身に覚えのない連帯保証人の証文により、1000万の借金を背負い差し押さえの赤紙まみれ、物語始まって以来最大の危機に陥るミルクディッパー。だが……
「他から借りてでもお返しします。じゃあ」
愛理さん、笑顔で押しつけられた指輪を返却。
それはそうだ(笑)
痛烈なカウンターにくじけ、偽の借金を捏造して罠にかけたとべらべら喋ってしまうくどい系2枚目(羽賀研二とかマイケル富岡の系統)の藤代、彼は2年前の愛理を知っていた。
「2年前のあんたは、桜井の事しか目に入ってなかった。だから引き下がったんだ。でももう今は、桜井はいない」
「桜井って、良太郎の友達の……?」
「ほら、覚えてもいないじゃないか。あんたの婚約者の、桜井侑斗だよ!」
困惑する愛理、良太郎から相談を受け、藤代ファイナンスのビルへと向かう侑斗。一方、電王は自らその前に姿を現したアントホッパーイマジンを追っていた。
(もしかして、最初から僕たちを狙って……)
車両置き場で待ち構えていたアントホッパーイマジンの攻撃に、思わぬ苦戦をするガン電王。あくまで標的は“電王”であり、特別ガン電王を狙ったわけではないようなものの、隘路に誘い込み、飛び道具の圧倒的な優位と軽快なステップを封じると、結果的に作戦大はまり。更にもう一体のアントホッパーイマジンが姿を現し、挟撃でガン電王を追い詰めていく……!
「おまえたち、すっごいやな感じ。どっちも倒すけどいいよね。答えは聞いてない」
アントホッパーイマジンは、落ち着いた格好いい喋りと、ハイテンションでちょっと狂った喋りの2体で、OPの表記によると、片方がアリで、片方がキリギリスとの事。縦半分で半身がアリ、半身がキリギリスが合体しているというデザインで、それぞれ武器がショベルと、なんか波打った工具みたいなもの。
なお縦半分デザインの怪人というと、かつて『地球戦隊ファイブマン』後半の怪人(合身銀河闘士)がそうだったりしました。サソリナマズギンとか、実にマッド。
愛理の件もあって意固地になるガン電王は、CLIMAXフォームにならずに二体のイマジンを倒そうとするが、得意の動きを封じられ、絶体絶命の危機に陥る……!
ここで、
「小僧がその気になりゃあ、すぐ飛べるって!」
と待機組3人が、良太郎が本当にピンチの時はコーヒーなんて不要、という台詞が細かく上手いところ。
果たして、追い詰められたガン電王の運命や如何に?!
細かい見所としては、
「貴様最初からそれが狙いだな!」
「知ってますよ。おたくの会社の黒い噂」
と珍しく腹から声を出して藤代の前に立ちはだかる羽虫ーズ。
……あっさり無視されましたが。
ちょっと気になったのは、藤代ファイナンスへ向かう良太郎と侑斗のシーン。
「おまえ、思い出してほしくないのか」
「忘れたままでいい筈ないと思っているよ。でも……思い出した時に、もしまた……多分、怖がっているのは僕なんだろうけど」
良太郎は侑斗に、“愛理の事情”について説明した事は無かったと思うのですが、割と唐突に、共通の前提の上での会話になっているような。
「将来、自分の側に居る筈の人間が自分の存在も覚えてなかったら、おまえ、嬉しいか?」
と、侑斗も“若い頃の桜井侑斗”として、けっこうストレートな本音を告白。
劇場版を経て、良太郎と侑斗の距離感が近づいている表現も含めた会話の流れなのでしょうが、双方ややいきなりには感じました。
侑斗に関しては、台詞にもあるように、あくまで良太郎が受け入れてなかっただけではあるのですが、ここまで表向きは愛理に対して好意的な発言をした事はない筈。この後に出てきたデネブが「友達っぽかったぞ!」と喜ぶように、気を許しているという事ではあるのでしょうが、もうワンクッションあっても良かったかな、とは思います。
むしろまあ、改めて魔愛理空間のフェロモンに脳がやられてしまった、という事な気もしますが。
チャンプ不在の中、ますます増大していく愛理さんのヒロイン力! 生き残るのは、誰だ?!
◆第32話「終電カード・ゼロ!」◆ (監督:金田治 脚本:小林靖子)
絶体絶命の危機に陥ったガン電王を助けたのは、侑斗の指示でサポートに回っていたデネブだった。デネブはなんとか電王をデンライナーへと運び込むが、リュウタロスは大きなダメージを負い、良太郎に至っては入院する事になってしまう。
敵が自分達を標的にしてきた=喧嘩売られた
という事でか、割と意気投合するイマジンズ。
一方、藤代ファイナンスの社長室へと飛び込んだ侑斗は、藤代にパンチ一発。愛理の奪還に成功し、その藤代には、アントホッパーイマジンが憑依する……。
憑依藤代は、目が真っ黒でホラー。
良太郎を見舞い、ゼロノスのカードの秘密について話すデネブ。
「侑斗は変身するために、あるものを消費してる。とても、大切なもの……口では言えなくても、侑斗は本当はカードを使いたくないと思っている。できるなら、ずっと」
一夜明け、藤代ファイナンスの不法行為を新聞記事にする事に成功する、羽虫AとB。
「やりましたよ、我々は」
……って、そもそもマスコミ関係者の尾崎はともかく、三浦はいったい何をしたのでしょーか(笑) 尾崎が一人の手柄にしないで「我々」と言うだけに三浦も何かしたのでしょうが、得意の催眠術で裏情報でも聞き出したのか。まあ三浦は催眠術が見事に炸裂した手腕など見るに、阿呆だけど実はスペック高いという可能性は疑われる所です。尾崎も昨日の今日で不正を暴く記事にするだけ、馬鹿だけど実はスペック高いという気もしますし。
だがそんなミルクディッパーに直接やってきた黒・藤代は、羽虫ーズを叩きのめすと愛理をさらい、良太郎を呼び出すメッセージを残す。それを聞き、呼び出しの場所へ走る侑斗に、デネブが憑依。
「ゼロノスか……電王を呼び出した筈だが」
「最初に言っておく。今日の俺はマジだ」
一方、良太郎も連絡を受けて病院を大脱出……しようとするが、看護師に止められてしまった所でモモタロスが憑依し、看護師を退ける。
「たまにはおデブにキャンディーの借り返してもいいよな。良太郎、後で体ぼろぼろになるぜ」
(いいよ、急ごう)
「ふっ」
デネブはアントホッパーの攻撃を食い止め、侑斗を愛理のもとへと向かわせるが、そこへ現れるもう一体……という所で飛び込んでくるM良太郎。
「なんか今日はかゆくなる事ばっかしてんなぁ」
というか、劇場版以降のMさんの大活躍ぶりに、我々はこれは死亡フラグなのではないかと、ドキドキしておりますっ!
或いはまさにピーチさん、一皮剥けた、のか。
しかし、ピーチイマジンが一皮剥けたとするならば、アントホッパーイマジンはLVが20ぐらい上がっていた! かつてない強さを誇る二体のイマジンに、真っ向から叩きのめされるS電王とデネブ。
一時期、他のフォームとの兼ね合いでS電王が弱体化した事がありましたが、それ以来の、電王大苦戦。不意打ち込みとはいえ、4フォームで最強と目されるガン電王を倒しただけの事はあり、強い。というかもう多分、牙王より強い(^^; 「電王への刺客」という事でこれだけ強いのか、今後のイマジンの平均レベルが上がるのかは、次回以降次第ですが、随分急に強くなりました。
そういえば今作、既に30話を超えるのに、指令電波の存在こそ明かされているものの、イマジンに統一した黒幕的存在が居るのかどうか明確になっておらず、少々、敵のパワーアップがやりにくい作品ではあります。それもあってか、そこは勢いで強引に誤魔化した感じに(^^; ただ電王が勢いでトンデモパワーアップしてしまったので、他人に文句は言えない気がするというか(笑)
S電王とデネブが熾烈な戦いを繰り広げる中、愛理の元へ辿り着く侑斗。
「あら……桜井くん」
どこかぼんやりと、打ちっ放しの天井を見上げる愛理。
「天井の模様がね。星座みたいなの、それを見ていたら、昨日忘れていたこと、思い出して。
私がお店を守りたかったのは、あそこが私たちの全部だから。
私と……良太郎と……それから…………
それから、もうひとり……たぶん、もうひとり……………………
ゆ う と……」
無言で固まる侑斗の頬に向けて、ゆっくりと伸ばされる愛理の指先……。
しかし、その指先が触れる本当に寸前、響き渡る轟音に、桜井侑斗は走り出す。
「――侑斗は変身するために、あるものを消費してる。大切なもの」
それは……。
一方的に叩きのめされるS電王とデネブにとどめが迫るその時、ベルトを手に駆けつける侑斗。
「カードはお守りじゃないんだ。使う時に使わなきゃ、意味がないんだよ――――変身!」
遂に最後のカードを消費し、変身するゼロノス。
「最初に言っておく。俺はかーなーり、強い!」
アントホッパーさん、前口上の間「待て」って、意外にいいイマジンだ(笑)
ここで戦いは、アントホッパー関vsゼロノス、アントホッパー鳥海vsS電王、に。金田回恒例バイクアクションで、廃工場を走り回るS電王とアントホッパー。……ああそうか、藤代がわざとらしく微妙に似合わないオートバイに乗っていたのは、ある種のセルフパロディ(ここで「ライダー」が出てくるといっけん重要なキャラに見える)かと思っていたのですが、ここまでの長い伏線だったのか!
強力なアントホッパーにゼロノスも苦戦するが、最後はボウガンの不意打ちからフルチャージのコンボで撃破。そしてS電王はリュウタロスの回復により、CLIMAXへ。
……喧嘩の対象が自分達になったので、みんな積極的に変身しました(笑)
「コーヒー無しでもてんこ盛りだぁ、行くぜ行くぜ行くぜ!」
CLIMAXフォームへと変身し、優位になった途端に凄く上からになるチンピラ(笑)
「見せてやるぜぇ……必殺、俺の必殺技。クライマックスバージョン!」
最後は、特に変形なしで、CLIMAXソードが炸裂。変形のしようがないのですが、折角なので、ソードの時もなにか変形してほしかったなぁ。…………更に剥ける、とか。
31話冒頭に始まって、愛理と侑斗の物語を中心に展開しつつ、アクションてんこ盛りという構成。愛理と侑斗に関しては、どちらかといえば侑斗が明言を避けていた部分をハッキリさせて、後半の展開へ向けてわかりやすくした、という感じでしょうか。なんか色々、ダダ漏れになった、というか。
戦いを終え、消滅していくゼロノスのカード……
アントホッパーの憑依が解けて工場の隅っこで体育座りしていた藤代は、
「なんなんだいったい。なんだってこんな目に。まさか、桜井の呪いじゃ……ん? 桜井、て誰だ? ん?」
桜井侑斗の事を忘れ去る。
そして愛理もまた……
「もうひとり…………あら? もうひとり? わたしと、良太郎と……おばあちゃん?」
「姉さん……」
「あら、良ちゃん」
まるでいつも通りの笑顔で良太郎を迎えながら、その唇は、侑斗の名前を口にする事は、無かった。
…………これは、ゼロノスへの変身は、他者の持っている侑斗の記憶、を消費している、という事でしょうか。
愛理さんに関しては、カードの影響と、自己防衛の為に封じた記憶と、タイミングが判定しにくい所ではありますが。
『電王』ワールドが「人の記憶」=「時間」という事は、桜井侑斗は“自分がその時間にいたという事”、すなわち、文字通りに存在を賭けて戦っているという事でしょうか。
まだ明言されてはいませんが、一気にグッと重くなりました。
て、それはデネブも大反省です、土下座です、家出です。
ここで侑斗が色々と面倒くさいのが、自分の存在を消費しながら戦っているから、という事が判明し、色々な糸が繋がる事に。どうしてそんな事になっているのか、と、正しい時間軸の桜井さん、との関係はまだ謎のままですが。
……これは、とりあえず若干の願望込みで一つ予測を立てておくと、愛理さんが自己防衛で封じた記憶はカードの影響を受けていなかった、とか、そういう事に最終的になるのかな……?
当面の問題は、これで侑斗が、立派な無職になった事です!
ただのプロレス好きの甘党に!
どうするどうなる。
――しかし、急展開はこれだけに収まらない模様。
次回、チャンプ、新生。
というか、捨て身の作戦でヒロイン強奪へCLIMAX?!
(※追記:31話でちょっと違和感を覚えた良太郎と侑斗の会話なのですが、あれはむしろ、「桜井侑斗が消えたショックで愛理が桜井侑斗に関する記憶を封じた」事について、それを知らない侑斗は、愛理が自分を覚えていないのは「カードの為」(だから大して消費していない内に名前まで忘れられていた事に最初毒づいた)だと思っていて、大して良太郎は「桜井が消えたショックの為」だと考えていて、いっけん会話が繋がっているようで、実はお互いの前提が微妙にズレている、というのが意図的に盛り込まれていたのでしょうかもしかして。書いている内に凄いこんがらがってきたので、何か豪快に誤解しているかもしれませんが(^^;)