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14年後の月に吠える〜『∀ガンダム』全話再見6

◆第6話「忘れられた過去」◆
〔脚本:千葉克彦 絵コンテ:横山彰利 演出:池端隆史 作画監督:しんぼたくろう/中田栄治


地球へ降下したディアナをさらおうと勝手な動きを見せるミリシャにより、混乱に陥るノックスの街。ロランの∀はハリーのゴールドスモーと鉢合わせるが、車を捨ててボストニア城へ向かっていたグエンとディアナを救出する事に成功する。グエンは暴動の責任を曖昧に誤魔化し、ディアナカウンターは交渉の為にボストニア城の一角へと入る。一方、マウンテンサイクルの発掘を続けるシドによってミリシャは戦力を強化していき、そのさなか、威力偵察を行うウォドムと∀が激突。ビシニティの地下に隠されていた武器庫で発見したハンマーを振るい、∀は辛くもウォドムを退けるのであった。

「ねえ、ロランって時々、馬鹿じゃないかって思わない?」
ソシエ・ハイム


見所、盛りだくさん。
まずは、列車に積まれてやってくるカプル
巨大なボールがなけなしの擬装をされて列車に乗せられている絵が面白すぎます。
なぜカプル?! から一気に、この世界観に馴染みまくるカプル
混乱するノックスでは、ディアナ様を探すスモーと∀が、初のマッチアップ。
向き合って構えを取った所でグエン様とミラン執政官が割って入り、両者ディアナ様を発見して身を乗り出した所で、おでことおでこがごっつんこ。
まともなMS戦は、いつの日か。
グエン様とディアナ様がノックス市街を逃げ回るシーンでは、車を降りて地球の街に足をつけたディアナ様を、どこからともなく聞こえるラジオの音と、路地裏の喧噪が迎える、というシーンが、凄く好き。
ロラン、∀のモニタで最大望遠したディアナ様を、録画。
その方向は、かつてカサレリアに居た少年を思い出すので、全力で回避していただきたい。
「この土地は、人が集まると、宴会をやるみたいですよ」
ノックスから離れるよう指示を受けたミリシャ、芸風固まる。
飲めや歌えの大騒ぎのミリシャ兵と、ウァッドのコクピットでもそもそと携帯食をかじるディアナカウンターが対比されているのがまた、面白い。この回はロランがキースの焼いたパンにかぶりつくシーンもあり、食事シーンが強調されています。
ここで、従来のガンダムシリーズにおいて、食事が「栄養補給」という形で主に描かれていたのに対し、ミリシャのやっている事が「宴会」であるのは非常に面白い所。富野演出は作品世界にリアリティを与える要素として、意識的に食事の「機能」を描いていますが、その表現する機能が変化している事が、すなわち作品世界の違いを表しているともいえます。
ここで対比される、ミリシャとディアナカウンターの食事風景の違いは、戦争の空気の違いとして、非常に重要。
またお互いに、食習慣に関する断絶を感じているのは、地球人と宇宙人の間に横たわる溝を示してもいます。
カプル、腰から回転して物資をバケツリレー。
ソシエとメシェー、遂にカプルで出撃。
勇壮なBGMに合わせて、カプルがとことこ歩いて行く、という絵面は、素晴らしいの一言(笑)
救援に向かったロランの∀は、ビシニティの地下で、謎の武器庫発見。
まあ結局、最後までこれは謎のままでしたが(^^;
ほとんどの武器がぼろぼろに崩れてしまう中、無事だった鎖鉄球を手に取り、戦場へと向かう∀。
「ふざけてんのか。これだけあって、何故これだけが」
視聴者も似たような気持ちですが、段々とそれが楽しくなって参りました。
ウォドムにハンマー振り回して立ち向かう∀、の図は実に秀逸。
後に各種ゲームで、ガンダムハンマー使用時にはこの戦闘シーンがベースとなった事もあり、本作を代表する戦闘シーンというか、多分、元を知らない人にとって、本作を象徴するシーンとなってしまいました(笑)
格好いいからいいんですが!
「地球は戦争する所じゃないでしょーーー!!」
「ヒゲがぁっ!」
「なんだぁ?!」
ウォドムが両手で受け止めるも、ブースト、回転する∀ハンマー!
なお、初代『ガンダム』のガンダムハンマーもロケットついて加速するようになっており、鉄球ブーストは∀オリジナルというわけではありません。回転はオリジナルですが。
「ポゥ、なんとかせいっ!」
「状況不明!」
あっという間に、漫才コンビと化していく、フィル&ポゥ。
まあフィルは、出てきた時から大物感は全くありませんでしたが。
今回、このクライマックス戦闘が衝撃的すぎて、途中に挟んだ交渉シーンで、サンベルト地帯に関する話とか、地球を離れて月に行った者と残った者の話とか出ているのですが、全く印象に残りません(^^;
物語の中ではかなり重要な事を言っているのですが、今回改めて見て、こんな所でそんな話をしていたのか、と(笑)
重要な要素といえば、キエルとディアナも初接触。会話はまだなく、歩行シーンに無言とBGMで、両者の顔を並べて見せる、というちょっとコミカルな演出のみ。
こういう所でも、動きを入れ続けるというのは、富野作品らしいところ。
1・2話は決め打ちで別格の出来として、3〜5話は状況設定と一通りの顔見せも含め手探り感が強かったのに対し、絵の作り方、全体のテンポ、なんだかんだで主役ロボットの見せ場は気持ちがいい、というのも含め、随所に『∀』らしい面白さが見えてくる、ノリのいいエピソード。
一つポイントとしては多分、「カプルを面白く描けばいいや」というある種の開き直りめいたものがあって、そこで一つ画のピントが合ったのではないかと、そんな事を考えるぐらい、非常にカプルの存在が効いています。落ち着くポイントが見えた事で全体のテンポも定まり、走る方向もはっきりとしてくる。
序盤はこの後の2話が非常に印象深いですが、改めて見ると、この6話が最初のジャンプで、ここからハンマーと共に作品が加速しだす、そんな1本。



「ムーンレィスのキースにだって、地球のパンを焼けたんだ。うまくいくって」
ロラン・セアック