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《メタルヒーロー》史に見る『特捜ロボジャンパーソン』

ここ最近、東映Youtubeのお陰で、だいぶ《メタルヒーロー》シリーズを流れで見る事が出来たので、ちょっと簡単なまとめ。まあ(ちゃんと)見ていない作品も多々あるので、抜け落ちや誤解もあるかとは思いますが、現時点での簡単なものという事で。なお、《メタルヒーロー》という区分が基本後付けですので、今見ての、という事で。
全体を大雑把に区分するとこんな感じでしょうか。
◇第1期/宇宙刑事シリーズとその後継作品(1982〜1986)

◇第2期/迷走、革新、そして暴走(1987〜1994)

◇第3期/先祖返りと終焉(1995〜1998)

第1期はわかりやすく、宇宙刑事3作と、その正統後継的な2作。
第2期はその路線から転換をはかり、あっちへ行ったりこっちへ行ったりしていた頃。
第3期では宇宙刑事テイストを取り戻しつつ集団ヒーローへと変化し、そして《不思議コメディ》と融合しながら終焉。
はからずも、この後同枠で1999年に放映されたのは、《不思議コメディ》シリーズの祖ともいえる『がんばれ!!ロボコン』のリメイク作品『燃えろ!!ロボコン』。そして2000年からは00年代東映ヒーローのブレイクスルーとなった『仮面ライダークウガ』がスタートし、同枠は《平成ライダー》シリーズとして現在に至る事になります。
更に大きく二つに分けるなら、90年『ウインスペクター』以前と、『ウインスペクター』以後。こうして振り返ると、全17年でちょうど『ウインスペクター』が半分のところ(9作品目)なのですが、特撮刑事ドラマという新路線、堀長文のプロデューサー参加(正確には前作『ジバン』途中から)、上原正三×高久進×藤井邦夫から杉村升×宮下隼一×扇澤延男へ、などなど、作品の革新性もさる事ながら、多くの部分で転換点となった作品であった事が窺えます。
で、そんな『ウインスペクター』から結果的に続いた《レスキューポリス》3部作が行き詰まりを迎えて限界に達した所で、彗星の如く現れて太陽の熱と重力を突破したのが、特捜ロボジャンパーソン』。
『ジャンパーソン』の初期コンセプトは70〜80年代の単純明快な正義のヒーローへの先祖返りを志向しており、世界観としては『メタルダー』前後ぐらいのリアリティラインを意識していたと思われます。ところがその一方で、多くのスタッフが前シリーズに関わっていた影響か、思いの外《レスキューポリス》の流れを踏まえて作られてしまいました。結果的に90年代的寄りな世界観と70年代〜80年代前半的なヒーローが悪魔合体をするというキメラ的作品となり、1クール目の大暴走を経て、正義の狂気をえぐり出すという思わぬ領域へ到達していく事になります。
ここで一つ面白いのが、「正義」について考えすぎてヒーロー性見失った《レスキューポリス》シリーズから一転、「正義」について考えないでヒーロー性を取り戻した(代わりに大事な何かを失った)『ジャンパーソン』が、その後ぐるっと回って(主に扇澤延男の仕事によって)《レスキューポリス》を補完していくという事。
特警ウインスペクター』第1話で時事ネタ的に何となく盛り込まれ、その後本編では大きく扱われずシリーズとしても特に拾われる事の無かった環境問題テーマ(『エクシードラフト』最終章は、テーマではなく小道具的使用)が、『ジャンパーソン』最終盤に置いて重要な要素となったのは恐らく意識的なものと思われます。ここで『ジャンパーソン』は、70年代ヒーローに《レスキューポリス》の問題と向かい合わせる事で、メタルヒーロー》史において『ウインスペクター』以前と以後をクロスさせる事に成功しています。
……まあ、結論は、法律より俺のジャスティスの方が大事なんですが!
またスタッフ面で、80年代戦隊を支えた曽田博久と、00年代東映ヒーローの主力を担う事になる小林靖子がクロスした作品、というのは非常に趣深いところ。『ファイブマン』以降しばらく離れていた曽田博久が怪作を連発した今作で、小林靖子がデビュー、というのはなんとも奇縁で、またその小林靖子を後押ししたのが、80年代戦隊に新風を呼び込んだ堀長文、というのも面白い(曽田さんは堀さんが声かけたのか?)。
とまあそんなわけで、《レスキューポリス》3部作と『ビーファイター』2作の間に埋もれているけど、『特捜ロボ ジャンパーソン』というのは実は東映ヒーロー史において、割と大きな意味を持った作品なのではないか、と思っている今日この頃なのでした。面白いし。
そしてあらためて並べると、前作の反省を踏まえて本当に一新しすぎて鬼子扱いになった『ジライヤ』は凄い(笑) これまた面白い、という辺りには何とも複雑なものもありますが。
と見ると『クウガ』って路線が継承されてシリーズ化されたからいいものの、単発で終わっていたら、歴史的には鬼子扱いを受けた名作、なのかもしれないなぁ(笑)