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『仮面ライダーブレイド』感想14

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第25話「風はいつも強く吹いてる」◆ (監督:佐藤健光 脚本:會川昇
剣崎と橘がアンデッド・ハンターと協力して完成させたブラックファングを奪い取った狼アンデッドは、邪悪バイクと連動してパワーアップ。「バイクから降りろ」とすごむギャレンだったが、元アンデッドハンターだった獣人軍団がブレイドギャレンに襲いかかる。
一方、カリスとイカでもタコでもなく象だったアンデッドをかち合わせようとして失敗したお花は、象と交戦。
「俺はおまえたちの戦いになど興味は無い。ライダーもアンデッドも勝手に潰し合え。そして全てが死に絶えた後、俺がこの戦いの覇者となる」
やる気ない系かと思われた象さんですが、勝つ気は満々でした(笑)
「そんな事……させるか!」
「だったら倒してみろ」
そしてそれは、強者の余裕。
象の攻撃で大ダメージを受けた花女は人間体となるが、カリスがふらっと現れた隙に逃亡。象も人間の姿になると、相手の手の内を知らずには戦わない、と帰宅。ブレイドギャレンが狼の相手で忙しい為、自分にも何か出来る事があるかもしれない、と象vsお花vsカリスの反応の元へ向かっていた虎太郎は、気絶した花女を見つけて車を止め、思わず駆け寄ってしまう……。
ところで、ヒーローが大ダメージを受けて変身が解除される、というのは定番のダメージ演出ですが、アンデッドの場合は“人間の姿”が偽装(変身)なわけで、ダメージを受けて人間体になる、というのは少々おかしい気もするのですが、わかりやすいので遂やってしまっているのか。或いは、上級アンデッドは“人間の姿になれる”というよりも“アンデッド大戦の勝者である人間の姿に縛られている”状態で、常に真の姿(アンデッド体)を保つ事が出来ず、普段は人間体を強いられている、とかそんな感じの解釈も出来そうではありますが。
その頃、狼と戦うブレイドギャレンは、邪悪バイクと連動した狼に蹴散らされていた。
「俺の敵はおまえらではない! アンデッドだ! まずは一人残らずアンデッドを倒す!」
と、狼、花、象、とそれぞれがそれぞれのやり方で、アンデッド大戦の優勝をこそ目的にしている、というのを強調してきました。
「俺たちの……俺たちのファングを、取り戻す」
すっかり、思い入れで一杯の無職ーずは走り去った狼を探し求め、その途中、剣崎はファングを引きずってくる新名と遭遇する。この状況でバイク引きずってくる新名は怪しい通り越して馬鹿っぽいですが、そんな新名に「取り戻してくれたんですね」と反応を返す剣崎は、馬鹿通り越して脳が不器用だった。
「新名さん、今度こそ俺たちで新しいボードを作りましょう。人類を助ける、正義の組織を」
力強く頷く新名だったが、突如、豹変。背後から剣崎を襲おうとするが、割って入った橘に止められる。
……いや、狼さん、「俺の敵はおまえらではない」のでは無かったのか……?(^^;
ブラックファングの出自は、「ボードから盗んだバイク」という、身も蓋もないもの。狼は他のアンデッドを上回る力を得る為、アンデッド・ハンターを組織して隠れ蓑とすると共にバイクを完成させようとしていたのであった。
「そして今、おまえらのお陰で俺は最強になった」
「ふざけんな!」
裏切られ続けて十数年、遂にキレた剣崎一真、新名を殴り飛ばすと腰に差していたブローソンを奪い取り、正面から撃ちまくる!
予想外に全く躊躇せずに引き金引いたよ、剣崎。
だが、なんとか細胞活性弾も、新名の嘘であり、ただのガラクタに過ぎなかった。
「全部嘘か……嘘だったのか!」
全部嘘さ そんなもんさ 夏の恋はまぼろし
この辺り一応、剣崎の自称「人を信じては裏切られる男」を、新展開の中で復習の為に踏襲しておきたかったのか。
新名は狼に変身すると剣崎を吹っ飛ばし、「このマシンは俺のためにある」と言い残して走り去るのですが、ホント、何がしたかったのか。しつこく追いかけてきて面倒くさいし、馬鹿っぽい方は騙し討ちで倒せそうと思ったのか。実際に倒せそうだったので困るけど……! あと狼は、よく見ると、首から背中に流す感じでマフラーぽいものがついているデザインで、ライダーを意識している感じなのですね。
剣崎を助け起こした橘は、まんまとブラックファングを完成させてしまった事について、一緒に反省。当初は怪しんでいた橘だが、会社のあった頃を思い出して、ちょっと興奮してしまっていたらしい。
「烏丸所長も俺も、理想に燃えていた。時間を戻す事は出来ない。だが、あの頃の理想が戻ってきた気がした。ファングを見た時」
「俺も……同じ事を考えていました。ボードに入った時の、夢や希望」
給料! 給料! ボーナス!

「ボードはもう無い。だが剣崎、仲間ならいる。俺たちが理想を忘れなければ、いいんだ」
「全ての人類を、守る為に」

とにかく立て直す部分が多すぎて大変そうなのですが、長らく今作の大きなガンだった「会社(仕事)」の部分を何とか収めてきた辺りは、見事なリフォーム。
夢と理想の「形」は無くなったけど、その「意志」を継げばいい。そしてそれこそが、自分達が選んだ「仕事」である。それは、「全ての人類を、守る事」と、会社・仕事の流れをうまく盛り込みつつ、主人公達の戦うモチベーションを再確認。
そして再び立ち上がり、走り出す二人。
地平線から2台のバイクが走ってきて、「「変身!」」と映像も格好良く収まりました。
悪女を拾った虎太郎は、なぜ助けたかを問われ、人間ではないとわかっていても見過ごせなかった……と困惑した胸中を延べる。
始の事もあり、アンデッドをどう捉えればいいのか混乱しだす虎太郎。
虎太郎のいい人属性も、展開に都合の良いだけの内向きのものから、ようやく外へ向けて生きてきました。物語当初から「観察者ないし記録者」ポジションだろうとは思われましたが、その視点が、アンデッドを単純に敵と見られなくなっていく事で、物語に奥行きが生まれ、戦わない者、の存在意義が出てきました。
もう人間を襲わないと約束してくれれば、それを信じたい。花女にそう告げる虎太郎だったがその時――バックミラーに奴の影。始に気付いた悪女は虎太郎を気絶させると自ら車外で出てアンデッドの姿へと変わり、始もまた、カリスへと変身する……。
一方その頃、狼はバイクレースに乱入していた。
だから、何がしたいんだ!
映像的にはまあ、面白いのですが。
狼は邪悪バイクから変な衝撃波を出しながら爆走し、トップに躍り出る。更にそれに追いすがる2人のライダー。特別出演の山口辰也(2002年全日本ロードレース選手権JSB1000クラスチャンピオン)さん、ちぎられまくる。……と思ったら、同じく衝撃波にあしらわれたブレイドギャレンを見て、なぜかおもむろに狼を追走。見事なスリップストリーム走行で狼の衝撃波を無効化するという華麗なドライビングテクニックを見せつけるが、今度はスモーク焚かれてリタイア。ブレイドギャレンは、邪悪バイクの衝撃波を封じる手段としてそれを参考に走り出し、戦いはサーキットから公道へ……。
映像は格好いいのですが、全員がバイク言語で会話している為、行動が意味不明(笑)
山口辰也秘伝のスリップストリーム走行により見事に邪悪バイクを追い抜いたブレイドは、前に回り込んで擦れ違いざまの一閃で狼をバイクから引きずり降ろし、追いついたギャレンは銃でブラックファングを破壊する。
途中で消えたギャレンは回り込んで連携攻撃でもする作戦なのかと思ったら、カードで加速したブレイドバイクに、純粋に追いつけなかっただけなのか(^^;
「どいつもこいつもだらしないなぁ」
麦わら帽子の象さんがそれを見つめる中、狼を追い詰めた2人の、ダブルライダー雷炎キックが炸裂し、ブレイドが狼を封印する。
そして――負傷した体で戦いに望んだお花はカリスのソニックパンチを受け、遂に封印される。
裏目軍師と化していたお花は、だいぶ引っ張りましたが、ここでリタイア。個人的にはあまり面白いキャラと感じていませんでしたし、これもまた、どたどたっと掃除された感も若干。ただ最後の最後で、負傷して心が弱っていた所を助けられた虎太郎を戦いに巻き込まないという選択をする事で、ここを生き延びたらまた人間を襲って悪事を企むに決まってはいるのだけど、しかし「変化」を見せ、それを言葉では語らせずにあくまで無言の劇の中に収めた、というのは良かった。
「本当にアンデッドなんだな、君は」
「なぜこの女を助けた?」
「わかってる……馬鹿さ僕は。でも…………でも、信じたかったんだ。……君のせいだ」
「俺の?」
「そうすれば、君の事も信じられると思った。アンデッドだけど、姉さんや天音ちゃんを守ってくれる、いい奴だって。だけど……やっぱり君は、好きになれない」
なんか酷いぞ虎太郎理論(笑)
狼を倒し、一瞬だが在りし日のボードの、仕事があった頃の、栄光の給料明細の、シンボルと化していたブラックファングの残骸を見つめ、物思いにふけっていたブレイドギャレンの前に姿を見せる麦わら帽子。
「もっともっとそうやって、アンデッドを倒してくれ。俺は戦いが嫌いだからな」
立ち去ろうとする麦わら帽子に問答無用で襲いかかる2人だが――果たして?!
バイクありきの回だとは思いますが、邪悪バイクを手に入れてからの狼の行動は実に意味不明(笑) ただ、長尺でのバイクアクションは、公道チェイスなどもあり、面白かったです。また、ブラックファングを“俺たちが輝いていた頃”のシンボルとする事で、バイクそのものを物語の中にしっかり取り込み、過去と未来を繋げた、というのはお見事でした。