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『仮面ライダーブレイド』感想18

先週分。
(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第29話「タコ焼きという罪とタイ焼きの罠」◆ (監督:諸田敏 脚本:井上敏樹
前回鳥カゴから逃げ出してしまったナチュラルを探す虎太郎、冷たい態度の始を罵倒したところ、天音タックルを喰らう。
「バカ、最低!」
叔父さんはいい加減、そこの所学習できないのか。
虎太郎を無視してその場を走り去った始は、蛇アンデッドと遭遇。
「見つけたぞカリス……いや、ジョーカー」
最初から直球を投げ込んでくる蛇と戦闘になるカリスだが、蛇が従えていた亀アンデッドに背後から奇襲を受け、思わぬダメージを受けてしまう。
「我々の戦いに勝ち残った者は全てを手に入れられる。だが、貴様が勝ち残れば全ては滅ぶ!」
追い詰められたカリスだが、ブレイドギャレンが参戦し、その間にふらふらと退却。カリスを狙う蛇と亀も退却するが、それきり、始は行方をくらましてしまう……。
翌日、場面変わって神社の境内でタコ焼きの屋台を出す1人の男。美人に弱くお調子者のタコ焼き屋・三上了。ごく普通の人間である彼は……始と瓜二つだった。(二役)
ここから、タコを投げつけるギャグ演出など入って、雰囲気一変。約一名、家にも帰らずに街を彷徨っているようですが、とりあえず忘れてください。
女性客をナンパして彼女・未知に怒られて逃げ出した了は、ふらふらしていた自分と瓜二つの男――相川始と遭遇する。様子のおかしい始はなんと、亀に殴られたショックで記憶喪失になっていた!
珍しくふらふらしていたカリス、予想外のダメージを受けていました(笑)
最近ちょっぴり、ギャレン化が進んでいるキガスル。
とりあえず了の家に拾われた始だが、怒りの未知がやってきて了が逃走し、取り残される。了と勘違いされたまま未知に投げつけられたタコを華麗にキャッチした始は、家出中の未知を連れ戻しにやってきたチンピラを、体に染みついた戦闘力で叩きのめす。
「なんていうかおまえ……俺以上に、俺に向いている気がする」
実は了はタコ焼き一筋いろは組の一人息子、未知はタイ焼き一筋ほへと組の一人娘。昔は仲が良かったが、タイ焼きとタコ焼きのどちらが美味いかで抗争に発展し、現在は対立する組の跡取り同士。未知がタイ焼き名人養成ギブスを強要する父に反発して家出し、2人で一緒に暮らしていたのであった。
「何を言いたいのかわからないが」
「だからさ、おまえは、俺になる。俺は、おまえになる」
仁義なきなんとかな世界が水に合わない了は記憶喪失の始を丸め込み、服を交換。
「今からおまえは三上了だ」
「俺は、三上、了」
「ま、せいぜい頑張ってくれ。よろしくぅ! …………で、俺はいったい誰なんだ?」
名無しの男となった了は、たまたま始を探していた天音ちゃんと遭遇。「相川始」として、白井農場へと引きずられていく……。
前回を引きずった重苦しい導入から一転、三上了が出てきてからのテンポ良く畳みかける展開は井上敏樹の持ち味が躍動。感情が薄く口数の少ない始とは正反対の、へらへらとして口の軽い三上了を、役者さんも好演。始が役柄上、遊びの入れにくいキャラクターという事もあり、実に楽しそう。
タイ焼き名人養成ギブス(つまり大リーグなアレ)まで行くと若干崩しすぎな感もありますが、今回はつまり、『Gガンダム』的な何か。
その頃、ぽんこつトリオはコーヒーブレイク中。
「んー……嶋さんを封印した今でも、睦月が蜘蛛の心に操られているなら、睦月はもう二度と、自分を取り戻す事が、出来ないかもしれないな」
他・人・事
そこへ了(偽始)を連れて乗り込んできた天音ちゃん、虎太郎に昨日の暴言を謝らせようとするが、もちろん了はそんな事は一切気にしない上に、「あ、初めまして!」とつい挨拶。
朗らかで腰の低い始に愕然とする皆。
楽しそうにタコ焼きを作り、広瀬さんに粉をかける始の姿に、困惑する一同、機能停止する天音。
「しっかし変だよなぁ始のやつ……いくらなんでも変わりすぎだ」
困惑しながらも受け入れる、ぽんこつトリオの本領発揮(笑)
全く“なりすます”意識の無い了のバカさ加減を遙かに上回る、パーフェクトぽんこつ
挙げ句の果てに、
「僕の説教が効いたんだよ」
と、始の教化に成功したと変な自信を得てしまう虎太郎。
一方、記憶喪失の本物始は、未知に引きずられる形で実家である、いろは組へと戻っていた。ほへと組のバナナタイ焼きに押されていた了父は、その前で組の解散を宣言。
「了、おめぇが跡目を継いでくれりゃあ、まだ勝ち残れるかもしれねえがな」
(勝ち残る――……)
変なキーワードが引っかかる(笑)
「勝ち残らなければ……勝ち残らなければならない」
アンデッド大戦の本能の赴くまま、組を継ぐ事になる始。未知はそのまま始と結婚する宣言を発表し、とんとん拍子に話は進んでいく……。
そんな事とはつゆ知らず、了は虎太郎と街へ買い出し中。
「今の君だったら、なんか友達になれそうだよ」
始が改心したと思い込む虎太郎は、自分より三下属性を発揮する了にフレンドリー。だが、そんな2人に蛇と亀が襲いかかる。了は当然逃げ惑い、剣崎に連絡する虎太郎。
一方、いろは組は一気に進んで「高砂や……」。
了父役の諏訪太朗による「高砂」が響く中、蛇アンデッドに追い詰められる了だったが、そこへ駆けつけるブレイド
……「高砂」をBGMに着ぐるみバトルを展開したのは、さすがに特撮ヒーロー史上初ではないでしょうか(笑)
ギャレンも参戦し、戦闘は2対2に。ここで戦いの気配に気付いた始は、衝動の赴くまま、結婚式を放り投げて走り出す……!
果たして、タコ焼きとタイ焼きと人類の未来はどうなるのか?!


◆第30話「切り札はタコの中」◆ (監督:諸田敏 脚本:井上敏樹
亀とブレイド、蛇とギャレンがマッチアップし、恐慌状態で文字通りに戦闘の足を引っ張る了。
「違う……奴はジョーカーではない」
なんか間違っている事に気付いた蛇と亀は撤退し、走って逃げ出す了。
「始ぇ……!」
「なんだあいつは!」
その後を追いかける虎太郎と、憤る剣崎。
この期に及んでも、安定のポンコツ
一方、戦場へ向かって走る始は、ほへと組のヤクザ達と衝突。後を追いかける未知といろは組も次々と衝突し、婚礼の白無垢衣装を目にする、ほへと組の面々。始は戦闘現場へ駆けつけるが既に無人であり、そこで一同揃って顔を合わせる、いろは組とほへと組。「このタコ!」と「このタイ!」で罵り合う。
この辺りの絡ませ方は実に巧く、特撮ヒーロー物の要点を押さえた上での、多人数の錯綜するスラップスティックコメディを書かせたら、やはり井上敏樹は天才的。
了に追いついた虎太郎は喫茶店で話し合うが、仕切りを隔てた隣の席には、一息ついた未知と始が座っていた。
「愛……わからない……」
彼女を泣かせる始を、こっそりフォローする了。
ご都合的偶然というのものは、このように“面白さ”に転化すれば、許されるわけです。そしてまた、「勝ち残る」とか「愛」とか、本編の真っ当なキーワードを随所に盛り込んでくる辺りが、テクニカル。
「とにかく、君はアンデッドだろ。戦う時は戦った方がいいと思うけどなぁ」
それでいいのか、虎太郎(笑)
「は? アンデッド?」
「とぼけるなよ。君は人間じゃないって事だよ」
「へ?」
店を出て行く彼女と始を見送る、了。
(人間じゃない? おまえはいったい……何者なんだよ……)
そんなこんなで偽物、遂に土下座して真相を告白。
だがしかし、
「ははーん、おまえ戦うのが怖くなったんだろ。とぼけた事を言って、戦うのをやめようっていう作戦か」
「へ?!」
ぽんこつトリオの反応は、想像を亜光速で超えていた。
何が凄いってこれ、これだけ壊したギャグだけどギャグになってないというか、この3人なら有り得る反応だな、というのが凄い(笑)
また翌日、組の者にせがまれてタコ焼きを作る事になった始さん、何となく適当に作ってしまう。
まあ長い人生、タコ焼きの一つや二つ、作る機会もあったのでしょう。
アンデッドとぽんこつトリオに前後から追い詰められた了は、そんな始とこっそり接触
「俺、とてもじゃないけど、おまえにはなれないよ」
「俺は……忌み嫌われていた。……死神……53番目……いや……わからない。思い出せない」
突然挟まれる、真っ当な伏線(笑) まとめ作業の際に読み返していたら、最初期に烏丸所長が「一万年前、53種のアンデッドによる、アンデッド最強決定戦が行われた」と明言していて、4×13+1(ジョーカー)の存在は最初から織り込み済みになっていました。そこからわかるのは、細かい設定があって伏線を張っておけば良いというわけではなく、作品というのは、“如何にして見せるか”である、という事ですが(^^;
入れ替わりを終了しようとする了だったが、先程のタコ焼きを食べて味に違和感を覚え、始の様子を窺っていた未知がそこに登場。
「あんたは全然変わっとらん。辛いことがあったら逃げてばっかりや! こっちの了の方がずっと素敵や……さ、行こ」
偽物とわかった上で未知は始を連れて行ってしまい、いろは組へと戻る3人。未知も実の父親も本物ではなく始を支持し、更にそこへ、ほへと組からの果たし状が届く。
「俺は勝ち残る……必ず」
記憶を失っても毎度のごとく、状況気にせず闘争本能最優先の始さん。遂につまみ出された了は、男としてようやく覚悟を決める。
「こうなったら……俺はぜっったい、俺の人生を取り戻してみせる」
一方、農場にはチベットの烏丸所長から小包が届いていた。パワーアップアイテムを手に入れて、橘さん、超にんまり。
「橘さん、クイーンを封印して、最強のコンビになりましょう!」
ナチュラルに「レンゲル? 知らない子ですね」発言を繰り出す剣崎に、ちょっぴり、行方不明の睦月に思いを馳せて暗くなる駄目師匠。その頃睦月は……まあ、どうでもいいや。
今回、ギャグ部分が面白くて、急にシリアスな大筋の話をやられると、こちらのテンションがついていけません(笑)
そして運命の日――いろは組とほへと組による、タコ焼きvsタイ焼きの最強決定戦、仁義なき売り上げ勝負が幕を上げようとしていた。
「こっちの切り札は息子の了だ!」
(切り札……)
ピンポイントにいい所を突いてくる組長の言葉に、またも反応する始(笑)
対するほへと組は、客人が参戦。ギャラリーの歓声を割って姿を現したのは、胸に輝くタイ焼きマーク、ヘルメットと金属製のボディアーマーで重武装した三上了……の名を捨てた、タイ焼き名人アルティメットフォーム!
……て、タイ焼き名人養成ギブス伏線だったのか!!!(笑)
「俺は取り戻すんだ、こいつに勝って俺の人生を。俺が本物の了だって事を、証明してやる」
かくて戦いの火ぶたは切って落とされる。
次々とやってくる客に対応する為、胸のエンジンに火を点ける了。
「アルティメットフォーーーム・スペシャルターボ!」
役者さんが、超楽しそう。
一方、体に染みついた謎のスキルでタコ焼きを作り続ける始は、失った記憶に刺激を受けていた。
「秘密兵器……切り札……」
だがその時、思わぬ人物がタコ焼き屋の前に立つ!
「ははははは、きゃはははは! いつからタコ焼き屋になったの? ジョーカー」
蛇女がアンデッドの姿を現し、逃げ惑う人々。駆け寄った未知は殴り飛ばされ、一方的に攻撃を受ける始。しかしその戦闘の高揚が、始の中で途切れた記憶の最後の糸を繋げる。
「そうだ……俺は53番目の存在……」
がしっと攻撃を受け止める始。その脳裏に浮かぶのは、「始さん、始さん!」という天音の笑顔と呼びかけ。記憶を取り戻した始はカリスに変身して反撃開始するが、病み上がりの為か、微妙に蛇に押され気味。その時、倒れた未知を助け起こしていた了の、男の魂に怒りの炎が燃え上がる。
――そう、昨日までの三上了は、軟弱で逃げ腰の調子がいいだけの男だった。
だが、今日の三上了は、アルティメットフォームなのだ!
「あの化け物野郎……許せん!」
愛する女の為、怒りを力に変え、今炸裂する、アルティメット鯛焼きプレスアタック!!
「どうでい!」
背後から熱したタイ焼きの型を顔面に叩き込まれ、かつてない間抜けなダメージを負って苦しむ蛇アンデッド。
「凄いやん格好いい。やるやん!」
「さすが、おいらの息子だぜ。はははははは」
「いや、わしの息子」
「「「わはははははは」」」
了が土壇場で見せた男気に、気がついた未知、両組長と組員達も大盛り上がりで、勢いで仲直り。
その間にカリスは体勢を立て直し、ここから真剣勝負。苦しむ蛇アンデッドにラッシュを浴びせ、最後は竜巻キックで撃破・封印。組員達から拍手がわき起こり、思わぬ形でなんかヒーローっぽく(笑)
その頃、サーチャーの反応で現場に向かっていたブレイドギャレンは、立ちはだかる亀アンデッドに苦戦を強いられていた。そこへやってきた始が封印した蛇のクイーンカードを投げ渡し、ギャレン、ジャックフォームに。
腹にクジャクが!!
成る程、基本ジャックが鳥系(飛行能力)で、クイーンがそれを発動させつつ全体を強化する、と。
後やはり、因縁の強い敵の力で強化フォームになる、というのは盛り上がる所です。もっと盛り上げても良いのに、何故かギャグ回に組み込まれてしましましたが(^^; やはりブレイドの時に、こういう仕込みを強くしておくべきだったよな、と。
ギャレン@ジャックフォームは空中火炎弾ラッシュで亀を撃破・封印。
フォームの見た目は悪くないけど(クジャクっぽい翼は特に格好いい)、必殺技は非常にびみょー。 I Love You「さよこぉぉぉぉぉ!」キックの方が格好良かったなぁ。かなり強引に突っ込んだというのもあって、今回に関しては飛ぶ意味も全く無いですし。というかギャレン、どうしてこんな添え物的に強化展開入ったのだろう(笑) ……橘さんか! 橘さんだからか?!
まあ脚本家降板がらみのスケジュール的都合なのでしょうが。
「そうだ……おまえ達が強くなれば、おまえ達と戦う事で、俺ももっと強くなれる」
そして、何故かギャレンの強化に手を貸した始は、意味深な言葉を残して下宿先へと戻るのであった。
……その下宿先では、始に対してすっかり気の大きくなった虎太郎がノートパソコンを持ち込んで作業中。帰ってきた始に肩を揉むように要求。
「断る。自分で揉め」
友達をアピールしてくる虎太郎をずばっと切り裂き、叔父にドライな始さんの帰還に、天音ちゃん大喜び。
叔父さんはしばらく立ち直れそうにありません。
最後は、W組長の「高砂」により了と未知の婚礼がつつがなく行われる中、屋敷の前を訪れた始が響いてくる「高砂」を聞きながら、満足げに走り去る、で締め。
基本ギャグ回ながら、始がらみのキーワードを随所に盛り込み、一つ前のシーンで「俺に友達などいない」と虎太郎を一刀両断した始が、了の新たな門出を見届けて去って行く、という絶妙な案配で落とす、井上敏樹らしいテクニカルな前後編。この後、やりすぎたり色々ありますが、この時期はまだトップフォームで、こういった話を書かせると実に巧い。
諸田監督も私の中では微妙な評価なのですけど、実はこういう軽い話の方が向いているのではないか、という気がします。出来ればタイ焼き名人アルティメットフォームは登場時にずばっと全身見せて欲しかったけど、妙にパーツパーツで画面に入れている映像が多かったので、何か造形面の問題があったのか。
クイーンにも関わらず、番組史上最も悲惨な倒され方をした蛇ですが、扱いは酷いけど印象は強い、というのが今作の皮肉。
次回、お好み焼きが参戦する……!(しません)