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『特捜戦隊デカレンジャー』感想20

◆Episode.29「ミラー・リベンジャー」◆ (監督:竹本昇 脚本:武上純希
「君のお陰で自由の身になれたので、逮捕された時の約束を、今こそ果たそうと思う」
脱獄に成功したジェニオは地球に逃亡し、その行方を追うテツに鏡の中から宣告する。かつて、デカブレイクは闇に包まれたクリスト星(以前に登場したファーリーの生まれ故郷と思われる)にジェニオを追い詰める事で逮捕したが、自分がデリートされない事に確信のあったジェニオは、「次に会う時には、坊や……君に、死以上の苦しみを味合わせてあげよう」と告げていたのだった。
「私の最新作を、楽しみにしてるといい」
ジェニオはテツの周囲の人間へと牙を剥け、パトロール中にパトカーの中から姿を消すセンちゃんとウメコ。その捜索に向かったホージージャスミンも、デカベースのエレベーター内で鏡の世界に囚われてしまう。更に怪重機メガロリアが出現し、街を破壊。
「もうこれ以上、俺のせいで苦しむ人達を見てられない!」
早いな(笑)
直接ではなく周辺を狙われる事で精神的に追い詰められるという展開なのですが、ド定番なのはともかく一切捻りが無い上に、攻撃を受けたのがそもそも同僚刑事(必然的にジェニオとは対決すべき存在)だったり、Aパート早々でテツがキレるので“じわじわ追い詰められている感じ”が全く無かったりで、テンプレートに乗せただけの展開になってしまいました。
ジェニオはあくまでテツをいたぶっているのであり、テツが前に出ても姿は見せないに違いない。それならば……スワンさんのヒントにより、ジェニオの能力に対する解決の糸口を見いだしたバンは、囮作戦を発案。ジェニオが出撃したバンを狙った所でその能力の秘密を解き明かす事を、テツへと託す。
前回、宇宙警察が2年かけても能力の秘密を解析できない、と大風呂敷を広げてしまった為、解決をどうするのかと思いましたが、スワンさんがあっさりと筋道をつけてしまいました。単にスワンさんが凄いのか、宇宙警察の科学班がぼんくら揃いなのか。
……基本まあ、デリートするからシカタナイ。
光線兵器の開発とか大好きだけど、アリエナイザーの特殊能力の解明とか、興味ないのです。
バンはデカバイクロボで出撃し、やたらに柔軟な動きの女性型怪重機メガロリアを竜巻斬りで撃破。そこに姿を見せたジェニオは、胸部のミラーをオープン。高層ビルを利用して、合わせ鏡による光の無間回廊を作り出すと、特殊能力「ミラー・イリュージョン」により、デカバイクロボごとバンを光に変換し、鏡の世界へと取り込んでしまう。
全ての鍵は、胸の鏡――あれを破壊する事で、鏡の世界に囚われた人々を解放できる筈。遂にジェニオの能力の秘密に辿り着いたテツはデカブレイクに変身し、戦いを挑む。頭脳派の学者系と思われたジェニオだったが、剣を振るって接近戦もこなし、弱体化の激しいデカブレイクを切り伏せると、電撃拳も光速回避。
デカブレイクは結果的に、対ブリッツ三兄妹特化型だった事が証明される形に(^^;
ブレイクを翻弄するジェニオは、鏡の中に捕らえたデカレンジャー5人の姿を見せつけ、テツを絶望に落とそうとする。鏡の世界で、酸欠っぽくあえぐ5人……
「悲しみの仲間達、とでも名付けるか」
しかし、
青「ジェニオ! 残念だが、おまえの作品は失敗作だ!」
珍しく、ホージーさんから反撃開始。
……まあ実際、大物然として引っ張った割には、猟奇の欠片も無くて非常にがっくりですジェニオ。
「どこが失敗作だというんだ」
緑「地球署の仲間は……6人なんだよぉ!」
赤「画竜点睛を欠く、テツのいないポートレートなんか駄作だ!」
先輩達の言葉に力を得たテツ、渾身の反撃。ここで改めて、デカブレイクが地球署のデカレンジャーの一員である、と強調され、熱い台詞をセンちゃんに言わせたのも良かったと思います。
だが反撃も束の間、やはり強力なジェニオの前に、追い詰められていくデカブレイク。芸術家気取りも結局は殴り合いで優位を確保したジェニオは復讐のフィナーレを奏でる。
「お仲間達の望み通り、完璧な作品にしてあげよう」
特殊能力を発動しようと胸の鏡をオープンするジェニオ……その瞬間の為に最後の力を残していたブレイクは、必殺拳スティックハンマーでダイブ。星の拳が鏡を砕き、解放される5人。
「天網恢々、悪は必ず滅びるんだ!」
揃い踏みしたデカレンジャーは、怒濤の一斉攻撃。そして各地のスペシャルポリスから、ジェニオによって生きたままポートレートにされていた人々が、次々と元に戻ったという連絡が入る。
「みんな、もう気兼ねはいらないぞ!」
思う存分、殺ってしまってOKだ!
「ジャッジだ、後輩!」
「ロジャー! スペキオン星人ジェニオ、124の惑星で、一万人以上の人たちの自由を奪い、鏡の世界へ閉じ込めた、誘拐及び幽閉罪で、ジャッジメント!」
当然降りるデリートの許可。だがジェニオは、余裕の笑みを浮かべる。
「私を止める事はできない。私は光の速さなのだ」
鏡の世界に逃げる事は出来なくなったが、光速移動能力を失っていないジェニオは、デリートを発動しようとするブレイクめがけて光の速さで突撃。
しかし、
「超光速拳・スーパーライトニングフィスト!」
光速を上回るデカブレイクの拳が、それを迎撃し打ち砕く。
……なんか、星闘士の勝負みたいに。
「ナンセンス! 俺の拳は、光よりもっと早いぜ。光速拳・ライトニングアッパー!」
そしてやはり車田っぽい打ち上げ技が炸裂し、ジェニオ爆死。
「これにて一件コンプリート、夜明けは必ず訪れる」
遂にデカブレイクの決め台詞も決定するのであった。
「俺は今まで、過去に縛られて孤独に戦ってきました。でも……先輩達が俺をそこから解き放ってくれたんです」
「やっと夜明けが来たんだな」
「はい」
かくてテツは両親の仇を討ち、自ら夜明けをつかみ取ると、新しい明日へ向かって一歩を踏み出すのだった……もはや一人ではない、頼れる先輩や上司達と共に。
前回、ベテラン・野田圭一の抑えた演技も効いて、一風変わったアリエナイザーとして面白かったジェニオが、今回は全く面白みのないキャラになってしまいました(^^; 単発エピソードならともかく、デカブレイクと大きな因縁を持たせ、引っ張って盛り上げた事を考えると極めて物足りない展開。
とにかく、天才的犯罪芸術家の筈のジェニオが、蓋を開けたらチープでつまらない人だった、と今回はこれに尽きます。別のアリエナイザーのエピソードで前振りをして……という構成自体は面白かっただけに、ジェニオの三流芸術家ぶりが非常に残念。なにかと制約の厳しい00年代かもしれませんが、もっと狂気と猟奇が欲しかった。


◆Episode.30「ギャル・ハザード」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:荒川稔久
怪重機同士が戦っている、という通報で出動したデカレンジャーは、逃走するデビルキャプチャー5を、ナイトチェイサーが捕まえようとしている現場に到着。倒れたデビルキャプチャー5を後回しにしてナイトチェイサーの身柄を確保しようとするが、閃光弾で逃げられてしまう。デビルキャプチャー5のパイロットが女の子と聞いて、我先にと救出へ向かうホージーとバン。
センちゃんは、強者の余裕。
「大丈夫かいbaby、俺が来たからには、もう安心だ」
ホージーがコックピットで目にしたのは……ガングロ宇宙コギャル。
「ずりぃぞ相棒!」
「オーケーおまえに任せたー」
ホージーさんは男としてまた一段、株を下げた気がします(笑)
地球署で身柄を確保した宇宙コギャルは、過去に何度か窃盗の逮捕歴があるスロープ星人ファラウェイ。悪びれず、暴れ回るファラウェイに手を焼き擦り傷を作るメンバー、最終的にジャスミンが超能力を発動し、彼女が謎の男に宝石の運び屋を頼まれたが、それを途中でがめた為に追われていた事が判明する。
宝石の隠し場所を問われたファラウェイは嘘泣き→金的蹴りのコンボでバンを倒すと、取調室から逃走。スロープ星人の少数民族である彼女は、触れるだけでどんな機械も操作する能力を持っていたのだ。脱走したファラウェイにより、各所の機械を狂わされ、大混乱に陥るデカベース。その隙にファラウェイはデビルキャプチャー5を起動し、コックピットに隠していた宝石と共にデカベースを脱出してしまう。
ファラウェイの特殊能力には少々、小説『ARIEL』(笹本祐一)を思い出してみたり。ファラウェイが意識的に操作するのに対し、『ARIEL』のシェラは、意図せずに何でもかんでも狂わせて破壊する、というもので別に似ているとかそういうわけではないのですが、『ARIEL』思い出して、今デカベースは、あの話のあのキャラの気持ちだな、と変にすんなり見る事が出来ました(笑)
発進装置もエラーを起こし、出動不能なってしまうデカレンジャー。そんなタイミングで特凶会議の出張から帰還したテツは、戻ってきて早々に宇宙コギャルと戦う事になるが、デビルキャプチャー5は行動不能にするも、ファラウェイには逃げられてしまう。まんまとデカレンジャーの手を逃れたファラウェイは、同じスロープ星人の彼氏・ピロジーと合流し、あははうふふ空間を展開。
「これ売って、百年豪遊? みたいな、うん」
「マジすげー。ファラりん最高。オレ、何があっても絶対、ファラりんのこと守るぜ」
だがそこへやってきたイガグリ先生、容赦なく二人を射撃。逃げ出した二人だったがデカレンジャーもようやく駆けつけ、悪と正義に前後を挟まれ、進退窮まったファラはなんと、宝石を取り出して飲み込んでしまう。
「これで手出しできないだろ」
「愚かな……」
そこへ響くのは、闇に蠢くあの声――そして、コウモリの羽ばたきと共に、エージェント・アブレラが姿を見せる……!
アブレラさん、こんな形でデカレンジャーと初接触(笑)
いいのか、それでいいのか。
「簡単な運び屋も務められんとはな」
「おまえが今回の黒幕か!」
私は被害者だ。こいつのせいで仕事が一つふいになった」
そこの所は、強調しておく(笑)
「――はじめまして、デカレンジャーの諸君。ここまでの活躍は、よーく知ってるよ。私の名は、エージェント・アブレラ。宇宙を舞台にちょっとした商売をしている、しがない商人さ。今回も惑星爆破の依頼があってね」
アブレラがファラに預けた宝石は、実は惑星破壊ミサイルの誘導装置であった。蓋を開くと同時にミサイルが発射され、宝石めがけて飛んでいく……運び屋はその巻き添えでほぼ確実に死亡する為、使い捨ての駒を適当に選んだ、と雑な仕事の理由も判明。
そして今やファラの胃袋めがけて飛んでくる惑星破壊ミサイルの地球到達まで、あと30分。
「だがこの星が爆発しては商売に差し支えるからな。その娘は宇宙の適当な所に、捨てさせてもらう。その方が地球を守る諸君にとっても都合がよかろう」
濃いキャラクター頼りのギャグからここで、悪の論理で安易に地球を守るか、敢えて困難な道を選んでも不愉快な相手の命を守るかの選択が提示される、という面白い展開に。
イガグリ先生はファラを捕まえ、それを止めようとするデカレンジャー達。アブレラは大量のメカ人間を繰り出すと、自らはその場を飛び去り姿を消す。
「いずれ改めて会う事になるだろう。ごきげんよう、諸君」
アブレラは決してデザインは格好いい系ではないのですが、あくまでも“格好いい系”の身振りに徹しているのが、見せ方としては面白い所。…………飛び去る所は格好良くありませんでしたが(笑)
イガグリ先生がファラを連れ去ろうとし、「おまえと一緒に爆発なんてごめんだ!」と、彼氏はファラを守るどころか一目散に逃げ出すが、5人は迷わずファラを助ける為にメカ人間へと立ち向かう。
「バカな……この小娘と心中するのか」
「うるせえ!」
「今、こいつを助けるのはいいが、地球に向かっているミサイルはどうするつもりだ」
「後から考えりゃいいんだよ!」
左腕にビームガンをつけて登場など、能力増強されたらしいイガグリ先生は、二刀流を発動。
「俺は今までのイーガロイドとは違うぞ」
前回バージョンはキャスティング節約で、喋りもせずにデカグリーンと相討ちになったイガグリ先生ですが、今回率直なところ、自分も巻き添えになるのは御免なので、超本気! 二刀流の連撃を浴びて倒れるデカレッドだが、しかし、ファラに迫るイガグリ先生を止める為に立ち上がる。
「待て! その娘に近づくな! 俺はまだやられちゃいない!」
「デカさん……?」
必死に戦うバンの姿に、こんな自分の為に何故そこまでするのかを問うファラ。
「おまえ一人の命も、この地球のみんなの命も、同じように大事な命だ。――だから守るぜ。俺たち警察官だもん」
台詞の途中で、くるくるっと、銃を回す小技を入れるのが実に格好いい。
この台詞はちょっと微妙な所を突いていて、「おまえ一人の命」と「地球」を等価に置いてしまうとファールなのですが、「地球のみんな(それぞれ)の命」と置く事で、目的の為に些末な犠牲と切り捨てる悪の論理に屈する事なく、迷惑な窃盗常習犯の命でも「守るべき命の一つ」として公平に扱うという、正義と警察官の誇りを描く事が出来ました。
「デカさん……」
「ふん、バカが」
「どっちがバカか、今見せてやる!」
デカレッド気合い全開、決めBGMと共にジュウクンドーが炸裂し、Dマグナムハリケーンショットでイガグリ先生を撃破。と、デカレッドらしい見せ場もバッチリ。30話にして初めて、荒川回でバンがちゃんとはまった気がする(笑)
だが、イガグリ先生を倒したのも束の間、ファラは怪重機ナイトチェイサーに捕まってしまう。ファラを捕まえたまま怪重機は急速上昇し、まさかのゲストヒロイン生身で大気圏突破?! かと思われたその時、デカバイクロボがキャッチロープで怪重機を確保、地上に叩きつけてそれを阻止。Bパートからリアリティラインがシリアスに拠っているので、この時の衝撃による内臓破裂などでファラが死にそうな勢いですが、スロープ星人は地球人よりだいぶ頑丈なのだ!
カマシンも出撃し、省略気味にスデカロボ・ビルドアップ! 今回も車田的なダイナマイトアッパーを喰らわせてファラを救出すると、ガトリングパンチでデリート。地球に迫る惑星破壊ミサイルは、侵入軌道を計算したデカベロボが必殺技を発動して迎撃に成功。地球署のオーバーキル兵器が効果を発揮し、地球は無事に救われるのであった。
ミサイルの解決は超おざなりでしたが、最近マスターもデカベロボも出番無かったし、今回の主題ではないので、まあ良しか。
あと、長らく何言っているのかわからなかったデカベロボの必殺技がヴォルカニック・バスター」と判明しました。
ファラの命ばかりでなく、心も救ったデカレッドはマスクごしに熱烈なキスをされ……というか何かを吸われて、ばたんきゅう。
何をどうやったかは恐ろしくて聞けませんが、スワンさんによりファラの飲み込んだ誘導装置も取り出され、一件コンプリート。ファラは罪を償ってバンの奥さんになる宣言をし、メンバーはそれを遠巻きに囃し立てるのであった。
何故かその環に加わっていないな……と思ったら、ホージーさんはボスと真面目に、アブレラについて考察中。宇宙警察のクライムファイルにも記載のない、犯罪エージェント・アブレラ。地球で急増するアリエナイザー犯罪の陰にはその存在があったのか? そして――
「我々の前に姿を現した事に、どんな意味があるのか……」
前回今回と少しホージーさんの扱いが改善されているのですが、内部で何かあったのか。それとも、より残念な人(前回:ジェニオ、今回:ファラウェイ&ピロジー)が出てくると相対的に浮き上がるという、大宇宙の真理なのか。
“不良と刑事”という定番ネタをギャグ成分強めで転がしながら、デカレンジャーアブレラが初接触という、後半戦に向けて重要な布石回。前半のどぎつめのギャグ展開から後半のシリアス展開という振れ幅の広い話をテンポ良くまとめていて、中澤監督、今作では安定していい仕事。
ちょうど先週配信の『炎神戦隊ゴーオンジャー』34話が、「悪女が最初から最後まで悪い人で何の反省も改心も無いままギャグの範囲を少々踏み外した犯罪を行って勝ち逃げしてオチも笑えない」というエピソードだったのですが、ファラウェイがバンの真摯さに打たれて心を入れ替える、というのは、お約束だろうが何だろうがフィクションとしての因果応報がきちっと収まっていた方がスッキリする、とくしくも対照的になりました。
別に何でもかんでも“ちょっといい話”にすればいいというわけではありませんが、“いい話”にしないならしないで、フィクションのエンターテイメント作品としては別の因果応報を描くべきであるよな、と。
工夫のない変化球とか、変化球のつもりでただの大暴投、というのが一番よろしくない。
そういう観点で、特別誉める程では無いけれど、きちっとストレートを投げきった、そんなエピソード。