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『仮面ライダーブレイド』感想21

(※サブタイトルは存在しない為、筆者が勝手につけています。あしからずご了承下さい)
◆第35話「お父さんは同棲なんて許さない」◆ (監督:諸田敏 脚本:會川昇
トライアルDのビームを弾くキングフォームは、右腕にガントレットを追加装着。
割と重装甲デザイン好きなので、キングフォームはかなりいい。
なおOP映像の踏ん張りがキングフォームに。役立たずもいつの間にか、射撃シーンがジャックフォームに。
「力が……力がみなぎる……!」
ブレイドはキングパンチでトライアルDを壁に叩きつけ、追い打ちで炸裂する、超必殺技・ロイヤルストレートフラッシュ。5枚のアンデッドカードの力によって増幅された剣撃は黄金の閃光となり、トライアルDをベルトごと消滅させる。
観戦していた一般人(広瀬さん)が風圧で倒れて気絶したり、消滅したトライアルDの足跡の形に灰が残っていたりと、かなり派手な大技という演出。
王者の剣により、無限に近い生命力を持ちながら封印不能、という難敵トライアルDを打ち破ったブレイドだが、変身が自動解除され、倒れ込んでしまう。そんな剣崎を見つめる謎の少女……。
一方、ジョーカーとヒューマンの間を行き来しながら苦しむ始も、キングフォームの気配に気付いていた。
「剣崎なのか……やめろ…………。おまえはその力を使うな……っ」
そして闇の底では――
「幾ら融合係数が高くても、13体のアンデッドと同時に融合できるものなど居ない。居るとすれば彼は……」
何としてでも剣崎一真をライダーシステムから切り離さなくてはならない。役立たずを取り込んだ忍者は、次の改造実験体が必要だと、暗闇の中で囁くのであった……。
広瀬父はじわじわと、怪しげかつマッドな雰囲気が作品世界に馴染んで面白いキャラになって参りました。
訥々とした語りがなんとも不気味で、伊坂さんとか烏丸所長とは違った暗躍キャラとなっています。
広瀬が目を覚ました時には姿を消していた剣崎は、謎の少女に廃ビルの一室みたいな部屋に連れ込まれていた。
「あたし、生原羽美。あなたは、仮面ライダーでしょ」
「おまえアンデッド?!」
いつものノリで即座に戦闘態勢に入る剣崎。
「あなた、自分で言ってたよ、俺は仮面ライダーだーって」
ハイ、言ってました、すみません。
「ねえ、なんでライダーなんてやってるわけ?」
「まあ、仕事だから」
「仕事?! あんなモンスター達と戦うのが?」
「いや。あいつらから、人を守るのが」
「ヒーローってやつだ。人類の自由の為に戦うとか?」
これは初代『仮面ライダー』のネタで、セルフオマージュという所か。
また、剣崎が「戦う」のではなく「守る」に力点を置いているというのは、今作らしさを出した部分です。
「明日一日だけ、あたしのヒーローになってくんない?」
帰る場所がないという家出少女・羽美に、拾った恩を売りつけられる剣崎。却下しようとするが、カードを取られていた。
「じゃあこれ、捨てちゃう?」
更に広瀬からの電話に勝手に応答され、バックアップに見捨てられた剣崎は、やむなく少女の頼みを聞き入れる事に……とここはコミカルに展開し、一休み。ゲストの役者さんも、、軽いノリの我が儘少女を好演。
その頃、街にクラゲアンデッドが出現するが、そこへジョーカーがやってきてクラゲは逃亡。喫茶店では、始さんが変態紳士と外へ行ったまま行方不明、というこれまでにない深刻な事態に、天音ちゃんがその帰還を待っていた……。
翌日、携帯電話と大事なカードを人質に取られた剣崎は一日ヒーローで羽美と遊園地へ。羽美の無茶に振り回されながらぐったりしていると、アンデッドサーチャーに反応ありとの連絡が入る。
「今日はあたしだけのヒーローって約束でしょ」
「遊びじゃないんだ。返してくれ」
というやり取りでなんだかんだでカードは返してもらい、羽美は相手の真剣さは推し量れるという、嫌すぎないキャラに収まりました。
現場に向かう剣崎の背に、「ヒーローなんていない」と呟く羽美……そんな感じで剣崎がイチャイチャしている頃、退職して自分探しをしていた筈がいつの間にかまた上司のおっさんに振り回される生活になっている橘ギャレンは、謎施設でトライアルEと対峙し、その攻撃の癖が自分に似ている事に気付く。新たに生み出された実権体――トライアルEは、橘のデータからこっそり作成された疑似アンデッドだったのだ。
軽く戦っただけで相手の癖が自分と同じだと見抜く、と橘さんのそれとない優秀さをアピールしているのですが、割とどうでもいい自分の癖を把握してとくとくと語る辺りに、何とも言えないへたれ臭も漂います。橘さんって、「そこが俺の欠点だというのはわかっている……だが、それを直すと、俺が俺でなくなるような気がして怖いんだ……」みたいな事を真顔で語ってしまうタイプ。まあ、そういうのが好きな女の人も居たわけですが。それで甘えさせている内にますますタチが悪くなった気がする。
アンデッドとの合成に不可欠な二つの要素――それは、融合係数の高い人間の遺伝子データと、剣崎一真に対する強い憎悪。
「俺が剣崎に憎悪を? そんなわけがない」
「君は心の底で、剣崎に嫉妬している」
ライダーとしての高い資質を持ち、全ての点でギャレンを凌駕するブレイドの存在……へたれの内角にえぐいボールを放り込んでくる忍者。ここで、トライアルEに触れる広瀬父の結婚指輪?に橘が目を留める、というのが演出で強調。あと忍者の言動が本当だとすると、トライアルDにも融合係数の高い人間の遺伝子データが用いられていた事になりますが、さて。
というか、数字上のデータだけならボードの資料にありそうなのに、“寝ている間にこっそり”を強調した所を見るに、寝入った橘さんから髪の毛なり血液なり皮膚の一部なりを入手したという事で、ごくナチュラルに家宅不法侵入していただけでは飽き足らず、広瀬父はますます忍者。
サーチャーの反応へ向かったブレイドはそこでジョーカーと遭遇し、まさか始の本性だとわからずに殴りかかるが打ち払われる。
(駄目だ、剣崎……)
わずかに残った理性で何かを剣崎に伝えようとするが、苦しみだしたジョーカーは大暴れ。ブレイドはこっそり後をついてきた羽美を工場の崩壊から守り、その間にジョーカーは姿を消す。
剣崎がジョーカーを始だとわからない、という要素は、情報の限定を面白く使いました。
平成ライダーだと『アギト』(2001)の時に井上敏樹が積極的に用いた手法ですが(井上敏樹の得意技でもある)、折角の仮面劇という要素も含め、複数主人公の物語は、それぞれの持つ限られた主観的情報が錯綜すると独特の面白みが増します。
『アギト』の時だと、それぞれ正体を知らないまま痴情のもつれからバトルを始めたアギトとギルスの仲裁に入ってG3刑事・殉職とか、終盤に来て遂にライダー同士の正体を認識するのかと思ったら氷川くんがアギトの中身を木野さんと勘違いするとか、あの辺りの展開は面白かった。
力を抑えきれないジョーカーがあちこちで暴れ回っている中、変態紳士見習いは、通りすがりのベテランプレイヤーから貰ったカリスのカードセットを見ながらにまにましていた。
さらっとですがここで、クラブが9枚、ハートが10枚集まっている、と残り枚数が明示されました。
アンデッドの気配を感じた睦月はコンプリート目指して出撃。そこではジョーカーに怯えて逃げ出したクラゲアンデッドと、その様子を見ていた謎の女が対峙中。睦月は女を押しのけてレンゲルに変身すると、冷凍ビームでクラゲの動きを止めた所を、カリス愛用の竜巻キックコンボで撃破・封印。
「これが 課金の力だ 最強のライダーの戦い方だ」
ちまちまノーマルガチャなど回しはしない。課金は力、力は正義。
「よし、クラブの7ゲット」と、メインライター交代で、今度こそカードコレクター路線も定着の模様。
そんな恥ずかしい少年の姿を見つめる、謎の女。
「最低の戦いだな」
女は人間の姿のまま、生身の格闘で睦月を圧倒。踏みつける。
「私は、私の種族をこの地球の支配者とする為、この戦いに命を懸けている! 君はなんのために戦っている?」
「なんの……ために……」
「カテゴリーエースに操られているだけか」
ここで、信念を持ってバトルファイトに臨むアンデッド、が登場。まあ今までも伊坂や新名のようにバトルファイト勝ち残りの為に様々な工作を行うアンデッドは居たので、それなりの強い信念はあったのかもしれませんが、「種族」を引き合いに出して、戦う信念を強く打ち出してきたのは初めてとなり、この一言で強いインパクトを持たせる事に成功しました。
「ジョーカーが目覚めた。君に構っている暇はない」
女は睦月をあしらって姿を消し、その言葉に睦月は、始がジョーカーの姿に戻った事を知る。ヒューマンとジョーカーの姿を行き来し、山中を彷徨う始の前にカリスのカードの誘導で辿り着いた睦月は、レンゲルに変身するとカードをリリース、ハートのエース――マンティスアンデッドを封印から解放する!
「見せてくれ。昨日までの自分にやられる姿を」
一方、羽美の荷物の中から家族の写真を目にした剣崎は、羽美の両親と兄が既に亡くなっている事を聞く。地震で家が潰れた際に、両親と兄が羽美1人を家の外へと押し出して彼女を救い、3人は崩れた家の下敷きになって死んだのだ……。その後、親戚の家で居候生活をする羽美は、守られて自分1人だけが生き残った事で、孤独に苛まれていた。
「だから知ってるんだ。守ってくれるヒーローなんてどこにもいない。誰も助けてくれない。……みんな、自分が生きる事しか考えてない」
「そんな事はない」
「あんただって同じだよ!」
そこへ現れる、トライアルE。「仮面ライダー」であり続ける為、剣崎は羽美を守って、トライアルEへと立ち向かう。
「君は俺が守る――変身!」
ジョーカーvsマンティスアンデッド、ブレイドvsトライアルE、二つの戦いの行方や如何に!
うんなんか、『ブレイド』普通に面白くなってきて、つくづく、大切なのは素材より調理法だな、と。
始さんがジョーカーとヒューマンの間で苦しむのは、エースに翻弄される睦月の二番煎じとも言えるのですが、その上で、“面白くなる状況”を用意すれば、しっかりと物語は面白くなるし、流れを組めば劇的になる。
ブレイドとの錯綜、マンティスアンデッドの解放……どうすれば面白くなるのか、をしっかりと積み重ねて繋げていっている。
會川昇が、気合いの入ったいい仕事。
で、後半戦に入ってパワーアップ展開に絡めて「剣崎のヒーローとしての脱皮」を描くのと並行して、今作のヒーロー物としての立て直しも行っているのですが、初代『仮面ライダー』オマージュを含め、今回はかなり直球。
羽美は設定として剣崎の鏡でしょうし、この出会いをどう転がしてくるのか、ここから如何にして『ブレイド』/剣崎一真らしさを出していくのか楽しみです。
そして、ジョーカー/始は人間の姿を取り戻せるのか、変態紳士睦月はMの喜びに目覚めてしまうのか、新しいおっさんを相棒にした橘さんは…………え、えーと…………ま、まあ、前向きに生きていけるといい、なぁ……。申し訳程度にトライアルEとの戦闘シーンがあったのが、むしろ切ない。
現状のウスラトンカチぶりでも、「橘さんだから仕方ない」で済むあたり、むしろ人徳は感じますが。