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『烈車戦隊トッキュウジャー』感想:番外編

◆『烈車戦隊トッキュウジャー』VS『仮面ライダー鎧武』春休み合体スペシャル◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:毛利亘宏)
昭和ライダーVS平成ライダー映画(なんだかなぁ)の宣伝を兼ねた、『烈車戦隊トッキュウジャー』×『仮面ライダー鎧武』の、春休みコラボスペシャル。『鎧武』は結局見ていないし、映画はスルー予定だしで、正直あまり期待していなかったのですが、いやこれが面白かった。
コラボお祭りかくあるべし、という造りでお見事。
レインボートレインの旅の途中、沢芽シティに降り立ったトッキュウジャー。広場でダンスを見学していると、突然そこに、モグラの怪人と雑魚戦闘員が現れる。『鎧武』ってこんな縞々の戦闘員が出てくる世界観なの……? と思ったらそれはシャドーラインでもなければインベスでもない、地下帝国バダン(『仮面ライダーZX』の敵組織)の尖兵であった。
状況はよくわからないが、何はともあれ明らかに悪い奴に違いない、と変身するトッキュウジャー達。そこへ『鎧武』の主役も駆けつけ、かたや引かれる白線と回る線路、かたや召喚されるミカン。
互いの変身を呆然と見つめるヒーロー達。
と、やはりコラボ祭は明るくないと、というメッセージも感じる、非常に秀逸な掴み。これで一気に、今回の物語の中に入る事が出来ました。
バダンのモグラ怪人が仲間を呼ぼうと地面を掘ると、何故か虚空にチャックが開き、そこから出てくる新たなバダン怪人……ではなく、赤いインベス。本来はバダン怪人を呼び出す筈のモグラ怪人の特殊能力は、この沢芽シティではクラックを作り出してインベスを呼び出してしまうのだった。
鎧武とトッキュウ1号はインベスを追ってクラックの向こうへ、トッキュウ2〜5号と、途中参加の仮面ライダーぶどうの人が戦闘員を蹴散らし、モグラ怪人は退却。ここで、ライト&みかん、4人&ぶどう+ダンス踊っていたヒロイン的な人、の2パーティに分割され、それぞれの立場と最低限の情報を交換。
全くわけわからないのも困るし、かといって見ていない作品の設定と物語をあまりくどくど説明されても楽しくないし……という所で、根っこの行動原理だけ説明して、さらっと進めたのは好判断。また、冒頭のカグラのお絵描きをキーアイテムに、両作品を“街”というキーワードで繋げたのもうまく転がしました
通りすがりの鳴滝(『ディケイド』見ていないのでよく知らない為、正直、悪ふざけイメージがある)にスペシャルパスを貰ってレインボートレインに乗り込んだコウタは、とりあえず一緒に怪人を倒そうというライトに、沢芽シティの抱えている問題には巻き込めない、5人は5人の目的を優先すべき、と共闘を断って電車を降りていく。
「ライト、君には君のやるべき事が、他にあるだろう」
ここで戦いに関する葛藤部分を、キチガイ系ヒーロー・ライトに持っていった、というは実に良し(笑)
「なんでかわからないけど、違う気がする。やるべき事とか大切な事とか、そんなのは、後で考える!」
そろそろ出発、と言う車掌の制止を振り切ってライトは飛び出していき、それに続く、トカッチとヒカリ。
キチガイなので、細かい事はポジティブかつ前のめりに後回し、と巧く『トッキュウジャー』しました。またそこで、ライトの主張だけを語るのではく、ヒカリに、「例えばさ、シャドーラインと戦う事をコウタくんが手伝いたいって言ったらどうする? 彼にとってはもっと大切な事があるのに」と、みかんの人の言う事にも一理ある、と言わせているのもバランスがいい。その上で、キチガイが引っ張るのも『トッキュウジャー』。
またここで一線を引いておく事で、それぞれがそれぞれの戦いに深入りしない理由も、無理なく前向きに描きました。ライトもみかんの人も、ヒーローであるからこそ目の前の戦いを見過ごせないし、ヒーローであるから他者を巻き込みたくない。そしてヒーローだからこそ、それぞれの目的も大事。
街で暴れるインベスから人々を守っていた女性陣と合流し、ここから、“いつもの時間”に、まずはトッキュウジャーの見せ場。『トッキュウジャー』を見たくて7時30分からチャンネルを合わせている子供達の期待を裏切らないこの構成は、実にお見事。
トッキュウジャーが赤いインベスと戦っている間に、ダンゴムシみたいな灰色の雑魚怪人も現れ、駆けつけるみかんの人。
「ライト、どうして」
「ごめん。俺、頭悪いからさ、この街の事はよくわかんないけど、とにかく危ないってことはわかるよ。いくらトッキュウでも、黙って通過できない。それだけ」
「……ありがとう。…………それに、俺も頭悪いんだったなぁ! 難しい事は全部後回しだ!」
みかんの人の自己申告がどういう意味で言っているのかわかりません、ライトの「頭悪い」は、「頭の具合が悪い」なので、要注意だ!
鎧武が雑魚怪人を蹴散らし、またまた現れたモグラと戦っている間にトッキュウジャーは赤いインベスを追い詰め、変な実を食べて巨大化したインベスとの戦いで、トッキュウオーの出番も確保。
「とどめだ、カーキャリアタンクシュート!」
てなんか、しれっと物凄い事した?!
今回、コラボという事で撮影タイミングが放映順と一緒か何ともなのですが、ちらほらトッキュウジャーが、本編で未だ見た事がない、そして次はあるのだろうか、みたいなアクションをしています(笑)
ロボ戦の合間の、「巨大なロボがでっかい怪物と戦っている? そんなバカな話があるか。仕事に戻れ」と、背広の人が背景の出来事に気付かないで「みんな、疲れているのか……」は、お約束だけど、面白かった。
意外や、鎧武ヒロインに巨大ロボ大受け。そしてコウタは、スペシャルパスを手に、ライトに一つの頼み事をする。それは、ヒロインの子をしばらくレインボートレインに乗せて沢芽シティから遠ざける事。挙動不審なライトの誤魔化しでレインボートレインは舞を乗せたまま出発し、車内販売にころりと心を奪われる舞。
……その駅弁を食べるとレインボートレインから降りられなくなるのではなかろうか、とドキドキしたのですが、
トカッチカードを生け贄にして墓地送りにする事で、トラップは回避されました。
格好いいぜトカッチ!
そしてコラボは後半戦へ。バナナの人が登場し、バダンと戦う仮面ライダー達。
なんかバナナの人、収録帰りのビジュアル系バンドメンバーみたいなのですが、何者なのでしょうか。ぶどうの人はもっさいセーターなのに。……そういえば、みかんの人はいつもミカン色のジャケットを着ているのか、コラボなのでわかりやすくする為に着ているのか(笑)
ワゴンさんの不注意発言からコウタが余計な気を回した事を知り、隣の東沢芽でレインボートレインを降りた舞は、モグラ怪人に人質にされてしまう。きっとトカッチが何かやらかすに違いない、と入念にネタを振った上で、事情をよくわかってないワゴンさんがよくわかってないままバラしてしまう、と、5人を誰も下げなかったのは細かく良かったところ。
ライトから話を聞き、憤るぶどうの人。鎧武ヒロインは、けっこう愛され系だなぁ。
ぶどうの人の情報収集でモグラ怪人の居場所を掴み、バナナの人の協力もあって陽動作戦に成功したコウタとライトは、モグラの元へ踏み込むがモグラは瓜二つの兄弟怪人を召喚する事に成功していた。思わぬ怪人の登場で、戦闘員に囲まれ危機に陥るコウタとライトだが――

「コウタ、イメージしろ。俺がこれから、何をするのかを」
「イメージ? ……――わかった」
「……見えたか?」
「ああ、見えた」
「「俺たちの勝利のイメージ!」」

と、クライマックスにしっかり、これをやらないと、というのを盛り込み、主人公2人のコンビネーションで盛り上げ所も作りました。2人は無事にヒロインを救い出し、モグラ兄妹は合流。雑魚が呼び出され、バナナとぶどうは雑魚要員でフェードアウト(マンゴーとキューイを披露)。トッキュウジャーが勢揃いして、鎧武vsモグラA、トッキュウジャーvsモグラB、でマッチアップ。
「それじゃあ……」
「よーし、俺たちのステージ」
「「しゅっぱーつ進行!!」」
トッキュウジャーの方ではモグラを追い詰めたところで仮面ライダー15が出てきたり、昭和ライダーが現れたりで、映画ネタ。まあこの映画ネタは、このコラボの完成度を確実に下げました(笑) コラボ話の出来が良かった為、本来の企画コンセプトである映画ネタの挿入が実に勿体ないという、何か本末転倒な事態に。
そんなこんなはあったものの、それぞれ必殺技でモグラを倒し、ひとまず消えるバダンの脅威。次の駅へと出発していくトッキュウジャーを見送るコウタ達。
「いいもんだなぁ、自分の街を、自分で守りたいって気持ち」
「俺もライトに会えて良かった」
「え?」
「いいもんだな仲間って!」
……友達少ないのか?
「またな」
「おう、またな」
ライトとコウタはがっちり握手を交わし、レインボートレインは沢芽シティを離れて走り出す――。
見送りシーンにこっそり参加しているので、一応、レインボートレイン見えるのか、バナナの人。見えないかと思った(笑)
『トッキュウジャー』は立ち上げ展開から軌道に乗せていこうという時期のコラボで、色々と不安はあったのですが、終わってみれば不安を払拭してあまりある出来。見事な構成のコラボでした。
トッキュウジャーにとっての“故郷の街”ってあくまで記憶に関わる最重要キーワードというだけで、街そのものに対する愛着は語られた事がないので(記憶がないから当然なのですが)、若干の強引さはありましたが、“街への想い”で2作品を繋げたのは良かったと思います。
そういった物語的にリンクする要素を作った上で、トッキュウジャーと鎧武、それぞれをヒーローとして描き、前半後半で主体を変えつつ、しっかり最後の「勝利のイメージ」でライトとコウタをクロスさせる、とお祭りをやりながら、しかしお祭りというだけで誤魔化さない、丁寧で素晴らしい流れ。脚本も良かったし、両作の雰囲気を汲みつつ(『鎧武』は見ていませんが、少なくともバナナの人登場後は、演出のトーンを変えている)これを綺麗にまとめた中澤監督、お見事な仕事。00年代中盤から東映ヒーロー作品の監督としてはエース級の評価をしていますが、うまかった。
『トッキュウジャー』としては、小林靖子脚本以外でキャラが動くのが初めてでしたが、カグラのお気楽やトカッチのお笑い要員をやや強調しすぎた所はあるものの、5人それぞれの物の見方がきちっと物語に織り込まれていて良かったと思います。こういう形で改めて見ると、『トッキュウジャー』というのは、一つの事象に対する5人のリアクションの差異というのがわかりやすく出るように組まれているのだな、と。
で次回、お気楽カグラと、一歩引いてみるヒカリが対立?
そして春闘