◆第9話「電気椅子スパイ!!」◆ (監督:折田至 脚本:上原正三)
マッハ8の超音速旅客機の設計が完成し、特別科学捜査室は設計図と、その開発者である葉山博士を守るように命令を受ける。事件が発生したわけでもないのに警護につくという仕事に不満をこぼす芝だったが、設計図には産業スパイ、そしてそれと契約したバドーの魔手が忍び寄っていた。
今回のバドーの怪ロボットは、スパイロボット・コシカケマン。
見た目、椅子。
真っ赤な上に背もたれが前側に斜めというエキセントリックなデザインのコシカケマンは、博士が注文した特注品の椅子に偽装して研究所に入り込むと、深夜に起動。つい腰掛けてみた警備員を電気ショックで殺害すると設計図を写真に撮り、そのプリントアウトを契約したヤクザ者の元へ届けるという、外見からはとても想像できない鮮やかな手腕を見せる。
金庫から設計図を強奪するのではなく、写真に撮って物は戻しておく、というのがスパイロボットらしくて素敵なところ。偽装にはかなり無理があるものの、手足のついた椅子、というデザインも素晴らしい(笑) 惜しむらくは、前回(カミナリマン)の今回で、主な武器が電気ショックで被っているという事ですが、あまり気にしない時代だったのか。
「廊下の1人はナイフで一突きです」
「こっちのガイシャは無抵抗のまま黒焦げだ。煙草に火をつけて一服しながら……。どうもわからねぇ」
翌朝、現場検証をしながらの、こういうやり取りが、今作の魅力。
そこで例のエキセントリックな椅子が無くなっている事に気付いたKは、何でも出来る赤外線スコープを発動。床を何かが這いずったような跡を発見する。
(あの椅子がロボット……きっとそうだ)
「芝刑事、これは人間の仕業ではありません」
「またかよK」
「昨日運び込まれた椅子が無いんですよ」
「馬鹿! 椅子が人殺しをするか」
これですよ、やっぱり今作はこうでないと(笑)
常識的ではあるが頭の固い芝刑事と唐突すぎるKの噛み合わないやり取りというか、元を正すとKを有効利用する気の全く無い警視庁上層部のてきとー感。
設計図に何者かが手を触れている事に気付く博士だったが、金庫に収められていたそれは、博士の用意したダミーだった。博士は本物の設計図をこっそりと、息子が学校の宿題で作ったKの粘土細工の中へと隠し、自分だけの秘密としていたのである。しかし、設計図がダミーとわかれば、犯人は今度は直接、博士や息子を狙うかもしれない。そこでKが、息子のボディガードにつく事となる。
「これはバドーの初めての失敗だ。葉山に一杯くわされたのだ」
首領、一週間前の事とか覚えていない事、発覚。
ヤクザ2人はまず博士の誘拐を目論み、車で連れ去られそうになる博士。一緒に居た刑事達が何の役にも立たない……と思ったら、車に乗せて油断した所を狙って、犯人を殴り飛ばして博士を助け出すおやっさん。そして車の屋根を飛び越える新條! 新條さんはいちいち、効果音が改造人間ぽいやりすぎ感が面白い(笑)
一方、少年の警護についていたKは、小学校で子供達と野球をしていた。下手投げで軽く打たせた後で、本気を出してアウトにしにいく現実の見せ方が容赦ない。
そして何となく、女教師にモテているK。
芝家長女ともフラグ立ててるけど、お姉さん系の女性にモテるというか、母性本能を刺激するタイプなのか。
そこをコシカケマンが強襲してくるが、何とか撃退。だがコシカケマンは放課後、帰り道の女教師をナンパする。
「先生、お茶でものみませんか」
椅子モードで坂を滑り降りるコシカケマンに捕まった先生と、それを追いかけるKの図が凄くシュール(笑)
女教師を救い出すKだったが、その間にヤクザ2人によって、少年がさらわれてしまう。
「馬鹿野郎! なんて間抜けなんだおまえは」
「すいません!」
「すいませんで済むと思っているのか」
「お父さん、誰にだってミスはあるわよ」
「儂はミスを怒っているんじゃない。ここへおめおめと戻ってきた鉄屑野郎の根性が気にくわねえんだ。どうしてとことん追い詰めて、取り戻そうとしねぇんだ」
K、相変わらず、刑事として無能。
……まあ、物凄く、五十歩百歩の感じもありますが。
そこへ犯人からの電話がかかり、葉山博士は単身で呼び出しの場所へと向かう事に。
「それじゃみすみす設計図を奪われにいくようなものです。命なんでしょ、あなたの」
「命より、大切です。リョウイチは」
シンプルなのだけど、このやり取りの置き方は巧い。
反省モードでステルスしていたKは、取引場所へ向かう葉山博士のポケットにこっそりと電波反射装置を忍び込ませると、新條と共にアジトを強襲。ヤクザ2人をあっさり逮捕し、コシカケマンと戦うK。
電気椅子に座らされたKは電気ショックを浴び、更に必殺の電気椅子スピンにより地中に引きずり込まれそうになるが、逆回転で浮上し、戒めから脱出。落下した電気椅子が地上に埋まった所に速射機関銃を浴びせて勝利する。
犯人逮捕には成功するが、電気椅子による拷問で、博士はひどく衰弱していた。更にそこに現れた新たなロボットが少年をさらい、追いすがるKは両目を潰されて敗北してしまう。
「見えない! 目が見えないんだマザー!」
ホント、駄目な子に(笑)
再び上原正三で変則2話構成(前編でその回のロボットは撃破するが、新しいロボットが登場し、事件そのものは後編へ続く)ですが、やはり魅力のツボを押さえていると、今作は俄然面白い。
警察の対応は全般的にもう少し真面目にやれという感じではありますが、そもそも特別科学捜査室が窓際部署である事を考えると、警視庁は元からこの件に本腰を入れていない可能性があり、何か外務省辺りで複雑な事情が展開しているのか。芝刑事が妙に乗り気でなかったのも、その辺りに感づいていたからなのかもしれません。
◆第10話「バドーのみな殺し作戦!!」◆ (監督:折田至 脚本:上原正三)
見所は、
ハリサスマン、飛ぶ。
追いかけて、Kも飛ぶ(笑)
ヒコーマンとは何だったのか(涙)
視覚回路の完全修復には24時間かかるので、急に機能不全になるリスクを承知で応急処置をしてもらうK。一方、葉山博士は電気ショックの影響で目がうつろになり、一時的な記憶喪失に陥っていた。警視庁では芝と新條が、逮捕したヤクザから黒幕を聞き出そうと尋問し、刑期をネタに若い方の口を割らせようとするが、「社長」の一言を口にした所でハリサスマンに暗殺されてしまう。
コシカケマンのデザインがインパクト抜群だったのに比べると、ハリサスマンはこれといった特徴はなく、一番面白いのは、名前。
ハリサスマンは更にヤクザの会社の社員達、ヤクザ上司を暗殺。全てはヤクザに設計図の強奪を依頼した黒幕・黒沼の手によるものだった。
リョウイチ少年を監禁していた黒沼は、更に葉山博士を誘拐して設計図の場所について口を割らせようとするが、それによって逆にKに所在を突き止められてしまう。取っ組み合いの末に新條から逃げ延びた黒沼は、怪ロボットに頼らなくても暗殺の一つや二つぐらい出来るのでは(笑)
無事に助け出された葉山親子だが、今度は監禁中に黒沼の顔を見てしまったリョウイチ少年にハリサスマンの魔手が忍び寄る。ハリサスマンは校門前で少年を狙い、それを守るK。
にしても、何か特別ゲスト枠だったのか、前回今回と、女教師がやたらにヒロイン度高い(笑)
少年が黒沼の車を見かけた事から、K、少年、先生は、ハリサスマンを放置して、ジョーカーでその車を追跡。ナンバーの確認に成功し、黒幕の身元が、世界規模の商社・日の出商事の黒沼社長だと判明する。バドーへの糸をたぐり寄せるチャンスと黒沼に任意同行を求める特別科学捜査室だったが、ハリサスマンによって暗殺されてしまう黒沼。
失態続きですが、ロボットによる殺人は立証されないので、失態ではないのだ!
何故か「船の科学館で、決着をつけてやる。来い」と力強く飛翔するハリサスマンと激突したKは、戦闘中に視力を失って大ピンチに陥るが、相手がアンカーで動きを封じてきた事を逆用。真っ正面に来たハリサスマンに速射機関銃を叩き込み、からくも撃破するのであった。
折角なので新條刑事のサポートでカバー、みたいな展開が見たかった所ですが、力技で倒してしまいました(^^; ここまでひたすら無謀に怪ロボットに突っ込んでいた新條ですが、今回はロープ捕縛術を披露。怪ロボットの動きを制限しにいくと、ようやく変化をつけてきました。一応コワシマン謎の電撃爆破で協力していますが、そろそろ、新條が怪ロボット戦でKをサポートするような戦いも見たい。
葉山博士は正気を取り戻して粘土細工の中から設計図は回収され、Kは小学校で大人気、でオチ。
基本ドタバタしたシナリオなのですが、芝と新條による取り調べシーンがしっかり入っていたり、刑事としての姿勢に問題多めのKが、修理に24時間かかるなら応急処置でいい、と連絡無しに失踪から一歩前進したり、とディテールの描き方が今作の魅力です。
7−8話から心配されましたが上原脚本で良い『ロボット刑事』に戻り、改めてやはり露骨に中山脚本だけズレているのですが、中山脚本だけ1話完結だったり、どうしてこういう造りになっているのか(^^; まあ番組として全て2話構成はやりにくかったので、中山脚本にしわ寄せが行った、という可能性もありますが。
次なる怪ロボットは、ロッカーマン。