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『マン・オブ・スティール』感想(最後までネタバレあり)


地殻の崩壊により、滅亡の迫る惑星クリプトン。この事を予測して警告するも元老院に黙殺され続けていた高名な科学者ジョー・エルは、禁忌を犯し希望を託した自らの子供カル・エルを、別の惑星へ逃がそうとする。一方、ジョーと志を同じくしながらも手段を違えた友人、ゾッド将軍は軍事クーデターを決行。騒乱の影は、未来に希望を伝えようとするジョー夫妻にも迫りつつあった……。
詳しい設定は知らなくても、名前とデザインぐらいは覚えのある人も多いであろう、ヒーローなるものの象徴ともいえるヒーロー、スーパーマンの誕生を描いた、アクション映画。
冒頭、中年女性のいきんでいる顔のアップから始まった時は、一瞬どうしたものかと思いました(笑)
TV画面だからまだあれですが、劇場の大スクリーンで見ると、なかなか衝撃的だったのでは。このシーンは後で、意味のある伏線だった事は判明してホッとしますが(^^;
序盤からとにかくひたすら、よくわからないけどなんか物凄い、という大仕掛けが連発。そして、ハッタリは一度かけたらかけ続けろ、という作法を忠実に守っており、かけ続けきった、というのが素晴らしい。
また、トーンの暗くなる少年時代の回想シーンを、まとめてではなく分割して挿入したのも良かった所。
その異質な力による疎外感に悩みながらも、地球で育ての両親に愛情深く育てられたカル・エルクラーク・ケント)は、たくましい筋肉と胸毛の濃い青年へと成長。世界各地を放浪した末、南極の地下に凍り漬けになっていたかつてのクリプトン星の探査宇宙船の中で、父の情報体と接触する。……なんというか洋の東西を問わず、自分の死後に子供宛にビデオメッセージ(的なもの)を残していく親はろくなものではない、と再確認(笑)
どうしてそこはかとなく神目線なのだ、父。
こうして自分のルーツを見つけたクラークだったが、それが同時に、虚無空間への幽閉から解放されたゾッド将軍らを地球へ呼び寄せる事になってしまう。ゾッド将軍はカル・エルの引き渡しを求めて地球を脅迫。ここで「将軍も信用できないが、地球人も信用できない」と、両親との絆と約束以外に、クラークが地球を守る理由が無いのが、切ない所。
……なのですが、ちょっと優しくしてくれた美人(という事にしておこう)記者にころっと転がされるので、切なさ半減。
南極で出会い、自分の事を記事にしなかった記者ロイスを信じたクラークは、自ら米軍の前に姿を現すと、ロイスと米軍を通してゾッド将軍に投降。だがそこで、ゾッドの目的が地球を新たなクリプトン星とする事だと知って抵抗する。ゾッドが追い求めていた物、それは、ジョー・エルがカル・エルと共にクリプトン星から送り出したクリプトン星人の遺伝子データ――コデックスであった。
前半に主人公の超人的能力をこれでもかと見せていって、後半は近いスペックのゾッド配下と超人同士のぶつかり合いに。しかしクラークは地球では基本スペックだけで無敵だった為に戦闘技術が無く、出来る事といったら超高速の突撃のみ。あと、切り札である眼からビーム。
というわけで、基本チャージのぶつけ合いになる高速戦闘なのですが、高速移動と高速移動をぶつける都合か、若干、CGが画面から浮き気味でちょっと残念。あと大体、投げ飛ばすか吹っ飛ぶか、で切れる為、ロングのカットを多用する事になり、映像としての面白みは今ひとつ。総じて、肉弾戦の割には殴っている感じが足りない。
この戦いを通じて米軍に味方だと認識されたクラークはスーパーマンと呼ばれるようになるが、一時撤退したゾッドは、ワールドエンジンにより、地球環境の改造を開始する……と巨大メカも出現して、どんどんエキサイト。
まー、メトロポリスの一部が大崩壊しているのに、爆心地から少し離れると市民が普段通りにフラフラしているのはどうかと思いましたが(^^;
最後は、地球の環境に徐々に適応し、眼からビーーームと飛行能力を習得したゾッド将軍との直接対決。まあ、調子に乗ってアーマー脱いだのがいけなかったのか、将軍、飛べるようになってからの方が弱いんですが。
今作で良かった所の一つは、この悪玉の戦う理由が物語の中でしっかりしている事。
ゾッド将軍にはクリプトン星再興という目的があり、そして「民を守る事」は、計画的に人口調整がされていたクリプトン星において、兵士として設計されて誕生したゾッドにとっての“条件付け”である。
一方で、クリプトンの軛を断ち切る者として自然出産によって作られたのがスーパーマンであるならば、星の未来と過去の存在として、両者の激突は必然である、というのはよく出来た所。
そしてこれにより、わざわざ冒頭に持ってきた出産シーンが、作品を貫く大きなキーポイントであった事がハッキリします。
父さんが、優良種たるクリプトン星人が、劣等種たる地球人類を導いてやるのだ目線なのが、ちょっと気になるけど。
若き(? 33歳らしいのでそうでもない)ヒーローの誕生を描く今作ですが、何故かやたらに、オヤジ格好いい映画。
実の父は序盤アクション満載だし、声、井上和彦だし(中盤の情報体の活躍はやり過ぎ感がありましたが)。
超人たる養い子に良心の範を示す育ての父はとにかく格好いいし。
そして何故か編集長が(スーパーマンと全く関係ない所で)クライマックスに滅茶苦茶格好いいし。……まあこれは、ハリウッド映画的に黒人の見せ場を作らないといけない時間帯だった可能性がありますが。
スーパーマンの正義の背景が基本的に“内なる良心”で、育ての両親からの愛情に起因しているので、とにかく両親は素晴らしい人物として描かれ、特に父さんは滅茶苦茶格好いいのですが、そうか、父役はケビン・コスナーで、大物キャスティングだったのか(ほぼ全く外国の俳優がわかりません(^^;)。……父さんのあの死因は、どうかとは思うけど。
まあこの、田舎の農夫の素朴な道義心の中に、真の良心と正義がある、というのはアメリカの良し悪しが滲み出る所ではありますが、基本、頭空っぽにして見る系の映画だと思うので、あまりこだわらないのが吉か。
全体的に回想シーンが非常に情緒的でノスタルジーを煽るつくりなのは、好みの分かれる所でありましょうが。個人的には、役者の力でうまく誤魔化したと思います。
ラストシーンは敢えてお約束を入れたのでしょうが、改めてやると、どうにもギャグに(^^;
それで一体、誰が騙せるのか。
基本ひたすらパンチを打ち続けながら、合間合間に叙情的な回想シーンを挟む、という構成が割と見やすく、結構楽しめました。たぶん落ち着くとツッコミ所満載なのかと思われますが、最後まで足を止めずにプレスし続けた所を評価したい(笑)
ヒーロー映画としての不満は、結局スーパーマンの中に、「地球人の為に戦う」という動機付けが目に見える劇的なシーンとして描かれなかった事ですが、最初から単発構想とも思えないし、これは次回があれば使うネタストックの感じなのかなぁ。あと、「スーパーマン」の名付けという肝心な所が物凄くさらっとだったのは残念。
それから、途中で触れたようにアクション面は若干物足りず(好みではなく)、一番好きなアクションシーンは序盤の、燃える胸毛が助けに来た!シーン(笑)
総じて、クライマックスにもう一つ、グッと来るシーンが無かったのは減点。
ただ、例えばジョー父によるクリプトン星で何があったかの解説シーンでわざわざパノラマを展開したりなど、派手なギミックを休まず手抜きしのない、遊園地のアトラクション的な映画として指向性を持って攻め切った、という点は良かったと思います。
続編があったら見たいという程の思い入れは湧かなかったものの、迷いの無い、一直線な娯楽映画としては、それなりに楽しめました。