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『烈車戦隊トッキュウジャー』感想18

◆第18話「君の名を呼べば」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子
見所は、エンディング前のおまけシーンで、いまひとつ格好良くならないアプリチェンジャーでの変身ポーズを皆が真似する時の、ミオの腕のキレ。
前回ザラムに勝手にアプリチェンジャーを渡したライトに対し、そんな簡単に信用していいのか、と怒るヒカリ。ライトもまた、そんなヒカリの態度に怒りを見せる。
これまで、叩かれて頭に来たとか、腹が減って頭に来たとかはありましたが、ライトが感情的行き違いで怒りを見せるのは初か。
すかさず止めに入るミオとか、少しずつ別の面を出しながらキャラクター描写を転がしていくのは実に巧い。
ザラム、そしてトッキュウ6号の扱いを巡って不穏な雰囲気になる中、烈車はシャドーに乗り込まれた駅に辿り着く。そこではリングシャドー(オカマ)が、名前を呼ぶと激しい頭痛に苦しめられるというリングを街の人々に取り付け、闇を生み出していた。
通りすがりのザラムがリングと接触し、人間の姿でもザラムだとわかるようなのですが、ザラムがそういう特殊なシャドーなのか、そこは深く考えない事にしたのか。トッキュウジャーが現れて戦闘になり、リングに組み付いたザラムは頭痛リングをはめられてしまうが、リングシャドーが名前を呼んでも、平然とした顔で立ち上がる。
「無駄だ。俺はシャドーの名前は捨てた」
「そんな事無理よ。口でどう言おうと、名前は頭に刻み込まれているんだから。ザラム」
「俺は絶対的にシャドーを捨てた」
「はぁ、凄い思い込み……」
「あいつの想像力凄いんだよ。ヒカリ、トッキュウジャーにピッタリだろ?」
恐るべし、ロールプレイ防御!!
だがそこへ、ザラムに興味を持ったゼットが姿を見せる。
「シャドーがそんな簡単にキラキラになれるのか?」
ザラムは強引にシャドー怪人の姿に戻されてしまい、再び降り出す雨。それでもザラムを信じ続けるライトだが、皇帝陛下にさらわれてしまう。取り残される4人+ザラムであったが、ライトの姿を見たヒカリは、ザラムに対する考え方を変える。
「1ミリだって疑ってない。そんな顔してたよ。あんたに殺されでもしない限り、ライトは疑わないんだ」
キチガイだからな!
通常、こういった場合は主人公属性として「人が好いから」というのが相手を信じる理由になる事が多いわけですが、とてもそんな感じがしないのが、ライトの恐ろしい所です。
「まったく……どうしたらいいのか、もうわかんないよ。だからもう諦めた。俺も、信用とまでは行かないけど、裏切られる前から疑うのはやめる」
ヒカリ、飛んでいく風船を捕まえるのを諦める(笑)
そしてこの成り行きに、舞台が目の前にせり上がってくるのを感じ取るザラム。
「わかった……俺がトッキュウ1号を助ける。これこそ、俺にふさわしい死に場所だ」
「「「「え?」」」」
「人知れず戦い、人知れず消える。それが俺だ――」
信頼と証明、命を懸けた戦い――テンション上がった劇場体質のザラムは待ち受ける皇帝の元へと向かう。“シャドーであった自分”の姿を思い出してしまった事でザラムの名前に縛られて頭痛に苦しめられるが、その時、リングシャドーへの対策を練っていた4人が駆けつけ、合体武器を放つ。
それが生み出したのは――虹。
そして、名前を捨てた男の、新しい名前。
その名を、虹野明。
トッキュウジャー、本人に一言の断りもなく、勝手に名前を付ける(笑)
「そうか……てめぇが見たのは、虹か」
ザラムの見たキラキラの正体を知った陛下だが、日射病による立ちくらみで早退。久々に出番の多かった陛下ですが、溜めを効かせた台詞回しと、粗暴さと鷹揚さを行き来する演技が面白く、役者さんも好キャスティング。幹部クラスが宮廷風なのに対し、ゼットだけは王というよりギャングのボスなのですが、それが非常にいい味を出しています。
「闇の中で見た……おまえの目ん玉にあるキラキラによぅく似たやつだ。それからずっと取り憑かれている」
「だったらもう、闇作るのやめろよ」
「闇がなくて俺たちが存在できるかよぉ」
果たして陛下は、引きこもり中に何を見たのか。レインボーラインとシャドーラインは対立し続けざるを得ない存在なのか。少しずつ見せている本筋の今後も楽しみです。
「俺はザラムじゃない。虹野明だ」
新しい名前を得たザラム改め明は、頭痛リングの縛めを破るとトッキュウ6号へと変身。ドリル誘導灯により、リングシャドーを撃破する。ロボ戦では、トッキュウオーが明の所持していたドリルレッシャーを左手に換装し、新技ドリルトルネードによりシャドーを粉砕。
なおこのドリルレッシャーはもともとドリルクライナーであり、前回、去り際のシュバルツ様が口にしていた「ザラム……貴様、あの烈車を……」というのは、明が持ち逃げしていたこのドリルを指すと判明しました。……えー、あー、た、退職金?
これにより、シュバルツを退けリングシャドーを個人で撃破した6号の強さは明の個人能力もありますが、一応、業務上横領してきたドリルのお陰でもある、という理由も付きました。それは、シュバルツ様もわざわざ自分で取り戻しにくるわけです。
新たな名前を得る事で、本人の強い思い込みばかりでなく、完全にシャドーではなくなった虹野明。その名前はアプリチェンジャーにも登録され、正式なトッキュウ6号が誕生する。
「名前、気に入った?」
「ああ。俺の墓に刻むのに、ちょうどいい」
前回から徹底して、明の「死に場所」台詞には周囲がずっこけリアクションを続けており、一種のギャグ扱い。そしてそれにより、明のキャラクターを立たせている。同じ台詞でも、周囲がシリアスなリアクションを返すと真面目で重い話となっていき、また別のキャラクター性が生じるわけで、演出の面白さ、というのを感じる所です。
「俺の仕事は、虹を守る。レインボーラインのレールを守る事だ。――人知れずな」
烈車への同乗を断った明は、保線作業員として陰ながらレインボーラインを守り続けるべく、ブルースハープを吹きながら去って行く。
桃「行っちゃった……明くん」
黄「やっぱり自由」
緑「つか、面倒くさい」
青「けど、なんかいいメロディだよね。あのハーモニカ」
赤「これからは、6人でうまく行く……俺には見える」
新戦士の加わったトッキュウジャー、6人目は常に同行はしないというパターンに。これは基本が、“幼なじみ5人”というパーティ設定なので、良かったと思います。常に同行しない理由が“仕事があるから”というのも納得が行きますし、説得力を持った上である程度好きなタイミングで出せる、という保線作業員という設定は秀逸。
名前を持つ事で形を持つ、というのは魔術的約束事ですが、新しい名前を得る事で新しい存在になる、というザラム→明の新生を、敵シャドーの能力と絡める事でわかりやすく表現。
本人に何の相談もなく名前を付けるのは人道的にいかがなものかとは思ったのですが、今作の性質を考えるとむしろ、4人に名前を付けられる、というのが“仲間に入る”為のイニシエーションという事か。
サブタイトルの「君の名を呼べば」というのは存在の認証であり、この場合は他者からのそれなのですが、トッキュウジャー5人の自己承認を描いた第2話「俺たちはここにいる」と、意識的に繋げたサブタイトルなのかな、と思われます。
基本設定や5人のいい雰囲気から、追加戦士はかなり心配していたのですが、非常に面白い、そして物語に馴染むキャラクターとなり、今後どう転がっていくか楽しみです。
次回、トカッチまたも爆死寸前。