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『アメイジング・スパイダーマン』感想(最後までネタバレあり)


謎めいた失踪後の事故で両親を亡くし、叔父夫婦に育てられたピーター・パーカーは、冴えない高校生。ある日、科学者だった父の遺品の中に隠された研究資料を発見したピーターは、父の元同僚だったコナーズ博士の元を訪れる。博士がラボを置く会社のビルを調べ回っていたピーターは、侵入した部屋で一匹の特殊な蜘蛛に刺され、それをきっかけに驚異的な肉体能力を身につける。それは、人間離れした鋭敏な感覚、優れた反射神経と筋力、そしてまるで蜘蛛のように物体に張り付く力だった――。
病気などの抜本的治療の為に、異なる生物の遺伝子を注入し、その性質を人間に取り込もう、という研究の成果により、偶然にも超人的能力を身につけてしまった青年を主人公としたヒーローアクション。
アメリカンコミックの代表的ヒーローの1人ですが、『スパイダーマン』関係映画を見るのは初めて。原点コミックの知識も全くありません。
主人公はそもそも冴えないティーンエイジャーであり(ただし頭脳は割と優秀)、未熟なヒーローという位置づけなのですが、それ以上に、
アホの子。
それが致命的な悲劇を招く、というような駄目展開は避けていきますが(叔父の件は、しっかり段取り踏んでいる)、とにかく凄く、アホの子。
そしてアホの子ゆえに案外と行動的、という形で話が転がる為、前半ちょっと話にノれませんでした。
また前々から苦手だとは思っていたのですが、改めて、スクールカースト描写があまり得意ではありません。
マッチョに小馬鹿にされて痛めつけられる主人公→ある日マッチョを叩きのめす→ヒロインのときめきゲージがぎゅんぎゅん上がる
というのが、どうも苦手(^^;
一応、緩和する為にか、弱い内から主人公がマッチョに筋を通して、痛めつけられるも「立派だった」とヒロインに評価されるシーンは入っているのですが。
……まあ、これが通りすがりの主人公がちんぴらを叩きのめして人助けする、という展開だったら全然OKなので、要するに、お約束に対する極めて個人的な趣味嗜好の話ではあります(笑)
ところでヒロインが「高校3年生」と発言した時に、「え??? 幾らなんでも無理が……」と目が点になったのは私だけではないと思いたい(おぃ)
超人的能力を手に入れ、また、父の遺品に記されていた計算式を自分の発案のように教えてコナーズ博士から認められた事で調子に乗りだしたピーターは思いっきり道を踏み外しそうになるが、自分が放置した強盗に叔父が殺されてしまった事件により踏みとどまる。夜な夜な、叔父の仇を探して犯人の人相書きに似たチンピラを叩きのめして回るピーターは、「顔を見たからな!」というチンピラ達の言葉と、逃亡中に落下したプロレス会場のポスターを見て、思いつく。
そうだ! 覆面を被ろう!!
……て、それかーーーーーーーーー?!
なんというか、この辺りが、ひたすらアホの子な主人公です。
かくして覆面レスラーをモチーフに、自作の真っ赤な覆面を装着したピーターは、<狂犬のような高校生>から<夜の街を駆け回る覆面の変態>へとクラスチェンジ。

ビルの谷間の暗闇に キラリと光る怒りの目
安らぎ捨てて 全てを捨てて 悪を追って空駆ける〜

レオパルドンは出てきません。
叔父の仇を探しながら、徐々に装備を強化していくピーター。やがて真っ赤な覆面と全身タイツの怪人は、市民に自警団的存在として認められていく事になるが、それは警察との軋轢を生む事に。
叔父の死に責任を感じて復讐に邁進するピーターは、無関係のチンピラを必要以上に痛めつけたり、警察に追われて逃亡中に夜の街をど派手に飛び回ったりと、精神の平衡を欠いている描写はしっかり入るのですが、この、ピーター・パーカーの抱える狂気が物語の中にそれ以上組み込まれなかったのは、個人的に残念だった所。
物語の流れとしては、最後に叔母さんに卵を買って帰るシーンが、狂気が祓われたという演出意図であると思われ、忘れられている訳ではないようなのですが。
まあ、ピーター自身は、彼女といちゃついている間は、叔父さんの事は忘れていたっぽいけど!(それはそれで、正しくはある)
一方、ピーターの提供した数式を元に、マウスによる異種間遺伝子交配の実験に成功したコナーズ博士に対し、会社は危険な人体実験を要求していた。それを断った事でラボの閉鎖を命じられた博士は、思いあまって失った自らの右腕にトカゲの遺伝子を注射。その結果、人間離れした体躯と生命力を持つ代わりに理性を失った、凶暴なリザードマンへと変貌してしまう。
リザードの存在を知ったピーターは、父が数式を秘密にして姿を消した理由の一端を知り、自らの責任でコナーズ博士を止める為、人間を超越する事を求めて暴走するリザードへと立ち向かう。
リザードは巨体を表現する為にCGなのですが、それもあってスパイダーマンとの戦いは少々アニメーションのようになってしまいました(もはやそこを区別する意味も薄いのかもしれないけど)。まあ、映像の組み立てなど見る限り、アニメーション的(そしてコミック的)なのは意図的なようですが、着ぐるみ愛好派として生っぽい戦いが好きなので、そこは残念だった部分。まあ、最近は基本CGを前面に押し出してくるので、最初からあまりその辺りは期待していなかったといえばいなかったですけど。
余談ながら、個人的に『アイアンマン』が好きなのは、あの作品が割と生っぽいアプローチをしていた所。
スパイダーマンの特徴である大胆な糸移動と、パルクール系のアクションを交えて、空中移動を小刻みに挟んでいた今作ですが、クライマックスでスパイダーマンの移動をサポートするべく、スパイダーマンに子供を助けられた人物の先導で工事用クレーンがビルの間に並ぶ、というのはシンプルながら熱い所。
どんぴしゃという訳ではありませんでしたが、それなりに楽しめました。
不満としては、ヒロイン父は死ぬ必要があったのかという所。特に、直接の加害者であるリザード博士が罪人ではあるも生き延びただけに、バランス的に殺すまでしなくても良かったのでは……とは。
物語の中で、人としての責任と良識を語り導くのが叔父さんで、新しい一歩を踏み出したピーターに対し、人治のヒーローとしての覚悟を問うのがヒロイン父、というのはわかるのですが。叔父さんは決定的な分岐点なのでやむを得ないとしても、1本の映画で2回やると、やり過ぎかな、と。
構造としては、アホの子がアホの子ゆえにヒーロー見習いとなり、そして責任と覚悟を問われる事でヒーローの入り口に立つ、そんな物語。
全編で一番気に入ったアクションは、下水道に糸を張り巡らせて、リザードを感知しようと?した所。……そしてあまり役に立たなかった(笑) ヒロインがクライマックスできちっと存在感を出したのも良かったです。クライマックスまでは、正直、ちょっとあんまりだと思ったけど(^^; とりあえず、家に招待したらいきなり部屋の窓から入ってこようとする男は、叩き出した方がいいと思います!
単品としては『マン・オブ・スティール』の方が楽しかったのですが、ヒーローの入り口に立った主人公のその後がどうなるのか、という部分で続編の方が面白くなりそうかもという感触があって、既に公開された『2』が気になります。レンタルに並んだら、借りたい。