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『魔法戦隊マジレンジャー』感想11

◆Stage.17「優しさはいらない〜ウーザ・ドーザ・ウル・ウガロ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久
ルナジェルさんにより、5兄妹の父の天空聖者としての名が、ブレイジェルと判明。
どうもフィルターかかりまくった感じのあるルナさんの回想によると、ブレイジェルは優しさを捨てた戦鬼で極めて優秀な魔法使いという、パーフェクト・ソルジャーだったとの事。
そして15年前――冥獣帝ン・マが地上への大規模進行を企て、冥府門を作成。
「勇敢なブレイジェルはたった1人でその冥府門に飛び込み……」
いやそれ単に、頭空っぽで前のめりなだけでは……。
そしてブレイジェルの命令で、外から鍵魔法で冥府門を封じたのが、ルナジェルであった。
「最後まで、厳しい人だった。常に冷静で、戦いに優しさなど持ち込まない。あなた方のような甘さは、微塵もなかった!」
…………いやですからえーと……ルナさんの好意フィルターが三重ぐらいにかかっているだけで、ただのバトルジャンキーのような……(笑)
鍵魔法は、自らの命を鍵とする、強力な封印魔法。後はルナがマジトピアに引きこもってしまえば封印が破られる心配は無い筈だったが、ルナは天空聖者の裏切り者ライジェルの襲撃を受け、気がつけば記憶を失って地上を彷徨っていたのだった……。
そこへ闇の力を蓄えたウルさんから校舎裏への呼び出しがかかり、インフェルシアに魔法使いが居るならばライジェルに違いない、と出撃するルナ。共に戦おうと同行を申し出る5人だが、「勝てない。優しさを捨てない限り」と、ルナの作り出した結界の中に吸い込まれてしまう。
結界の中に吸われる時、なんか兄者が凄い側転している(笑)
「噛みしめなさい、お父様の思いを」
ルナさん曰く、そこは戦いに優しさを持ち込みすぎる5人の厳しさを試す場所だそうですが……必要なのは優しさを捨てる事ではなく、頭を使う事のような気がしてなりません。
ウルザードとルナジェルは激突し、戦いは巨大ルナジェル(天空体)と、ウル皇帝の巨大戦へ。巨大ルナジェルは拘束魔法から必殺のムーン八つ裂き光輪を放つが、ウル皇帝はそれを弾き返す。
「なかなかやるな。大いなる力を得る前の俺なら、やられていたかもしれん」
と恥ずかしい告白が入るのですが、ウルさんの、「闇の力が! 大胸筋に! 溜まってきたぞぉぉぉぉぉ!!」本人の自己申告だけなので、どうにも物語の説得力が足りないのが困ったところ(^^;
そんな大いなるダークパワージャベリン暗黒魔法斬りが炸裂し、人間の姿に戻ったルナジェルに迫るウルザードの刃。
どう言いつくろっても、わざわざ戦力を削ったルナジェルの戦術ミスで弁護のしようがありません。だがその時、結界を脱出した5人が駆けつけ、危機一髪の所でウルザードを吹き飛ばす!
一見、誰か1人が犠牲にならなければ脱出できないような結界……だがそれは、勇気を持って挑めば、全員が脱出できるという仕掛けであった。……この結界部屋の目的が戦士としての勇気や覚悟を試す為、というならまあわかるのですが、ルナさんは「どうせあいつらでは脱出できないだろう」と思っているし、魁が突破した根拠が「優しいリンがこんな非道な事をするわけがないからブラフだ」というものな為、微妙がピントがずれた感じに。
優しさを否定しているけどリンは本当は優しいし、父ブレイジェルも優しさを捨てたわけではない、と末弟が年上の女にぐいぐい攻めていき、なんかもう、勇気と無謀と優しさがミンチ状態で、魔法のメンチカツが出来そうです。
ブレイジェルに、優しさが……?」
「うん。リンの未来を守ってやりたいっていう、優しさだよ。だから、自分は門と一緒に封印されても、リンが生きられるやり方を選んだんだ」
えええええええええええ?!
鍵魔法、かけた本人の命がけだったのでは。
……いやまあ、無事にマジトピアに帰れれば、一生VIP扱いで豪遊生活が待っていたのかもしれませんが。
泣きの入るルナさんの手を魁が取ったその時、ブレスレットの鈴が犬ビームで砕け散り、浮上する冥府門。ウルザードはルナをさらって消え、マジレンジャーの前には、門についていた冥獣ガーゴイルが立ちはだかる。
巨大な冥府門を背景にしての、ガーゴイルの高速移動の演出は格好良かった。
そして待ちきれないヤカン様、門の隙間から無理矢理マジキングに攻撃(笑)
前後を挟まれ、窮地に陥るマジキング。果たしてこのまま、冥府門は開いてしまうのか。今、地上に最大の危機が迫る!
一気に事態が大きく動きだしましたが、改めて今作の構造的問題点は、最初に「勇気」と「無謀」の違いに言及したのに、その後の劇中で何をもって「勇気」とするかの基準がすべからく適当な事。そしてその適当な「勇気」をキーに物語を転がしてしまうので、果てしなく芯がしっかりしないままである事。結果、登場人物の言動と行動がどうしてもふわふわしてしまいます。何とかここの芯を入れて欲しいものなのですが。
次回、白熱するブランケンウルザードの、どっちが先にリタイアするかチキンレースの行方や如何に?!


◆Stage.18「力を合わせて〜マージ・ジルマ・ジー・ジンガ〜」◆ (監督:竹本昇 脚本:荒川稔久
自らの命に防御魔法をかけていたルナジェルの息の根を止める為、解除魔法をかけるウルザード。一方、何だか自力で出てきそうだなぁと思ったら、本当に無理矢理、扉の隙間をこじあけて地上に出現するブランケン
ブランケンはマジキングの天空魔法斬りを弾き返すという凄まじい力を見せ、その必殺剣を受けたマジキングは合体・巨大化が解除されてしまう。ルナジェルの生命力が失われていくに従って冥府門から溢れた闇が地上を包み、ン・マ様のエネルギーを得たブランケンは大暴れ。その光景を見て打ちひしがれる弟妹達を、奮い立たせようとする兄者。
「馬鹿やろぉ!! ……兄ちゃんだって怖い。でもこんな時こそ頑張るんだ。頑張れば、これが絶対最後の戦いになる。母さんや父さんが守ろうとした平和は、もう、すぐそこなんだ。
――俺たちの武器はなんだ!
母さんが教えてくれた、俺たちの一番の武器はなんだ!」

「……俺たちの武器は……勇気」
「俺たちが信じ合えば、家族が、兄妹が、力を合わせれば、出来ない事なんて何もない!!」
ここで兄妹を鼓舞する役が、主人公属性の末弟ではなく、兄者だったのは良かった所。
ストレートな燃え展開なのですが、改めて気付かされるのは、今作は要所要所でこれをやるのではなく、毎度根っこはこれなので、見ていてどんどん、冷めていってしまうという点(^^;
「俺たちの武器は勇気だ!」というのは本来、1クールに1回程度が限界だなぁと。
兄姉はマジドラゴンとなってガーゴイルを瞬殺するが、ヤカン様の攻撃で魔人に分離してしまう。その間にリンの救出に向かった末弟は解除魔法の完成を阻止し、異空間で決闘に望む、赤とウルザード
ボクシンググローブで決闘に臨むのはどうなのかと思ったのですが、ここはなかなか、アクションに気合いの入った一騎打ち。背後から組み付かれたウルさんが、敢えて打撃から首投げに行く辺りとか、好き。
カウンターでマジパンチを破壊された赤は剣を取り出してちゃんばらに移行し、魔法忍法火の鳥でアタック。直撃を受けてよろめくウルさんだったが、爆炎が張れると平然として、赤を嘲弄する。
……前回、ルナジェルの攻撃でも結構よろめいたり呻いたりしていましたが、本当は痛いけどやせ我慢しているのか、相手の打撃を敢えて受け止めるプロレス主義なのか。
「言った筈。魔法は力。そして真の力は闇からこそ生まれる。闇の力に勝るものなど、どこにもないのだ」
必殺攻撃を放ち、赤を追い詰めるウルザード
前半戦のまとめのような前後編なのでついでに言及しておくと、ウルさんのこの「闇の力がぁ、上腕二頭筋に溜まってきてるぞぉ!」は、概ね自己申告なのも問題なのですが、「勇気」と「闇」が特に対抗関係に無いというのも困ったところ。言葉としてもそうですが、劇中で「勇気」と「闇」の対立が特に描かれていないので、どうしてウルさんが「勇気」に対して「闇」を持ち出しているのか、さっぱりわからないまま18話まで来てしまいました。
とにかく今作は、キーワードの劇中における定義付けと、キャラクターへの紐付けがおざなり。逆に言えば、劇中での定義と意味がしっかり描かれていれば、多少変な物でも、物語を動かすキーワードになりえるのですが。最初にマジックワードを持ち出しすぎて、その辺りが凄く杜撰になってしまいました。「勇気」というキーワードが悪いのではなく、劇中における「勇気」の定義づけが曖昧なのが悪い。
「そんな事ない。俺の力は勇気だ。兄ちゃんや姉ちゃん、それに、母さん父さんが、家族のみんながくれる勇気だ。溢れる勇気があれば、魔法は無限大になるんだ!」
その為、決め台詞としては悪くないのだけれど、盛り上がり切れない。
「戯れ言を言うな! くたばれぇ!」
「勇気の爆発だ!! マジ・マジ・マジカ!!」
赤は文字通りの爆発でウルザードを後ずさりさせると、大上段からの特攻火炎斬り・レッドファイヤーミラクルフィニッシュを炸裂させ、ウルさん大爆発。ルナジェルの解放に成功するが、ウルさんは復活して帰宅。
「いずれ必ず、おまえのその炎の力を、闇の力に変えてやる」
「あの男の、潔い戦いぶり……ライジェルではないのか。だとしたら、いったい……」
天空聖界では「逃げ足が早い」のを「潔い」と言う模様。戦士の世界なので、「退却」→「転進」とか、複雑な言い換えが色々あるのです。
前半のヒーロー再起に続き、燃え展開なのですが、ヒーロー大逆転というより、ウルザードが相変わらず役に立たないように見えるのが、何とも困った所です(^^; どうしてウルザードは、もっと大事に使わなかったのか。
ウルさんの馬が2人を決闘空間から脱出させ、マジトピアへ帰国するルナジェル。これにより冥府門が沈んでしまい、ヤカン様、帰宅困難者に。
闇の力の供給が途絶えた事で弱体化したのか、ファイアー皇帝のちょんまげアタックを受けてよろめくヤカン。強引に出番の作られたファイアー皇帝でしたが、直後にマジキングに合体してしまった為、本当に一瞬の見せ場でした。この世界では、家族の愛情 >>> 友情なので、仕方がないのです。
新たな魔法がダウンロードされ、マジキングが母の凍結魔法の力を得る。ここでマジマザーのイメージ映像がマジキングに重なるのは良かった。
「キングカリバー・魔法家族斬り!」
心を一つにした5人の兄妹と母の魔法力が重なって、氷の魔法剣がブランケンを両断。暴れん坊将軍ブランケンは、一番槍で敵陣に突っ込んで敢えなく討ち死にという、時々いる中世の偉い人のような最期を迎えるのであった。
ヤカン様が……ろくに役に立たないまま……本当にお陀仏してしまった……(^^;
再び冥府門は閉ざされ、地上最大の脅威はひとまず去った。凱旋した兄妹は、隠し部屋に母の幻覚を見る。それは クスリ 魔法の奇跡の為せる技だったのか……。
一方、ウルさんはヤカンの剣を回収。
「さらばだブランケン。ン・マ様の牙、ヘルファング、俺が引き継ごう」
ああ、そういう事だったのか。
冥府門からブランケンの剣にン・マ様のダークパワーが注がれる描写が何度かあったのですが、面白いネタだし、もっと早くからアピールすれば良かったのに(^^; やられ間際に急に背景設定を語り出したり、存在の全く活かされない、可哀想な幹部キャラでした。……それはそれとして、その剣、盾に収まるのか。
物語が大きく動き、大ピンチ、大逆転、幹部退場と、ストレートな盛り上げ展開で映像的にはかなり頑張り、シナリオも抑えるツボはさすがに抑え、一山の前後編としては及第点。一方で、そのストレートな展開ゆえに、今作の芯の弱さが浮き彫りになるエピソードとなりました。
今作ここまでの3大ガンだった「勇気(母親の悪影響)」「ウルザード」「ブランケン」の内、ブランケンが切除されたので、ここから少しでも立ち直ってくる事を期待。