先週分。
◆Stage.27「俺たちの絆〜マジーネ・マジーネ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:荒川稔久)
えらい説明的な台詞で、かつてブレイジェルと激闘を繰り広げるも封印されたという、冥獣人四底王が登場。
……いやが上にも、なんとか三冥獣を思い出してテンションの下がる所です(おぃ)
中村秀利、勝生真沙子、青野武、とキャスティングはやたら豪華ですが。
小津家の恒例行事、9月4日は串の日の準備で兄者がノリノリの所で、地上に“呪いの血刀(ちがたな)”サムライのシチジューローが出現。
……やはり、サムライもエネミー種族なのか。
シチジューローの魔剣が“絆”を切り裂き、突然ガラが悪くなると、家を出て行くと宣言する、芳香、麗、翼、魁。
やってくる引っ越し屋さんはそれぞれ、
引っ越しのタケモト→竹本昇監督
引っ越し社104→企画社104(各種デザインワークなどを担当)
シュシュっと引っ越しセンター→ハリケンジャー
か(笑)
なお末弟は高校生なので部屋を借りられず、すごすご帰ってきました!
「冥獣人に絆を切られたからって、こんな簡単にバラバラになっちまうもんなのかよ。俺たち家族だろ……兄妹だろ」
兄者はアイデンティティに大打撃を受け、それぞれの様子を見に行くヒカル先生。
先日、兄者が一ヶ月の収入を無くした時に大騒ぎした割には、全員そこそこ金を貯めていた事が発覚したり…………なんか皆、兄者にだけ冷たいような(笑)
切れたのは、本当に、“絆”だったのだろうか。
兄妹の団結は失われたが、それぞれがインフェルシアと戦う意志まで失ったわけではない事が確認され、何とかだましだましやっていこうと善後策を練るヒカル先生。
「それなりに力を合わせれば……」
「駄目ですそんなの! 俺たちは、戦う為だけに組織されたプロのチームじゃない、兄妹なんです! 兄妹だから力を合わせられた、その気持ちがなくちゃ駄目なんです!」
ここで、職業戦隊ではない、という点に触れてきたのは面白い。
それも、前年プロフェッショナルの職業戦隊(『デカレンジャー』)を描こうとして、微妙に失敗した荒川さんが(最終的には良いところに収まったけど)。
そしてその非職業戦隊ながらも戦ってこれた武器を、「家族」というコンセプトと繋げたのは鮮やか。
兄者は4人を呼び出して串の日を強制するが冷たくされ、思い出のアルバムとか取り出してみる。かつて兄者が不良高校生に暴力を振るわれた時、怒りに燃える4人が戦いを挑み、あっさり返り討ちに遭うも食らいついて結局は相手を根負けさせた時……兄者は家族を兄妹を、愛し続けようと思ったのだった。
「俺たちが素人なのにインフェルシアと戦えたのも、兄妹だからだろ? 誰かが傷つけられた事を怒ったり、誰かを守りたいと思ったり、そんな気持ちが人一倍強いのが、家族や兄妹ってもんだ」
兄者の必死の言葉が4人の気持ちを揺り動かすが、演説のいい所で、巨大シチジューローが出現。魔人化し、個々に立ち向かうも4人はそれぞれ軽く蹴散らされ、妹弟を救う為、兄者魔人と鉄人が参戦。
「絆は俺たちにとって、最高の力になるんだ!」
絆に対する熱い想いの籠もったスーパーアニキスペシャルクラッシュで、牛魔人はシチジューローを一刀両断。
ある意味、「勇気」全否定(笑)
これにて一件落着かと思われたが、4人は元に戻らない……うんまあ兄者、個人の力で強敵を倒せる事、証明しちゃったしな!(笑)
実はシチジューローの本体は刀であり、肉体を乗っ取られる兄者。魔剣の虜となり鎧兜を身につけたサムライ兄者は、思い出のアルバムを無残に切り裂く!
「絆が切れたこいつらには、もう必要ねえだろ」
ここで、舞い散るアルバム紙吹雪の演出がいい味。
アルバムは細切れにされ、妹弟の目の前で燃え上がる思い出の写真。それを見つめた4人の胸に、兄者の言葉が去来する……
「兄貴!」「兄ちゃん!」「お兄ちゃん!「おにいちゃん!」
絆を取り戻した4人はサムライ兄者にタックル。その隙にマジシャインがスモーキーシャイニングアタックで刀を破壊してシチジューローを倒し、兄者は無事に正気に戻るのだった。
だが……
「四底王は死してなおその力で闇を広げる」
撃破されたシチジューローの体から溢れ出した闇を集める、四底王のコボルド――と、四底王は、単なる出落ちではない事をアピール。
怪人がもう一度巨大化するのかと思ったらマジキングは出番無し。前半の戦闘シーンで一応ノルマを果たし、クライマックスバトルが実質生身だった、という終わってみれば面白い構成。
最後は兄者に新しい魔法がDLされ、地面にぶちまけた串の日セットと、バラバラにされたアルバムが復元されて、大団円。
……あれ、禁呪?
おまけコーナーによると、「駄目になったものをいい状態に変える呪文」という事ですが、「戻す」だと問題が出るので「変える」として「いい状態」の基準は? など、レトリックを駆使しつつ色々と疑問が募ります(^^; ここまで巧くまとまっていたのに、最後だけ、新魔法DLの“お約束”を無理に処理しようとして少し崩れてしまいました。
(絆は最高の力か。蒔人もまた、新しい伝説の作り手に違いない)
ヒカル先生が段々、自己暗示みたいになってきた……!
出落ち感満載の冥獣人四底王がやたら大仰な説明台詞で出てきて、ウルさんと「やるな……」「おまえこそ」みたいな茶番を始めた時はどうなる事かと思いましたが、安定の兄者回。
一家離散で兄者史上最大の危機と、家族(兄妹)戦隊というコンセプトを繋げ、技術的に拙い筈のマジレンジャーがこれまで勝利してきた理由付けまで広げたのは、実に鮮やか。
鮮やかすぎて、「勇気」テーマより「絆」テーマの方がしっくり来る、という事態になってしまいましたが(笑)
「絆」があれば、「勇気」要らないのではないか……という。
ただまあ、魔法の配給元が勇気重視政策なので、上のルールには従わなくてはなりません。
勇気はコイン、絆は力。
◆Stage.28「永遠に…〜ジルマ・マジ・マジ・マジーネ〜」◆ (監督:渡辺勝也 脚本:前川淳)
池の畔の四阿で、琴をつまびく歌姫、というファンタジックな入り。近づいた釣り人は池から飛び出した何者かに襲われる……ランニング中に歌声を耳にして誘われた翼は歌姫と遭遇するが、なけなしのイケメン力を発動して、命を救われる。
実は彼女は、一週間前に謎の突然死を遂げた歌手、間宮レイ。かつての戦いで喉を潰された“虐殺の歌姫”セイレーンのネリエスが、その力を取り戻そうと、殺害したレイの魂に人間を誘う魔性の歌を強制していたのだった。
ネリエスが微妙に甲殻類っぽいデザインなのは、池に潜んでいるからか(笑)
レイの歌声につられて人々が誘き寄せられ、それを助けるマジレンジャー。ネリエスは巨大化し、その間にレイの手を取って逃げた翼は、彼女の悲しい事情を知る。
「言ってたよな。私には歌しかない、って。だったら、俺の為に歌ってくれないか」
レイが既に死んでいると知りながらもその歌声に心引かれる翼、翼の温かさに心を取り戻すレイ……しばらく、レイさんの歌唱シーンと翼さんのイケメンパワーフルブーストをお楽しみ下さい。
翼はフィーチャーされる度に「実は熱い一面」がアピールされるのですが、そもそも斜に構えた態度が本編で活きた事がないので、今ひとつ巧く回りません。芳香ぐらい、普段はらりぱっぱーが徹底していると、「実は……」展開もメリハリが付くのですが。
例えばこのエピソード、まんま魁に変えてもほぼそのまま成り立ってしまいますし、魁と翼はどうも押し出しが弱い。
まあこの辺り、私の翼に対する好感度が今ひとつ低い影響というのも正直ありますが(^^; ただ何となく、翼が一番、父の血を濃く受け継いでいるキガスル。
レイの魂を魔法で解放しようとするシャインだが、思わずそれを止めてしまう翼。押し問答の最中にレイがネリエスにさらわれ、その身に吸収されてしまう。レイの魂を吸収した事で、ネリエスの歌声が復活…………て、それで喉が治るなら、最初からそれで良かったよーな。
いや一応、今までレイが集めていた分+レイ、で丁度治った、という解釈は出来ない事もないですが、展開としてはやってしまった系。
死を呼ぶ歌声を取り戻したネリエスは、ウォーミングアップの音波攻撃でマジレンジャーを苦しめる。ここまで圧倒的だったマジシャインですが、四底王戦ではダメージ描写が増え、彼我の戦力バランスがやや均されています。シャインが苦戦すればするほどウルさんの株価がセットで下がっていくのが困り物ですが(^^;
相変わらず華麗に闇の魔法を使いこなすバンキュリアが妨害に現れる中、マジイエローはレイを取り戻そうと、ネリエスに異物浄化の魔法をかけるが、通じない。もはや完全に、レイは取り込まれてしまったのか……しかし諦めずに、魔法を唱え続けるイエロー。
そして、ネリエスの音波攻撃を前に変身を解いて、全裸ガードを敢行した翼の勇気に応え、より強力な浄化魔法がDLされ、レイはネリエスの中から解放される。
「最後まで諦めずに彼女を助け出そうとした、翼の勇気にスペシャルな魔法が応えたというのか?!」
先生それは、悪い時のマジレンジャー理論です(笑)
翼はレイを救い出し、シャイン+4人での一斉射撃「ワンダフルシャイニングスター」でネリエスは撃破。マジキングは2話連続で出番なしで、ネリエスの闇の力もまた、コボルドに吸収される。
「これで四底王は残り2人、だが五色の魔法使い達、本当の試練はこれからだ」
思わせぶりに呟くウルさんですが、えーこの人、魔法力取られた後、何しているの?
本当にこう、あらゆる駄目な悪役パターンを網羅しにいっている感じで、いっそ凄い。
ネリエスが倒された事により解放されたレイの魂は、あるべき所へ還っていく……という二枚目ポジション悲恋エピソードでしたが、ゲストヒロインが事故や病気で死んだわけでなく、ストレートに冥獣の犠牲者、というのは若干、首をかしげる所。
そもそも、主人公達の救いようのない所での悲劇、というのはあまり筋がよろしくないのですが、その悲劇の要因を劇中の悪玉にしてしまったのは、二重に筋がよろしくない。プロットの複雑化を避ける意図があったのかとは思うのですが、もう一工夫欲しかった所です。
呪文再利用からのバージョンアップ、というのは使い方としては面白かったのですが、これまであまりにそういう手法を用いていなかった事と、元の魔法が地味すぎて、あれ? 何それ? になってしまったのは厳しかった点。
おまけコーナーを見て、「ああ!」と思い出した視聴者も多かったと思うのですが(私がそう)、それでは遅いわけで、前半に本筋と関係なく使うシーンを挟むなり劇中で前振りしておくべきだったなど、色々と粗の目立つエピソードになってしまいました。
(翼の強い思いが僕も想像しえなかった奇跡を起こした。彼もまた、新たな伝説を作る魔法使いの1人なんだ)
頑張れヒカル先生、あと1人だ!