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『侍戦隊シンケンジャー』感想1

◆第一幕「伊達姿五侍」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子
改めて、ヒーローの顔にでっかく
火 水 天 木 土
というデザインはよく通したなぁ(笑)
“隙間”から現世に這い出し、人間に危害を加える外道衆に立ち向かう侍、志葉家18代目当主、シンケンレッド・志葉丈瑠。いきなりの『水戸黄門』パロディを入れつつ、殺陣の開始にOPを重ねる、という格好いい入り。
なにしろ、主題歌の歌詞が、
チャン チャン バラ〜 チャンバラ バン
という(笑)
戦い終わって、黒子に手ぬぐいとお茶を出される殿。でも、「忠義」とか「家臣」とかは、時代錯誤で否定。
「何を今更! それを言ったら、殿だの爺だのが既に時代遅れで――」
あ、ツッコまれた。
爺(じい)役は年配者には『水戸黄門』でお馴染み伊吹吾郎で、着物の所作に慣れたベテランの起用により、画面に落ち着きの出た好キャスティング。
その頃、三途の川では三味線の音色とともに一隻の船が浮上し、外道衆のリーダー格、血祭ドウコクが復活。花魁風キャラの三味線をバックにいきなり酒をかっくらい、真っ赤な鎧を着た暴れん坊、という姿にはなにか、そこはかとなくデジャヴを感じますが…………サ……ううっ、頭が痛い、それ以上、思い出してはいけない……。声はシャダム事務長こと西凜太朗だし、東映特撮の歴史的には、凄くダメ男感が満載ですが、名前と見た目は格好いいので、ガンバレ!
外道衆の宿敵である志葉一族を皆殺しにするも体をバラバラにされて眠りについていたドウコクだったが、その生き残り――殿――が居たという報告に、復活早々、怒り沸騰。怪人格・アヤカシが雑魚戦闘員・ナナシを率いて、現世に出撃。結構ザクザク、乱暴に殺される一般市民。
活動を活発化させていく外道衆に対し、会った事もない連中を家臣として巻き込みたくない、とシンケンジャーの招集を嫌がり一人で戦おうとする殿だが、侍の宿命と覚悟を語り、爺、強引に矢文で家臣を招集。
かくて4人の若きシンケンジャーが宿縁に導かれて殿の元にはせ参じ……歌舞伎役者(青)は黒子の駕籠に乗ってきた保母(桃)を殿と勘違いし、田舎娘(黄)は着物姿の歌舞伎役者を殿と勘違いし、続けて歌舞伎役者は遅れてやってきた男子高校生(緑)を殿と勘違い、と軽いギャグを挟みつつ、青の空回りぶりを特に見せ、最後にやってきたのは、馬に乗った大本命。
この先はもう引き返せない戦いだ……と告げる台詞の途中、微妙に動く馬(笑) 第1話にして馬の上で芝居、とか難しい事をやらされています。
「家臣とか忠義とか、そんな事で選ぶなよ。覚悟で決めろ」
血統による「運命の戦士」系の形を取りつつ、第1話で個人の意志を問うてくる、という展開。先に4人の日常風景の描写が入っており、この辺り、宿命と覚悟と個人の意志、というのは物語としてテーマになってくるのか。
4人は殿から変身アイテムを受け取り、人々を襲う外道衆の前で陣幕が展開すると、着物姿で揃い踏み。


「書道フォン!」
「「「「「一筆奏上!!」」」」」

携帯電話が変形して筆が飛び出る、というちょっと変化球なアイテムでそれぞれが空中にキーワードの文字を描き、シンケンジャーへと変身。名乗りに堂々と本名を付け加えるという、恐らく歴史的に見てもかなり珍しい、仮面のヒーロー。「その名は捨てた!」は割とあるけど、「この名でどうだ!」が侍という事なのでしょうか。相手があの世の軍団なので電話帳調べられて嫌がらせは受けないでしょうが、この世の知人と遭遇してしまうとダメージが大きそうです。
ここからナナシの大軍団を相手にバトル開始。冒頭のレッドの立ち回りでも感じましたが、ややテンポがゆっくりめなのは、時代劇のチャンバラの間合いを意識したのか。00年代の戦隊として見ると、ややもっさりとした感じを受け、爽快感は少々弱め。
多数の敵を相手にレッドは共通武器の刀をブーストして、大型剣・烈火大斬刀を発動すると、雑魚をまとめて薙ぎ払い。身の丈ほどの大型剣というのは、『モンスターハンター』や《無双》シリーズなどからのインスパイアでしょうか。そもそもは多数の雑魚を薙ぎ倒していく、というのは時代劇やヒーロー物の影響があるでしょうから、一周回って逆輸入という感じですが、取り回しの難しい大型武器は戦隊アクションとしては特徴的となり、見た目も格好いい。
これに続いて、4人もそれぞれ、個人武器を発動。
青「ウォーターアロー!」
え? そこ、英語なの?
桃「ヘブンファン!」黄「ランドスライサー!」緑「ウッドスピア!」
……やめてっ、むしろ一人だけ漢字五文字の殿が痛い子みたいだからやめてぇーーーっ
全員の武器が漢字だと幼年層向けにわかりにくいかも、という配慮だったのかもしれませんが、どうしてこうなったのか(^^;
レッドは烈火大斬刀でアヤカシを両断するが、アヤカシは二つ目の命で巨大化。それに対してシンケンジャーは、動物アイテム――折神――を大変化させる。冒頭でもちょっと活躍した折神は、手の平大の五角形や円形から動物に変形するというサポートアイテムで、それぞれ、赤:獅子・青:龍・桃:亀・緑:熊・黄:猿、を所持。
……獅子、龍、亀、まではわかるとして、どうして猿と熊になったのか(笑) まあ、素直に揃えると『五星戦隊ダイレンジャー』と被るからといえばそれまでですが。
殿はぶっきらぼうだし、青は空回りだしで連携はなっていないものの、それぞれが連続で攻撃を浴びせ、最後は殿のファイヤー将棋の駒アタックが炸裂して、巨大アヤカシを成敗。大変化の後も、動物形態から立方体に戻れる、というのは面白い。
「これにて、一件落着」
は元来『遠山の金さん』なのですが、某宇宙警察のせいでセルフパロディに見えてしまうので、『デカレンジャー』の罪は重い(笑)
演出としては、薄皮太夫の三味線に、黄色の子の笛など、和楽器を印象的に入れてきているのが、面白い。和テイストを戦隊そして現代劇と馴染ませる為の、色々な工夫が見えます。あちらこちらに出てくる黒子はいい味で、今後も活用に期待したい。
それにしても、
「忘れるな! 今日からおまえが……シンケンレッドだ!」
は、聞きたくなかった今際の際の台詞ナンバーワンだなぁ(笑)


◆第二幕「極付粋合体」◆ (監督:中澤祥次郎 脚本:小林靖子
OP絵は定番の各人のアップではなく、殿と4人の関係を表現するような面白い演出。最初に紅葉のように舞い散る「火」の文字を握りしめる殿から始まって、殿と順々に出てくる4人の間に、刀が入っている、というのが凄くいい。
しかし殿は、もはや殿と呼ぶ以外考えられなくて、素晴らしく殿(笑)
本編は数百年前からシンケンジャーと外道衆は戦っていたよーという話から、シンケンジャーの持つ特殊な力、書道で馬を召喚したり自然現象を発生させたりする、“モヂカラ”について。
書き順が違うと、発動できないらしい。
そして前回は特に言及されなかった外道衆もとい血祭ドウコクの目的が、人間界を三途の川に沈めてそこへ船で乗り出す事、と発表。人間界に災厄を起こすと三途の川が増水するという古来の文献から、アヤカシを送り込んで暴れさせる事に。
志葉家では、侍の使命感に忠実で殿に忠義一徹の青と、突っ慳貪な殿とそりがあわない現代っ子の緑が揉め、現代の主従はどうもぎくしゃく。桃は桃で、思う所があって様子見の構え、と、それぞれが家の宿命に縛られ戦いに対する一定の覚悟は持ちつつも、無思考で流されたくない様子が描かれます。
「あたし、自分の夢放り出してきてるんだよね。いい加減な奴だったら、命は預けられない。それだけ」
「殿はいい加減な奴などでは!」
「まだ決められないって事」
視聴者目線からすると、殿は殿で思う所が色々あって……というのは窺える訳ですが、対人能力に問題のある殿がそれを4人に示せていない為、個々の主観において溝がある、というのがしっかりと盛り込まれています。
姿が見えない黄色を探す3人は、ひとり公園で素振りしている姿を発見。
「頑張って、殿様の役に立たなあかんから。それがシンケンジャーやって、お姉ちゃんが」
「お姉ちゃん?」
「うち、お姉ちゃんの代わりにシンケンジャーなってん」
体の弱い姉の代わりにシンケンジャーとして鍛錬を続けてきた黄は、学校の成績も悪く実家の竹細工も不器用でうまく出来ない自分にとって、シンケンジャーという役割がある事が嬉しい、と喜ぶ。
「そやから……殿様と一緒に頑張りたい」
純真で健気な方言娘とか、ぐいぐい攻めてくるな!
泣き上戸という設定なのか、それを聞いて嗚咽する青。
「聞いたか! あの純粋さを! これが、侍の子だ!」
「ばーか! ここまで洗脳されてるなんて可哀想だろ!」
ほだされて少し涙目になりつつも、憎まれ口を叩く(&ツッコミを殺す)緑。
桃は無言でぎゅーっと黄を抱きしめる。
と、ここで黄を軸にしつつ、殿に喧嘩腰で(視聴者目線で)感じの悪い緑を筆頭に、4人の好感度をまとめて上げてくるというのは、実に巧い。特に緑は、言っている事はもっともだけど物語としては面倒くさいキャラになりつつあった所で、素早く角度を変えてきました。
アヤカシが地上に出現すると、屋敷の鈴(隙間センサー)が鳴って、感知できる事が判明。更におみくじで位置もわかり、街を大雑把に破壊して回るムカデ妖怪の前に居並ぶシンケンジャー
「シンケンレッド! 志葉丈瑠」
「同じくブルー! 池波流ノ介」
「同じくピンク! 白石茉子」
「同じくグリーン! 谷千明」
「同じくイエロー! 花織ことは」
天下御免の侍戦隊!」
「「「「「シンケンジャー、参る!」」」」」
戦闘中、イエローの投げたスライサーが当たりそうになり、回避したレッドはムカデの攻撃を受けて吹っ飛ばされてしまう。ムカデの大技から殿を守ろうとするイエロー、を皆が守ろうとして、直撃を受けて変身解除の大ダメージを受ける4人。
「おまえ達、立てるよな。まだ生きているなら、立て。言ったろう。外道衆を倒すか、負けて死ぬかだって」
ひとり変身したままのレッドは立ち上がり、家臣団を叱咤するが、黄だけは起き上がる事が出来ない。
赤「ほっとけ。この程度で潰れるような奴はいらない」
黄「殿様……」
緑「おまえ……今なんつった!」
赤「いらないって言ったんだ。弱い奴は邪魔だ!」
桃「そういう言い方ないでしょ! いらないって何よ!」
青「そうです! ことはだって一生懸命戦っているのに、その気持ちを少しは!」
赤「一生懸命だけじゃ人は救えない!」
青にすら抗議されるが、それを殴って振り切り、赤は再び、ムカデと剣を交える。倒れた家臣を顧みないこの態度に反感を強くする3人だったが、捨て置かれた筈の黄だけが、ひとり殿の言葉に頷く。
黄「殿様の言ってる事……正しいわ」
負傷しながらもムカデに立ち向かい、逃げ遅れた子供を救う殿。
黄「誰も守れへんかったら、意味ないもん」
侍に最も求められている事はなんなのか?
背中に構えた刀の鎬で敵の攻撃を逸らすのは、ファンタジーチャンバラとして格好良かった。
緑「あいつ……確かにつええ」
青「その場しのぎの優しさなど、侍には無用か。なすべきことはただ、外道衆を倒す事」
桃「そして人を守る事」
身内の情よりも、侍としての使命を貫く殿の強さと志に一つの信念を見た4人は、揃って再変身。大技を横から介入して弾くと、5人の連続属性攻撃、「シンケン丸・螺旋ノ太刀」により、ムカデを撃破。巨大化したムカデに対し、折神大変化から何故か流ノ介が音頭を取って侍合体を試みるが…………失敗。
どういうわけか縦に積まれた4つの折神の周囲を、所在なげに飛ぶ五角形(殿)が面白い(笑)
「流ノ介、なんだそれは?」
「間違ってますか」
「俺、余ってるだろ」
殿、はじめてのツッコミ。
改めて殿の主導で侍合体が行われ、桜吹雪の舞う中、5体の折神が変形合体。兜を装着した、人型の巨大武者が誕生する。
「シンケンオー・天下統一!」
シンケンオーはムカデが呼び出した巨大ナナシに囲まれ、折角なのでやりたかったのか、ロボットでも集団チャンバラを披露。鎖で動きを封じられるも胸から火炎でそれを打ち払い、次々と巨大ナナシを切り伏せると、円月殺法「大真剣・侍斬り!」で、ムカデを一刀両断するのであった。
締めにロボット着ぐるみの手元で刀をくるっと回して鞘に収めるのが、凄い。
戦い終わって、感情にまかせた殿への無礼に、青、土下座。そのまま切腹に持ち込むのかと思ったら、公園の噴水に打たれ出す。なお、残念ながら半裸でした。まあ、全裸だと2話にして家臣が逮捕されるけど。……半裸でも、交番には連れていかれるかもしれない。殿は身内から逮捕者出たら、見捨てそうだ。
空回り気味の青は、殿を殿として成立させる為の大事な役回りなのですが、そんな青が「実は一番疲れる奴なのでは?」という言及で、最後にもう一つキャラクター全体のバランスを取っているのは、さすが巧い。
最後に殿が黄色にねぎらいの言葉をかけて0.1歩距離を詰めるも、しばらくはこの前途多難な主従関係を中心に描いていくのかと思われますが、その前段階としてまずはキャラクター全員の好感度を上げておく、という手並みが鮮やか。この構成なればこそ、各登場人物に好意を持てるように描いておかなければなりません。そして、殿の好感度ポイントは、視聴者にしか見えてない所に置かれている、というのが小憎らしい。
果たして殿はいつ、まともなコミュニケーションを取れるようになるのか。
「同世代の友達がいなかった話」とかボソボソしたら、一撃で全員を撃墜できそうな気もするけれど!
そういった方向へ進むのかも含め、殿への嫌悪感は消えるも全て丸く収まったわけではなく、敢えて距離を置かれた一致団結へ5人の心が如何にして届くのか、転がし方のお手並み拝見。
次回予告は、EDからそのまま突入、とちょっと変則。構造の関係でやや長め?