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『仮面ライダーW』感想12

◆第16話「Fの残光/相棒をとりもどせ」◆ (監督:柴崎貴行 脚本:三条陸
フィリップを「来人」と呼び、自分の元へ戻るように促す冴子。
「あなたは運命の子。あなたを手にした人間が、この地球の勝者。さあ、帰りましょう」
「僕は物じゃない!」
「私を誰だと思ってるの? 私はあなたの」
「貴女が誰かはわからない! その冷たい目だけで、敵と判断するには充分だ」
そ、そういうジャンルが好きな人だって居るんですよ、フィリップくん!!
フィリップは無事に家に帰れたら「踏まれたい」「詰られたい」「婿殿」で検索するように。
タブーに変身した冴子に追い詰められるフィリップは、小型恐竜――ファングを再び目にするが、甦るビギンズナイトの記憶に、「おまえの力なんか、必要ない!」と追い払うと、W車を遠隔操作。やってきた車はタブーの攻撃も跳ね返してフィリップを乗せ逃走し、強いぞ車。
「まあいいわ。人質もいる。……シャワーでも浴びて待ってましょう」
アームズドーパントはかつての相棒であるローズ女を置き捨てると、翔太郎と亜樹子を拉致。フィリップはファングの力を拒否しながら何とか事務所へ帰還するが、仮面ライダーダブルと鳴海探偵事務所はかつてない危機に陥る、と盛り上がる後編。
『W』は1話から複数のフォームチェンジを次々と見せてしまうという構造で、必殺技などは随時披露するけれど、装備とフォーム自体は1〜15話まで同一。近作では『電王』にしろ『キバ』にしろ、最初の1クールの中で小出しにフォームを増やしていくという形が主流だった流れに大きく変化を付け、劇場版との絡みもあったようですが、16話にして新メモリの登場を、大きな波として仕掛けてきました。
組織に捕まるわけにはいかないが、ファングの力も使いたくない……悩むフィリップの元へ、人質を助けたければ来るように、とローズ男から連絡が入るが、電話の向こうで声を張り上げる翔太郎。
「来んな! ぜったい来んなよフィリップ! 俺の事はもう忘れろ! これも相棒の忠告を聞かなかった罰だ。もし来やがったら、俺たちの仲もそこまでだと思え」
「死んだら、絶交もくそもねえよな? じゃ、あ・と・で」
翔太郎の腕の傷を踏みにじるローズ男がいい感じにサディスティック。
そして、否定する間もなく翔太郎と一蓮托生にされてしまう亜樹子。
翔太郎がフィリップ最優先で、「亜樹子だけでもなんとか……」というのが一切無いのは、ちょっと酷い(笑)
「見捨てるわけにはいかない。でも……」
そんな時に、事務所にやってくる刑事とウオッチャマンとサンタちゃん、と翔太郎愛されアピール。フィリップは普段出歩かない為か、あまり親しくはない模様。刑事の言葉から、ローズ子が捕まっていない事を知ったフィリップは、警察に追われていたローズ子と接触。倉田の情報を求めるが得られるものはないも、ローズ子がなんとかして倉田を説得しようとしている事を知る。
「無意味な危険をなぜ冒す?」
「理由なんてない。相棒だからだよ! 私達は、2人で1人だったんだ」
ローズ子の言葉に、翔太郎の言葉を思い出すフィリップ。
「……ありがとう。一つ結論が出た」
こう見ると、大惨事だった7−8話は今回のエピソードの参考になったのかもしれないとか思うわけですが、今回がうまく繋がっているだけに、7−8話はどうしてあんな事になってしまったのか、改めて疑問が膨らみます(^^;
この間に翔太郎から亜樹子に、ファングがダブル第七のメモリである、と説明。ファングは自分の意志で動き回る特殊なメモリであり、ビギンズナイトで脱出する時に一度使われた、と劇場版との絡み。だがファングの使用はフィリップの中に何かを失わせ、「あれ以上戦ったら、僕が僕でなくなる」とフィリップはファングを拒否し、翔太郎もまた、その意志を尊重していたのだった。
そして、結局、一日放置される2人。
さすがに待ちくたびれたのか、ロープで吊した翔太郎を亜樹子に支えさせ、落ちたら哀れ串刺し、というえげつないゲームでフィリップを待ち受けるアームズドーパント
「亜樹子! もういい、それ離せ……。ありがとな、俺……俺おまえに会えて良かった」
「言うなそういう事! それ、死ぬ人の台詞だから!」
死ぬ寸前でも、ひたらずにはいられない。それがロマン、それがハードボイルド。
必死に耐える亜樹子が遂に力尽き、滑り落ちるロープ。翔太郎、穴だらけ、の寸前、ロープがギリギリでファング恐竜によって支えられ、そこにバイクでフィリップが乗り込んでくる。
「絶交でも何でもしたまえ。させないけどね」
現れるマスカレード軍団を力強く見据えるフィリップ。
「後悔するなよ、倉田剣児。――僕はもう、知らないぞ」
ちょっと浮き世離れした所を強調する為にやや大仰なフィリップの台詞回しがはまり、非常に格好良くなりました。
「フィリプ、おまえ、まさかファングを?! おい、何か策があるんだろうな?!」」
「対策なんか、動いてから立てればいい。僕も、君や麻生冬美のように、理屈でなく動いてみる事にした」
それでいいのか(笑)
この後の展開も見ると、フィリップなりの考えがあった上で“翔太郎を信じる”という裏付けが一応あった事がわかるのですが、過去に色々と例があるので、フィリップが道を踏み外したのかとドキドキしました(笑)
「フィリップ……」
「地獄の底まで、悪魔と相乗りしてくれ、翔太郎! ――来い、ファング!」
ファング恐竜は変形して恐竜の頭のモチーフがついたメモリとなり、フィリップはそれをダブルドライバーにセット。いつもとは逆パターンで翔太郎が意識を失い、白と黒のファングジョーカーに変身したフィリップは獣の咆吼をあげる!
冴子「あのガジェットは、まさか……」
ファング――それは、来人を守る為のメモリ。来人に害をなす全てを蹂躙し、殲滅する為に力を振るうファングジョーカーは、野獣のように暴れ回り、次々とマスカレード軍団を薙ぎ倒していく。素手でも高い戦闘力を誇るファングだが、更に肘からブレードが飛び出し、マスカレード軍団をまとめてずんばらりん。派手に爆発していますが、どういう扱いなんだろうマスカレード軍団(^^;
ファングの猛威に狼狽したアームズは亜樹子を人質に取るが、ただ一つの目的しかないファングはそれを意に介さず刃を向け、翔太郎は必死に声を張り上げる。
暴れるファング、止めようとする翔太郎の声、アームドーパントの声、が入り交じって、それぞれ軽くエフェクトかかっている(気がする)事もあり、ここは若干、誰が何を言っているのかわかりにくくなってしまいました(^^;
(止まれぇ! 止まれってんだよ相棒!!)
絶叫した翔太郎はフィリップの意識――燃え盛る星の本棚に辿り着く。フィリップの理性と知識を食らうファングの暴威の中、翔太郎は本に埋もれて倒れるフィリップを見つけ出し、引き起こす。
「信じていたよ、翔太郎。僕を見つけてくれると」
「あったりめえだろ。俺たちはなんだ?」
「はは、そうだね。僕たちは……」
「「2人で1人の、仮面ライダーだ!」」
強すぎて暴走する力、の抑え方として、実に今作らしい解答。
単体ヒーローでありながら、完成されたヒーローではなく、半熟同士が心を合わせる事でヒーローとなり大きな力を生む。この今作コンセプトの描き方は面白く、またハードボイルド趣味の末期患者であるものの、放っておくと根っこのヒーロー属性が高い翔太郎は、あくまで「おやっさんの背中を追いかけている存在」、とする事で未完成さを強調しているという、構造も活きています。
「亜樹ちゃん、もう大丈夫だよ」
フィリップは理性を取り戻してファングのブレードは亜樹子の寸前で止まり、ここからいつもの音楽で、本当のダブルの反撃がスタート。
「「さあ、お前の罪を数えろ」」
ブレードが肩に移動して放つブーメランで残りのマスカレード軍団を片付け、ファングジョーカーは逃げるアームズを追い詰める。
「メモリブレイクするには、左右の呼吸を合わせねえとな。あー、ファングの必殺技だから……ファングストライザーでどうだ!」
「名前は君の好きにしたまえ」
以前にコメント欄で教えていただきましたが、ここで、翔太郎とフィリップが左右の呼吸を合わせる為に、ダブルは大技の時には技名を叫ぶという事が判明。ただこれ、事前に聞いてなかったら、「いきなり何を言い出しているんだ?」と思ったかもしれない(笑) 設定の理由付けとしては面白いけど、発想としては、変(笑)
そして、全部、翔太郎の命名なのか。
という事は一歩間違えると、ダブルの必殺技は「暗黒飛翔脚」とか「炎皇爆裂拳」とかになっていたかもしれないのか。逆に翔太郎に一切の洒落っ気が無かったら、あらゆるフォームの必殺技が「1・2の3!」とかになっていた可能性もあるのか。
もし翔太郎が弾北斗だったら、「ゴールデンスパーク! ドリームギャラクシー!!」だったかもしれないのか。もし翔太郎が良太郎だったら、「電車蹴り!」だったかもしれないのか。
……うん、いける、いけるよ翔太郎! 君が主役で、良かった!!
一瞬下がった翔太郎の株が、かつてない勢いで上昇し、足にブレードを出して放つジャンプ回転蹴り・ファングストライザーでメモリブレイク。前回かなりの強敵として描写されたアームズが今回は逃げ惑っているだけだった、という恐ろしい落差。
「あいつはやばい」
ファングの危険性を感じた冴子は逃走し、追いかけようとしたフィリップが体力の限界で翔太郎に選手交代、とファングの登場で便利な使い方が出来るようになりました。ここまでかなりシリアスに来ておいて、ここで意識の抜けている翔太郎の肉体を亜樹子が引きずって持ってきて一悶着、という辺りが今作らしい間合い。
改めてサイクロンジョーカーに変身した翔太郎ダブルが冴子を追いかけ、バイクからなんか撃って車を破壊。普段から使用しているバイクに、見つかったら番組終了まで娑婆に出てこられなくなりそうな武装が付いていました(^^;
タブーに変身して逃げる冴子にルナトリガーの弾丸が迫ったその時、飛び込んできたナスカドーパントがタブーをかっさらって窮地を救い、逃走。様子のおかしかった霧彦は、ナスカの《高速移動》を発動する為に、秘密の特訓をしていたのだった。
「僕にも意地というものがあってね。訓練を重ねていた。君の為に」
不穏な動きの正体が、「政治的暗躍」ではなく、「秘密の特訓」の辺り、霧彦さんには芯まで邪悪ではない感じが漂います。
もしかしたら冴子さんは、(そんな特訓している暇があったら仕事しなさいよこのノロマな亀!)と思っているかもしれませんが、それはそれで、霧彦さんにはご褒美です(おぃ)
またこの一連の戦闘で、タブーは幹部クラスのイメージほど強くない事が判明。思えばこれまでの戦闘は、生身のおやっさん達を襲う、ナスカと協力して攻撃、生身のフィリップを襲う、だったので見た目のインパクトで結構誤魔化していたのか。
再生能力があるもクレイドールもそれほど強そうな描写では無かったですし、園咲家はテラー以外はそれ程際立ってはいないのか。スミロドンは戦闘特化ぽいですし、タブーにも何かしらの特殊能力はありそうですが。
ナスカの介入でタブーを見失ったダブルは、戦闘の余波で崩れた道路の崩落から、女の子を救出。
仮面ライダーっ……さん」
ここで騒ぎで駆けつけた警官隊の中から、仮面ライダーと刃野刑事が初接触。翔太郎の前では「仮面ライダーは悪いヤツだと思っていたから、ぎったんぎったんにしてやるぜ」と言いいながら「いやー、やっぱり正義の味方だったんですねー。私は始めから信じていました」と調子のいい刃野にいきり立つ翔太郎サイドの拳を抑え(ダブルらしい好演出)、フィリップサイドは偽ライダーの居場所を伝える。
冴子(タブー)の追撃シーンは最初やや蛇足気味で変な構成だなと思って見ていたのですが、なるほど、偽物騒動の後始末の為に、世間や警察の前で本物の善行と活躍を広く見せる必要があった、と(チェイスシーンでもギャラリーがやたら多い)。この辺りを流して後日談で処理してしまわないのは、今作らしい所。……それにしても、そこはかとない自作自演(笑)
かくして仮面ライダーの汚名は雪がれ、ローズ男は連続強盗犯として逮捕。ローズ女は翔太郎との約束を守って自首し、事務所には束の間の平穏が訪れる。だが、ファングが1年ぶりに姿を見せた事に、前途に漂う暗雲を予感する翔太郎。果たして“組織”は、如何なる動きを見せるのか――シリアスに浸ろうとした所でフィリップがリバウンドによりでっぷり体型となり大騒ぎ、タイプライターをいじるファング、それに近づくカブトムシ?でオチ。
かつてない危機を乗り越える新フォーム登場編。ビギンズナイトとファングという劇場版からの要素に、「悪魔と相乗り」という1話冒頭の台詞を絡めた上で改めて「ダブル」の意味を描き、物語の始まりから現在地が綺麗に繋がりました。
劇場版と本編をリンクさせつつ、TV単独でも充分に理解可能で、その上で劇場版の良いアピールになっているという、お見事な構成。
ファングの白黒(イカノイド!)は、狂気のスパイスがまぶされ、アームブレードが格好良くて(まあこれは、大概格好良くなるのですが、ストレートに取り込んで来たのが良い)いい感じ。戦闘能力も高くサイクロンがますます要らない子になりそうなのが不安ですが、ファングはフィリップ専用なので使い所が限られる、という事になるのかな……?
次回、不穏すぎるサブタイトル。
嫁とちょっといちゃいちゃしたぐらいでフラグ立つんですかこの世界?!