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『Gのレコンギスタ』感想・第3話

◆第3話「モンテーロの圧力」◆ (脚本:富野由悠季 絵コンテ:斧谷稔 演出:綿田慎也)
カーヒル大尉が戦死して自称宇宙海賊の奇襲部隊は退き、場の主導権を握ったクンパ大佐は、アイーダとラライヤの身柄、そしてG−セルフをアーミーから調査部へと移す。
デレンセン大尉を通して、アーミーのいかつい大尉に紹介されるルイン・リー
アーミー「クンタラだってな」
マニィ「そんなに汚らわしいですか」
アーミー「そういう口をきくから嫌いなんだ、よっ!」
会話から間髪入れず放たれたパンチを軽々とかわすルイン。
アーミー「よけた上に防御もしているか。期待できる生徒だな」
二枚目先輩ルイン・リーのちょっとした実力見せなのですが、これをワンアクションと台詞一つですぱっと見せてしまうのが実に素晴らしい。更にアーミーの後ろで、デレンセン大尉が「俺の生徒はどうよ」みたいな顔をしているのが超素敵。
ルインを即座にかばうマニィの恋女房ぶり、ただ嫌なだけではないアーミーの大尉、などの要素も含め、だらだらと時間をかけずにほんのツーカット程度で濃縮した情報を描いてしまう、まさに富野由悠季。ちょっとしたシーンですが、実に巧い。
一方、調査部へと運ばれるG−セルフご一行。
小型メカの手に掴まれ待遇に文句を言う姫様→海賊に国際法もへったくれもあるか!→ぐぬぬ→移送されている最中に、そのまま寝る
アホの子すぎる……。
ベルリは一旦自宅へ戻り、何故か一緒についてきたノレド、どうやらお母さんとは初対面らしいのに、がんがん地雷を投げまくり、恐ろしい子
ベルリが明らかに好き、ベルリが他の女にうつつを抜かしているのは気に入らないが現実は認める、その上で突撃気味につきまとう、しかしどこまでも陽性、という何という炎の女。キャスティングもはまったと思いますが、前のめりすぎて、嫌な女に見える暇が無いという(笑)
また、ラライヤの面倒を見ているところで、ノレドにしろマニィにしろ性格の良さを見せている、というのが一つポイント。
ベルリ母は軌道エレベーターの運行長官という事でしたが、「母なら調査部へのコネクションで捕虜の解放が出来るのでは?」とベルリが持ちかける程度には、権力の上層に居る模様。ベルリの真っ直ぐな気質には、いいところの坊ちゃん、という要素もあるようです。
海岸の洞窟に潜む海賊部隊では、青いMS・モンテーロを駆るクリム・ニック中尉が、アーミーの油断を突く、と単独出撃。
オーダー先か曲先かわかりませんが、異彩を放つジャズテイストのBGMをテーマに、大仰な身振り、語感のいい名前、とやたら覚えやすい新キャラになりました。
またここで、海賊部隊の人間が何人か登場。一応、カーヒルの突撃を止めていた事もわかりました。如何にも無茶だったしね……まあ、更に無茶な人が、これから単騎特攻仕掛けようとしているのですが。
小刻みに世界観が明かされていく今作ですが、この後の諸々の台詞によると、軌道エレベーター(キャピタルタワー)は一種の聖地のような扱いになっている様子。その運行を守るガード、そして新設されたアーミーに対して「戦争を知らない」という台詞もあり、キャピタルの外では、MSを使った国家間のドンパチがある程度ある、という認識で良いようです。地球と宇宙の関係はまだわかりませんが、キャピタルタワーの向かっている先には何かがあるのでしょうから、その辺りも今後、楽しみです。
キャピタルに迫るモンテーロ、のシーンではかなり繰り返し、動植物の描写で豊かな自然が表現され、それを踏みにじる機械(MS)と対比されています。
ベルリは調査部へと向かい、しれっとついていくノレド。このチアガール、どこにでもついていく上に、誰も止めずにどこにでも入り込むのですが、セントフラワー学園は、女スパイ養成所か何かなのか。
大佐とアイーダの会話から、宇宙海賊がアメリア軍公認の独立部隊、私掠船のようなものである事が判明。そしてカーヒルの思想と目的は、キャピタルタワーによる地球上のエネルギー(フォトンバッテリー)供給独占の打破にあった。
アイーダ「エネルギーと道具は、道徳的に正しい使い方が出来れば!」
ベルリ「それが出来なかったからっ、人類は宇宙世紀に全滅しそうになったんでしょ!」
アイーダ「カーヒル大尉は!」
大佐「神にでもなれるような、方だったのかな?」
アイーダ「そんな、極端な……」
「道具の正しい使い方」というのは富野監督の長年のテーマ性の一つですが、人類の保全の為にエネルギーの供給を制限する集団、を出す事で、それをかなりハッキリと、物語の軸に置いてきました。
理想と道徳を信じるアイーダに対する、大佐の返しが非常にえぐい。
ここまでの描写から、キャピタルがその体制において宗教を活用している様子が描かれているだけに(人類が絶滅寸前になってから生まれた、世界宗教といったところか)、個人が神を気取るのか? というのがますます突き刺さります(なお、EDクレジットによると、カーヒル大尉のフルネームは、カーヒル・セイントであり、彼はいずれ聖人となる殉教者なのかもしれません)。
ここで出てくる「宇宙世紀」という単語は、シリーズを知っているとあの宇宙世紀と思う所ですが、知らなくても、人類が全滅しそうになった前世紀、として劇の中に充分収まっているので良い挟み方だったと思います。
『∀』の時と似た手法ですが、技術文明が見るからに極端に発達していないのは、過去に文明の断絶まで行かなくても衰退があった、という事になるのか。
大佐がG−セルフについてベルリとアイーダに聞こうとしたその時、アイーダ奪還を目指してモンテーロが単騎でキャピタル内部に侵入し、空襲のサイレンが鳴り響く。
アーミー募集の垂れ幕は、もちろん米軍の兵員募集ポスターのパロディでしょうが、あの微妙な感じに、映画『キャプテン・アメリカ』を思いだしてしまいました(笑)
状況についていけないアーミーを一喝してデレンセン大尉が能力のある所を見せ、戦闘の混乱の中、G−セルフに乗り込み起動する、アイーダ、ラライヤ、ノレド、ベルリ。
「G−セルフというのものは、奪われつつあります」
どう考えてもお膳立てした大佐がどこかへ通話しているのですが(なおコードの長さが足りない、などで有線の電話である事が強調されているけど、2話では無線通信も使っていたので、建物内部の儀礼的なものか)、今回の限りでは大佐の真意は謎。G−セルフの秘密を解き明かしたいにしても、この局面で動かせば逃げ出すのはわかっているわけで、何か政治的な思惑もあるようですが、さてさて(富野作品なので、含みだけ持たせて投げっ放す可能性もないではないですが!)。
4人乗り込んで出撃したG−セルフが、とりあえず教官の飛行マシンを助ける所は、凄く好き。アイーダさんも徒に戦いを広げたい人でない事が示されつつ、消化剤で火を止め、シールドで後部をはたいて強引に制動をかけて着地させる、と兵器であるMSの応用を見せる事で、「一つの道具の使い方」が描かれました。
デレンセン大尉は見事な空中戦で天才(笑)を追い詰めるが、反撃を受けそうになった所で戦闘に割って入るG−セルフ。キャピタルタワーの近くで戦闘を行いたくないアイーダクリム・ニックと共に引き上げ、ベルリ、ノレド、ラライヤの3人は、成り行きで宇宙海賊の潜伏場所へ連れて行かれる事になる……。
クリム・ニックアイーダによると、アメリア大統領の息子にして脳天気なMS大好き男、との事。口ぶりからすると、抱いている感情は「きもっ」のようです。
大統領の息子はMSで単騎特攻してくる自称天才で、姫様と呼ばれる少女はアホの子…………大丈夫なのか、アメリア。
アメリアの未来は心配ですが、ひっっっっっじょうに、面白かったです。このスピード感と濃密さがたまりません。
物語としては、過去に人類が絶滅しかけた世界、という大きなキーが明かされましたが、こうなると、恵まれた土地の権力階級に居たベルリという少年が、外の世界の真実を知って徐々に世界に対する認識を変えていく、という王道の成長物語が基軸になるのか。
えーと後あれです、トイレ。まさかのトイレオチ。美少女に囲まれ、変態の坂を駆け上がってしまったベルリ。よく考えると、事故的なものとはいえ、クリム・ニックがそれをモニターしているのもとてもあれだ。一気に大人になってしまったベルリの明日は、本当にどっちだ!
次回、
見たくなくても、見ろ!
……毎回、変えるのか。
そして予告の映像とこのフレーズで、外堀に続いて内堀まで埋められた感のあるデレンセン大尉。大尉、頑張って、大尉!