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『侍戦隊シンケンジャー』感想6

◆第十一幕「三巴大騒動」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子
十臓の言葉を気にして古い資料を調べていたシタリがある事実に気付き、それを聞いたドウコクが大暴れ。それに反応して賽の河原に発生したナナシが地上に溢れ出し、シンケンジャー出陣。
十臓の意味深な台詞はもう少し引っ張るのかと思っていたのですが、意外と早く繋がってきました。
地上では大型小型のナナシが入り乱れて街を破壊。男衆は大天空に合体し、オオナナシ軍団をざっくり撃破する。
……うーむ、やはり、鳥には見えない(笑)
5人は連続範囲攻撃で小型のナナシを蹴散らすが、なおも湧き出し続けるナナシ軍団はドウコクの怒りを受け、家臣4人を無視してレッドへと群がる。際限ないナナシの攻撃に、イエローの刀を借りたレッドは二刀流による火炎雷電之舞を披露し、ナナシ軍団を滅殺。
最近ややLV差が家臣と詰まりつつあった殿ですが、ここで新技をお披露目しました。
「実は志波家には代々、ある文字が伝わっている」
かつて血祭ドウコクの強襲により先代シンケンジャーが倒れた時、先代殿は最後の力を振り絞り、命を賭けてドウコクを封印。それにより外道衆の活動は沈静化したのだが、封印の文字は極めて強力なモヂカラを必要とする為に先代も先々代も完全には使いこなせず、ドウコクは復活。丈瑠もまた、その文字の使用に関しては修練中の身であった。
回想シーンで先代がドウコクを封印した際に外道衆の船が沈んでおり、ドウコクと船には何らかの繋がりがある模様(或いは、ドウコクの力により、船は三途の川に浮かんでいるのか)。
ドウコク封印の真相が判明した事により、十臓が「え? おまえ、気付いてないの? ぷぷ」扱いしていた事もわかりましたが、ドウコクは自分がどうやって倒されたのか、わかっていなかったのか(^^;
アルコールは、人間以外も駄目にするなぁ……!
というか、前年の『炎神戦隊ゴーオンジャー』も敵幹部が酒浸りだったので、2年連続で、アルコールが敵幹部を駄目にしているのか(笑)
三途の川を増水している内にまとめて封じられてはたまらない、とシタリは志波家当主抹殺の為に、強力かつ凶悪なアヤカシを地上へと送り込む。
と、ここまで、刀が主でモヂカラが従の関係だったのですが、モヂカラこそが真の切り札だったのだ、と劇中での扱いが逆転。今作の特徴がより押し出される形になりました。
地上では、丈瑠の振るう封印の文字こそが外道衆との戦いを終わらせる武器だと知った流ノ介のテンションが激しく上昇していた。
「我々がなぜ家臣として育てられてきたか、その意味がよーーやくわかった。殿をお守りする事が、すなわちこの世を守る事。我々が殿の盾となって!」
「そんな必要は無い。自分の事は自分で守る。おまえ達は今まで通りでいい」
躊躇無く自己犠牲を語り出す流ノ介の言葉を耳にし、思わず言葉の冷たくなる殿。
先に回想シーンで先代シンケンジャーの全滅、次々と斬殺されていくヒーロー、というのがかなり大胆に描かれているのですが、それを映像で見せておく事により、自分の為の犠牲を望まない丈瑠の本音に視聴者が共感しやすいよう、段取りが組まれています。
また、最近だいぶ侍として一つになりつつあった5人ですが、ここでは後半への布石も含め、殿・侍バンザイの流ノ介とことは・茉子と千明、の3者が物理的な距離感も含め、やや温度差を持って描かれています。
「戦いの中で余計な事を考えるな!」
「いえ! この流ノ介、命に代えてもっ」
「やめろ!! ……かえって足手まといだ」
殿は面倒くさいけど、ここは流ノ介が悪い(笑)
そして彦馬は、先代の鎧?を見つめながら、何かを考えていた。
(ドウコクが気付いたここからが正念場。命を賭けたこの一策、どうか最後まで見守って……)
そこにアヤカシ警報が鳴り響き、シタリに送り込まれたアヤカシ(猪鹿蝶?)が正面から殿に勝負を挑んでくる。
「できるなら、やってみろ!」
4人を振り切って殿は突撃し、火薬祭りを走り抜け、ジャンプしながらの変身が格好良い。
「なんか変。いつもと様子が違う」
PiPiPi! PiPiPi! 天使センサーに反応あり!
レッドは猪鹿蝶アヤカシに切りかかり、4人を阻むナナシ軍団。そしてその戦いを見つめる、腑破十臓。前評判通りに強力な猪鹿蝶は必殺剣・鬼刀二段斬りで赤を吹き飛ばし、殿を守ろうとした青と黄は追撃の鬼刀二段斬りの直撃を受け、変身解除レベルの大ダメージを負って倒れてしまう。迫る猪鹿蝶に対し、咄嗟に2人の上に覆い被さって守るシンケンレッド。
余計な台詞抜きでワンアクションで見せた事で、非常に格好良くなりました。
慌てて緑と桃も駆け寄るがここで十臓が割って入り、猪鹿蝶と緑と桃をまとめて攻撃すると赤に斬りかかり、いきなりのバトルジャンキーぶりを発揮。ここから戦いはサブタイトル通りの、シンケンレッドvs腑破十臓vs猪鹿蝶アヤカシ、の三つ巴に。
二刀流の殿が二方向からの斬撃を受け止め、アヤカシもアヤカシで隙あらば切り結ぶ、とめまぐるしく攻守が入れ替わりながら画面を広く使い、実に『シンケンジャー』らしくて格好いい殺陣になりました。冒頭で大技を見せておく事により、殿の二刀流をスムーズに受け入れられるというのも巧い。
猪鹿蝶は乾燥肌で撤退し、残る2人。
「おまえ、どうして俺を」
「腕のある者と戦う事だけが望みだ。俺も、この、裏正も」
戦いは一騎打ちに移行し、十蔵の剣がレッドを捉えるが、十蔵はそれに不満を抱く。
「やはり……おまえいつもと違うな。俺が望んでいた戦いはこんなものではない」
天 使 セ ン サ ー ! (待て)
十臓は裏正の刃を返すと、岩塊を一刀両断。
「この裏正、逆刃こそが本性でな。次はこの切れ味を味わってもらう。シンケンレッド、この貸しは大きい。いずれ、俺の満足する果たし合いをしてもらう」
貸しを、押し売られた!!
過去にも例えばウとかルとかザとか付く人の失敗例がありますが、俺ルール系バトルキ○ガイはただのバトルキチ○イの15倍ぐらいタチが悪く、物語を白けさせる可能性を持つ諸刃の剣なのですが、十蔵はサブタイトルからしてほぼ第三勢力扱いという事で、これを緩和。とはいえ都合がいい事はやはり都合がいいので、今後の描き方に注目です。
「俺は、腑破十臓。それだけだ」
ここで十臓がシンケンジャーに名乗って去って行き、外道衆の刺客の前に、シンケンジャー完敗。流ノ介とことはが屋敷で手当を受けるが、思い詰めた表情の殿は、ひとり密かに屋敷を出ていた……。


◆第十二幕「史上初超侍合体」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子
(殿、また一段と重さが応えましたか……。志波家18代目当主、この荷物、確かに重い。時に降ろしたくもなりましょう。が)
「お探しは致しませぬ。お早いお戻りを」
不在の殿に向けて語りかける爺、自らに言い聞かせるかのように、最後だけ口に出す、というのは秀逸。ところでいつも気になるのですが、爺が腰にぶらさげているカラフルなもじゃもじゃはいったい。……ストラップ?
丈瑠は翌朝になっても戻らないが、心配なしを強調して爺はことさらいつも通りに振る舞い、千明は憎まれ口、茉子は何事かを考え込む。
「千明さ……自分が殿様だったら、て考えた事ある?」
「ま、ぺこぺこされるのは気持ちいいかもな」
「あのね! ぺこぺこされるって事は、その人の全部預かるって事だよ! 昨日のことはと流ノ介みたいに、自分に命かけてくる」
「それは丈瑠もやめろっつってるだろ」
「でも止められない。丈瑠は……死ぬわけにはいかないんだから」
「そっか……丈瑠が外道衆倒す、切り札だもんな」
「この世を守る為には、家臣を捨てても自分は生き残らなきゃいけない。……出来る? 私だったら、殿様辞める。でも……丈瑠は辞められない。ちょっとぐらい、逃げ出したくもなるよ」
殿と家臣の主観のズレによる距離感をここまで描いてきて、ここで「もし殿の立場だったら?」という視点の入れ替えを挟んでくるのは巧い。そして恐るべし、天使センサー。
その頃話題の殿は、海とか見ていた。
砂浜のある夕暮れの海とかではなく、お台場あたりっぽいので、まだマシ(笑)
ぼーっとしている時に泣いている園児を発見し、モヂカラにより折り紙を使って元気づけようとする殿。
誰も見ていなければ、幼児にも優しく出来るぜ殿!
や、多分、迷子かどうかを確認しようとして周囲を確認する仕草が入るのですが、(り、流ノ介とか近くに居ないよな……?)と警戒しているようにしか見えません(笑)
園児に笑顔を取り戻す殿であったが、
「あ。ここ……どこかな?」
迷子になっていた。
幼児に、道を聞くな。
殿は家臣の目が無いとどこまでも緩い生き物になっていくので、もうしばらくこのまま放置しておきたい(おぃ)
ここで保母さんがやってくるのですが、園児に道を聞こうと近づく昼間からぶらぶらしている成人男性とか通報案件以外のなにものでもないので、殿がイケメン無罪で良かった……! 流ノ介より先に逮捕されなくて本当に良かった!!
なお、保母さんを演じるは、元ゴーピンク巽マツリの柴田かよこさん。
殿が少年を笑顔にした、父親との思い出があるらしい紙飛行機が元で、保育園は時ならぬ紙飛行機ブームに。少年の父が怪物に襲われて殺されたと知った殿は、侍としての自分を見つめ直し、嫌な遺言を思い出す。
「忘れるな! 今日からおまえが、シンケンレッドだ! 決して逃げるな……外道衆から、この世を守れ」
その頃、ドウコクの呼び出しを受けた十臓は三途の川でナナシ軍団を粉砕。
「ぬぅ! 十臓!!」
川から出てきたドウコクさん、初の戦闘。ドウコクはアヤカシを縛る封じの術を用いるが、半分人間の十臓は封じを脱して逃亡。だがしばらくは動けない、という事で改めて猪鹿蝶が地上へと出撃する。
ここまで11話、「酒を飲む」「寝る」「暴れる」の三択で駄目人間街道を驀進していた血祭ドウコクが、初の戦闘シーン。また、アヤカシ限定の封印術を使える事が判明。この力があるから総大将なのか、総大将だからこの力が使えるのかは、まだ不明。
猪鹿蝶出現の反応に、殿不在で出陣する4人。
「殿は必ず来られる。頼むぞ。ああ……それから、これだけは言っておこう。殿は、最後まで、お前達を集める事に反対しておられた。戦いに巻き込むまいと、1人で戦っておられた」
これまで殿の柔らかい部分を見せないようにしていた爺が、茉子と千明の会話を耳にして、4人がそれをひっくるめて殿を支えられる存在になるかもしれないと、少し変化を見せました。
ナナシ軍団が大暴れし、巻き込まれる園児達。少年が猪鹿蝶に踏みつけにされた紙飛行機を取り返そうとし、そこに駆けつけた殿は、シンケン丸を振るっての生身殺陣。そしてそこに、4人がやってくる。

「殿! うるさく思うでしょうが、私はこの様に育ちましたし、この様にしか戦えません! この先もずっと!」
「正直、戦うなら仲間でいいって思ってたけど、殿だから背負える事もあるんだよね、きっと。――だから決める。丈瑠に命預けるよ!」
「おまえが殿様しょってくっつーなら、家臣になってやってもいい。ただし、俺がおまえを超えるまでな」
「うち……あの…………殿様! 死んだらあかん! うちヤです! それだけです」

シンケン丸を振るいながら、それぞれの覚悟を告げる4人。
この決意表明で、これまで実は殿に対する距離感をハッキリさせていなかった茉子がそれをハッキリさせており、メイン回のローテーションの問題であまり触れられてこなかった茉子の内面に踏み込む、隠れ姐さん回。
4人の言葉を聞いた丈瑠は、亡き父の言葉を思い出す。
「強くなれ……丈瑠。志波家18代目当主。どんなに重くても背負い続けろ。――落ちずに飛び続けろ」
父の飛ばした紙飛行機のように……飛び続けるのが己が宿命。
「流ノ介……茉子……千明、ことは。お前達の命、改めて預かった」
「もとより!」
ここで陣幕が並び、5人、着物姿に。
「俺の命、お前達に預ける!」
ここに5人の関係がくるっと収まり、シンケンジャーが真の戦隊になる。
OPが流れ出し、書道フォンを構える5人。
「書道フォン、一筆奏上!」


「シンケンレッド! 志葉丈瑠」
「同じくブルー! 池波流ノ介」
「同じくピンク! 白石茉子」
「同じくグリーン! 谷千明」
「同じくイエロー! 花織ことは」
天下御免の侍戦隊!」
「「「「「シンケンジャー、参る!」」」」」

最近の『トッキュウジャー』、遡れば『タイムレンジャー』でも中盤に行っていましたが、この、劇中で戦隊が改めて成立する姿を描くというのは、小林靖子のこだわる所なのか、好んで使われる展開です。今作では特に、当初からそこへ向けて物語が組まれていたわけですが、4人の覚悟に、丈瑠が覚悟を乗せる、という形で非常に格好良くはまりました。
覚悟を受け取り、覚悟を返す。
シンケンジャーという戦隊の姿、殿様と家臣という関係が、ここで定まりました。
5人はナナシ軍団を打ち払い、強敵・猪鹿蝶と激突。ガラリと戦い方が変わり、攻守に呼吸を合わせる5人の連携が非常に格好良く、アクション監督と演者が素晴らしい仕事。戦闘シーン一つで、ここまで関係の変化を描いたのは、お見事。
後ろでフルコーラスのOPを合わせているのも良い。
鬼刀二段斬りに対しては初撃の衝撃波を桃と黄が防ぎ、次に来る斬撃を青と緑が防ぎ、大きな隙が出来た所に赤が大筒を構えて虎五輪弾を炸裂させる。
5人の心 ひとつにして レッツ武士道 斬って候

二発をかわして……って、結局家臣が盾になるのか、というのは少しありますが、一応、お互いの信頼感の為せる技という事で(笑)
巨大化した猪鹿蝶は飛行オオナナシ軍団を召喚し、空陸の連係攻撃に苦戦するシンケンオー。
「殿、考えている事があるのですが。大天空を、シンケンオーに合体させてみては」
青、勝利のイマジネーションに目覚める(笑)
この前後編で割と格好良かったので、密かに作っていた手書きの資料をプレゼンし、しっかり自ら落ちに来る辺り、流ノ介にはそろそろ、残念要員の自覚が出てきた模様です。
まずは大天空を発動し、そこから超侍合体。その名を、天空シンケンオー。
大雑把に言えばシンケンオーの背中に大天空を合体させるのですが、構造の問題で、割と虎押し。
「やった、やりました! やりましたよ殿!!」
「始めてお前に感心したぞ!」
殿……(笑)
見た目かなり凄いけど意外と好評な天空シンケンオーですが、恐らく大天空もこんな感じで、強引に合体させた世代があったのだろうな、と思わせる所であります。
空飛ぶ天空シンケンオーは飛行ナナシ軍団をばったばったと薙ぎ払い、殿、流ノ介の作った資料をめくって必殺技を確認。最後は、飛行状態からトラ、カブト、カジキの折神パワーを刀に集めて放つ「ダイシンケン天空唐竹割り」で一刀両断、一件落着。
かくてシンケンジャーは難敵を打ち破り、殿は帰還。主従はここに新たな絆を結ぶのであった。
前編で派手に暴れた十臓が、見えない所で途中退場させられたのが可哀想でしたが、殿はたぶん(あれ、そういえばあいつはどうしたんだ……? まあいいか)ぐらいで、流している。
次回、とりあえず、包丁構えている姐さんが怖い。