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『侍戦隊シンケンジャー』感想10

◆第十七幕「寿司侍」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子
殿、アピール度満点のTシャツ。
アヤカシの反応に出陣する5人だが見つける事が出来ず、屋敷に戻ると「近日見参」と書いた矢文が打ち込まれる。更に殿が何かの気配を感じ、1人でゴロゴロ転がって、姐さんから遠回しに「疲れてるのよ……」扱い。
入浴中でも視線を感じる殿は屋敷の中で刀を振り回し、そんな殿の心労を少しでも減らそうと、アヤカシの反応が出た場所を改めて探った4人は、矢文を放ったと思われる屋台の寿司屋、ゴールド寿司と接触する。
もともと寿司は屋台で提供されるものだったので、非常に由緒正しい寿司屋です。
どうにも怪しげな寿司屋が逃げ出し追いかける4人だが、殿が1人で外出したという連絡に、年長組は殿を追い、年少組は寿司屋を追う事に。水中だと何者かの気配が弱まる事に風呂場で気付いた殿(ただのサービスシーンでは無かった!)は、邪気を払う泉に潜ってアヤカシの妖術から目をくらますと、のこのこ出てきたアヤカシの妖術を打ち破る事に成功。
一旦謎の寿司屋を捨て置いて合流する5人だが、妖術使いのキツネアヤカシに連係攻撃も破られて苦戦。……やはりどうも、搦め手に弱い傾向が続きます。
だがその時、何故か寿司屋がそこに現れる。
「誰だあいつ?」
「寿司屋です」
「は? 寿司屋?」
だ、誰か、素でついていけない殿にもっとわかりやすい解説を!
シンケンジャーがピンチになるのを待っていた、という寿司屋が取り出したのは、寿司チェンジャー寿司ディスク。……えー、なんだこの、観光地のお土産コーナーの片隅にある玩具コーナーに並んでいるような、物凄いばったもん感。
「一貫献上! 俺が6人目のシンケンジャー! シンケンゴールドだ!」
そんなばったもんで変身してしまった光の戦士の登場に、全員硬直。
……寿司屋で金ピカで武器がサンマなので、まあ、当然の反応です。
志波家の先祖は、何を考えていたのか。
誰も知らない6人目の侍、シンケンゴールドはサンマもとい魚丸を手に取ると、ナナシ軍団を高速の居合い斬りで撃破。
逆手+小太刀+抜刀術という、シンケンジャー5人との差別化を図ろうとして物凄くカオスな剣士が生まれてしまいましたが、侍というより忍者に近いスタイル。突然の矢文や強烈ワサビ寿司などの卑劣なやり口といい、もしかして:武神館の手の者か。
ゴールドはキツネアヤカシの妖術に苦戦するが、レッドが助太刀に入ってトドメは連続居合い斬り百枚おろしでアヤカシを成敗。
巨大化したアヤカシの透明妖術に天空シンケンオーも苦しむが、ゴールドが新たな折神、烏賊折神を召喚。イカスミを吹きかけて透明化を破った所に天空唐竹割りで斬殺するのであった。
新戦士の登場にともなうパワーアップ展開に繋げる為か、天空シンケンオー、早くも苦戦。……まあシンケンオーの場合、各種侍武装が追い詰められた事は特にないので、そもそも天空シンケンオーでなければならない必然性、というのも余り無いのですが(^^; シンケンオーで戦う場合と最初から天空シンケンオーを発動する場合に特に理由が付けられないのは、今作の短所。
そして烏賊折神を見た丈瑠は、シンケンゴールドの正体に思い当たっていた。
「おまえ……源太か」
「覚えててくれたかぁ! 久しぶりだな、たけちゃん!」
歓喜の勢いで殿に抱き付く寿司屋、嫉妬に狂いそれを速攻で引きはがしにかかる流ノ介。
果たして寿司屋の正体は、そしてシンケンゴールドとは何なのか?! という、新戦士登場編。殿を筆頭に物事を思い詰めるメンバーが多い中、陽気で素っ頓狂な光の剣士は、いかなる嵐を巻き起こすのか。とりあえず、千明とどう差別化するのかに注目。


◆第十八幕「侍襲名」◆ (監督:諸田敏 脚本:小林靖子
ゴールド寿司の店主にしてシンケンゴールドを名乗る青年の正体は、殿の幼なじみでありかつて志波家の近所にあった寿司屋の息子、梅盛源太。幼い頃によく屋敷に潜り込んで丈瑠と遊んでいた源太だが、店が潰れて一家夜逃げをしてしまいそれっきり……烏賊折神はそんな源太に子供の頃の殿が渡した餞別であった。
と、家臣一同の前で幼き日の過ちを曝される殿。
これまで一切言及してこなかった事を見るに、殿、この事を記憶の闇に封じていたのでは(笑)
そこへ自分で陣太鼓を打ちながら、正装のつもりで大きく間違った衣装を着た源太がやってくる。
「後は任せる……」
殿、逃走。だが、いっけん呆れたように見えた殿は、廊下に出た所で爆笑。
「あいつ……変わってない」
大きくなったら侍になって一緒に戦う……子供の頃の他愛ない約束を果たしに戻ってきた、真っ直ぐな友。だが、侍でもない友を、本当の戦いに巻き込むわけにはいかない、と、殿は新たな悩みに揺れる。
子供の頃の殿が泣き虫でへたれな感じなのですが、いったい如何なる魔改造の末に、殿はこんな事になってしまったのか……志波家の闇は深い。
まあ、それだけ“侍の使命”が重く、覚悟をその身に背負っているという事なのでしょうが、志波家に代々伝わる暗黒教育術、恐るべし。
寿司チェンジャーと寿司ディスクは、烏賊折神と殿の話を頼りに、源太が自作していた事が判明。彦馬いわく「電子モヂカラ」という事ですが、科学の力で擬似的なモヂカラを発生させているとでもいう事か。以前の黒子回で「侍と黒子の最大の違いはモヂカラの有無」と語られていましたが、これ、本格的に研究開発したら量産型シンケンブラックを大量に生産できるのでは。……某カラス天狗ばりのやられモブにしかならない予感ですが。
父の寿司屋を継いだ源太は寿司セットを作る傍ら、丈瑠との約束を守る為に侍を目指して独り剣の稽古に励み、逆手抜刀術を習得。……千明が途中で囃すのですが、どうも源太は本当に天才っぽい。……バカだけど。
剣も発明も完全独力だとあまりに天才なので、通りすがりの山なんとかいう老忍者に教えを受けた可能性をそこはかとなく考慮したいですが、それにしても、変身装備を完全自作、というのはシリーズでも相当異端でしょうか。ある意味で、70年代ヒーロー的(笑)
とにかく、ご先祖様には責任はありませんでした、すみません。
源太のトンデモぶりと熱い思いを好意的に受け止める年少組だが、彦馬はシンケンジャーへの参加を拒否し、寿司チェンジャーを取り上げる。そこへアヤカシ出現の反応があり、やってきた殿も、源太の協力を拒絶。
「爺の言う通りだ。おまえは侍じゃないし、6人目でもない」
あくまでも他者を巻き込む事を良しとしない丈瑠の冷たい態度に、源太は欄干から転がり落ちて気絶。
キツネの仇を討とうと気合いの乗った、二刀流のヒャッハー系アヤカシ(鎌鼬か)が高速の剣技で暴れ回り、全身に纏った刃による攻撃はレッドすら捌ききれない剣風となってシンケンジャーを苦しめるが、乾燥肌で撤退。
「次までに見切らないとな」
「……助っ人はいなくていいの?」
殿の悩みを感じ取り、それとなく追い込みをかける姐さん、スーツの中はきっと獣の目。
「俺、いらないんだってさ……」
黄昏れる寿司屋に、年少組は仲介を買って出る。空回り気味な所に同族意識を感じているのか、千明は早くも「源ちゃん」扱い。
「いいの……幼なじみ、帰っちゃうよ?」
一方志波家では、考え込む殿に、餓狼の如く姐さんが追撃をかけていた。
「問題あるか。あいつは侍じゃない」
「またぁ。最近くだけてきたと思ってたんだけど」
「俺は同じだ。変わってない」
迷いから目を逸らすかのように、1人稽古を行おうとする殿に、横から打ちかかる茉子。
「本当は嬉しかったくせに」
ここから、竹刀を打ち合わせながらの会話、というのは今作らしさが出ていい味わいのシーンになりました。
「巻き込みたくないんでしょ。でも……一つ勝手な推測。幼なじみが居たんじゃ、今までみたいな強い殿様で居づらい。だから追い返した」
的確なボディブローに動揺した殿、茉子に一本を取られる。
「……当たり?」
やばい、やばいよ天使センサー!
「自分で言ったろう。勝手な推測だ」
だがその時、垣根の下でこの会話を耳にしていた寿司屋が飛び込んでくる。
「馬鹿野郎! 幼なじみを助けたら、なんで強くねえんだ! 水くせぇぞ! 俺だって覚悟決めてきたんだ。幾らだって命預ける。だから巻き込めよ俺を!! もう、ぐっるぐるにぃ!!」
今作において主従の絆のキーワードである「命を預ける」をそれと知らない筈の源太が口にした所で、いったんカメラを切り替えて息を呑む殿の表情を映す、というのは地味ながら効いた演出。
「馬鹿、いいから帰れ! おまえは――」
更にそこへ、千明とことはもやってくる。
「丈瑠、源ちゃんから聞いたぜ、子供の頃の話」
よりによって、年下組に恥ずかしい過去がバレたーーー。
「もう1人で格好つけらんねえな」
「お前達……」
自分の幼年期の事を勝手に語られるとか、殿とか侍とか関係なく、深い、精神的ダメージです(笑)
「強くなきゃ殿様で居られないっていうのは違うんじゃない? たまには弱かったり、誰かに頼る殿様でもいいじゃない」
テンプルにいい打撃を喰らって下がった殿の顎に、姐さんの右フックが炸裂。
「俺は、別に……」
最後に面倒くさい流ノ介も、いざという時は自分がフォローすると源太を認め、殿、K.O!
早めにフォローを入れないといけないメンバーが多い都合でキャラクターの掘り下げや活躍が後回しになっていた茉子ですが、12話−13話と来て、ここでおいしい役回り。新メンバーも含め、男衆がみんなアレなので、精神年齢の高いポジションに落ち着くようです。
「返せよ。寿司チェンジャー。あん時の約束だ」
――遠くに行っても、友達だから。
――よし、稽古して、たけちゃんが殿様になったら、俺、家来になってやるよ。だから、侍にしてくれよな。
――うん!
あの日の約束を果たしに戻ってきた友に、丈瑠も覚悟を決める。
「おまえが、シンケンジャー6人目の侍だ」
殿と家臣の心が一つになり、本当の意味で戦隊になるまでは1クールかけてやりましたので、ここはあまり時間をかけずに、そんな家臣達の側面攻撃もあり、殿、陥落。
殿はこのまま、ゆるふわ生物になってしまうのか。
再び現れたアヤカシに源太を加えた6人は出陣し、陣幕延長でシンケンジャー揃い踏み。赤がちらっと横を見たのは、友達がちゃんとポーズ取れるのか心配したのか(笑)
赤と金は息の合ったコンビネーションでアヤカシの全身刃を捌ききり、ダブル攻撃で成敗。巨大化したアヤカシの全身刃に苦戦するシンケンオーだったが、ここで、烏賊折神が侍武装
これまでカブトにこだわっていたシンケンオーなので、てっきり頭に烏賊を被ってロケットマン攻撃とかするのかと思っていたのですが、先端が右手の槍、真ん中が左手に盾、残りの足が背中に付く、という新パターン。
イカシンケンオーは槍衾の連続突きで刃を弾き、盾からの冷凍ガスでアヤカシの動きを封じると、背中の足に集めた電気を槍に移し、必殺・ヤリイカ一閃で刺殺。
殿の決め台詞の前にゴールドが強引に一本締めを挟み、ちょっとコミカルな一幕の後、「これにて、一件落着」。
これまで残念流ノ介が滑り芸で獅子奮迅の活躍を見せていた今作のコミカル成分ですが、ここで陽気な正統派バカキャラが加わり、演出も明るさが強調されました。
シンケンオーの追加武装は、イカの加入により、カブトムシ・カジキ・トラ・イカで、半分が魚介類という、大胆な展開。寿司屋の水槽に、なんかもう一つ入ってるしなぁ……。
戦い終わり、ゴールド寿司をご馳走になるシンケンジャー。それを見つめる、殿と彦馬。
「俺は弱くなったのか……? 前は独りで平気だったのに、今は――」
「さぁ……それを申せば、そういう殿をお諌めできぬどころか、少し嬉しく思ってしまっている爺もまた……あっはははははは」
殿のみならず、志波家の因縁と宿命に頑なになっていた主従、という形で彦馬の変化も描かれているのは良い所。……なお、寿司の味は普通でした。
まずは登場編という事で丈瑠との友情を軸に描かれたゴールド、“物凄い努力”で納得できる範疇を飛び越えている気がする開発力で、自分のハイスペックに気付いていない天然バカ、といった感じですが、この陽性のキャラが5人とどんな科学反応を見せるかは楽しみです。今作の場合、初期メンバー5人の関係性が収まったのが12話と遅かった為、バランスが取れている所に新キャラが入るというよりも、流れの中の6人目といった感じが強く、追加戦士で発生しがちな歯車の噛み合わない感じが薄いのは良い所。
次回、真のコメディリリーフの座を賭けて、流ノ介と源太、激突。